2024年11月25日

◆ 日産が北米市場から撤退

 日産のガソリン車は北米市場からほぼ撤退することになりそうだ。

 ──

 日産は長年をかけてガソリン車で大きな市場を得てきた。古くはブルーバードやフェアレディの販売の苦労話もある。こうして先人の努力で、日産は北米で大きなシェアを獲得するようになった。
 しかるに今や、そうして得た果実を捨てて、北米市場から撤退することになるようだ。嘘みたいだが、ホントである。

 もう少し正確に言おう。前項と前々項では、大型 SUV を紹介した。ともに 9速ATがある車種だ。これらは撤退しない。だが、これらを除いた他車については、ほぼ撤退する見込みである。
 たとえば、北米で最大の稼ぎ頭となっていたアルティマだが、現行モデルで生産を終了して、次期モデルは撤退する予定である。(2025年で生産終了。)
 日産が北米市場を中心に販売するセダン「アルティマ」が2025年に生産される2026年モデルをもって生産終了になると予想されると共に、最上級モデル「アルティマ SR VCターボ」が、それより1年早く2025年モデル(2024年生産)でラインナップから外れる可能性があることがわかった。日産は北米のセダン市場からほぼ撤退する形になる。
( → 日産アルティマは2025年に生産終了?ハイパフォーマンスモデル「SR VCターボ」は先行してラインナップから外れる可能性 | Motor-Fan[モーターファン]

 ではなぜ、撤退するか? 販売すればするほど、赤字が出て、大損するからだ。赤字を出して売るくらいなら、何も売らない方がいい。だから撤退するのだ。
 ではなぜ、大赤字が出るか? それは、前々項で述べたとおりで、CVT の品質が劣るので、大幅値引きしないと売れないからだ。
 そこで、大型 SUV については、9速 AT を搭載した。これが間に合ったので、大型 SUV については撤退しないで済む。しかし、それ以外については、AT の搭載ができないので、撤退するしかなくなったのだ。

 詳しく言おう。中型車や小型車を売るためには、CVT のかわりに、新たに AT を開発する必要があるが、今さらあわてて開発しても、時間がかかるので、とても間に合わない。
 そこで、開発するかわりに、外部から購入をすれば間に合いそうだ。だが、すでに撤退を決めているせいで、モデル開発を中止している。今になって外部から AT だけを購入をしても、本体の開発が止まっているので、どっちみち間に合わない。新モデルの開発には、4年ぐらいかかる。4年後になって新モデルを新発売しても、そのあとでは、もはやガソリン車の時代は終わりつつあるので、新しい小型の AT を償却できない。
 というわけで、日産は(中小型の AT を開発してこなかったせいで)、中小型の車種がないから、中小型のセダンや SUV については、北米市場から撤退せざるをえないのだ。ブルーバード以来、延々と築き上げてきた市場を、一挙に失うことになるのだ。
 
 何とかならないのか? そこで、かろうじて頑張るとしたら、 e-POWER にする必要がある。だが、それもどうやら間に合わないようだ。
  e-POWER は新技術である。故障したら、従来工場では直せない。そこで、 e-POWER 用の整備工場を、全米の各地に新たに配備する必要がある。そのための設備投資には、金が必要だ。だが、その資金がない。金がなければ、設備投資ができない。となると、どうしようもない。 e-POWER を売りたくても、 e-POWER 車のための整備工場がないので、 e-POWER 車を売り出せない。

 これというのも、日産に金がないからだ。では、なぜ金がないのか? これまで何十年もかけて、多額の黒字を蓄積してきたくせに、その金はどこへ行ったのか?
 実は、日産は過去に多額の金を稼いだが、その金を配当金として、全部流出させてしまったのだ。配当金としてルノーに貢いでしまったのだ。日産の黒字(利益)は、外部に流出して、ルノーの赤字を隠すために使われた。多額の黒字を出しても、その黒字は配当金に ばけて、ルノーに流出した。だから、研究や新車開発や設備投資に回す金がなくなったのだ。
 結局、日産はルノーに食い物にされたのだ。あとに残っているのは、食い物にされたあとの残りカスだ。それが今の日産だ。哀れだね。


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 ※ 最後に注記しておくが、日産の「北米からの撤退」は、確定した話ではない。現時点ではあくまで「見通し」であるにすぎない。とはいえ、論理的には、撤退するしかないのだ。なぜなら、そうしなければ、大赤字を出して、日産そのものが倒産してしまうからだ。

