2024年12月05日

◆ 日本企業の技術軽視 .2

 ( 前項 の続き )
 日本企業が技術を軽視する話。

 ──

 総括 


 日本の経済力は 2000年以後に、急激に低下していった。それは日本企業の競争力が衰えたからであり、日本企業の技術力が低下したからでもある。このことを直視する必要がある。
 「日本企業は優秀だから、政府が補助金を出せば、ふたたび世界トップレベルになれる」
 と妄想する人もいるが、そのような妄想はもはや現実には成立しない。そのことをわきまえるべきだ。日本企業は技術的にどんどん落ち目になっている。そのことをきちんと直視することが何よりも大切だ。無能であることは仕方ないが、無能である人間が自分を有能だと思い込んで、莫大な投資をすれば、破綻して、莫大な借金を負うだけだ。
 その見本が、MRJ である。MRJ の失敗を見て、
 「三菱重工が無能だからだ。最初から技術力をもたないからだ」
 と指摘した人は非常に少ない。私は 2007年ごろの時点で、すでにそのことを指摘して、「 MRJ は失敗する」と予測した。
 一方、MRJ が失敗した現在でも、「MRJ の失敗は三菱重工が無能だったからだ。技術力不足が根源的な理由だ」と気づく人は少ない。
 また、「日本企業の実力不足を見抜けなかった経産省の驕りと自惚れが、日本企業に誤った道を進ませた」と気づく人も少ない。

 過信と自惚れ。これが何よりも身を滅ぼすのだ。

 日本の没落


 日本の技術水準が急激に低下していることは、数字を見ればわかる。それは、「一人あたり GDP の世界ランキング」だ。1990〜2000年ごろには、世界 2〜4位の位置を誇っていた。まさしく世界トップクラスだった。
 ところがその後、急激に没落した。あれよあれよというまに、毎年のように没落していった。その急激な没落は、下記のランキングを見ればわかる。
  → 一人当たりGDP(ランキング)

 そして、今ではどうなったか? こうだ。
2023年: 日本の一人当たりGDPは約33,834ドルとなり、世界ランキングは39位にまで落ち込みました。この年、スペインやブルネイ、スロベニア、台湾などに抜かれ、前年の34位から5ランクダウンしました。

 まるで奈落の底に落ちるように、急激にランキングが低下している。そして、それがどうして起こったかといえば、技術力が低下しているからだ。
 逆に言えば、一人当たりGDPのランキングの低下を見れば、日本の技術力が急激に低下していることがわかるのだ。

 ※ それを直視することが必要だ、というのは、すぐ前に述べたとおり。

 日本企業の目標


 ではなぜ、日本経済はこれほどにも急激に技術力が低下したのか? 急激に頭が悪くなったからか? 違う。経営者がそれをめざしたからだ。つまり、「技術力を低下させよう」と日本の経営者がめざしたからだ。
 「そんな馬鹿な」と思う人が多いだろうが、本当だ。この 30年間、日本企業の経営者は何をめざしたか? 「技術力の向上」か? 違う。「コストダウン」だ。簡単に言えば、「賃下げ」だ。特に、正社員を減らして、非正規労働者を増やそうとした。
 とはいえ、低賃金とは、労働生産性の低下とほぼ同義である。
   安い給料 ≒ 低い労働生産性

 という近似式が成立する。
 というわけで、日本企業はコストカットをめざすことで、労働生産性をどんどん低くしようとしていった。世界中の企業は、「生産性を高めて、賃金を上げよう」とめざしてきたのに、日本企業だけはその逆で、「賃金を下げよう。そのためには生産性を下げてもいい」というふうにしてきた。そのせいで、粗悪品を安価に販売することばかりをめざしていった。
 その結果が、円安であり、一人あたり GDP のランキング低下だ。

 このような日本企業の愚かさについては、前に詳しく説明した。
 アップル、テスラ、グーグルは、いずれも高い生産性を誇っているが、同時に、いずれも高い賃金を誇っている。
 これらの会社では、高い成長を狙うために、高い賃金を払って、高度な人材を獲得しているのである。高い成長を実現するためには、高い賃金を払うことが必要だ、ともわきまえていた。……これが、有能な経営者のなすことだ。

 ところが、それと逆のことをやったのが、日本の経営者だった。「高い賃金を払って、高い生産性を実現する」という方針とは、真逆の方針を取った。彼らは「低い賃金を払って、低い生産性を実現する」という方針を取った。
 つまり、世界中の各国が「生産性の向上」をめざしていったときに、日本だけは「生産性の低下」をめざしていったのである。
 その結果が、今の日本である。
( → 日本はなぜ没落したか?: Open ブログ

 結果的に、日本の労働者の性質は、次のように変わった。
  ・ 従来 …… 正社員 / 高技能 / 高賃金
  ・ 新規 …… 非正規 / 低技能 / 低賃金

 このような形で、「高技能・高賃金」の正社員から、「低技能・低賃金」の社員へと切り替えられた。
 このとき同時に、会社もまた、同じように切り替えられた。「高技術・高品質の品を売る超一流会社」から、「低技術・低価格の品を売る安売り会社」へと。
 これはつまり、日本の会社全体が、途上国化していった、ということだ。「高品質・高賃金」という先進国企業から、「低品質・低賃金」という途上国企業へと切り替えられていった、ということだ。
 そして、そのことで「企業の利益が増える」という狙いは、まさしく達成された。彼らが望んでいるとおり、企業の利益はどんどん増加していった。狙いはまさしく達成されたのだ。
 しかし同時に、企業そのものが途上国化していった。低賃金労働者によって低価格商品を作り出す、というふうに。そして、そのとき同時に、日本企業の生産性も低下していったのだ。(低賃金労働者によって低品質商品を作るのだから、当然だが。)

 要するに、すべては狙い通りだったのだ。日本企業は、「何よりも利益の拡大」をめざした。そのとき、「コストカット」という方針を選んだので、「労働コストの低下」つまり「賃下げ」という方針を取った。結果的に、低品質・低賃金という道を取った。それはすなわち、「生産性の低下」を意味した。
( → 日本の生産性低迷の理由: Open ブログ

 この二項目には、非常に大切なことが書いてあるので、改めて読み返してほしい。上記引用箇所以外にも、いろいろと重要な説明が記してある。(特に、上記項目の最後。)




 ※ 次項に続きます。

posted by 管理人 at 23:41 | Comment(2) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本には経団連があるのも経営者が堕落する原因かもしれませんね。

経団連で横につながることで給与の相場を固定化できてしまう。
カルテルと同じで労働市場が成長しなくなります。
それでいて労働者側には企業を超えた団体が無いのです。

経団連を解体するべきではないでしょうか。
そうすれば経団連から政治家や政党への圧力がなくなります。

個別の企業からの献金は残るでしょうが、経団連全体からの圧力に比べればかなり小さいです。

経団連の圧力ー>労働者軽視ー>技術力の低下、
という流れがあります。

日本には労働者を守るための団体や組織がありません。
今からそれを作るよりは経団連を解体する方が効果が高いでしょう。
その上でさらに労働者や技術者を守る組織を立ち上げる。
さらに労働者を守る法整備も必要です。

Posted by 読者 at 2024年12月06日 19:53
 ブログの操作ミスで、記事が重複していたので、修正しました。一時的な出来事でした。
Posted by 管理人 at 2024年12月07日 15:25
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