2024年10月30日

◆ 連立政権の行方 .2

 ( 前項 の続き )
 河野洋平はなぜ首相の座を譲れたのか? 

 ──

 小党に譲るわけ


 河野洋平は首相の座を譲った。彼はなぜそんなことができたのか? 結果的に見れば、それが正解だったとまさしくわかる。だが、その時点で、どうしてその正解を選べたのか? 首相の座を譲るというのは、最大の価値のあるものを譲ると言うことであり、とうてい不可能に思える。実際、今の野田はそれができない。また、世間の他の人々も、それを一顧だにしない。それほどにも奇想天外に思えることを、なぜ河野洋平はできたのか? 
 換言すれば、こうだ。首相の座を譲るというのは、大損するということなのに、彼はどうして、大損する道を選択できたのか? 

 その答えを言おう。それは、「短期と長期の違い」だ。短期的には損したとしても、長期的には得するのならば、その道は十分にペイするのである。
( ※ これは「急がば回れ」とか「損して得取れ」とかの発想に似ている。「迂回経路」とも言う。前に別項で示した。 → 別項


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 なぜ河野洋平は首相の座を譲ったか? それは、短期的には損しても、長期的には得するからだ。短期的には村山首相の時期が続くが、一定期間(1年半)を経れば、次には自民党の首相になる。そして、そのとき以後も、ずっと自民党の首相が続く。天下は自民党のものとなる。だから、1年半ぐらいは他党に首相の座を譲っても、たいして問題ではないのだ。

 それだけではない。首相の座を他党に譲っても、政権そのものは自党が半分ぐらいを握っている。もともとは政権の取り分はゼロだったのだから、ゼロから 50%ぐらいまで上がれば、それだけで御の字なのだ。( 100でなく、50だけでも、ありがたい。政権をなくして ゼロになるよりはずっとマシだ。)

 以上のように、損得判断ができた。それは、次の二点による。
  ・ 短期にとらわれず、長期的展望を得た。
  ・ 欲張らずに、着実に実利を得ようとした。

 このようなことをなし遂げた河野洋平が、いかに卓抜であったかがわかる。

 ちなみに、現状の野党は、次の通りだ。
  ・ 野田 …… 自分だけが全部を得ようという欲張り。
  ・ 玉木 …… 1か2の政策だけにこだわる。政権を得ようとしない。

 この両者とも、短期的な損得ばかりを考えて、長期的展望はない。8カ月後には解散になって壊滅的状態になる、ということを理解できていない。自分たちが自殺しつつあるということを理解できていない。あまりにも視野が狭いのである。

 河野洋平は違った。長期的展望があった。彼は目先の首相の座をも譲った。あくまで泰然自若としていた。なぜか? 「水は高きから低きに流れる」ということを理解していたからだ。ものには道理がある。水は高きから低きに流れる。それと同様に、首相の座というものは、自然に大政党のもとに帰るのである。一時的に小党に譲ることはあっても、最終的には大政党のもとに帰るのだ。水は高きから低きに流れるように。
 そして、それを実現するための条件は、ただ一つ。自分たちが政権を取ることだ。自分たちが政権を取るなら、やがてはいつか、首相の座は大政党である自民党のもとに帰ってくる。……だからとにかく、政権を取ることが最優先なのだ。そのために、新進党の政権を支える柱を引っこ抜いて、自分たちの政権の柱に据えたのだ。
 政権を取ることの重要性を、河野洋平はよく理解できていた。この理解の深さは、野田や玉木にはないものだ。だからこそ、この二人の愚か者は、政権を取る方法もわからないまま、右往左往するばかりだ。「自分は賢い」と自惚れる阿呆というのは、こういうものだ。

 ──

 政権を取ることの重要性は、過去の二つの革新政権を見てもわかる。
 細川内閣であれ、民主党内閣であれ、成立したあとは国民から圧倒的な支持を得ていた。あとになって安倍首相が「悪夢の民主党政権」というキャッチフレーズで歴史を塗り替えたせいで、民主党政権は悪夢だったように思う人が多いが、当時は国民から熱狂的な支持を得ていた。まるで、今の大谷のように、国民の大多数から支持を得ていた。
 ただし いずれも、一夜にして支持が逆転した。なぜなら、一夜にして、増税を打ち出したからだ。細川内閣は「国民福祉税」という名で増税を打ち出した。菅直人内閣は「消費税の増税」という形で増税を打ち出した。いずれも、準備や論議もなく、あるとき突然、増税策を打ち出して、国民に押しつけようとした。当然、国民は怒り狂った。それまでの熱狂的な支持は、一夜にして消えた。「愛するものに裏切られた」と感じて、「いとしさ余って憎さ百倍」となった。
 逆に言えば、こうだ。「馬鹿げた裏切りとなる増税策さえ打ち出さなければ、政権を取ったものが圧倒的に有利になる」ということだ。その証拠が、自民党政権だ。あまりにも馬鹿げた愚劣な政治を続けているのだが、「政権を取っている」ということゆえの有利さで、いつまでもずっと政権が続く。なぜなら、人々は「お上に従う」からだ。前にも述べたとおり。
 自民党支持の人が多いのは、どうしてか? いくら政府に虐げられても、それでも自民党を支持する人が多いのはなぜか?
 それは、長い間ずっと、自民党が政権に就いていたからだ。そのせいで
   お上 = 政府 = 自民党

 という意識が、国民に刷り込まれてしまったのだ。
( → 日本人は人権意識が弱い。なぜか?: Open ブログ

 このことからしても、政権を取ることの重要性はわかる。




 ※ 次項に続きます。

 
posted by 管理人 at 22:52 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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