富裕層への課税のためには、あからさまに富裕税を導入すればいい。
──
前項 では、「富裕層優遇」という税制を是正するために、金融所得への課税を制度改革する方法を示した。
ただしこれは、「富裕層の優遇」を改めて、「富裕層の標準化」をするだけだった。現状では、富裕層が特別に税率を低くしてもらっているので、そういう特別な優遇を辞めて、富裕層も普通に納税してもらう、ということだ。(それが総合課税だ。)
一方、本項では「富裕税」という概念を導入する。富裕層には特別な課税を上乗せする、ということだ。
実は、昔の日本は、所得税は富裕層では極端に高くなっていて、富裕税に相当するものがあったのだが、自民党の税制改革で、富裕層への課税が極端に軽減されるようになった。そのせいで、今では日本は貧富の格差が拡大して、国民所得のかなりの部分が、ほんの少数の富裕層に握られることとなった。いわゆる「貧富の格差の拡大」という問題だ。
そのせいで、大衆の購買力が減少して、物が売れなくなり、GDP が低下して、日本経済が弱体化する……という問題も生じるようになった。
そこで、「富裕層の増税」が必要となる。実は、これは、近年ではピケティの主張として、広く知られることになった。(昔からある説だけどね。軽んじられていたのが、ピケティによって復活してきた。)
──
さて。問題は、富裕税の形だ。具体的な税制としては、どうすればいい?
総合課税にする、というのが前項の案だが、これは、現状よりはマシだとはいえ、富裕税というほどの高い課税ではない。
フランスでは「資産課税」というのがあって、金融資産に一定税率を課するという制度もあるが、資産保有を変えることになるだけで、経済を歪めがちだということで、評判が良くない。
株式保有に課税するという案もあるが、これも同類であり、評判が良くない。
高額の不動産に高率課税する、という案もあるが、実は、これはかなり実現済みだ。すでに「小規模住宅の6倍の課税をする」という制度がある。6倍だ。これだけ高額の課税がなされるのだから、さらに上乗せするのは難しい。
……というわけで、あれやこれやと案はあるのだが、それもこれも、実効性が弱そうだ。まともな効果がありそうにない。みんな駄目だ。困った。どうする?
──
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「富裕層だけに課税するためには、株の配当金に対して、富裕層向けの源泉徴収をすればいい。具体的には、50〜67%程度の源泉徴収をする。その後、確定申告をして、普通の人は還付してもらう」
この場合、普通の人は、確定申告で還付を受けるので、実質的な納税額は変わらない。
一方、富裕層は、確定申告のときに、還付額の制限を受ける。「富裕税」というような名目で、還付の制限を受けることで、実質的に増税になる。
特に影響が大きいのが、税逃れのために海外居住する人だ。彼らは、源泉徴収された額に対して、還付を受けることができない。なぜなら、彼らが納税するのは、海外の居住地だからだ。シンガポールやルクセンブルクやモナコなどのタックスヘイブンに居住して、そこで納税する。だから、日本の源泉徴収に対して、還付を受けることができない。
なお、この際、二重課税の問題が生じることがある。だから、現地で納税した分(微小額)については、二重課税回避の点から、日本政府から還付を受けることができる。(タックスヘイブンで払った額について。)
しかしながら、二重課税の分を除いた大部分については、還付を受けられないから、巨額の税を日本政府に納税することになる。
こうして、富裕税を導入できる。問題解決。 Q.E.D.
《 加筆 》
※ 源泉徴収すると、自動的に税逃れができなくなるわけではない。税逃れがしにくい、というだけだ。実際に税逃れを差し止めるためには、そのための法制度をきちんと整備しておく必要がある。敵はあれやこれやと、税逃れのために、制度の穴を突こうとするからだ。その対策のためには、こちらも法制度を万端、整えておく必要がある。甘い制度だと、ザル法となって、どんどん納税回避されてしまう。
※ 税逃れのために海外居住すると、楽しい日本で暮らすことができなくなるし、日本語を使う機会も減るので、人生の楽しみが激減してしまう。まるで外国という牢獄につながれたようなものだ。大きな自由を失う。……この点については、下記に詳しい。
→ 海外移住した超富裕層が不幸にあえぐワケ いくら金があっても日本に帰れない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
→ 「税金逃れ」で海外移住する富裕層が背負う“大きすぎる代償”…不幸で哀れな「第二の人生」の実情 | 億万長者の共通点 | ダイヤモンド・オンライン
[ 付記 ]
実務上の手続きとしては、細かな点を調整する必要がある。
特に、税逃れへの対策が重要だ。富裕層としては、源泉徴収を避けるために、あれやこれやと手を打つはずだ。
(1) 富裕層としての扱いを避けるために、株主の名義をたくさんに分割する。
(2) 個人としての扱いを避けるために、株主の名義を別会社Bにする。その別会社Bの保有者もまた、別会社Cの保有者にする。こうして、元の会社Aの株主会社Bの株主会社Cの株主会社Dの……というふうに延々と深い構造をつくって、百番目ぐらいで個人名義に戻す。こうして富裕層としての課税を回避する。
で、そういう脱税策が取られたときには、どうするか? 簡単だ。「脱税策を見つけたら、脱税策だと認定して、かえって高額の特別課徴金(罰金)をかけて、全財産を没収する」
こうすれば、悪質な脱税を回避できる。
金持ちは金持ちらしく、普通に納税すればいいのだ。千億円の資産をもって、毎年 20億円の配当金を受け取るのなら、そこから 10億円ぐらいは納税すればいい。それでもまだ、毎年 10億円ぐらいは手元に残る。おまけに、株式の値上がり額も 20億円ぐらいある。それだけの額があるなら、きちんと納税すればいいのだ。
2024年09月12日
過去ログ
反対意見が多いのですが私は20%くらいの消費税だけにするのが公平だと思います。逆進性がよく問題になるのですが、お金持ちはどんどん貯金や投資をしてもらってよいのです。いずれそのうち(子孫が)使うときに消費税でいただけばよいのです。ただ税務署員や税理士が職をうしなうでしょうね。
このような動きへの第一歩として河野太郎さんの全員デジタル確定申告に強く賛成します。
それなら公平だけど、額が全然足りません。北欧並みにするなら、消費税だけで 40% にしないと。
消費税 40% で、出直してください。
ともあれ、消費税20%なら、所得税はいまだ高額が必要。