2024年10月18日

◆ 営農型の太陽光発電の新方式

 農作をする農地の上に太陽光パネルを設置する方式がある。これの実用化が進まないので、新方式を提案しよう。

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 農作をする農地の上に太陽光パネルを設置する方式がある。農業と太陽光発電の兼用である。「営農型の太陽光発電」と言われる。
 さて。「これは一石二鳥と言えるので、うまい方法だ」と思って、農水省は提案したのだが、現実には、「あぶはち取らず」となった。つまり、どちらもうまくできない。かくて、この方式は行き詰まっている。困った。どうする?
 そこで、困ったときの Openブログ。うまく行くように、新方式を提案しよう。

 農地法の規制


 現行の法制では、農地に太陽光パネルを設置することは禁止されている。政府は「太陽光発電を推進する」と言っているが、現実には「太陽光発電をすることは禁止する」という規制がかかっているのだ。農地だけならともかく、豊作放棄地でも、太陽光発電は禁止である。
 ならば、農地でなくなるように、「農地転用」をすればいい……というのが建前だが、「農地転用」には、厳しい規制がかかっているので、現実には不可能も同然だ。かくて大量の耕作放棄地が野原となって放置されている、というありさまだ。無駄の極み。
  → 再エネ軽視の亡国政策: Open ブログ
  → 再エネを抑制する政策: Open ブログ

 営農型の太陽光発電


 そこで、「これでは批判されてまずい」と思ったのか、農水省は新たな方針を打ち出した。「農地の上に太陽光パネルを設置する」という兼用を認めたのだ。これを「営農型の太陽光発電」という。この件は、本サイトでも前に紹介した。
 別の方法を加えることもできる。「農地の作物の上に、太陽光パネルを縞状に配置する」という方式だ。
 これは、農業生産と太陽光発電の混合方式だ。太陽光の半分で発電をして、半分で農作物を生産する。
 これならば、農業と太陽光発電とを、共存させることができる。
 この場合は、太陽光発電の発電量は、土地面積あたりでは半減するが、農業生産は生産量が半減しない。(土地の利用料は従来通りである。太陽光の照射量は半減するが、太陽光の照射量はもともと十分なので、半減したとしても、農業生産の量[収穫量]は、少し減るだけで済む。)
( → 太陽光発電の資源量: Open ブログ


 普及しない


 では、このようにすれば、うまく行くか? いや、うまく行かない。
 実際に、実施している件数はかなり低い。Perplexity の回答はこうだ。
導入状況の推移
 営農型太陽光発電の導入数は、2013年以降右肩上がりに増加しています:
  ・ 2013年: 102件
  ・ 2020年: 3,474件

年間の新規許可数も増加傾向にあります:
  ・ 2014年: 351件
  ・ 2020年: 779件 (約2倍に増加)

 この数字から、営農型太陽光発電への関心と導入が徐々に高まっていることがわかります。

普及の課題
 しかし、諸外国と比較すると日本の設置数はまだ少ない状況です。普及が急速に進まない主な理由として以下が挙げられます:

 理由は採算性の低さなどだ。では、具体的には何が問題なのか? 
 それは、方式別に見るとわかる。

 藤棚式


 藤棚式というものがある。農地に柱を立てて、高さ3メートルぐらいの位置に、パネルを(隙間を空けて)設置する。これが現在の主流だ。


hujidana.jpg
出典:「リプラス」


 これはうまい方法だと思えたが、よく考えると難点がある。

 (1) パネルを東西に並行して設置するので、隙間から漏れた光が東西に走る。すると、日の当たる土地と、日の当たらない土地が、東西に縞状に並ぶことになる。(画像を参照。)
 これでは、日の当たる区画と、日の当たらない区画が生じるので、農産物の成長が一様にならない。
 長期的には、太陽は高度を変えるので、長期的にはどの区画にも、一応日が当たるようにはなる。しかしながら、短期的には「日の当たる区画」と「日の当たらない区画」がはっきりと区別されてしまう。これでは区画ことに成長の差が生じるので、生長や収量に差が生じる。そもそも、生育不全も発生しやすい。
 こんなふうに「光が縞模様に当たる」という配置は、農業経営の点で受け入れがたい。

