被災地の事例として、能登の水害を取り上げる。
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能登の水害
能登の水害は9月にあった。次の二つの事例が大きく報道された。
・ 中三女子が流されて行方不明になった。
・ 復興の拠点となるスーパーが被災した。
順に考察しよう。
(1) 中三女子
中三女子が家でスマホ電話の会話をしていたら、洪水が押しよせて、家が流されて、そのまま行方不明になった。しばらくしてから、遠くの沖合で、たまたま遺体が発見された。可哀想な事例だということで、大きく報道された。
この中三女子は、もともとは別の場所にくらしていたが、能登地震で被災して、両親は引っ越した。しかし彼女は、転校がイヤだということで、祖父母の家でくらすことにした。その祖父母の家が、危険な場所にあった。
図の上部(北側)には、細い川が流れている。普段は細い川なので、たいしたことはないと思われたのだろう。だが、いったん洪水が起こると、この谷間の全体がすべて水没した。幅 100メートルあまりの谷間がすべて水没した。すぐそばの場所で撮影した動画がある。(塚田川)
→ 動画撮影後「家が消え、車は流された」 輪島・塚田川の氾濫映像 | 毎日新聞
これほどにも大規模な水害が起こったのは、どうしてか? もちろん、空前の降水量となる線状降水帯が主な原因だが、もう一つ、地形も原因だ。

ここは狭い谷間の底に川が流れている。その谷間の両側には、広い谷の斜面がある。つまり、広大な山域の斜面に降った雨のすべてが、この狭い谷川に集中的に寄せてくる。だから一挙に大洪水が起こる。
つまり、地形的に、ここでは巨大な洪水が起こるのが必然的なのだ。
そんな谷間に家があれば、川からいくらか離れていたとしても、安全性はまったく保てない。なぜなら、洪水が起これば、川が氾濫するというよりは、谷間のすべてが水に覆われてしまうからだ。(動画を参照。)
仮に、ここで新しい住宅を復興すれば、次に同じような水害が起こったとき、同じように流されて、同じように被害が起こるだろう。(死者発生)
(2) もとやスーパー
上の事例と似た事例で、もとやスーパーという店の被害が何度も報道された。
→ 「続ける。ここに住民がいる限り」豪雨の濁流、町で唯一のスーパーに:朝日新聞
→ 輪島市で能登半島地震のあと地域住民の生活支えたスーパー浸水|NHK 石川県のニュース
この店も、上の事例と似たような地形の場所にある。
広い平地部の一部にあるようにも見えるが、右側から続く谷間の末端部に位置するので、谷間を下る洪水をまともに浴びることになる。その点では、上の事例と大差ない。
仮に、ここで新しい店舗を復興すれば、次に同じような水害が起こったとき、同じように洪水を浴びて、同じように被害が起こるだろう。
(3) 危険地帯の居住
以上で、二つの事例を示した。そこから得られる結論は、こうだ。
・ いずれの場合も、洪水をまともに浴びる場所だ。超危険。
・ そこには人が住むべきではない。店があるべきではない。
・ そんな危険な場所で復興するべきではない。(自殺同然だ。)
では、かわりにどうすればいいか? 簡単だ。すぐそばには、広い平地があり、そこには広大な田畑がある。それらの田畑を少しだけつぶして、住居用地にすればいいのだ。住居用地となる面積は狭いのだから、たいして問題とならない。
そして、そこはもはや谷間ではないのだから、洪水が押しよせることもない。以後は安心して暮らすことができる。洪水の悪夢に脅かされることもない。
とにかく、危険な谷間には住むべきではないのだ。そのことが、上の (1)(2) の事例からわかる。
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実は、この件については、山形の水害を論じたときにも言及した。その箇所を再掲しよう。
この件については、前に考察したことがある。
→ 川沿いの危険地は居住制限せよ: Open ブログ
要するに、川のすぐそばには住むべきではないのだ。すでに住んでいる人には、立ち退きを勧告するべきだ。また、(土地が格安だからという理由で)介護施設があるなら、閉鎖命令を出すべきだ。
このような場所は、たいていが田んぼだらけであって、土地はいくらでも余っている。なのに、多くの人家が、川のすぐそばに建つ。これでは洪水で莫大な被害を受けるのは当たり前だ。最低でも川から 100メートルぐらいは離れるべきだ。できれば 500メートル以上は離れるべきだ。そのあたりにも、いくらでも土地は余っているのだから、そういうところに家を移すべきなのだ。
( → 山形の洪水の教訓: Open ブログ )
ともあれ、「谷間の谷川のそば」という危険地帯に人は住むべきではない。そばに田畑がいくらでもあるのだから、そういう安全地帯に住むべきなのだ。
なのに、人々はあえて危険な土地に住みたがる。つまり、自殺行為をしたがる。しかも政府は、「復興を推進する」という名分で、人々の自殺行為を手助けする。狂気の沙汰だ。
水害の被災地で復興したがる人々は、沼に溺れたがるレミングも同然であり、それを手助けする政府は、自殺幇助罪の犯罪者も同然である。そんな犯罪行為をする政府のために税金を払う日本国民は、狂人も同然だろう。
※ なお、現地で復興すると、洪水防止のために巨大堤防や巨大ダムの建設が必要となり、数千億円もの費用がかかりそうだ。一方、移転するとなると、田んぼの購入費だけで済むので、1家あたり 20万円ぐらいで済みそうだ。かくて費用には雲泥の違いが生じる。
(ただし農地転用の許可が必要だが。)
※ つまり、莫大な公共事業をしなくても、知恵を使うだけで、問題を解決できる。コストの最小化(≒ コスパの最大化)。……これぞ、防災庁の役割だ。
【 追記 】
本項の翌日(2024-10-08)の朝刊で、新たな事例が報道された。輪島市の漆塗り展が水害で、床上浸水の被害を受けたそうだ。
→ 輪島塗、再び危機「これからと思ったところに…」仮設工房が床上浸水 :朝日新聞
被害場所(自宅兼工房)はこちら。
→ Google マップ
ここも 谷間の川のそばだとわかる。先の事例ほど峡谷ではなく、やや広い谷間なので、家を流す大洪水というほどにはならなかったようだ。それでも、谷間の川のそばなので、大きな被害を受けたのも当然だろう。
今回の水害でも、輪島市で床上浸水になったのは、多くはない。記事によると、「101の業者のうち少なくとも13業者が水につかった」とのことだから、1割強でしかない。そのほとんどは、谷間の川のそばに位置していたはずだ。
結局、もともと危険な土地が被害に遭っただけだ。ならば、この危険な場所で復興するべきではない。むしろ、この危険な土地を離れるべきだ。それなのに、政府もマスコミも、「同じ場所で復興せよ」と唱えるばかりだ。これでは「自殺未遂をした人に、ふたたび自殺をさせようとする」のも同然だ。馬鹿げている。自殺を促進させることばかりに熱中する政府とマスコミ。
※ 次項に続きます。
第3の事例。