シリーズで書き落としたことを、おまけとして補足する。
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補足的な話をいくつか列挙する。
朝日記事
この問題(解雇規制緩和)について、朝日新聞の記事があった。
整理解雇が有効と判断されるには、労働判例で確立した@人員削減の必要性A解雇回避努力B人選の合理性C手続きの妥当性の4要件が考慮される。Aでは希望退職者の募集や配置転換といった手段で解雇を避ける努力をしたかが求められるが、小泉氏は「リスキリング(学び直し)と再就職支援の義務づけを選択肢として加えていく」と提案。これらが選択肢に加われば解雇の要件は緩和されるが、小泉氏は再就職につながりやすくなるとして「むしろ保護が強くなる」と主張する。
小泉氏は「4要件が満たされないと人員整理が認められにくい」と言うが、近年の裁判では、厳密に全ての要件を満たさなくても、個別の事情を総合考慮して判断している。職種が限定されている場合などでは解雇を有効とする事例も多い。
( → 日本の解雇規制は厳しい? 小泉氏の主張、国際指標から見ると:朝日新聞 )
記事の最後には小泉川の主張として、「成長分野へ移ることのできる制度を構想するもの」と説明しているが、リスキリングを政府がやるならともかく、解雇する企業がやるというのは滅茶苦茶だ。こんな馬鹿げたことを提唱するのは、小泉だけだ。
「ひらめいた! うまい方針を見つけた! 失業解決と、転職推進と、産業構造の改革を進める!」
と思ったのだろうが、下手な考え 休むに似たり。素人の浅はかな思いつきだね。そいつは駄目なんだよ。(そんなことはすでに誰かが考えていて、しかも、廃棄されている。駄目車輪の再発明。)
この件は、前回分でも説明した。
→ 解雇規制緩和の議論 .14: Open ブログ
米国のスト
米国の労働組合は、次々とストをして、大幅な賃上げを勝ち取った。
・ 自動車産業はストをして、40%以上の賃上げを獲得した。
・ ボーイングはストをして、30%以上の賃上げを獲得中。
前者については、記事は多数ある。後者については、次に記事がある。
→ https://x.gd/CwXnZ
この方針を取れば、日本も「ストをして、労働者の賃上げ」ができるはずだ。
ただし現実には、それができない。
「連合は、企業べったりの御用組合と化しており、ストをしない」
「ストをするのは共産党系企業だが、国民は共産党嫌い」
「一般人は、組合活動より、アニメとスマホに熱中」
労働者が労働者のために行動しないのだから、労働者は企業のカモになるだけだ。カモネギみたいに、食い物にされるだけだ。
まあ、労働者は自分自身がレミングみたいに溺れていくのだろう。
「みんなと同じようにしよう。右を見ても、左を見ても、誰もが同じように進むから、ぼくも同じように進むんだ」
こうしてレミングのように集団自殺する道をたどる。それが日本の労働者だ。
※ ストをして大幅賃上げをする、アメリカの労働者は、人間だが。日本人は違う。
女性労働力を生かせ
本シリーズの提言は、こうだった。
「生産性の向上」
つまり、
「低技能・低賃金から、高技能・高賃金へ」
だ。そのためには、
「熟練しない非正規雇用から、熟練する正社員へ」
ということが必要となる。(十分条件ではないが必要条件。それなしには無理だ。)
さて。この方針の一環として、次のことが最も効果的だ。
「女性労働力を生かすこと」
なぜなら、次のことがあるからだ。
「女子の能力は生かされていない。男女の賃金格差が大きい」
このことは日本に固有の現象だ。他国ではそんなことはないからだ。

出典:日本経済新聞
日本の女性賃金が低いのは、男女差別も理由だが、企業が女性の能力を(十分に)生かし切れていないことも理由だ。女性の能力は眠っているのである。それは潜在的な労働資源だ。それを呼び起こすことで、足りない労働力を補うことができる。
実を言うと、ここ半世紀ほどの少子高齢化は、非常にひどいものだった。ところが、女性の就業率の向上が、その問題をかなり補った。それまで専業主婦として眠っていた労働力が、産業界で仕事をするという形で経済的な労働力となった。そのおかげで、労働力の不足が、かなり緩和されたのだ。
今では大卒後にすぐさま専業主婦になる女性は少ない。たいていの大卒女性は、就職する。これでもはや女性労働力の向上は頭打ちになったかと見えた。だが、さにあらず。(日本だけにある)「男女の賃金格差」という問題を解消すれば、日本の女性賃金はもっと向上する。そのことで、労働力不足や経済力不足を、かなり緩和できるのだ。
そして、そのために最も有効な方策が、おそらくは、「非正規雇用から正規雇用へ」という転換なのだ。実際、派遣社員という雇用形態の多くは、女性となっている。これを正社員に転換すれば、女性の雇用状況は大幅に改善するはずだ。そのことで日本経済もまた質的に向上する。
「女性は無能だから、それは無理だよ」
と思う男性が多いだろうが、日本以外の諸外国はちゃんとそれをやっている。欧米だけではない。中国でも台湾でも、それができている。できないのは、日本とイスラム社会だけだ。日本はイスラム並みに前近代的なのである。呆れた話だが。
イスラム社会 「アラー!」
日本社会 「あら」
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なお、このテーマ(女性労働力の活用)については、前に論じたことがある。解決策は、女性雇用比率の低い企業への課税だ。
次の措置を取る。
「女性労働者を雇用した企業を優遇する。何らかの課税免除・課税減額」
このことで、企業による女性雇用を増やし、かつ、女性労働者の賃上げを狙う。女性は、家庭にいる場合は負担が増えるが、働く場合には逆に補助金をもらえる感じだ。(国から企業に金が出て、企業から女性労働者に金が出る。)
( → ニュース3題(2014-08-03): Open ブログ )
「少子化そのものに課税する」
とは、具体的には、どういうことか? それは、こうだ。
「日本全体の出生率を計算するように、会社内で社内全体の出生率を計算する。こうして社内出生率を計算したら、その数字に従って、会社ごとに増減税する。
・ 社内出生率が低い企業には、大幅増税。
・ 社内出生率が高い企業には、大幅減税。
こうして、社内出生率にしたがって、大幅な増減税をする」
( → 少子化に課税せよ: Open ブログ )
女性労働力を活用することは、出産奨励を通じて、少子化を解決することにつながる。
「少子化を解決することは不可能だ。もはやどうにも制御不能だ」
と諦める人が多いが、さにあらず。少子化を解決することは可能なのだ。それは「女性労働力を生かす」という方法と同じ方法なのだ。
このことのみが、日本を衰退や亡国から救う、唯一の方策なのだ。
女性を優遇するというと、男性は「女ばかり得をする」と思い込む。しかし、「情けは人のためならず」。女性を優遇することは、子供を優遇することと等価であり、未来の日本を優遇することと等価である。それのみが、日本の未来を救う方法なのだ。
そして、そのことに気づかないまま、近視眼的に「現在の自分だけが儲ければいい」という考え方を取るから、日本はどんどん衰退するばかりなのである。
※ シリーズはこれで完了です。おしまい。