※ 最後に 【 追記 】 あり。
※ さらに 【 訂正 】 あり。
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これは前からしばしば批判されてきた。本日の朝日新聞記事でも論じられている。
観光船沈没事故をきっかけに、世界自然遺産の北海道知床岬で進む携帯電話基地局の建設計画に対して、疑問の声が広がっている。
2022年4月に知床半島沖で起きた沈没事故では、船長の携帯電話がつながらず緊急対応が遅れた。国や地元自治体などは、不感地域解消のためとして、基地局の設置を決定した。だが、世界遺産の適正な管理を助言をする科学委員会での説明や世間への公表が不十分なままの決定に異論や批判が続出。今年度中に運用開始の予定だったが、今年5月以降、工事は中断されている。
知床岬では、電源確保のためにサッカーコート並みの敷地に264枚の太陽光パネルを並べ、アンテナを設置する灯台まで約2キロのケーブルを埋設する。
いま考えるべきは、「本当にそれは必要か」「ほかに代替手段はないか」だろう。
知床岬での事業を主導するKDDIは、米宇宙企業スペースXが展開する衛星通信サービス「スターリンク」の人工衛星に、auのスマートフォンが直接つながり、空が見えれば圏外エリアでも通信できるサービスを今年中に始めると発表。他社もそれぞれ衛星通信サービスを進めている。
( → 知床の携帯基地局、見直しを 石井徹:朝日新聞 )
前項の追記では、iPhoneの最新機種を使えば、衛星通信による緊急通信が可能だ、と記した。一方、上記では、もっと高度なスターリンクによる衛星通信も可能だ、と記されている。いずれにせよ、通信は可能だ。なのに、それを無視して、知床に人工物を設置して、自然を破壊しようとする。
特に、環境保護への影響については、別記事もある。
世界自然遺産・知床の知床岬で工事が進む携帯電話基地局の建設現場近くで、国の天然記念物で絶滅危惧U類のオジロワシが営巣していることが研究者の指摘でわかった。
行動圏内でも特に利用されるエリアで、太陽光パネル設備やケーブル埋設の工事が秋まで続く。
「影響評価も実施されずに事業が進められることにはおおいに疑問がある」
国立公園内での基地局設置には自然公園法に基づく許可が必要だが、環境省の配布資料には「厳密に審査する」「大規模な新規工事には該当しない」という二つの文章が並んだ。
これでは審査の前に大規模工事には「該当しない」との結論が出ていることになり、委員から整合性が取れていないと指摘された。中村委員長は「出来レースのようにも読み取れる」
今年2月の第2回会議では、規模の大きさを疑問視する委員の問いに、環境省は「規模は小さくないが、顕著な普遍的価値への影響はないという整理になっている」と報告。
議論がない中、科学委が太陽光パネル設備の規模や2万6千平方メートルという工事の総面積を知ったのはごく最近だ。
太陽光パネル設備は約7千平方メートル、フェンス外側の作業用地を含めると約8400平方メートルになる。ケーブル類は約2キロに埋設するが、掘り起こした土砂の置き場や運搬車の通路を確保するには約10メートルの幅が必要で、これによって作業路は1万4千平方メートルに膨らむ。
知床で学術調査にあたったことのある研究者からは「岬では小さな装置一つ設置するにも細かく指摘してくる環境省が、なぜこんな工事を認めるのか」「科学委で議論されずに計画が進んでいる。つじつまが合わないことが多すぎる」といった声が聞かれる。
( → 絶滅危惧のオジロワシ、携帯の建設現場近くに営巣、環境省が対応検討 [北海道]:朝日新聞 )
呆れるばかりの状況だ。環境省は、環境を守るために調査をする部局ではなく、環境を破壊するために嘘の言葉を並べるための部局となった。嘘と虚構の部局。
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以上は、報道の紹介だ。一方、それとは別に、私の見解を述べよう。こうだ。
「知床の遊覧船への通信設備など、もともと必要ない。先に遊覧船の事故が起こったときには、通信が届かなかったことが、問題視された。しかし、遊覧船の事故が起こったのは、違法行為があったからだ。
