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政治資金の裏金への対処が、支持率の低さの原因だ……と言われる。しかし、その問題は安倍派の問題であって、岸田首相本人の問題ではない。そんなことで大幅に支持率が下がるとは思えない。
では、かわりに何が原因か?
理由は思いつく。これだ。
《 実質賃金とは 過去最長の26カ月連続マイナス 》
5人以上いる事業所の5月の実質賃金(速報)は前年同月から1.4%減った。マイナスは26カ月連続で過去最長となった。
( → きょうのことば - 日本経済新聞 )
この翌月にはマイナスからプラスに転じて、マイナスの連続は 26カ月で終わった。それでも、上のグラフからわかるように、実質賃金の低下は2年以上も続いた。この間、企業の利益は空前の活況を呈して、株価は大幅に上昇した。なのに、労働者の賃金は下がるばかりだった。
私の実感でも、物価はどんどん上がっている。さまざまな日用品や電化製品も上がっているが、特にひどいのは食品だ。温暖化の影響もあって、農産物の不作が起こっているのも相まって、食品の値上げがひどい。ラーメンやパンも滅茶苦茶に価格が上昇している。(小麦には高率の税がかかっているので、値上げが増幅される。)
こんな状況では、生活が苦しくなる一方なので、政府への不満が高まるのは当然だ。一揆が起こってもおかしくないレベルだ。
たしかに、このような物価上昇の根源は、ウクライナ危機と地球温暖化なので、岸田首相には直接の原因はないだろう。だとしても、原因はともかく、対策が無為無策すぎる。これでは支持率が低下するのは当然だ。したがって、「支持率の低さゆえに退陣」となるのも、当然かもしれない。
以上が、当面の分析だ。
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しかし、である。より本質的なことは、別にある。それは昨年の秋に分析した。
《 内閣支持率が急低下 》
内閣支持率が急低下している。支持率 29%、不支持率 60% だ。
岸田内閣は圧倒的に不人気だ。安倍内閣が高い支持率を維持し続けたのに比べると、見る影もないほど、ひどい低下だ。発足当初は高い支持率を得ていたのに、どうしてこんなに悪化したのか?
理由はやはり「金」だろう。経済状況の悪化だ。といっても、企業業績は好調だから、景気の悪化が理由ではない。では何かと言えば、「国民の所得の低下」だろう。どうしてかと言うと、物価上昇がひどいのに、賃上げがそれに追いついていないせいで、実質賃金は低下してしまったからだ。
実質賃金(実質所得)が低下するのだから、国民の生活は貧しくなるばかりだ。国民が頭にくるのは当然だ、と言える。支持率低下は当然だろう。
( → Open ブログ 2023年10月16日 )
つまり、同趣旨のことは、昨年の秋にすでに指摘済みなのだ。
さらに、その次の項目では本質を分析している。
《 物価上昇は日銀のせい 》
物価上昇がひどい。その責任は誰にあるか? 岸田首相か? いや、日銀だ。
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岸田首相の支持率が大幅に下がっている。( → 前項 )
その理由は、物価上昇のせいであるようだ。(物価上昇のせいで、実質賃金が低下しているからだ。)
では、物価上昇は誰のせいか? 岸田首相か? いや、日銀だ。それが私の解釈だ。
なぜかと言えば、次のことによる。
・ 石油の国際価格は、一時急上昇したが、その後は下がった。
・ 石油に限らず、あらゆる輸入品が価格アップしている。
・ その理由は円安である。
・ 円安をもたらしたのは、日銀の低金利政策だ。
というわけで、国内の物価の上昇の原因は、円安であり、その円安をもたらしたのは日銀だ、と言えるわけだ。
( → Open ブログ 2023年10月17日 )
では、それに対して、どう対策するべきか? 政府は日銀の政策を直接左右することはできないが、どうすればいいのか?
《 日銀は金利を大幅に上げよ 》
現在の物価上昇の原因は円安だ。ならば物価上昇を解決するためには、日銀が金利を大幅に上げることが必要だ。
今という現時点でなすべきことは、定額減税なんかではなくて、日銀が金利を引き上げることなのだ。それによって、円安を止めて、輸入物価を大幅に引き下げればいい。そのことが最善なのだ。
では、そのためには、どうすればいいか? 私の提案は、こうだ。
「日銀総裁を解任する」
これによって、金利を大幅に引き上げるように、日銀の方針を変えるべきだ。誰であれ、とにかく、金利を上げる方針を取る人を、日銀総裁に据えればいい。
( → Open ブログ 2023年11月07日 )
かくて問題の解決策を示した。「金利を引き上げよ。そのために日銀総裁を解任せよ」と。仮にそうしていれば、物価上昇は収まり、実質賃金の低下も収まり、政府の支持率低下も収まっただろう。
しかし、岸田首相はそうしなかった。だから支持率の低下が収まらなかった。……これこそが、彼の敗因だったのだ。
[ 付記 ]
関連する話題として、次の記事がある。岸田首相が電気代とガス代の補助金を出すと決めたが、迷走状態だ、という話。
→ (取材考記)説明ちぐはぐ 補助金再開、理由は酷暑だけ? 三浦惇平:朝日新聞
そこでこの話題を調べると、もっと整然とした記事にたどり着く。
→ 首相が突然やると決めた「電気・ガス料金補助」なぜ8月から? 暑い7月はゼロ…自民党内からも批判が噴出:東京新聞
岸田首相の方針は、補助金を出して、やめて、また出して……と迷走状態だ。ではどうして、こういう迷走状態になったのか? 次の記事が解説している。
「9月以降もやるという意思表示」
官邸主導で決めた今回の補助再開も、総裁再選をにらんだアピールとの見方がある。自民中堅は「人気取りにしか見えない」と断じる。国民民主党の玉木雄一郎代表は25日の会見で「6、7月を空白にする意味がわからない。8〜10月というのは(党総裁任期の)9月以降も自分がやるという意思表明にしか見えない。国民より自分の今後を思っての政策だ」と酷評した。
( → 首相が突然やると決めた「電気・ガス料金補助」なぜ8月から? 暑い7月はゼロ…自民党内からも批判が噴出:東京新聞 TOKYO Web )
総裁選に再出馬するために、電気料金の補助金を決めた、というわけだ。
ところが現実には、再出馬をやめた。となると、電気料金の補助金を決めたのは、意味がなかったことになる。
岸田退陣の置き土産……ということか。