2024年10月22日

◆ 衆院選の情勢(2024)

 衆院選の情勢について、各社報道が出た。自民党は激減して、自公の過半数維持が微妙だという。どうしてこうなった? 

 ──

 各社報道が出たが、いずれも同傾向だ。自民党は激減して、自公の過半数維持が微妙だという。特に、予想精度の高い朝日がそういう予想を出している。
 選挙戦の情勢を探った。現時点では、(1)自民党、公明党の与党は過半数(233議席)を維持できるか微妙な情勢で、自民は公示前の247議席から50議席程度減る見通し(2)立憲民主党は公示前の98議席から大幅増(3)国民民主党、れいわ新選組に勢い――などの情勢となっている。

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( → 自公、過半数微妙な情勢 自民、単独過半数割れの公算 衆院選情勢調査:朝日新聞


 一方、私は前に、逆の予想を出した。「立憲は壊滅的になるだろう」と。その理由はこうだ。
 「立憲は前回の選挙で、勝利した選挙区でさえ、僅差で勝利したにすぎない。ここで共産党と対立して、共産党の票の分だけ票が減ると、自民に大差を付けられて、軒並み敗北するだろう」

 ところが、この予想は、はずれた。立憲は、壊滅的になるどころが、議席数が大幅に増える見込みだ。ではなぜ、こうなった?

 ──

 これは謎だ。そこで、謎を解くために、調べてみた。

 まず、仮設として、「立憲の人気が高まった」という命題を立ててみた。それは事実か? 調べてみると、それは成立しないとわかった。理由は、比例区の議席数だ。
 比例区の議席数は、比例区の票数に比例する。だから、この議席数を見れば、各党の支持率は一目瞭然となる。では、その数字はどうなったか? 立憲の比例区の議席数は激増したか? いや、微増であるにすぎない。

  自民 65 → 56(-9)  
  公明 23 → 20(-3)  
  立憲 38 → 41(+3)  
  維新 26 → 19(-7)  
  共産  9  → 11 (+2)  
  国民  3  → 14 (+11)  
  れいわ 3  → 11 (+8)  


 立憲は選挙区では大幅増(+37)になるのに、比例区では微増(+3)にしかならない。一方で、大幅増になるのが、国民(+11)と、れいわ(+8)だ。これらは弱小政党にすぎないくせに、立憲を圧倒的に上回る大幅増だ。
 この事情は何を意味するか? 

 ──

 明らかに判明しているのは、自民は激減したということだ。比例区でも大幅減だし、選挙区でも大幅減だ。明らかに不人気になっているとわかる。公明と維新も比例区で減少しているので、同傾向にあると言える。
 こうして自民から逃げた票がたくさんある。ではその逃げた票の受け皿は、どこか? 立憲か? いや、国民党だ。自民から逃げた票の受け皿は国民党であって、立憲ではないのだ。
 なるほど、小選挙区では、立憲は野党代表として議席を得る。しかしそれは、「他の野党候補がいないから」という消極的支持の票であるにすぎない。それは立憲の積極的支持の票ではない。
 実を言うと、自民から逃げた票を得た分は、もうちょっと多いのだが、自民から得た分、れいわに逃げていく。自民支持だった保守票が立憲に流れた分、立憲支持だったリベラル票が れいわに流れていく。流れて入るプラス分と、流れて出ていくマイナス分が、ほぼトントンだ。差し引きして、+3 の微増にしかならない。自民と公明は大幅に票を減らしたのだが、その票が流れていく先は、立憲ではなく、国民党だったのだ。
 かくて、「自民の票を奪って政権交替」という野田の目論見は、不成立に終わった。得をしたのは、国民党と れいわばかりだった。
 結果として、国民(+11)と、れいわ(+8)が大幅増となった。

