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家庭用燃料電池は、効率が高いので、お薦めだ……と本サイトでは示してきた。最近では言及していないが、何年か前に言及した。
だが、あらためて考え直すと、どうも無理っぽい。というのは、燃料源の水素を供給するシステムができないからだ。
「水素を供給するのは、都市ガスみたいな配管を使えばいいだろう」
と思ってきたが、それは無理であるようだ。水素のカロリーはとても小さいので、同じカロリーを出すには、都市ガスの十倍以上の配送容量(基盤設備)を必要とする。事実上、無理だ。東京ガスが「無理」と結論している。(前項末のリンク)
→ 2050年のエネルギーを考える上での視点と水素を活用したCO2ネット・ゼロへの挑戦 東京ガス
燃料電池そのものより、水素を配送するシステムがないので、燃料電池を実用化するのは無理っぽい。
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なお、研究途上のものには、その亜流がある。
(1) メタンの改質
都市ガスの形で配送したあとで、都市ガスのなかのメタンを分解して、水素を取り出して、その水素で燃料電池を働かす……という仕組み。あちこちの研究者が、そういう手法で、燃料電池の研究をしている。
→ https://x.gd/bs8is 、 https://x.gd/RGSBA
しかしこれでは、ガスを燃やすのと同様で、炭素を使うときに二酸化炭素を発生する。炭素を使わずに、どこかに残すのだとしたら、エネルギーが無駄になるだけだ。(発電しないまま炭素がどこかで少しずつ酸化されてしまうだろう。)
この方法は非効率すぎて、馬鹿げている。何のためにやっているか、わけがわからない。ただの研究レベルの実験以上の意味はない。
※ あまりにも高コストになりすぎる。発電が高効率であっても、メタネーションの段階で莫大なエネルギーを消費する。
(2) 家庭で水素製造
家庭が屋根の太陽光パネルで発電して、その電力で水素を製造して、その水素を燃料電池に使う……という仕組みが考案された。
太陽光発電による再生可能エネルギーの電力を用い、自宅で水素をつくり、住宅内の電力を自給自足する。
@ 日中は自宅の屋根の太陽光発電パネルでエネルギーをつくり消費
A 太陽光発電の余剰電力で水を電気分解して水素をつくり、水素を水素吸蔵合金のタンクで貯蔵
B 雨の日などの日射不足時や夜間は貯蔵した水素を利用して燃料電池で発電
( → ゼロカーボンを実現する住宅メーカー初の水素住宅 自宅で水素を製造・貯蔵・使用できる電力自給自足住宅の実証実験を開始 | ニュースリリース | 企業・IR・ESG・採用 | 積水ハウス )
うまいことをやっている……と思えるが、アイデア倒れだろう。これだったら、普通の方法を使う方がいい。つまり、自宅で発電して、それを系統電力に注ぐ。系統電力の側は、その分、火力発電を減らす。もし電力が余ったら、EV 用の蓄電池に充電する。……この方が、コストはずっと安く済む。
効率の点では、燃料電池を使う分、給湯の点で効率アップを望める、という美点はある。しかし給湯の点でなら、太陽熱温水器を使えば、数万円〜30万円で済む。同様の性能を満たすために、家庭用燃料電池を導入して、100万円ものコストを投入するのは、馬鹿げている。
結局、アイデア倒れのナンセンス、と言えるだろう。技術ばかりを求めて、コストを考えない、という見本。いかにも研究室の研究者の発想だ。
【 関連項目 】
別案もある。
→ 太陽光 + 太陽熱 で効率向上: Open ブログ
現状では、太陽光パネルと太陽熱温水器を並べて併用する、という方式がある。
→ 太陽光発電と太陽熱温水器の併用がお得!価格やメリットを解説
しかし、それとは違って、「太陽光パネルの裏に太陽熱温水器を設置して、水で太陽光パネルを冷却する、水冷方式」というのが、上記項目の提案だ。これによって太陽光発電の寿命を延ばすので、償却のコストが下がる。(寿命が2倍になれば、コストは半減する。)
また、双方を一体化した構造ならば、別々に設置するよりも低コストで済む。(設置コストも1回分で済む。)
太陽光と太陽熱の双方を利用する、一体構造の新パネル、というのが、上記項目の提案だ。
これは大賛成です。メガソーラーでこれをやっても温水の使い道に困るかもしれませんが、家庭なら使い道があります。
設備が長持ちし、得られるエネルギーも格段に多くなるので、補助金をばらまいたり、むやみに余った電力を高値で買い取る必要もありません。むしろ買取価格を高値にしないことで「そんなに安いなら売るのではなく、EVを購入して蓄電しよう」という方向にもっていくべきでしょう。