 (2) さらに言えば、次の難点もある。
 「支柱が多いので、大型機械を導入できない。完全に人手だけとなるので、作業能率が落ちてしまう。

 以上の二つの難点があるので、およそ使い物にならない。実用性がない。太陽光発電はそこそこ実用的になるとしても、農業の方が実用的でなくなる。

 垂直式


 別途、垂直式というのもある。これは、列間に大型機械を通すこともできるので、農業の作業能率が高い。


suityoku.jpg
出典:「リプラス」


 だが、農業の作業能率は高くとも、肝心の太陽光発電の能力が低すぎる。冬はともかく、夏場には発電量がほとんどゼロに近くなりそうだ。これでは発電設備の投資を回収できそうにない。
 そもそも普通に設置しても、利益率は 10% 以下にしかなりそうにないのだ。なのに、発電効率が通常の数分の1になったら、売電収益が激減してしまうので、大赤字となる。これでは大失敗だ。農業はうまく行っても、太陽光発電で大失敗となる。

 新方式


 というわけで、従来方式は、あれもこれも駄目だ。困った。どうする?
 そこで、困ったときの Openブログ。うまく行くように新方式を提案しよう。こうだ。
  ・ パネルを南北に列状に並べる。
  ・ パネルを西向きに傾ける。(夕陽を受けるようにする。)


 これによるメリットは次の通り。

 (1) 南北に列状に

 藤棚方式では、パネルを東西に並べた。そのせいで、隙間の部分を通る光を受ける場所が、縞模様のように生じた。
 パネルを南北に並べれば、このような問題は生じない。どの場所も(ほぼ)同じように日照時間を浴びる。もちろん、パネルがあるせいで、午後3時以後の日照量は少なくなるが、どの場所も同じように日照量が少なくなるので、場所によってムラが生じることはない。どの場所も等しく、1日の日照量が減るだけだ。

borders.gif

 すると疑問が生じるだろう。
 「1日の日照量が減ると、一日の成長量が低下するのでは?」と。
 しかし、大丈夫。日本の日照量(特に春夏)はとても多い。日照量は過剰なほどだ。1日の日照量が3割ぐらい減ったとしても、大きな問題とはならない。1日あたりの日照量の減少は、植物の生長の阻害要因とはならない。(むしろ水の量の方が影響するだろう。)

 なお、近年の猛暑では、事情が異なる。近年は猛暑のせいで、夏場には土地が過熱状態となり、植物の収量が低下してしまう。たとえば、今年の夏は、猛暑のせいでトマトの収量が半減した。
  → トマトの価格が高いわけ: Open ブログ
 ここで、太陽光パネルを設置することで、日照量を制限して、過熱を制限すれば、農産物の収量はかえって増えるだろう。「猛暑のせいで収量減」という問題が、「太陽光パネルを設置して日照を減らすことで、収量減を防ぐ」という形で解決できるのだ。一石二鳥と言える。

 (2) 西向きに傾ける

 東西に列状に並べた太陽光パネルは、西向きに傾けるといい。このことで、地上設置型にして、設置コストを下げる。(空中設置よりも低コストで済む。)
 また、地上設置型では、斜めに傾いた太陽光パネルの裏側は、日陰となるので、農作業をする人にとっては、涼しくなって、作業能率が上がる。
 また、地上設置型では、空中に設置するものがないので、大型機械を通すこともできる。
 特に、パネルとパネルの間の距離を大きく取って、農地の面積を多めにすると、大型機械を通しやすくなる。

  西   /  /  /  /   東

 農水省による規制


 実は、農水省は、強い規制をかけている。次のことだ。 Felo の回答。
質問:
 営農型太陽光発電における農産物の量についての条件は?

回答:
 農林水産省の規定により、営農型太陽光発電を行う場合、作付けする作物の収穫量は、地域の平均収穫量の80%以上を確保する必要があります。
 2021年以降、荒廃農地においては、周辺の農地の平均収穫量と比較して80%以上の収穫量を確保する要件が撤廃されました。

 荒廃農地では制限が緩和されたようだが、一般の農地では「80%以上」という強い制限がかかっている。これは論外だ。
  ・ 日照量が 50%減ぐらいになるのに、収量で 20%減未満に収めるのは、無理難題だ。
  ・ 太陽光パネルを設置するのは、(農地としては劣る)痩せた土地であることが多い。もともと収量が少ない。なのに高い収量を要求するのは、無理難題だ。

 農水省の規制は、あまりにも馬鹿げている。(せめて 60% 以上ぐらいに緩和するべきだ。)

 新方式による解決


 ところが、である。上の規制をうまく回避することができる。それには、本項の新方式を採用すればいい。
 この新方式ならば、南北に列状に並べる太陽光パネルの間隔を、広めに取ることができる。列と列の間隔を、5メートルでも 10メートルでも、いくらでも広めに取ることができる。
 そして、間隔を広めに取れば、太陽光パネルの設置料が少なくなり、陰となる場所が少なくなるから、農地の収量減も少なくなる。「80%以上」という制限をクリアすることも容易だ。
( ※ 極端な話、太陽光パネルの設置面積を、全体の1% にすれば、収量減はごくわずかで済む。)