 ──

 では、どうしてこうなったのだろう? 
 根源となるのは、自民が大幅減になったことだ。それはなぜか?
 通常の見解では、「自民の裏金疑惑がったからだ」とされる。だが、裏金疑惑というのは、たいしたことがない。安倍政権時代の不正(森友・加計学園・桜を見る会・統計データの改ざん・職員自殺)の方が、はるかに大規模な問題だった。金額も多額だったし、国に実損をもたらしたし、人の生命を奪う結果にもなった。圧倒的に悪質だったと言える。さらには、統一教会の問題もあった。これらに比べると、この回の裏金疑惑は、はるかに小規模だ。せいぜい「政治資金の裏金の不記載」という書類上のミスにすぎない。また、その不正が起こった時期は、安倍政権の時期(2018〜2020年)であり、現政権や岸田政権とは関係ない。要するに、裏金疑惑は、それ自体で政権を揺るがすほどの大事件ではない。そんなことぐらいで自民党の支持率が大幅に低下するはずがない。

 では、何が原因だったのか? 何のせいで自民党の支持率の激減が起こったのか? 私の見解を言おう。それは経済状況だ。
 具体的に言えば、低すぎる賃上げだ。賃上げ率があまりにも低いので、物価上昇に追いつかない。つまり実質賃金低下だ。これでは生活が苦しくなる。特に、一般物価は3%ぐらいの上昇だとしても、食料品物価は 15%もアップしている。生鮮食品は 20%もアップしている。トマトやオレンジジュースは倍増だ。これでは生活が苦しくなる。その一方で、企業はボロ儲けしている。株価が上昇して、株主はウハウハだ。その状況を見ながら、労働者は貧困化していく。非正規労働者は結婚することもできない。若い人々は子供を産むこともできなくなり、社会はどんどん少子化で貧しくなっていく。その間に、富裕層はどんどん土地を買っていくので、都内のマンションはどんどん高騰していく。金のある人たちはこぞってマンションや土地を買いあさる。高所得者はぜいたく品を買いあさり、低所得者や中所得者は生活苦に苦しむ。
 これはまるで 2・26事件の前夜のようだ。生活が苦しくなったせいで、国民の不満はどんどん高まる。……このことゆえに、自民支持だった多くの票が、自民から離れていった。しかし、その票の流れ込む先は、立憲ではなくて、国民党だった。一部は立憲に流れ込んだのだが、流れ込んだのと同じぐらいの票が逃げ出して、れいわに行ってしまった。
 結果的に、自民の票は減って、国民党と、れいわの票だけが大幅に増えた。
 以上が、私の認識だ。

( ※ この状況は、民主党政権の成立の前夜に似ている。民主党政権に期待したというよりは、当時の自民党政権に失望したせいで、自民党支持の票が逃げ出したのだ。だからあのときは政権交替が起こった。民主党にとっては「敵失によるタナボタ」に近い。今回の立憲が小選挙区で大幅増になるのも、同様だろう。)

( ※ 野村監督語録。「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」 → 相手のミスでタナボタ勝利することがある。)

( ※ 野田はあとで、「勝ったぞ! 勝利の美酒を味わおう!」と思うかもしれない。それは別に悪くない。だが、「勝ったのはおれの方針が正しかったからだ」と思うのは、大いなる間違いだ。野田は失敗したのだが、自民の失敗があまりにも大きかったせいで、野田の失敗が塗り隠されただけだ。)




 [ 付記 ]
 以上で話の大筋は語った。ただし、判断はいまだ保留すべきだろう。
 というのは、小選挙区の分析を戸別に見ると、自民と立憲で接戦になっている小選挙区が非常に多いのだ。
  → 連載「衆院選2024 朝日情勢調査」一覧:朝日新聞

 これで下の方を見ていくと、各地方別に、小選挙区の情勢が見られる。たとえば、東京と南関東は、次のページだ。
  → 東京 朝日情勢調査:朝日新聞
  → 南関東 朝日情勢調査:朝日新聞
  → 北関東 朝日情勢調査:朝日新聞

 読めばわかるように、接戦や互角の小選挙区が多い。この先、どう転ぶかは不明だ。当然、わずかな情勢の変化で、大幅な変動が生じる可能性もある。はかりがどちらに傾くかで、左右のどちらにも大きく傾きがちだ。それが小選挙区制の特徴なのだ。接戦が多いがゆえに、情勢のわずかな変動が全体に大きな差をもたらす。
 だから、本項で述べたことは、まだまだ先が見通せない。最終的には、与党側と野党側のどちらかに大きく傾く可能性もある。一方で、与野党伯仲になる可能性も十分にある。何とも言えないというのが、正直なところだ。
 
