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朝日新聞の本日記事から。
千葉県いすみ市の農産物直売所「グリーンスパいすみ」。収穫されたばかりの特売の新米がずらりと並ぶ。通常価格は昨年同期と比べ4割ほど高い。
各地の農協(JA)が米の生産者に前払いする概算金は、前年に比べ2〜4割ほど上昇している。概算金は仕入れ値のもととなり、店頭での価格にも影響する。
農林水産省によると、ウクライナ侵攻や円安の影響で20年と比べて肥料価格は約4割増、光熱動力費も約3割増となっているという。
( → 新米、値上がりの気配 農家へ前払い金、4割高も:朝日新聞 )
→ 新米価格「1割上がる」の予想も 買いだめで続く品薄、高まる需要:朝日新聞
農水省はいかにも「値上げして当然です」という言い分だが、こんな理屈は通用するわけがないだろう。コストアップなら、ずっと前から少しずつ生じていたが、今年の6月までは、米価はちっとも上がらなかったからだ。なのに、7月以後に、急激に米価は上がった。それはなぜか? 輸入品価格が急に上がったからではない。単に米不足が起こったからだ。
それだけのことだ。なのに、輸入品価格が上がったことを理由にするのは、詭弁も甚だしい。
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記事の最後では、新米の最終的な店頭価格について「1割程度上がる」という予想(民間人による)を記していた。だが、それは当たるかどうか、心許ないね。私は「15%〜20%の値上げ」を予想する。なぜなら、パン類はそのくらいの値上げ率になっているからだ。米もそのくらいになりそうだ、と私は予想する。
ただし、1年後(来年の今ごろ)になると、事情が変わるかもしれない。今回の大幅値上げを見て、来年の作付けは大幅に増えそうだ。「4割アップ」という価格を見て、「それじゃ増産しよう」と思う農家がたくさん現れそうだ。その結果、1年後には、大増産が実現して、同時に、供給過剰で価格は暴落する……というふうになりがちだ。
1年後の大暴落を、楽しみにして待とう。
[ 付記 ]
「米不足か。何でこんな惨状になっているんだ。どうして政府は対策しないんだ」
と不思議に思う人もいるだろうが、実は不思議でも何でもない。この値上げは、政府にとって困ったことではなく、好ましいことなのだ。だから意図的に、値上げが続くように仕組んでいるのだ。
なぜか? 政府の目的は、国民の生活や生命を守ることではない。国民の生活が苦しくなろうが、国民が米不足で餓死しようが、そんなことはどうでもいい。政府にとって大切なのは、農業生産の維持だけだ。そのためには、自給率のアップが至上命題である。それを支援するには、米の価格が上がれば上がるほどいいのだ。そうなれば、農家の増産意欲が高まって、自給率が高まるからだ。こうして農水省の最大目的が達成される。これが農水省の目的なのだ。(その農水省が権限を握っている。) 詳しくは下記。
→ 米不足は自給率のせい: Open ブログ
→ 米不足で農水省の問題点: Open ブログ
※ 実際に米不足のせいで国民が大量に餓死した、という例もある。江戸時代の「天保の大飢饉」というやつがそうだ。この件は、本項の最後で言及する。(動画の下にある。)
【 関連サイト 】
→ 米不足 新米はいつから 価格や作柄は? 食品の値上げ9月は1000品目超に 2024年| NHK
→ 今年の『魚沼産コシヒカリ』は平年並みの品質と収量に 全国的な米不足で新米も値上げが続く見通し | TBS NEWS DIG
【 補説 】
話のついでに調べたことがある。
江戸時代の後期に、「天保の大飢饉」という事件があって、多数の餓死者が発生したことがあった。このときは、気温が異常に低下した冷夏のせいで、大飢饉が発生した、と判明している。(今年の猛暑とは正反対だ。)
→ 気候変動と人々の暮らし ―歴史に学ぶ―
ところが、これを自己流の解釈で、勝手に歪めて理解する人がいる。江戸への都市集中があって、そのせいで地方は人口不足になり、農業生産が低下した、と説明する。
凶作や飢饉のために疲弊した地方から、稼ぎの場を求めて多くの人々が江戸をめざした。人口が減少した農村では農業生産力の低下を招き、江戸の人口は増加した。当時の基幹産業は農業であったから、農業の衰退は領主層にとっても一大事だ。
( → 東京一極集中、天保の是正策は 寄稿、東北大学名誉教授・平川新:朝日新聞 )
もっともらしい理屈だが、まったくの嘘八百だ。「農業生産力の低下」「農業の衰退」と記しているが、そんな事実はない。むしろ、江戸時代の全般を通じて、農業生産力は向上の一途だった。そのことは、各種の AI に質問すれば、答えてもらえる。
※ 引用は略すが、一貫した増産があったと判明する。
江戸時代に飢饉があったのは、異常気象(大冷夏)のときだけだ。その理由は、異常気象であって、江戸への都市集中は関係ないのだ。むしろ、農業生産力が増えるからこそ、生産性の向上の分、人口が余る。そのせいで、農業から商工業へ人口が移動する。……これは、どの時代でも起こることなのだ。
これは経済学の常識である。こういう経済学の知識もないまま、勝手に自己流の解釈を書く人もいるのだから、「恥を知れ」と言いたくなる。素人じみた意見験を新聞に書いて、全国的に恥をさらすより、事前に経済学者に原稿を見てもらえば良かったのに。そうすれば、恥をかかずに済んだ。
事前に読んでもらいたくても、友達がいないのかな? 哀れ。
・単純に不安症のため買いだめをした
(この手の人は水やマスクなども買いだめしていそう)
・高くなったために買い占めてメルカリなどで小分けして転売し、差益を狙った
などありそうですが、すでに新米の流通は始まっており、東北産の新米が大量に出回るようになれば価格は落ち着き、不安症や転売ヤーの人の家には古米が残ることになるでしょう。
逆に、管理人さんのおっしゃる
> 「4割アップ」という価格を見て、「それじゃ増産しよう」と思う農家がたくさん現れそうだ。その結果、1年後には、大増産
は起こらないと思います。
来年度以降もその価格が続くわけがないので、休耕田を復活する手間とコストを考えたらありえません。
もともと供給不足があったところへ。輪をかけた、という意味がある。もともと供給不足があったのが根源。精米の歩合が落ちたせいだ、と判明している。