斎藤元彦(兵庫県知事)やトランプが当選したのは、「情報の汚染」が原因だ、と見なせる。
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本項では「情報の汚染」という観点から論じたい。
前項では「デマの拡散」という趣旨で述べた。それはそうなのだが、同じことを情報論の観点から見ることもできる。
前項末では、こう述べた。
※ なお、以前ならば、この問題は生じなかった。テレビや新聞には、デマを濾過するフィルター機能が備わっているからだ。汚れたゴミ情報は、このフィルターで除去される。ところが、SNS や YouTube には、このフィルター機能がない。歪んだ情報がそのまま垂れ流される。だから世間の情報は汚染されてしまうのである。いわばパンデミックに感染するように。
( → 斎藤・兵庫県知事の当選: Open ブログ )
「SNS や YouTube には、このフィルター機能がない」と述べた。これは、どういうことか?
SNS では、Twitter にはもともと「ファクトチェック」機能が装備されていた。「コミュニティノート」という付言を貼りつける機能だ。これは日本語版では 2023年から装備されていた。しかしながら、最近の選挙中のツイートでは、この機能が十分に機能していないと批判されることが多い。多くのデマツイートが放置される傾向が強いからだ。(ただし不十分ながらも、とりあえずはその機能が維持されている点では、まだマシかもしれない。)
YouTube はもっとひどい。陰謀論などのデマ動画が放置されており、デマの巣窟となっているありさまだ。ファクトチェックの機能は(あるにはあるが)、オプションふうの扱いであって、十分に機能していない。そこで、今後は Twitter ふうの機能を装備する予定らしいが、少なくとも現状では、ファクトチェック機能はまともに働いていない。
※ YouTube (つまり Google )のこの方針については、うがった見方もできる。「Google はわざとデマ動画を放置しているのだろう。デマ動画の再生回数が増えれば増えるほど、CM 収入が増えて、Google は儲かるからだ」と。つまり、Google はグルになって、デマ情報による金儲けをしているわけだ。もともとグーグルという名前だから、愚で、グルになるのは当然かもね。
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Twitter には、別の問題がある。アカウントの削除という問題だ。 Twitter にはもともと「デマを飛ばす人のアカウントは削除」という方針があった。そのせいでトランプのアカウントも削除された。ところが、イーロン・マスクはこの方針を一転させた。トランプを含めて、デマを飛ばすアカウントを大幅に許容するようになった。アカウントを削除するための人員も大幅に削減した。
こうしてデマを飛ばすアカウントが大幅に増えるようになった。
Feloの回答:
イーロン・マスクがCEOに就任して以来、Twitterは誤情報に対する厳格な取り締まりを緩和する方向にシフトしています。特に、重大な違反行為や継続的な違反行為を繰り返すユーザーのみを凍結の対象とする方針が発表されました。これにより、以前は厳しく対処されていたアカウントが復活するケースも増えています。
こうしてデマ情報が許容されることになった。
その結果は? デマ情報の氾濫である。これがすなわち、「情報の汚染」だ。
イーロン・マスクが Twitter を買収したことは、ただの経済的な問題であって、マスク個人の損得の問題にすぎない……と思われたこともあったが、現実には、それを大きく超える社会的影響があったのだ。それは、ただの個人の損得に影響するだけでなく、米国の大統領選や、日本の兵庫県知事選をも、左右するほどの影響を及ぼしたのだ。
それこそ、「情報の汚染」がもたらした結果だ。
コンピュータやスマホが大量の情報を与えてくれる情報化社会は、とても素晴らしい文明的な社会だ、と思われたこともあった。それは幸福をもたらすものであり、夢のようなものだ、と。
しかし現実には、そうならなかった。むしろ、情報が社会を地獄に突き落とす、というふうに判明した。それは不幸をもたらすものであり、悪夢のようなものだ、と。
それがつまり、「情報の汚染」だ。
この汚染は、放置すると、パンデミックのようにどんどん拡散して、社会全体を蝕んでいくのである。
それも、人々が意識していればいいのだが、現実には、人々は「情報の汚染」について楽観しすぎている。警戒もしていないし、ろくに認識してもいない。むしろ、「 SNS や YouTube を見ている若者たちは、新聞やテレビを見る古い世代よりも、優秀だ」とヨイショする始末だ。実は、若者たちは、新聞やテレビを読むだけの能力もなくて、一種の文盲に近くなっているだけなのだが。(識字力の低下、とも言える。長文を読む能力が欠落している。)
そして、こういうふうに長文を読めない若者や老人のために、YouTube や Twitter が活躍する。そして彼らをその小さな箱に閉じ込める。エコーチェンバーという箱に。……かくて、若者や老人は、外界に触れる機会もなく、井の中の蛙と化していく。
※ 次の例がある。
→ 久々にあった友人が陰謀論にはまってた
身近な人が陰謀論に染まったのを見て、悲しんでいる。
※ こうなった原因は、現代人の孤独だろう。他人との会話がなくなると、YouTube や TikTok を見て、そこに親しみを感じるようになる。アニメみたいなVTuber を、友達のように感じて、盲目的に信じる。こうして、真実への情報遮断が発生する。
※ こういう人は、もともと心をふさいでいると言える。他人とも没交渉の人が多いようだ。そこには現代人の孤独がある。それが疎外された人々を陰謀論に走らせる。「情報の汚染」の背景には、現代人の孤独がある。
[ 付記 ]
次の主張がある。
「こういう結果になったのは、既存のマスコミがしっかりとしていないからだ。テレビや新聞などのマスコミがしっかりとしていればいい。マスコミは自省しろ」
→ 猛省すべきはマスメディア、 無難な選挙報道がマスコミ不信を増幅
いかにも評論家っぽい批判だが、これは論理的に狂っている。そもそもネットしか見ない人は、テレビや新聞などのマスコミを見ない。どうせ見ないのだから、見ないもの(テレビや新聞など)を、いくら変えても意味がないのだ。当り前でしょうが。そんなこともわからないのか。
さて。ここから重要なことに気づく。
ネットに閉じこもって、テレビや新聞などのマスコミを見ない人が多いのは、どうしてか? なぜ彼らは、テレビや新聞などのマスコミを見ないのか?
それは、明らかだろう。彼らはスマホばかりを見ているからだ。スマホでは、テレビや新聞を見ることがない。テレビはスマホで視聴できないし、新聞もスマホには適していない(スクロールが面倒臭い)からだ。
その点、スクロールする手間もない YouTube や TikTok は、とても楽である。これらの媒体は、「動画だから人気がある」というより、「指を動かさなくても自動的に内容が切り替わっていくので、楽ちんだから、人気がある」のだ。
要するに、情報の汚染で社会が歪んでいくのは、スマホのせいなのである。人々があまりにもスマホに依存しているので、ろくに文字を読む機会もなくなって、文盲化していくのだ。識字力をなくして。……これは「文明の退化」とも言える。そういう現象が、スマホの普及にともなって、現実化しつつあるのだ。
二つの選挙の結果から、人類の文化的退行が見て取れるわけだ。地球が温暖化して壊れていくように、人類の精神もまたどんどん壊れつつあるのである。その最終的な到達点は、破滅であろう。
人類を自滅させつつ

僕が世界を支配する