2024年11月08日

◆ 連立政権の行方 .7

 ( 前項 の続き )。
 補足的な話をいくつか。選挙制度の改定の話。

 ──

 選挙制度の改定 


 野党連立政権をつくったあとで、最大の目的となるのは何か? それは、選挙制度の改定だ。前にも述べたが、次の二点だ。
  ・ 比例区の議席定数の増加
  ・ 一票の格差の是正

 この二点は、「公明党を釣るための餌」として示した。
  → 連立政権の行方 .5: Open ブログ

 ここでは、こう記した。
 以上のようなこと(比例区の定数増・1票の格差の縮小)は、野党三党では実現できないが、公明党を含めた四党連立政権ならば可能である。衆院でも参院でも多数派になるからだ。
 
 そして、いったんこのように四党連立政権が実現すれば、このあとは永続的に四党連立政権が続くことになる。自民党政権が復活することはなくなる。

 選挙制度が公正になれば、以後、日本は民主主義が成立するので、これまでのような「自民党独裁」の制度は崩壊するのだ。かくて自民党は永続的に政権から遠ざけられる。

 このようにして自民党政権を永続的に不成立にさせることが大切だ。そのためには、何よりも選挙制度を改定することが必要なのである。
 そもそも、今日の歪んだ選挙制度は、かつて新進党と自民党が妥協したときに、自民党が自党に有利になるように大幅に歪めた案を飲ませたことを発端とする。その自分勝手に歪めた制度を、公正な制度に改定することが必要なのだ。
 これこそを野党連立政権の最大の目標とするべきだ。

 そして、このような選挙制度の改定は、すべての野党にとって有利になることだから、すべての野党が合意できる。公明も、国民党も、維新も、すべての党が合意できる。これを最大目的として、とりあえずは四党連立政権を樹立するべきなのだ。

 比例区の名簿不足


 今回の衆院選では、比例区でとんでもないことが起こった。国民党の比例区の議員の当選者数は 20だったが、比例区の名簿に掲載されている候補者が不足したので、3議席は「候補者なし」で当選議席を得られなかった。かわりに、自民・立憲・公明の3党が各1議席を獲得した。
 このようなことは、国民党としては悔しいことだ。だが、党ごとの損得は別として、このようなことは本来、あってはならないことだ。これは、選挙制度の根本的欠陥を意味するし、選挙制度そのものを揺るがす。民主主義の否定をもたらす欠陥だと言える。(本来の当選者とは別の人物が当選してしまうからだ。それも、選挙制度のせいで。)

 この問題は、簡単に解決できる。そのためには、供託金を引き下げるだけでいい。
 そもそも、国民党が候補者をたくさん掲載しなかったのは、供託金が高すぎるからだ。供託金は1人あたり 600万円である。あまり多くを掲載すると、全額を没収される。だから、多くの名簿を掲載できない。そこで、この供託金の額を大幅に引き下げることで、名簿の数を増やすことができる。

 だが、供託金の額をあまり引き下げると、別の問題が出てくる。「売名目的の候補者がやたらと増えてしまう」ということだ。その実例はある。東京都知事選で、NHK 党が取った方法だ。選挙ポスター掲示板に宣伝を掲載する権利を販売することで、利益を得ようとした。供託金は 300万円なので、300万円を上回る販売があれば、利益を得ることになる。うまくスペースのすべてを売り切れば、1億円以上の利益を得られるはずだった。
 ただし、これは捕らぬタヌキの皮算用。現実には、スペースを買ってくれる人がほとんどいなかったので、大幅赤字となったそうだ。供託金を没収されただけで、大損だったそうだ。
  → NHK党の「ポスタージャック」最終的な「売り上げ」は? 供託金はどうなった? 東京都知事選:東京新聞

 ともあれ、このような問題が発生することからも、供託金の額を大幅に引き下げるのも問題だ、とわかる。売名行為を防ぐためには、高い供託金は必要なのだ。
 しかし、だからといって、高い供託金を認めると、前述の「比例区の候補者不足」という問題が発生する。あちらが立てば、こちらが立たず。困った。どうする?