→ 知床遊覧船、法令違反19項目 : 読売新聞
違法行為における危険性を減らすために基盤整備をするということは、犯罪を助けるために助成するというのと同様だ。馬鹿げている。犯罪者が上手に犯罪をできるために金を出す必要など、まったくない」
国は「いざというときのために遊覧船を救うための設備」を構築しようとする。しかし、話は逆だ。むしろ、「いざというときには遊覧船を魚雷で撃沈する」という方針を立てて、魚雷艇を配備するといい。救うのではなく、撃沈すればいい。救助隊を送るよりは、暗殺部隊を送ればいい。それが正解だ。
なぜか? そういうふうに告知をしておけば、犯罪をやろうとする馬鹿はいなくなるからだ。つまり、嵐の日に危険海域を航行しようとする馬鹿な遊覧船はいなくなるからだ。
そのためにも、「犯罪者は魚雷で撃沈する」という方針を立てるべきなのだ。
逆に、「犯罪を安全にできるようにします」という基地局を設置するというのは、根源的に狂った方針なのだ。
物事の根源を理解するべきだ。
そして、環境省は、こういう狂気的な悪を促進するために、嘘と虚構を並べるという、ゴミ組織に成り下がってしまったのだ。
【 関連項目 】
→ 知床遊覧船事故と規制: Open ブログ
事故の直接原因は、素人社長が運行を管理していたことだ。素人が管理するというデタラメがまかり通ったのは、それ以前の方針を改めて、政府が規制緩和をしたせい。
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今回の事業でも、何らかの利権があるものと推定されたが、現地は私有地ではなく、国立公園の特別保護地区であるそうだ。とすると、私的な利権とは違うようだ。
現地の建設会社の事業受注が目的かもしれない。受注予定企業を調べると良さそうだ。たぶん、出来レースで、受注企業は決定済みのはずだ。
【 関連サイト 】
朝日新聞の関連記事。
計画では灯台の壁面にアンテナ、文吉湾の高台に無線設備、この間の山際に太陽光パネル群を置く。アンテナも、太陽光パネルなどを隠すフェンスの色や高さも景観に配慮し、ケーブルや電線は土中に敷設する。太陽光パネル群の敷地は約80メートル四方と、サッカーコート並みだ。
2年前の小型旅客船「KAZUT(カズワン)」の沈没現場は文吉湾の近くで、船長のKDDI(au)の携帯電話はつながらず、海難事故を知らせる118番通報が遅れた。これを受け、総務省は昨年4月末、関係省庁や道、地元自治体などからなる通信基盤強化連携推進会議を開き、知床での携帯電話の不感地域解消に動き出した。
通信エリア拡大の恩恵を受けるのは主に観光船の旅行客だ。秘境の地・知床岬の感動をライブ配信できるようになる。
( → 知床岬に太陽光パネル群 世界自然遺産の「秘境の地」になぜ? [北海道]:朝日新聞 )
最後の記述によると、ライブ配信する人( YouTuber )のために、これほど大々的な工事をするらしい。無粋な太陽光パネルが見えるとやばいので、フェンスで隠すそうだが、フェンスが丸見えだろう。植栽でゴマ化すつもりだろうか。(しかしそれでも、空からは見えちゃうけどね。)
→ 朝日新聞(画像)
【 追記 】
大事なことを述べよう。この問題の本質は何か? それは、こうだ。
「ここに基地局を設置する理屈がまったく立たない」
つまり、理屈の点からいって、ここに基地局を設置する必要性も根拠もまったくないのだ。
そのことは、ドコモの電波地図を見れば一目瞭然だ。
→ https://x.gd/ff0oD
北海道の全体の半分ぐらいは、ドコモの電波が届かない。人のいない国立公園内(知床半島など)だけでなく、人のいる内陸部(登山路)もまた、ドコモの電波が届かない。だから、前項で述べたように、遭難者の救助もままならない。
だったら、多くの登山者が通る場所で、基地局の設置をするべきなのだ。その方が優先だろう。人命重視の観点からも、そうなるはずだ。
もちろん、北海道だけでない。福島県や群馬県の山奥もまた、電波が届かない領域が広大にあるので、そこでも遭難者の救助には支障をきたしている。だから、そういうところで、基地局の設置を優先するべきなのだ。