 すると疑問が生じるだろう。
 「それでは太陽光発電の発電量も減ってしまうぞ」と。
 しかし、問題ない。太陽光発電の発電量がどれほど減るとしても、その分、投資金額も減るから、何も問題ないのだ。
 たとえば、太陽光発電の量が9割減になるとしても、太陽光発電のために投資する費用も9割減になるから、何も問題ないのだ。
 かくて、新方式を取ることで、「80%以上」という制限をクリアすることが容易となり、問題を回避できる。藤棚方式ではとても実現できそうになかった制限をクリアできるので、あれこれと後顧の憂いなく太陽光発電を実現できる。

 ※ なお、この方式を取った場合、収益の大半は太陽光発電によって得ることになる。農業も実施するが、その収益は、手間がかかる割には、たいした金額にはならないだろう。次のような予想ができそうだ。
  ・ 太陽光発電 …… 何もしないで休んで 年収 300万円
  ・ 農業生産  …… 汗水垂らして働いて 年収 200万円

 こんな感じになりそうだ。

 西向きパネル


 西向きパネルにすると有利になる……という(売電の)料金体系が望まれる。この件は、前に言及した。
  → 太陽光パネルは西向きに: Open ブログ
  
 ※ 太陽光電力の買い取り価格は、太陽光発電の多い正午ごろには低価格にして、太陽光発電の少ない朝夕には高価格にするといい……という話。これで発電量の平準化を誘導できる。

 新方式の名称


 本項の新方式には、特に名称を付けなかったが、強いて名称を付けるなら、「南北列状式」略して「南北式」という名称にしたい。



 [ 付記1 ]
 この方式では、斜めに傾いたパネルのすぐ下の場所は、日陰になる時間が長いので、作物を置かない。ただの作業用の通路にするだけだ。
 パネルに近い場所は、日照時間が少なめになるし、生育量が少なめになるが、さして問題とはならないだろう。同じような生育量のものがずらりと並んでいるので、収穫するときにも区別しやすくなる。(身の小さいものだけを集めて、B級品として売ることもできる。)
 
 [ 付記2 ]
 この方式では、斜めに傾いたパネルが台風の強風で飛ばされやすい、という難点が生じやすい。それを解決するには、どうすればいいか? こうだ。
 「斜めに傾いたパネルの上端から、下方に向けて、支柱を立てる。支柱と支柱の間には、棒を設置して、支柱のある平面に枠を設置する。その枠を利用して、ツタ植物であるキュウリを栽培する。こうして支柱のある平面に、緑のキュウリの葉々がたくさん繁殖するので、そこには風が通らなくなる。風が通らなくなるから、太陽光パネルが風で吹き飛ぶこともなくなる」
 → 参考画像(キュウリの栽培) (出典

 ※ 「その方法は、キュウリを栽培できる夏にしか適用できないぞ」という批判が来そうだが、大丈夫。もともとパネルが吹き飛びそうなほどの強風が来るのは、夏の台風のときだけだ。そのときだけに対策できればいい。あとは、秋の台風が心配だが、それも大丈夫。秋にもキュウリを栽培できるように工夫することもできる。詳しくは、AIに質問するといい。
 
 ※ 台風の強風は、南から北に吹くことが多い。南風だ。その風をうまく受け流せるという意味でも、南北に配置する方式は好都合だ。東西に配置する方式だと、台風のとき、風の直撃を受けて、風で吹き飛びやすい。

 [ 付記3 ]
 現行方式では、農産物の収穫量に「 80%以上」という規制がかかる。だが、この規制を撤廃して、かわりに別の規制をかけるといい。次のことだ。
 「太陽光発電の売電収入の2%に相当する金額を、分離課税で徴収する」
 この場合、事業所得が黒字であるか赤字であるかにかかわらず、分離課税で徴収する。つまり、事業が赤字であっても、強制的に取り立てる。通常、黒字の収益は5〜10%ぐらいだろうと見なせるが、仮に5%の事業収益なら、そこから2%の分離課税を引かれて、残りは3%だけとなる。その3%のうち1%は法人税で取られるので、残りの税引き利益は2%だけとなる。……これならば公正だろう。
 つまり、「農業の生産を義務づけて能率低下を引き起こす」という現行制度よりも、「太陽光発電をやらせて、かわりに高い税額を取り立てる」という方が、好ましいのだ。それなら、国も儲かるし、事業者も儲かるし、ともに儲かって win-win となる。
 のみならず、国全体の太陽光発電が激増するので、世界の環境に奉仕することができる。これが本来の目的だ。

posted by 管理人 at 23:40 | Comment(0) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
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