2024年08月07日

◆ EV 普及の予想

 EV の普及はどのように進むと予想されるか?

 ──

 ネットで調べてみたところでは、いずれも「毎年同じぐらいの割合で単調増加する」という予想だった。最終的な到達点は、「2030年に 50%」とか、「2035年に 100%」とか、さまざまな予想や目標があるのだが、伸びていく速度そのものは、毎年一定であると想定されている。

 ──

 一方、私は「違う」と予想する。
 「これまでは初期購入者(アーリー・アダプター)が、物珍しさの観点から、高額でも購入してくれた。しかし物珍しさがなくなると、ガソリン車との競合となる。その点、現時点では補助金なしでは勝負にならないので、大幅に負けており、普及率の急増は見込めない。今後の数年間は、伸び率は鈍化するだろう」
 「しかし数年後に、全固体電池が実用化されると、家庭の普通充電で十分に充電できるようになるし、路上の急速充電でも短時間充電ができるようになる。こうなれば、EV のデメリットがなくなるので、ガソリン車とまともに勝負できる。しかも、このころにはコストも大幅に下がっているので、ガソリン車よりも有利にさえなる」
 「したがって、結論としては、数年後に分水嶺が来て、それ以後は急激に普及率が高まるはずだ」

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 この予想は当たるだろうか? そこで、参考のため、ハイブリッドではどうだったかを見る。

 (1)
 過去のハイブリッド車の販売台数は、下記にある。
  → https://ignition-inc.jp/column/gas-station-future-10years/
 ここから、次の画像を得る。


grape-j2.jpg


 2009年ごろから急増しているように見えるが、転換があったかどうかまでははっきりとしない。

 (2)
 そこで 2009年ごろに絞った、別のグラフを見る。
  → https://ev.gogo.gs/news/detail/1545054496/
 ここから、次のグラフを得る。


hybrid-up2.png


 2009年から急増が始まっていることが、明らかに見て取れる。では、それはなぜか?

 (3)
 そのことは、当時の事情を知っていれば、すぐにわかる。2009年は、三代目プリウスが発売された年だ。これが大人気となって、急激に販売台数を増やしたのだ。。
 2代目プリウスまで、「ハイブリッド車は車両価格が高い」というのが常識だった。
 しかし2009〜2015年に販売された3代目プリウスはその常識を覆し、車両本体価格を下げてさらに大ヒットすることとなった。
( → トヨタ 中古プリウスは3代目が人気!?「ベストカー」

 三代目プリウスは、爆発的と言えるほどの大人気があった。実際、出来がよかった。高性能で、低価格だった。品質的にガソリン車に勝っていた。このとき、「ガソリン車に勝つ」という境界線を越えたのだ。
 これ以後、ハイブリッド車は急増することになった。その分水嶺が、2009年にあったのだ。

 (4)
 EV もまた、同様の分水嶺があるだろう。私はそう推定する。
 EV はいつかガソリン車を越える。それまではガソリン車に劣っていたのに、あるときを境に、ガソリン車を上回る。すると、急激に販売台数が急増していくのだ。補助金なしでも、どんどん売れて、普及率がどんどん高まっていく。
 そして、それは数年後に来るだろう。その時期は、全固体電池が実用化した時期……ではなくて、全固体電池が実用化したあとで、さらに価格が安くなった時期だ。……このとき、性能面でも価格面でも、ガソリン車を越えることになる。

 ──

 では、その全固体電池は、いつごろ実用化するだろうか? 下記に参考記事がある。
  ( ※ 個体と固体の誤字は、原文のママ。)
 日産は、横浜工場内に全個体電池のパイロット生産ラインを構築中で、2024年度中には完成予定だが実用化は2028年の予定。対するトヨタは出光と全個体電池の実用化を2027〜2028年に目指している。実際に日産は、同社の横浜工場内に全個体電池のパイロット生産ラインを構築中で、2024年度中には完成する計画だ。
( → ホンダと日産が手を組んだらどうなる? ベストカー

 2028年ごろに実用化する見込みらしい。ただし、これはまだ初期生産だ。本格生産は 2030〜2035年ごろかも。このころには価格もこなれていきそうだ。とすれば、このころが分水嶺となりそうだ。それ以後、EV が急増の曲線を取りそうだ。プリウス三代目のように。
 そして、そのときまでは、まだ急増にはならないようだ。



 【 関連サイト 】

 → テスラ・BYDに逆襲へ 工場も電池も“チェンジ”:日経ビジネス電子版(2023.6.30)
 日産がEVの旗艦車種と位置付けるアリア。世界的な半導体不足で生産遅れが続いていたが、「ほぼ毎月、生産台数を増やしている」(栃木工場の菊池英司工場長)。23年中には「最大能力(2シフト制を前提に1日当たり換算で約480台)に近い水準までもっていける」と鼻息は荒い。

 → 日産が常州工場を閉鎖! 生産能力1割減が中国市場の終焉の始まりと言えるワケ
 また、日産が中国国内において抱えている問題点というのが大きくふたつ存在します。
 第一に、日産ブランドにおける電気自動車の需要が壊滅的であるという点です。
 中国国内では、現在アリアは20万元弱、日本円で440万円からの発売。ところがディーラーにおいて、さらに全グレード一律で5.5万元もの値引き措置を断行中であり、よって日本円で319万円から購入可能という、まさに破格の値段設定です。投げ売り同然の値段設定だったとしても、中国人には刺さっていないということを意味するわけです。

 ──

 そして、この日産に関して厳しい市場動向というのが、第二の懸念点でもあった、シルフィ一本足打法にイエロー信号が点り始めているという点です。……これほどの値引き措置を行って、なんとか販売台数の減少スピードを抑えているといえます。
 そして、その大幅値引き措置の決定に大きな影響を与えているのが、大衆セグメントの王者、BYDの大衆セダンQin Plusの存在でしょう。このQin Plusについては、2月からHonor Editionという2024年モデルを発売。EV航続距離46kmを実現するPHEVであるにもかかわらず、なんと8万元未満、日本円で176万円から発売されている状況です。

 中国 BYD は、PHEV 車を圧倒的な低価格で提供する。そのせいで日産のガソリン車はまったく売れなくなってきている。日産は新規に作った新工場を、たったの四年で閉鎖する憂き目に遭っている。この分だと、中国から撤退か。のみならず、日産という会社そのものが閉鎖されるか。

 日産は、e-POWER をちょっといじるだけで、PHEV を作れる。なのに、そうしないで、無為無策でいるばかりだ。日産はもはや倒産するしかないのかもね。……と思ったが、そう言えば、今年の春には、「日産とホンダが EV で提携する」という話があった。
 EV の技術がないホンダと、EV の技術はあるが商品化できない日産。案外、補えあえる関係かもね。

( ※ 「うまい話だ」と思う人もいるかもしれないが、しょせんは、「弱者連合・劣者連合」だろう。それが私の評価だ。イヤミ。)

posted by 管理人 at 22:58 | Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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