また、その整備にかかる費用は、すべては3大キャリアが自費で支出するべきであり、国が費用を負担する必要などはさらさらない。
以上が、本来の理屈である。あらゆる点からして、国が今回の事業を推進する理由がない。こんな辺鄙な場所に限って、ことさら基地局設置を推進するために、特別な費用を支出する名分が立たない。
こんな馬鹿げたことをするよりは、(登山者のいる)本州の各地で、基地局の設置を推進するべきなのだ。
ではなぜ、政府はそうしないで、こんな非論理的なことをするのか? その理由は、上の朝日記事を読むとわかる。
総務省移動通信課は「目的の第一は観光振興。船の安全対策は国交省の管轄だが、携帯電話が使えることで二重の通信確保となり、安心感も増す」
観光振興が目的だ。だが、観光振興ならば、地元が自力で金を出せば良く、国が金を出す必要がない。そもそも総務省が恣意的に、特定地域だけのために、観光振興費用を出していいはずがない。全国各地で「基地局を整備したい」という声が上がっているのに、知床だけで総務省が金を出す理屈が成立しない。
では、何が理由か? こうだ。
「総務省が自分の権限を強めるために、知床の事故を利用して、支出事業を拡大しようとしたから。財務省から予算を獲得して、事業を増やして、総務省の事業規模を拡大するのが目的だ」
これが真相だろう。つまり、官庁の権益の拡大だ。簡単に言えば、血税の無駄遣いである。そのために、まったく必要性のない事業を実行する。それが官僚の体質だ。
そのために、国民はだまされるのである。そして政府は宣伝する。
「この基地局のおかげで、YouTuber が大儲けできますよ。みんなで YouTuber になりましょう。YouTuber になって、経済拡大しよう。これを推進するのが、総務省の貢献です」
これをもって総務省は「日本のデジタル化の推進」とアピールしたいのだ。それが本当の理由だ。
( ※ 馬鹿というのはまったく見当違いのことをやって、自分が仕事をしていると見せかける、という見本だ。……そして、その嘘と虚構を、国民は信じる。)
【 訂正 】
上に述べた話を訂正する。
「総務省が馬鹿だから」
というのが理由だと思ったが、あとで考え直した。
「いくら何でも官僚がそれほど馬鹿だとは思えない。むしろ、政治家の圧力を受けて、やむを得ず、圧力に屈したのでは?」
こう考える方が合理的だろう。
そこで調べ直すと、次の記事が見つかった。
→ 知床岬の携帯電話基地局、総事業費9億円 環境相「やむを得ず許可」:朝日新聞
積極的に事業を行っているのではなく、「やむを得ず」に事業をしているそうだ。本当はやりたくなかったんですね。これでますます「政治家の圧力」という説は信憑性を増した。
そこで、さらに調べると、まさしく「そのものズバリ」と言える証拠が見つかった。当の本人が大々的に宣伝しているのだ。「基地局設置のために活動しています」というふうに。ググれば、たくさんの記事が見つかる。(本人が宣伝しているからだ。)
→ https://x.gd/aIKVp
特にひとつ例示すると、Facebook の記事がある。
北海道の知床地域を地盤とする、長谷川岳という参議院議員(自民党)がいる。彼が基地局設置のために大々的に活動している。特に、自民党・道連会長の伊東良孝とは協調しているようだ。
世界自然遺産・知床の知床岬で計画されている携帯電話基地局設置について、総事業費は約9億円で、このうち約4億4千万円が国の補助金でまかなわれることがわかった。4日の衆議院環境委員会で、松木謙公委員(立憲)の質問に総務省が答えた。具体的に予算規模が示されたのは初めて。
( → 知床岬の携帯電話基地局、総事業費9億円 環境相「やむを得ず許可」 [北海道]:朝日新聞 )
9億円の事業を地元に呼び込むことが最大目的であるようだ。地元の利権誘導が露骨だね。
そのせいで、 Twitter や Facebook には、「自然保護地に太陽光パネルを置いて、環境破壊するのか」という批判がわんさと押しよせたが、コメントを制限することで対処している。
ともあれ、こうして真相は判明したことにある。すべては自民党の議員の利権狙いが根源であり、総務省はその圧力に屈したのだ。