「106万円の壁の問題」、その他について。
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106万円の壁
「年収 106万円の壁」というものがある。この件は、前に詳しく述べた。
→ 年収の壁(106万円) .1 : Open ブログ
→ 年収の壁(106万円) .2: Open ブログ
この金額(106万円)を境界として、社会保険料の負担の有無が生じるので、パートタイマーの手取額に段差が付く、という問題だ。
これは、年金料では問題となるが、健康保険料では問題とならない。そのことは、前項で述べたとおり。
一方、次のことがある。
「金額ではなく労働時間の点で、週 20時間以上の労働をすると、社会保険料の加入義務が生じる」
→ 解雇規制緩和の議論 .8: Open ブログ
→ 出典資料
では、106万円の壁と、週 20時間労働とは、どう関連するのか? それを調べるために、次の計算をする。
「時給 1000円で、週 20時間労働をして、年間 52週を働くと、年収はどれだけになるか?」
1000×20×52 = 1040000 (104万)
この金額は 104万円であるから、106万円にほぼ等しい。
つまり、こう言える。
「年収 106万円も、時給1000円で、週 20時間労働をするのも、ほぼ同じことである。どちらの場合も、その境界で、社会保険料の負担の有無が生じる」
以上が、現状だ。
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この現状があると、「段差がある」という結果になるので、労働者は「急激な負担増を避けよう」という意識が生じる。そのせいで、やたらと短時間・低賃金労働が生じやすい。(これはしばしば報道・指摘される。)
一方で、別の問題もある。短時間・低賃金労働では、社会保険の加入を免れるので、事業主もまた事業主負担を免れる。このせいで「非正規労働をする会社に補助金を出す」というのと、同じ結果になっている。政府が「非正規雇用の企業に補助金を出して、非正規雇用という形態を促進する」というふうになっているわけだ。あまりにも馬鹿げている。(これはまったく報道・指摘されない。本サイトでのみ指摘される。)
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この問題を解決するには、どうしたらいいか?
一部は、先の項目で指摘したとおりだ。
→ 年収の壁(106万円) .1 : Open ブログ
→ 年収の壁(106万円) .2: Open ブログ
つまり、低所得・短時間労働の労働者について、事業主負担の免除をやめる。労働者が社会保険に加入していようがいまいが、事業主負担の分は徴収する。
この方針は、前々項でも踏襲された。
→ 解雇規制緩和の議論 .10: Open ブログ
年金料についても、健康保険料についても、事業主負担の免除をやめる。事業主負担の分は必ず徴収する。
「労働者が社会保険に入っていないのに、どうして事業主負担をする必要があるんだ」
という疑問が生じるだろうが、それにはこう答える。
・ 厚生年金には加入していなくても、国民年金には加入している。
・ 扶養家族としての保険料免除は、事業主には関係ない。
・ 事業主負担は、もともと「第二給与」の意味だから、金を出すは当然。
(短時間労働者だから支払い拒否、というのがおかしい。)
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ともあれ、詳しい話は、前々項と前項を読んでほしい。そこでは「段差をなくすための工夫」がいろいろと述べられている。こういうふうにして段差をなくせば、なだらかに接続するので、「106万円の壁」という問題も自動的になくなる。
とにかく、前々項と前項で述べたように、「段差をなくすこと」がとても大切だ。そのためには、制度を単に「所得比例の料率」に設定するだけでいいのだ。
現行制度は、あれこれと複雑な方式を組み合わせるから、金額が複雑化して、途中に無駄な段差が生じる。そういう馬鹿げたことをすべて撤廃すればいいのだ。それが本サイトの方針となる。
※ 前項の最後の 【 追記 】 で述べた通り。
消費税への移行
年金料の方は「払った分だけ受給額が増える」という方式だから、まだ納得できる。
健康保険料の方は、「払った分と受益の分が無関係」という方式だから、払う側としては納得しがたい。これはもはや「第2の所得税」みたいなものだろう。しかも、所得税ならば「累進制」が働くのに、健康保険料では「逆累進制」が働くので、「低所得者ほど負担率が高率になる」という問題が生じる。
※ この問題をなくすために、前項末では、「一定の率」を推奨した。
さて。こんな馬鹿げた制度を採用するぐらいなら、「所得税への上乗せ」をした方が、まだマシだろう。つまり、こうだ。
「健康保険料という制度を廃止して、代わりに、所得税を 10%ずつ上乗せする。「10%の人は 20%に、20%の人は 30%に、30%の人は 40%に、40%の人は 50%に」というふうに。
これはこれで、問題ないはずだ。現状よりも、マシになるだろう。
とはいえ、次の反論も来るだろう。
「所得税があまりにも高くなるのは好ましくない」
ならば、次のようにするといい。
「消費税を現行の8%・10%から、20%に引き上げる。同時に、健康保険料(所得の 10%程度)を免除する」
これで、つじつまが合うはずだ。ただし、低所得者にとっては負担増になるので、次の補償措置を取る。
「消費税のアップを緩和するために、全国民に年間 10万円を給付する」
これでシミュレーションをする。
年収 100万円で、支出が 100万円。消費税の負担は、9万円から 20万円に増える。11万円の増加だ。一方、給付金が 10万円。差し引きして、1万円の負担増となる。一方で、健康保険料の負担額は、年間で数万円あったのが、ゼロになる。差し引きして、改定後の方が、負担額は減っている。
年収が 150万円ぐらいだと、差し引きして、トントンになりそうだ。
年収が 200万円以上だと、差し引きして、若干の増税になりそうだ。
全体として、増税になりそうだったら、次のいずれかで是正する。
・ 消費税の引き上げを、20% でなく 18% ぐらいに留める。
・ 一律給付金の額を、10万円よりも多い額に引き上げる。
このようにすれば、全体として、増税でもなく減税でもなく、トントンにすることができる。
一般的には、「第2所得税の導入」みたいになるので、「金持ちほど増税」になって、「貧富の格差の是正」になる。
※ 「消費税の増税と定額給付」という方式には、そういうふうに「貧富の格差の是正」という効果がある。立憲民主党も、同様の提案をしている。この方式が好ましいというのは、広く知られたことだ。税の研究者には常識と言える。
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なお、ここでは、「消費税への移行」を提案したが、これは、必須ではない。「こうしてもいい」という程度のことだ。
現実には、所得税に移行してもいいし、現行のように「第2所得税」のようにしてもいい。ただし、現行のようにするなら、「制度の簡素化によって、所得比例に一本化する」ということは是非とも必要だ。前項の最後に述べた通り。

全く同感です。
消費税自体も軽減税率なるややこしい仕組みがあるので、軽減税率を廃止し、その分
「全国民に年間 10万円を給付する」
の部分を拡充するといいでしょう。
高校無償化など、所得制限のある制度はほかにもたくさんあります。それらもすべて廃止し、
・所得に応じた所得税、社会保険料
・消費額に応じた消費税
・生きていくために必要なベーシックインカム
・所得に関係のない高校無償化
(子供の人数に応じた増額をするくらいなら所得税をn分n乗にする)
のような単純な仕組みの組み合わせにすべきです。