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「小選挙区の供託金は現状通り(1人 300万円程度)でいい。一方、比例区の供託金は、大幅に引き下げて、1人 30万円程度にする」

 このように、比例区に限り、供託金を大幅に引き下げればいいのだ。

 その理由は? 次の二つだ。
 第1に、比例区では候補者個人の選挙ポスターは掲示されない。したがって選挙ポスターで売名行為はできない。
 第2に、選挙公報では政党ごとに掲載されるスペースが決まっている。そのスペースの大きさは、既存の議席数によって選管が決める。ちなみに、今回の選挙では、おおむね次のようになる。(地域によって違うが。)
  ・ 自民と立憲は、選挙公報の1ページ全面。
  ・ 公明・維新・国民党は、選挙公報の3分の1。

 このくらいの分量に限定されている。つまり、候補者が大量になったからといって、掲載スペースが増えるわけではない。掲載スペースはあくまで、現在の議席数に依存するのだ。ゆえに、NHK党のような党が大量の候補者を乱立させたとしても、その掲載スペースは一定なので、候補者1人あたりの顔写真面積が小さくなるだけだ。候補者が増えれば増えるほど、顔写真が小さくなるのだ。それだけのことだ。決して、宣伝量が増えるわけではない。
 以上の二点により、比例区では、供託金を大幅に引き下げても大丈夫なのだ。

 ──

 ともあれ、このようにすれば、比例区の名簿の掲載数を容易に増やすことができる。そこで、国民党にの耳にささやく。
 「野党連立政権に参加しましょう。そうすれば、選挙制度の改定を通じて、次回は多数の候補者を立てることができますよ。今回のように3議席を失う問題を解決できますよ。議席を増やせますよ」
 と。これによって、国民党を仲間に引き寄せることができるのだ。

 ※ 同様の効果は、維新や公明党にも、少しはあるはずだ。
   「わが党もいつかは大幅に増やしたい」と望んでいるからだ。
   (捕らぬタヌキの皮算用だが。)


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 【 追記 】
 以上に述べたことだけでは考察不足の点があるので、さらに追加で提案する。

 以上の案では、「名簿の候補者不足」という問題は解決するが、「小党の乱立」という問題が新たに出てくるだろう。「供託金が安いのか。だったら、おれも、おれも」というふうに、小政党が次々と乱立しやすい。
 「候補者の数はやたらと増えても問題ない」ということは、先に本文で示したが、「党の数はやたらと増えても問題ない」ということはないのだ。つまり、小政党の乱立を防ぐ必要がある。特に、当選する当てもないのに、やたらと参入するのを防ぎたい。
 そのためには、なんらかの形で、供託金を引き上げる必要がある。では、どんな? 次の形を推奨しよう。
 「比例区に参入する党には、党ごとに、供託金を1億円とする。選挙で当選者が5人以上出たら、供託金は全額を返却する」
 今回の選挙で、小政党の票はこうだった。
   れいわ 9、 共産 7、 参政 3、 保守 2

 この基準だと、最後の2政党だけが供託金を没収されて、他の党は供託金を没収されない。(ただし当選者数がゼロの群小政党は、すべて供託金を没収される。該当するのは、社民党、みんなでつくる党、安楽死制度を考える会、だ。)

