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先に次のシリーズを連載した。
被災地を復興するな .1 〜 被災地を復興するな .5
ここでは、次の趣旨の話をした。
「水害の被災地は、復興するべきではない。特に、川のそばの危険な土地にある住居は」
これは、地震でなく水害についての話であり、また、川のそばという危険な場所に対象を限っていた。
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一方、本項では新たに、次のことを提案しよう。
「輪島の水害被災地を復興するべきか? 都市部の住居は復興していいが、山間僻地の田畑は復興するべきではない。ただの無駄だからだ」
なぜこう提案するかというと、現状はその逆だからだ。つまり、次のようにしている。
「輪島の水害被災地を復興するべきか? 都市部の住居は復興していいし、さらに、山間僻地の田畑も復興していい。どれほど巨額の無駄が生じても、可哀想な人のために、莫大な金と労力を注入するべきだ。たとえそれによってもたらされるものが無に等しいとしても」
これはまあ、シジフォスの作業みたいなものだ。
岩を上げても上げても、また落ちる。
どれほど苦労して岩を持ち上げても、その岩はまた転げ落ちて、元の場所に戻ってしまう。それでも無益な行為を繰り返して、しきりに岩を持ち上げようとする。
それはただの神話だろ、と思う人が多いだろうが、日本も輪島ではそういう無駄をやっている。
↑ 高齢女性の自宅の畑に流れ込んだ土砂をかき出すボランティアたち=20日、石川県輪島市町野町
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石川県輪島市町野町。市立東陽中学校の体育館に 20日午前9時、長靴姿の人たちが続々と集まってきた。……グループに分かれてスコップや一輪車を持ち、泥のかき出しなどに出発していく。
( → 能登ボランティア、自ら集める 住民がセンター設立、「してほしいこと」遠慮なく:朝日新聞デジタル )
これはものすごい手間がかかる。広い田畑にかぶさった洪水の泥を人手で運び出すなんて、人力による作業だから、滅茶苦茶に手間がかかる。比喩で言えば、ブルドーザーを使えば機械で簡単に掘れる穴を、人手をかけて懸命に穴を掘るようなものだ。滅茶苦茶に無駄だ。
(1)
そもそも、洪水で田畑にかぶさった泥は、どかさないのが原則だ。なぜなら、洪水で寄せた泥は、山の泥であるから、栄養分が多くて、田畑には役立つからだ。本来ならば農作でどんどん養分を取られて痩せていく土地が、洪水の泥で養分を補給されるおかげで、ふたたび肥沃になっていく。だから、泥はどかさないのが原則なのだ。
Feloの回答
日本でも、信濃川などの河川が洪水を引き起こし、その結果として肥沃な土壌が形成され、果樹や穀物の栽培が行われています。特に、洪水後の土壌は作物の生育に適しており、農業経営において重要な役割を果たしています。
したがって、川の洪水は土地に養分を補給し、肥沃にする重要な自然現象であると言えます。このプロセスは、古代から現代に至るまで、多くの地域で農業の基盤として利用されてきました。洪水による土壌の肥沃化は、持続可能な農業の一環としても重要な要素です。
だから、田畑の泥をどかすのは、養分を捨てるということであり、宝を捨てるのも同然だ。逆効果と言える。
(2)
別の理由もある。写真のキャプションにはこうある。
高齢女性の自宅の畑に流れ込んだ土砂をかき出すボランティアたち
この畑の持ち主は、高齢女性だ。となると、たとえ復興したとしても、高齢女性が農作業をする保証はない。うまく行っても、10年かそこらしか農作業をしないだろう。下手をすると、1回も農作業をしないまま、よそへ逃げ出してしまうかも知れない。(あるいは介護施設に入ってしまうかも知れない。)……そうなると、多大な手間をかけて畑を整備しても、何も使われずに放置されることになってしまう。これではただの無駄だ。シジフォスの労苦も同然だ。
(3)
別の理由もある。記事のキャプションにはこうある。
「石川県輪島市町野町」
この場所は下記だ。
このほとんどは山間僻地である。海沿いの場所も、周囲から隔絶しており、わずかに道路でつながっているだけだ。その道路も、内陸部はともかく、海沿いの道路は今では土砂崩れで寸断されている。復旧の見込みも立たない。仮に復旧するとしても、とんでもない巨費がかかる。
このような山間僻地の場所は、いっそのこと、復興を諦めた方がいい。そのかわりに、復興のために必要な費用を、全員で分配すればいい。
輪島の地震と水害があったのは 2024年のことだが、この地域の人口は 2020年には大幅に減少している。
Perplexity の回答
2020年の国勢調査によると、輪島市の総人口は25,903人でした。町野地区全体の人口は2,063人となっています。
仮に、復興(土砂崩れの解消)の費用が 40億円だとして、それを 2000人で分ければ、1人あたり 200万円を受け取れる。夫婦二人で 400万円だ。だったら、その金を配分する方がずっとマシだ。
ついでだが、仮設住宅の建設では、1軒あたり 1500万円ぐらいかかっているはずだ。この分も合わせれば、1世帯で 2000万円ぐらいになる。それだけのコストをかけて現住所に留まらせるよりは、2000万円の金を払って移転してもらう方がずっとマシだろう。(費用を節減できそうだ。)
というわけで、シジフォスのような無駄なことをするよりは、現金を直接ばらまく方が、賢明なのである。
妙に親切心を出して、多大な労役を出すのは、あまりにも馬鹿げている。そんなことをするのは、哀れなシジフォスだけでいい。
※ 愚かしくも無駄なことばかりやっているから、日本はどんどん富をなくして貧困化していく。
※ 町野地区と町野町とを取り違えたので。
私は「田舎の居住者に冷たくする」んじゃない。「田舎の土地に冷たくする」が、「田舎の人には優しくする」だ。つまり、「土地を救わず、人を救え」という方針だ。
これを逆転して、「人を救わず、土地を救え」というのが、現行の自民党政治だ。土木利権政治。
ここを勘違いして、「自民党は土木予算をつぎこんでくれるから、地元の役に立つ」と思う人が多すぎる。だから人は救われない。あとに残るのは巨額の空地だけ。