結論として、具体的な対策は何かを示そう。
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原則
すでに述べたように、低技能・低賃金をめざすのをやめて、高技能・高賃金をめざすようにするべきだ。
とはいえ、国が号令をかけたからといって、企業がいっせいに方向転換をするわけではない。では、号令をかける代わりに、何をするべきか?
それは、簡単だ。現状では、国は「低技能・低賃金をめざす」という方針で、「雇用の流動化」の名で、非正規雇用を推進している。その方針を 180度転換すればいいのだ。つまり、これまでの政策とは正反対の方針を取ればいいのだ。
この方針を「あっち向いてホイ」と名付けてもいいのだが、それでは、おふざけが過ぎるので、まともに名付けるなら、こうなる。
「生産性の向上をめざす」
これはまあ、奇を衒うこともない、当たり前の方針だ。この原則の下で、以下の諸点を示そう。
5年ルールの問題
非正規雇用には「5年ルール」というものがある。非正規雇用の社員が、同じ職場で5年間働くと、無期雇用に転換できる、という制度だ。
こうなると困る、という会社が多いので、会社側は5年になる前に、社員を解雇したがる。いわゆる「雇い止め」だ。
そういう解雇は、法的には「違法だ」ということになっているのだが、いくら違法だとしても、罰則がないので、現実にはこれが横行している。これが現状だ。
→ 契約社員の5年ルールとは?5年でクビにされたときの対応も解説 | 労働問題の相談なら労働問題弁護士ガイドby浅野総合法律事務所
→ 罰則はありません
5年ルールの現状
なお、5年ルールの現状を知るには、AIに質問するといい。
「5年ルールに対する雇い止めは、現実に横行しているか?」
という質問に、AIは次のように答えた。
Perplexity
はい、無期転換ルール(5年ルール)に対する雇い止めは、現実に横行していると言えます。以下にその根拠をまとめます:
(以下 略)
Copilot
はい、契約社員の「5年ルール」に対する雇い止めは現実に問題となっています。労働契約法第18条に基づき、同一の使用者との間で有期労働契約を通算して5年を超えると、労働者は無期雇用への転換を申し込む権利を持ちます。しかし、これを避けるために、企業が5年未満で契約を終了させるケースが増えていると言われています。
(以下 略)
ChatGPT
「5年ルール」に基づく雇い止めは、現実に一定の頻度で発生しているとされています。日本では、2013年の労働契約法の改正により、同じ非正規労働者が同一の使用者の下で5年以上有期契約を繰り返した場合、労働者は無期転換を申し込む権利を得る、いわゆる「5年ルール」が導入されました。しかし、無期転換を避けるために、5年の契約期間が終了する直前に契約を打ち切る「雇い止め」が発生するケースが指摘されています。
(以下 略)
※ 詳しい情報は、それぞれのAIで続きを読むといいだろう。
※ Gemini だけは、「どちらとも言えません」という曖昧な回答が出るだけだった。こいつ、やたらといつも、曖昧な回答をして、責任逃ればかりをしている。役立たずだな。

5年ルールの問題点
そもそも、5年ルールはどこが問題か?
5年ルールでは、5年を経過したときに、会社に次の二者択一を迫る。
・ 無期雇用にして、きちんと雇用せよ。
・ それがイヤなら、未経験の初心者を雇え。
こういう二者択一を迫ることで、「未経験の初心者を雇うぐらいなら、経験者を無期雇用するだろう」ということを期待した。(民主党政権の方針。)
しかし、その狙いとは逆に、現実には「5年後の解雇・雇い止め」が横行するようになった。狙いは悪くなかったが、現実は狙い通りに進まなかった。では、それはなぜか?
5年たったとき、企業に与えられたのは、次の二者択一だった。
・ 経験者を雇用し続けるが、高負担。
・ 新たに初心者を雇うが、低技能。
前者は、「中技能・高負担」であり、後者は「低技能・低負担」である。
すると企業は、こう思った。
「ならばコストの低い後者を選ぼう。後者の初心者だって、時間がたてば、仕事を覚えて、まともに仕事ができるようになるだろう。それに期待する。何よりも、低コストが重要だ」
「前者は、論外だ。中技能・中負担ならば、まだわかる。しかし、無期雇用に転じたら、正社員扱いとなるので、社会保険料の負担など、各種の負担も増えてしまう。負担額が一挙に急増してしまう。それは困る」
要するに、政府が「非正規雇用を優遇して、正社員を冷遇する」という制度を取る。その制度下では、非正規社員を正社員に転じると、企業は負担額が大幅に増えてしまうのだ。政府の方針ゆえに、企業としては(否応なしに)正社員にできないのだ。(正社員にすると罰金が科される、というのも同然だ。)
定昇の義務づけ
では、この問題を解決するには、どうすればいいか? それについては、前に別項で論じた。こうだ。
こう提案しよう。
「非正規社員に、定昇制度を導入する。通常は昇給なしだが、今後は昇給を義務づける」
ここで、昇給の額は、能力の向上にふさわしい率がいいだろう。次のような感じ。
・ 20代 …… 3%
・ 30代 …… 2%
・ 40代 …… 1%
このような比率で、毎年昇給する。
( → 労働契約法の5年ルール: Open ブログ )
たとえば、毎年3%の定昇があれば、5年で 15%以上の昇給となる。10年なら 34% の昇給となる。
この程度の昇給であれば、企業としては、十分に負担できるだろう。社員が経験を積んで、有能になるので、その分を払うことは、問題はあるまい。
むしろ、3割減で初心者を雇うと、無能の未経験者が来るので、業務が停滞してしまって、かえって損する。そういうふうにはしないだろう。
というわけで、「定昇の義務づけ」というのは、立派な解決策になるのだ。それはまた、「高技能・高賃金」という、冒頭の目的をも達成している。そのことに注意。
※ 経験を積むことで、技能を高めたから、その分の賃金アップが実現するわけだ。
※ 次項に続きます。(話はまだ完結していません。)
※ 5年ルールについて、民主党政権の狙いは良かった。だが、その土台が、自民党時代の制度(非正規雇用の優遇)という土台だった。これでは、木に竹を接ぐようなことになるので、まともに結果を実らせることはできなかった。狙いを実現するためには、土台そのものを変える必要があったが、それをしなかったので、全体が失敗した。(土台を変えるにはどうすればいいか、という話は、次項で。)