 ──

 さらにもう一つ。次の案も提唱しておこう。
 「もし候補者数が不足した場合は、その不足した分を譲渡する先を、本来の党が指名できる」
 具体的に言うと、今回の衆院選では、国民党の候補者が3人不足して、その分、自民・立憲・公明が各1議席を得た。これが現行制度だ。(次点の候補者が当選する仕組み。)
 新たな制度では、国民党が3議席の指名権を得る。その指名権を行使して、当選する議員の政党を指名できる。現実的には、立憲または維新を指名することになるだろう。ただし、その際、何らかの取引をすることになる。国民党に有利になるようなメリットを与えることになる。そのメリットを勘案した上で、国民党は「3議席を立憲に与える」というような指名をすればいい。
 あるいは単に指名権を放棄して、欠員3人としてもいい。いずれにせよ、議員3人の決定権は国民党がもつ。(全然無関係の他党が「次点だから」という理由で当選することはない。これでは無茶苦茶すぎるからだ。)
 このような仕組みは、先の供託金の新制度と、併用してもいいし、併用せずに単独で用いてもいい。(私としては併用を薦めるが。)

posted by 管理人 at 23:12 | Comment(6) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に  【 追記 】 を加筆しました。
 比例区の候補者不足の対策。
Posted by 管理人 at 2024年11月10日 22:23
> 今日の歪んだ選挙制度は、…自民党が…自分勝手に歪めた制度

ここは認めますが


管理人さんのおっしゃる
> 四党連立政権ならば可能である…比例区の定数増・1票の格差の縮小…このあとは永続的に四党連立政権が続くことになる。

これは「四党が自分勝手に歪めた制度」ではないのですか?永続的な権力は必ず腐るというのが世の定めですが、永続的な四党連立ならそれはないのですか?


選挙制度改革の方向性自体は同意しますが

> かくて自民党は永続的に政権から遠ざけられる。

これはいくら何でも言いすぎでしょう。
四党に限らず、自民党やその他の政党も議論を重ね、連立を組みかえていくのが、八百万の神が存在する日本に合った「民主主義」であり、それを実現するための制度が「公正な制度」であるべきです。
(二大政党制は一神教の国であるアメリカには合っていますが、日本には合わないと思います)


そもそも、自民党に圧倒的に有利な現行制度でさえ、15年前には政権交代が起こり、今回もその一歩手前まで行きました。
比例の割合を増やすということは中小規模の政党が増える方向に進むわけで、「自民党は永続的に政権から遠ざけられる」ようなことにはならないと思いますが。
Posted by のび at 2024年11月13日 09:46
 本サイトでは単純に白黒でわかりやすく記述することをモットーとしており、「白だけど、純度は88% であり、例外となる他の色の成分が 12% ほどある。その各種の成分はこれこれで」というふうな表現は取りません。それではダラダラと間延びした文章になるだけで、何か有益な情報を加えたことにはならないからです。
 「100%そうだとは言い切れない」というのは、まともな判断力のある人ならば、すぐにわかるはずです。
 今回の のび さんのコメントも、読者は「そんなことはいちいち言わなくてもわかっている。子供じゃないんだから」と思うでしょう。

 つまり、永続的にというのは、ただの誇張表現です。誇張表現に対し、額面通りに受け取って、突っ込みを入れるのは、野暮なだけです。読解力不足。

 ※ ここを誤読して いちゃもんを付ける馬さんが現れるだろうな、とは予想していました。
Posted by 管理人 at 2024年11月13日 10:24
>今回の のび さんのコメントも、読者は「そんなことはいちいち言わなくてもわかっている。子供じゃないんだから」と思うでしょう。
>つまり、永続的にというのは、ただの誇張表現です。誇張表現に対し、額面通りに受け取って、突っ込みを入れるのは、野暮なだけです。読解力不足。
> いちゃもんを付ける馬さんが現れるだろうな、とは予想していました。

あまりにも傲慢すぎる言い方じゃないですか。
このブログはいつ頃から「論理性」を捨てたのでしょうか。
管理人さんがその道に精通してるから言いますが、管理人さんが論を立ち上げた以上、
それに対するファクトチェックやニュアンスの確認が入るのは当たり前です。
それに対して、「全体の主旨をつかめ。細かいところをつついて、誤読するな。馬鹿」というのは行き過ぎです。
Posted by カエル at 2024年11月13日 15:24
 ご批判は承りました。
Posted by 管理人 at 2024年11月13日 22:18
ありがとうございます。
Posted by カエル at 2024年11月14日 02:58
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