 ※ 撤退するといっても、あくまで中小型車のガソリン・セダンの話だ。大型 SUV は残るし、EV 車も残る。日産はたぶん EV 車のメーカーとして残るつもりなのだろう。ともあれ、ガソリン車から撤退せざるを得ないほどにも、日産は追い詰められているのだ。CVT 戦略の大失敗のせいで。( CVT で、すべった わけだ。シーブイティー で、スベッタ。ダジャレみたいだね。)



 [ 付記 ]
 日産の 9速 AT は、いかにして開発されたか? それを疑問に思う人も多いだろう。私も疑問に思った。
 「ダメダメ日産が、世界でも屈指の 9速 AT を開発できるなんて、すごいじゃん。いったいどうやって開発したのだろう。何か秘密でもあるのだろうか?」
 
 そこで調べてみたら、意外な真実が判明した。これは(日産傘下の)ジヤトコの製品ではあるが、ジヤトコが自分で開発したものではなくて、ほぼベンツ製なのである。ベンツの部品をそっくりそのまま使って、ほんのちょっとカスタマイズした(チューニングした)だけなのだ。
 ジヤトコのFR用の7速AT「JR710E/JR711E」をすでに保有、各車に搭載されている実績を持つ。Z34型(現行型)のATは、この7速ATだ。
 今回の新型9速AT「JR913E」は、そのJR710Eの高機能改良版だと信じて疑わなかった。遊星歯車の構成はおそらく大きく変わらず、ブレーキ/クラッチの締結制御を高度に変更することで9速にしていると踏んでいたのである。ところが、取材が始まって開発陣の口からは「じつは違うんです」との言葉が発せられた。聞けば、ダイムラー社のステップAT「9G-TRONIC」を基礎としているという。
 当時、日産とダイムラーはパワートレーン戦略で技術提携を図っていた。その流れで日産側にも9速ATを仕立てるとなった際に9G-TRONICが俎上に載せられたという。しかし奮っていたのはジヤトコのエンジニア勢、9G-TRONICを徹底的に分析し、社内基準や市場特性などと照らし合わせてさらなる最適化を図った。結果、4つの遊星歯車機構/6つの締結要素は9G-TRONICをそのまま用いながら、各部の徹底的なリファインを施すこととなった。
( → 7から9へ! レシカバは9.09 新型日産フェアレディZが採用した9速ATのテクノロジー | Motor-FanTECH.[モーターファンテック]



 【 追記 】
 日産が撤退したのは、米国だけではない。日本でも、 e-POWER 以外のモデルはほとんど撤退した。
  ・ ノート ( CVT なし)
  ・ エクストレイル ( CVT なし)
 以上は CVT モデルがないので、CVT 分野から撤退した。(エクストレイルの旧型車には CVT モデルがあったが、CVT が故障しやすいと悪評が高かった。)

 それ以外の車種は、 e-POWER のモデルがないので、販売中止になった。
  ・ ラティオ(ヴァーサ)
  ・ シルフィ(セントラ)
  ・ マーチ
  ・ ジューク
  ・ キューブ
  ・ ティアナ
  ・ フーガとシーマ
 いずれも、 e-POWER のモデルがない。かといって、CVT モデルは不評だ。かくて、国内販売はいずれも撤退した。(外国では生産継続中のことも多い。)

 欧州でも、マイクラが販売中止となった。ヴァーサやセントラも販売中止になった。欧州ではトヨタなどの国産車が売れているのだが、日産はセダンの販売から撤退した。CVT も e-POWER もないからだ。
 日産は北米市場からも撤退し、日本や欧州の乗用車販売からも撤退している。残された道は、SUV メーカーとして生き残ることだけだ。あとはただ衰退のみ。


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 ※ 今は大幅円安で巨額の為替差益が出ているはずなのに、収益はひどい。大幅円安が是正されたら、莫大な赤字が出ることになる。日産の倒産は秒読み段階かもね。
 ※ それでも経営者は、日産が倒産する前に、莫大な給料と退職金をもらって、逃げ切るつもりなのだろう。「あとは野となれ山となれ。おれたちさえ日産を食い物にできればいいんだ」→ 経営者と指名委員会は、同じ穴のムジナ。日産を食い物にして肥え太る。ハイエナのように。



