2024年11月15日

◆ トランプの勝因(私の見解).2

 ( 前項 の続き )
 トランプの勝因は何か? 私の考えを示そう。

 ──

 物価上昇の煽動


 前項で述べたように、米国民には物価上昇の不満があったのだが、現実には物価上昇は収束しつつあった。本来ならば、米国民の不満が高まるはずはなかった。なのに現実には、米国民の不満が高まって、その不満が民主党政権に向かった。それはいったい、なぜだろうか?
 その質問に、いよいよ答えることにしよう。こうだ。
 「米国民の不満が高まって民主党政権に向かうように、トランプが煽動したからだ」

 もともと物価上昇という不満があった。それは 2022年に大きかった。その後は物価上昇は収束したのだが、いまだに高止まりしていたとも言えるし、過去の急上昇の痛みが残っていたとも言える。そういう状況において、「火のないところに火を付ける」というような形で、トランプは「民主党政権が悪い」というふうに非難した。
 物価上昇がひどいせいで、人々が民主党政権を嫌ったのではない。「物価上昇がひどいのは、民主党政権のせいだ」というふうにトランプが煽動して、その煽動を人々が信じたから、トランプは勝利したのだ。
 ここでは、物価上昇自体が決定的要因だったのではなく、物価上昇という印象をもたらして人々の心理を操作したことが決定的な要因となった。

 比喩的に言おう。ゴジラがニューヨークを襲ったから米国は混乱したのではない。「ゴジラがニューヨークを襲うぞ」というトランプの煽動を米国民が信じたから、米国は混乱したのだ。
 現実に何かがあったから混乱が発生したのではなく、トランプが妄想を掻き立てたから混乱が発生したのだ。
 この違いをはっきりと理解する必要がある。米国の経済データをいくら詳細に分析しても、そこからは何の真実も見つからない。というか、真実そのものは原因にはならない。大事なのは、真実ではなく、虚偽であり、妄想なのだ。虚偽と妄想が、現実を動かしたのだ。このことをきちんと理解する必要がある。

 ※ 要するに、詐欺師の手口だ。

 煽動という手法


 トランプの手口は、煽動である。人を、けしかけて、煽り立てて、怒りを募らせて、攻撃的にさせる。……それは、悪魔のような手口である。
 それを最も上手にやったのが、ヒトラーだった。当時、ドイツの経済は苦しくて、物価は急上昇し、失業率は高くて、国民の不満は非常に高かった。その不満をすくい上げて、国民を、けしかけて、煽り立てて、怒りを募らせて、攻撃的にさせる。……こうして国民の圧倒的な支持を得たのが、ヒトラーだった。
 「ドイッチュランド・ユーバー・アレス」(世界に冠たるドイツ)
 という言葉のもとに、国民の熱狂的な支持を得た。

 この煽動を「宣伝」という形で担当したのが、ゲッベルスだった。Feloの回答を引用しよう。
ゲッベルスの果たした宣伝の役割

背景

ヨーゼフ・ゲッベルスは、ナチス・ドイツの宣伝大臣として、アドルフ・ヒトラーの政権下で重要な役割を果たしました。彼は、ナチスのイデオロギーを広めるための強力な宣伝機構を構築し、メディアや文化を通じて国民の意識を操作しました。

宣伝の手法と影響

  1. メディアの統制: ゲッベルスは、新聞、ラジオ、映画、文学など、すべてのメディアを統制しました。彼の指導の下、ナチスは情報の流れを完全に管理し、反対意見を排除しました。

  2. プロパガンダの戦略: 彼は「プロパガンダは人々の心にアイデアを植え付けること」と述べ、感情に訴えるメッセージを用いて国民を動員しました。特に、第一次世界大戦後のドイツの屈辱感を利用し、ナチスの優越性を強調しました。

  3. 文化活動の利用: ゲッベルスは、映画や音楽、演劇を通じてナチスのメッセージを広めました。特に、映画『永遠のユダヤ人』や、レニ・リーフェンシュタールの『勝利の凱歌』などは、ナチスのイデオロギーを視覚的に強化するために制作されました。

  4. 国民の動員: 彼は、国民を戦争に巻き込むための「総力戦」の概念を推進し、戦争の必要性を訴えました。特に、1943年のスポーツパラスト演説では、国民に対して戦争の継続を呼びかけました。

  5. 反ユダヤ主義の強化: ゲッベルスは、ユダヤ人に対する偏見を助長し、彼らを敵として描くことで、国民の団結を図りました。彼の宣伝は、ホロコーストを正当化するための重要な要素となりました。

結論

ゲッベルスの宣伝活動は、ナチスの権力を強化し、国民を戦争へと駆り立てる重要な役割を果たしました。彼の手法は、メディアを通じての情報操作や感情的な訴えを駆使し、ナチスのイデオロギーを広めるための効果的な手段となりました。彼の影響は、戦争の結果やホロコーストの実行にまで及び、歴史に深い傷跡を残しました。


 この手法を真似て、トランプは連邦政府や司法機関を「ディープ・ステート」と呼んで批判した。陰謀論の一種である。あまりにも馬鹿げているが、これを信じる人が多かった。
 実は、これと同種のことは、日本にも見られる。国民党の玉木が所得税減税を唱えると、「財源は?」と批判する声が出たが、このとき「財務省の陰謀だ」という声が SNS などに湧き起こった。馬鹿げた陰謀論であるが、こういう馬鹿げた陰謀論を信じる人は、日本でも多かったのだ。
  → 財務省SNSへ総選挙後に批判コメント急増 中傷も 国民民主・玉木氏きっかけか

 ありもしない仮想敵を作り上げることで、仮想敵に立ち向かう自分を「正義の味方」であるかのごとく見せかける。デマゴークたる煽動者の手法である。……ヒトラーしかり。トランプしかり。
 



 ※ 次項に続きます。
 
posted by 管理人 at 22:59 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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