2024年09月22日

◆ 解雇規制緩和の議論 .8

 ( 前項 の続き )
 現行制度を変えるための、具体的な対策を示そう。

 ──

 前項で述べたのは、高技能・高賃金をめざす方法だった。(定昇の義務づけ。)
 一方、低技能・低賃金をめざす制度もある。これは現状だ。これを抜本的に改革する必要がある。では、具体的にはどうすればいいか?

 社会保険料の現状


 現状はどうか? 「低技能・低賃金をめざす」という方針の下で、「非正規雇用を優遇する」という制度となっている。具体的には、こうだ。
 「非正規雇用に対しては、社会保険の非加入という形で、社会保険料の事業主負担を免除する」

 具体的に言うと、中小企業に属する短時間労働者に対して、次のように制度化されている。
  ・ 週 20〜30時間の短時間労働者
  ・ 企業規模が一定規模以下(時期によって数字は異なる)

 詳細は下記。
  → パート・アルバイト・非正規雇用の社会保険適用範囲が拡大!2024年10月の改正に備えて勤怠管理システムの導入を

 これを見ると、ここ数年、少しずつ改善の傾向がある。つまり、
 「非正規雇用の社会保険適用範囲が拡大される」
 という方針だ。しかしこれは、雇用者負担の免除がなくなるだけでなく、労働者負担の免除もなくなる。(非加入から加入になるからだ。)
 こういうのは、必ずしも好ましい方針だとは言えない。
 現行はこうなっているが、これは私の提案する方針とは異なる。

 新たな提案


 そこで、現状を改革するように、新たな提案を示そう。
 「非正規雇用に対しては、社会保険の非加入という形で、社会保険料の雇用者負担を免除する」
 というのが現状なので、この方針を改める。つまり、非正規雇用に対しても、社会保険料の雇用者負担を徴収するべきだ。……これが新方針となる。
 この方針の下で、以下では具体的な方策を、列挙しよう。


 (1) 免除をやめる

 社会保険料の雇用者負担分を、全額徴収する。
 現状では、短時間労働では「加入なし」ということで、雇用者負担は免除となる。
 新方針では、全員が「加入あり」ということになって、雇用者負担は免除されなくなる。
 なお、労働者は、全員が「加入あり」という形になるが、権利行使は十分にはできない。年金と雇用保険については、「払う分が少ない分、もらう額も少ない」というふうにして解決できるが、健康保険についてはそうも行かない。ある程度までは、現場通りで、国民健保の扱いとなるだろう。

 ※ ただし、労働者の負担分は、あまり考えなくていい。大事なのは、「雇用者負担の免除をなくす」ということだ。これによって「非正規雇用を優遇する」という方針を辞めることが眼目だ。


 (2) 労使折半をやめる

 社会保険料は、労使が折半するのが原則だが、新方針では、折半にはとらわれない。雇用者負担の割合を、5割よりももっと増やしていい。
 具体的に言うと、雇用者負担の分は、従来通りに負担をするべきだが、労働者負担の分は、軽減してもいい。
 現状では、社会保険料は、低所得者ほど負担が多い。そこで、低所得者ほど企業負担を増やせば、この問題が解消・緩和する。
 このような方針を取ると、いわゆる「106万円の壁」の問題も解決するだろう。この件は、前に詳しく述べた。
  → 年収の壁(106万円) .1 : Open ブログ
  → 年収の壁(106万円) .2: Open ブログ


 (3) 固定額の分

 新たに、社会保険料に固定額の分を導入してもいい。次のように。
 「雇用者負担の額として、固定額の分を追加する」
 ここで、固定額というのは、人頭割ということだ。たとえば、労働者の雇用1人ごとに、社会保険料を一定額だけ徴収する。(1人あたり 1000円とか。)

 これは、現状とは正反対の方針だ。
  ・ 現状 「非正規雇用には社会保険料の雇用者負担を免除する」
  ・ 新規 「非正規雇用には社会保険料の雇用者負担を上乗せする」


 こういうふうになると、非正規雇用を増やせば増やすほど、会社は損をする。非正規雇用で短時間労働者を2人雇用すると、人頭割の分が 1000円ずつ2人で 2000円だが、正規雇用で長時間労働者を1人雇用すると、人頭割の分が 1000円が1人で 1000円となる。非正規雇用よりも正規雇用の方が、人頭割の分で 1000円お得になる。こうして「非正規雇用から正規雇用へ」という流れが形成される。(効果は小さいが、小さくとも効果はある。)


 (4) 健康保険料・年金料・雇用保険料

 社会保険料には、健康保険料・年金料・雇用保険料がある。
 このうち、健康保険料と年金料については、大きな制度改革は必要ない。(若干の制度改革が必要だが、後述する。)
 一方、雇用保険料については、大きな制度改革が必要だ。今回は、雇用の問題を改善するのが眼目なので、雇用保険料について大きく改革するべきだ。
 そもそも、非正規は(正社員に比べて)解雇が起こりやすくて、保険金の支払額も多い。ならば、非正規雇用の全般について、保険料を大幅に引き上げるべきだ。特に、雇用者負担の額を上げるべきだ。
 現行では、非正規雇用をする会社が大幅に甘やかされているので、この分を制度改革するべきだ。具体的には、下記の方針で。




 ※ 次項に続きます。(くたびれたので、ここで中断)


huehuki4.jpg


posted by 管理人 at 23:11 | Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