 《 加筆 》
 日産がこれほど没落したのはどうしてか? それは、前々々項でも示したように、経営者に技術的知識が欠落しているからだ。
  → 日産自動車の業績悪化: Open ブログ
 特に、CVT の問題を理解できていない。
  → 日産没落と CVT: Open ブログ
 技術の知識がないせいで、問題の核心を理解できない。かわりに、どうするか? 帳簿だけを見て、帳簿で対策しようとする。「人件費を減らす」「新車開発経費を減らす」「販売奨励金を増やす」「三菱自動車の保有株を売却する」というふうに。あくまで経理上の金銭操作で問題を解決しようとする。
 技術を理解できないと、「技術上の問題が致命的原因だ」と理解できないのだ。それで、CVT が問題であるときに、「 CVT を AT に換装する」という正解を取れずに、「 CVT 車が駄目なら、CVT 車を販売停止・生産停止にすればいいさ」と考える。かくて市場から撤退という道を選ぶ。
 愚か者は自らおのれを殺す道を選ぶのだ。他者に食われるわけでもないのに。


posted by 管理人 at 23:57 | Comment(7) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そうですね、一時期、特にゴーン時代は高い配当性向でそれが日産株価が高かっただけで、
赤字で配当できなくなったらルノーからも三下り半くらってるのに、日産、日本のマスコミはこれで「平等」と騒いでるのみておかしかった。
米国の惨状もすでに在庫が4ヶ月近く溜まってるのにいまだ生産続けていたりと、ジリ貧なインヒニティチャンネルを現存してたりと、経営=商売になってない様子

次はどうリストラすべきか無能な経営陣にぜひアドバイスください
Posted by 会社 at 2024年11月26日 09:00
> どうリストラすべきか

 先に示したとおり。無能な経営陣を入れ替える。そのためには、指名委員会を入れ替える。そもそも、指名委員会という方式が駄目なので、この方式を廃止する。
 新たに技術のわかる経営者を導入する。見つからなければ、関潤さん再招聘すればいい。年を食ってしまったが、他にいなければ仕方ない。
Posted by 管理人 at 2024年11月26日 10:48
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 日本と欧州からも撤退している、という話。( SUV を除く。)
Posted by 管理人 at 2024年11月26日 10:48
  最後に  《 加筆 》 を追加しました。
 CVT が根源だと理解できない技術的な無知が原因だ、という話。
Posted by 管理人 at 2024年11月26日 14:30
ニデックの今の社長はS⭕️NYの経営企画畑出身で技術屋から、あまりよく言われて無かったけど、関潤さんが辞めてこの人とは実にしっくりきます。
Posted by アクアパッツァ at 2024年12月08日 12:02
Feloの回答


 § ニデックの電動アクスル事業の失敗の主な原因

 ニデック(日本電産)の電動アクスル事業は、期待された成長を遂げられず、複数の要因によって失敗に至りました。以下にその主な原因をまとめます。

 1.激化する競争環境
 中国市場における電気自動車(EV)メーカーの急増と価格競争が、ニデックの電動アクスル事業に大きな影響を与えました。特に、中国のEV市場では、低価格のモデルが次々と登場し、競争が非常に厳しくなっています。この「価格破壊」により、ニデックは利益率が圧迫され、事業の収益性が低下しました。

 2.期待外れの市場成長
 ニデックは、電動アクスル事業を「第2の成長の柱」と位置づけ、2030年までに年間1000万台の販売を目指していましたが、実際には市場の成長が期待外れに終わりました。特に、EV市場全体の成長が鈍化し、ニデックの販売計画も何度も下方修正される結果となりました。

 3.経営戦略の失敗
 ニデックは、電動アクスル事業においてシェア獲得を優先しすぎた結果、赤字が続く事態に陥りました。2023年度には、営業赤字が常態化し、構造改革を余儀なくされました。経営陣は、収益性重視の戦略に転換することを決定しましたが、その実行には時間がかかり、短期的な利益を上げることができませんでした。

 4.技術的な競争力の不足
 ニデックは、電動アクスルの技術革新において他社に遅れを取っているとの指摘もあります。特に、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いた新世代の製品開発において、競合他社が先行しているため、ニデックの製品が市場での競争力を失いつつあります。

 結論
 これらの要因が重なり、ニデックの電動アクスル事業は期待された成長を実現できず、赤字が続く厳しい状況に直面しています。今後は、競争環境の変化に適応し、収益性を重視した戦略を再構築することが求められています。
  
Posted by 管理人 at 2024年12月08日 13:13
 上の話を要約すると、こうなる。

 「ニデックは、技術的には他社よりも劣っていたのだが、技術的には他社よりも大幅に優れていると自惚れて、巨大な生産計画を立てて、市場を大幅に占拠しようと目論んだ。しかし現実には、そうは行かず、生産計画通りに販売できなくて、赤字になった。すべては、もうろくした会長が自惚れて、無謀な計画を立てたのが原因だったが、そのことをりかいできなかったので、計画不達成を理由に、有能な社長をクビにした。そのあと、無能な社長を任命したので、ニデックの行く末は真っ暗である」

Posted by 管理人 at 2024年12月08日 13:19
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