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韓国では戒厳令の騒動があった。この遠因となったのは、大統領の支持率が低かったことだ。支持率が低かったのは、夫人のスキャンダルも理由だが、経済状況が悪かったのも理由だという。(経済不振のせいで戒厳令が発された、とも言える。)
では、その韓国と比べて、日本はどうか? 調べてみると、日本の経済状況は、韓国よりも悪い。物価上昇率は、韓国の方が少しだけひどい(高い)のだが、大差はない。
明白に差があるのは、賃金の伸びだ。日本は、物価上昇率に賃金の伸びが追いついていないので、実質賃金は過去3年間、マイナスである。これは、韓国よりも明白に悪い。
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Feloの回答を示す。
2021年:日本の実質賃金は前年に比べて約-0.8%の減少を記録しました。物価上昇が賃金の実質的な価値を圧迫していました。
2022年:実質賃金は約-1.2%の減少となり、物価上昇が続く中で賃金の上昇が追いつかない状況が続きました。
2023年:日本の実質賃金は約-2.5%の減少が報告され、これは過去数十年で最も低い水準となりました。
2024年:2024年には実質賃金がプラスに転じる可能性があるとされていますが、依然として物価上昇が賃金上昇を上回る状況が続くと予測されています。
最新版の記事。
実質賃金は前年同月比で横ばいだった。電気・ガス代の補助再開で物価の伸びが鈍化した上、最低賃金の引き上げによる賃上げが広がり3カ月ぶりにマイナスから脱却した。
( → 実質賃金、3カ月ぶりマイナス脱却 10月横ばい - 日本経済新聞 )
日本の経済状況は韓国より悪い。これだったら、日本でも戒厳令騒動があっても、おかしくないくらいだ。(皮肉だが。)
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さて。韓国と日本を比較したが、一般的には、韓国と日本の経済成長率は大差ない。年ごとに若干の差はあるが、大きな差はない。(長期的には日本の方が低迷状態が続いているが、近年の分では大きな差はない。)
経済力の点では大きな差はないのだが、国民のレベルで言うと、実質賃金の伸びに大きな差が付く。これは、どうしてか?
私の考えを言うなら、こうだ。
「韓国と日本で、実質賃金に大きな差が付く理由は、金利の差である。韓国では金利が 3.25% なのに、日本はほぼゼロ金利だ。こうなると、その分、日本では円安が進む。結果的に、所得は労働者から企業へと移転する。労働者の賃金は減って、企業の内部留保や株式配当が増える」
こうして「日本は韓国よりも実質賃金の伸びが低い。伸び率がずっとマイナスである」というふうになる。
では、どうしてこういう馬鹿げたことが起こるか? 日銀が企業のことしか見ていないからである。「企業の収益を増やすにはどうすればいいか? 企業の投資を増やして経済を拡大するにはどうすればいいか?」というふうに考えるだけだ。そこでは「低金利で投資を拡大する」というマネタリズムの発想しかない。そこには「労働者の所得を増やして消費を増やす」というマクロ経済学の視点が欠落している。
かくて、日銀の経済的無知ゆえに、しきりに労働者の所得を削って、企業の収益を増やそうとしているのだ。それが「円安をめざす」という日銀の低金利政策であり、そのことゆえに、物価が上昇して実質賃金は低下するのだ。
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国民民主党は「所得税を減税する」という方針を立てているが、そんなことをしても意味がない。減税をしても、その分、(貨幣量が増えるせいで貨幣価値が低下して)物価が上昇するから、結果的に、何の効果もないからだ。「賃金が3%上がって、物価が3%上がる」というふうになるだけだ。何の意味もない。
それよりはむしろ、金利を引き上げるべきなのだ。そうすれば、企業の所得が労働者の所得へと移転する。物価上昇が抑止されて、実質賃金が向上する。
実質賃金を増やすには、名目賃金を上げればいいのではなく、物価上昇を止めればいいのだ。そのことを理解できないから、日本は実質賃金低下が止まらないのだ。目先の金ばかりにとらわれているせいである。
[ 付記 ]
「実質賃金は最近ではゼロになってきたので、このままプラスになればいいや。それでOK」
と思う人もいそうだが、さにあらず。
いったん賃下げになったあとで、そのまま固定されていれば、ずっと賃下げ状態が続く。
賃下げが続いたあとでは、しばらくプラスが続かないと、元の賃金水準には戻らないのだ。しばらくプラスが続けば、その時点で、ようやく元の水準に戻る。お間違えなく。
それまでずっと、企業が労働者の金をむしり取り続ける。
「それでいいです。企業のかわりに国がお金を払って上げます」
というのが、国民民主党の方針。それに喜ぶのが、一般国民。金を奪われて喜ぶわけだ。猿並みだね。
※ じゃあどうすればいいか、というと、法人税を引き上げればいい。前項を参照。ここに言及しないで、「減税の財源は勝手に見つけてください」という国民民主党は、詐欺師も同然だ。「みなさんにお金を上げます。そのお金は空から降ってきます。そのお金を上げます」と言っているのに等しい。
実質賃金がプラスになれば、という話。