 ※ なお、中心値で見ると、自民 200、公明 25 だから、合計 225 となり、過半数割れとなる。しかし自民は非公認議員が多い。追加公認の分を足すと、233 になりそうだ。まさしく「微妙」となる。



 【 関連動画 】




posted by 管理人 at 23:52 | Comment(6) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>小選挙区では、立憲は野党代表として議席を得る。
>しかしそれは、「他の野党候補がいないから」という消極的支持の票であるにすぎない。それは立憲の積極的支持の票ではない。
ほぼすべての選挙区で野党は2人以上立てています。
野田が共産党と手を切るという賢明な判断をしたために、
自民党に入れたくないが気持ち悪い急進左派もいやという層の票を吸収したためと言えるでしょう。
東京都知事選で石丸候補が、立共連合の蓮舫を交したことをよく学習した。
この点で野田が共産党を切ったのは正しい判断だったと言えるではないでしょうか。

本来ならば管理人さんが指摘した通り、「共産党を切ってしまったため、小選挙区の票合計では野党が勝ってたのに
野田のアホのせいで票が分散し自民党を助けてしまった」という展開になったはずですから。

ちなみに私は自民党が勝つ可能性はまだあると思います。
大マスコミは東京都知事選で石丸が2位に入ることをまったく読めていなかった。
今回は期日前投票が不振(投票用の手紙が全国的に遅れているとされる)だし票を開けてみたら自民党が過半数を取っていて
管理人さんが「私の最初の読み通りだっただろ(笑)」という展開もありそうです
Posted by カエル at 2024年10月23日 12:02
> 自民党に入れたくないが気持ち悪い急進左派もいやという層の票を吸収した

 それは自民党のプロパガンダでしょう。
 2021年の枝野立憲は、かなり左派寄りだったが、それ以外は急進左派とは無縁だった。特に 2009年の民主党政権は、急進左派とは全然関係がなかった。いちいち共産党と絶縁しなくても、つかず離れずの関係にいれば、右も左も双方の票を得ることができた。
 今回は、右から入った分、左のれいわに逃げていった。(比例区)
 
 小選挙区では、1人しか当選できないので、立憲以外に選択肢がない。他の野党に投票すれば、死票になるだけだ。 → 共産党から離れたかどうかは関係ない。死票になるかどうかという判断しかない。
 ※ 左派べったりをやめればいいだけで、野田みたいにゴリゴリの右派になる必要は、さらさらない。仮に 泉が党首だったなら、小選挙区では同様以上(共産党との共倒れがないだけ増える)で、比例区では大幅増になっていただろう。野田は明らかに失敗している。


 
Posted by 管理人 at 2024年10月23日 13:17
これまでは、『他に投票するところがないから自民党』でしたが、これからは『他に投票するところがないから国民民主党』に変わるかもしれませんね。

維新は自ら『第二自民党である』と公言している上、大阪関西万博の評判が悪いのでダメですし、自公だけでなく立民も増税路線を示しているので立民が支持を得られないのは当然のことと思います。

となると残りは国民民主党しかなくなります。

れいわ、参政、共産、社民などは眼中になし。

※私は決して国民民主党推しではありません。念のため。
Posted by 反財務省 at 2024年10月23日 15:37
もうこちらに書き込まないつもりでしたが、お国の危機(とはいえ30年、危機継続中)なので、意見させてもらいます。
管理人さんが認識してて書いてないだけなら不要な書き込みでした。その場合はすみません。

自民、立憲はダメって思ってる国民が増えているんです。
何故か。
自民、立憲を含む古参政党は、様々な国家事業を行うための財源を税に求めているからです。

税ではなく通貨発行益(=国債の日銀引受)で良いでしょ、って主張を始めたのが国民民主。
れいわ、参政は以前からそう主張してました。
たぶん議席獲得しそうな日本保守も同じ考えがあります。

その3党以外の古参政党は、財源=税収という金本位制時代の頭が固い状態で、国家財政を気にしすぎて、一般国民の可処分所得を増やす政策を言えない残念な状況にあります。
最も頭が固いのが立民野田代表。消費税上げたし。
石破自民総裁も防衛以外の頭がなく、同じ考え。
公明は国内経済よりも与党でいることが大事。
維新は、改革=身を切るって、変な固定観念(身を切らないと改革じゃない?)だし、財源は万博って考え。
社民共産は財源に触れない。

国民民主、れいわ、参政はYoutubeで通貨発行益を使って一般庶民の可処分所得を増やすことを積極的に発信してて、この主張に納得した国民が増えています。これが世論調査に出ていると考えられます(推測で確証はないです。でも否定する確証もないです)。

新札を刷っての通貨発行益を使って国家事業を行うとハイパーインフレになるって主張する人がいますが、通貨発行だけじゃインフレは起こりません。
新札刷ってインフレが起こるなら、紙幣変更の準備中、新渡戸新紙幣を大量印刷しているときにインフレになってます。

一般国民の可処分所得が増えて、購買意欲が増大し、購買が進んで、市場の物品やサービスが不足してからインフレは起こります。

当時コロナ禍でしたが、安倍晋三氏が100兆以上の通貨発行益を使ってもマスク以外はインフレになりませんでした。
おそらく10-20兆くらい減税して一般国民の可処分所得を増やしても大してインフレは起こらず、可処分所得増による経済効果(景気拡大)の期待の方が大きいはずです。これに気づいている一般国民が増えていて、国民民主の支持が増えてると推測できます。
れいわの支持が増えているのも同じ理由でしょう。
参政がいまいち伸びないのは謎ですが、党首への疑惑が多いからかもしれないです。

説明が最後になりましたが、日銀引受分の国債は返済不要です。
どうしても返済の形をとるなら、政府発行紙幣を刷って日銀に渡せば返済完了です。
その政府発行紙幣は一般市場に出回らないし、一般国民の可処分所属増にもなりませんので、インフレ要因になりません。
政府から日銀への利払いもありますが、大部分は連結決算で国庫に戻ります。

つまり、日銀引受分の国債は打出の小鎚です。国家事業に使うときに、一般国民の可処分所得を増やす勢いを付けすぎないようにすれば、過度なインフレを避けられます。
これを理解しているのが、国民民主、れいわ、参政とこの3党を評価し始めた一部の国民ってことです。
Posted by じみんとうを!ぶっこわーっす! at 2024年10月26日 23:37
 通貨発行益を使う方法なら、私が「泉の波立ち」時代に、口が酸っぱくなるほど何度も書きましたよ。2007年ごろに。今さら言うまでもない。

 なお、安倍晋三は、別の方法を考えた。
 「ひらめいた! 通貨発行益よりも、もっとうまい方法がある。それは、低所得者に大幅課税することだ。それで得た金を、企業につぎこんで、法人税を減税する。これで企業がボロ儲けするから、企業は強くなって、日本経済は回復する! そのおかげで労働者も賃上げができる! だから、法人税減税をまずやることが大切なんだ」

 ──

 通貨発行益を得ても、その金を企業につぎこむのなら、国民は貧しいままなので、状況は改善しません。
 一方、通貨発行益なんかなくても、特別減税を廃止すれば、無駄に余った企業の、巨額の内部留保を取り崩すだけで、あっというまに状況を改善できます。

 通貨発行益という方法は、デフレのときに使う方法です。物価が 20%も上昇している状況では、まずは物価値下げを最優先とするべきです。本日別項を参照。
  → http://openblog.seesaa.net/article/505400661.html

Posted by 管理人 at 2024年10月27日 00:03
小さい3党が主張するのは通貨発行益で減税です。
物価下げるためにガソリン税下げよう、財源は通貨発行益で。これが国民民主の主張です。
これを評価する人が多くなって、世論調査につながったってことのご意見です。
口酸っぱく主張されたことは、世論調査にはどうにも関連性がないことです。実際はタイプしてるんで、酸っぱさはないと思いますが。。。
誤読されてしまってたようで、これを最後にします。
Posted by じみんとうを!ぶっこわーっす!もうやめます。壊れそうだし at 2024年10月27日 13:07
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