EV の普通充電には 200V が使われる。これを2倍の 400V にすると、4分の1の時間で充電できる。それは必要か?
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この問題は、前に扱った。
→ 普通充電器と急速充電器: Open ブログ
そこでは、コメント欄でいろいろと議論したが、次の判断も生じた。
「欧州は単相 230V の電圧が標準だ。そこで、日本も単相 230V が標準になれば、三相 400V を導入できるので、EV の充電装置も、400V を導入できるだろう。そうなれば、4分の1の時間で充電できるようになる」
一方、必要性については、次のように述べた。
「太陽光発電の発電時間は、昼間の8時間ぐらいがあるが、そのうち余剰電力が発生するのは4時間ぐらいだけだ。その4時間に充電するとして、充電時間は4時間しかない。一方で、普通充電には、8〜16時間もかかる。(リーフで8時間、アリアで 16時間。)これでは時間がかかりすぎる。充電時間の短縮のため、時間を4分の1ぐらいに減らしてほしい。つまり、電圧を2倍にしてほしい」
このことから、電圧を2倍にすることが要請された。
今すぐはともかく、太陽光発電が大幅に増える 20年後の課題として、「電圧を2倍にすること」が要請されたわけだ。
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一方で、前項では、次のことが示された。
「太陽光発電の電力を充電するためには、EV が 1000万台あれば済むのに、現実には 8000万台もある」
とすれば、充電のためには、8000万台のすべてを使う必要はなく、8分の1にあたる 1000万台だけを使えば足りる。
8000万台のうち、4000万台は、走行中だったり出向中だったりで、充電池としては使えないだろう。残りの 4000万台が使えるとして、そのうちの 1000万台だけを使えば足りることになる。
ただし、充電能力の全部を使い切るには、かなりの時間が必要だ。(リーフで8時間、アリアで 16時間。)なのに、現実には、4時間しか充電できない。となると、必要な台数は、2倍〜4倍になる。つまり、2000万台〜4000万台が必要となる。
こうなると、かなりギリギリとなりそうだ。
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結局、前項と本項をまとめると、次のように言える。
EV の充電池の量は、十分である。日本の発電量の全体が太陽光発電になったとしても、その発電量の全体を EV に充電することができる。(前項)
しかし、充電池の量は足りても、充電器の性能が足りない。普通充電器では、電圧が低すぎて、電力の余る4時間のうちに、余る電力量のすべてを充電しきれない。
これを解決するには、電圧を2倍にして、充電時間を4分の1にするべきだ、と思えた。ただし電力配備の全面変更をともなうので、非常に面倒だ。
一方、この問題は、使う EV の数を4倍にすることで、とりあえず難点を回避できる。充電可能量は4分の1でも、EV の台数を4倍に増やすことで、とりあえずは必要な充電池の量を満たすことができる。
とはいえ、これは、かなりギリギリな方法だ。「 EV の普及率が 100% にならず、50%ぐらいにとどまる」というような状況になったら、計画が破綻しかねない。かなり綱渡り的になる。
となると、中期的にはともかく、長期的には、電圧を2倍にする道に進むべきだろう。
※ 欧州では何十年も前から実現していることなので、特に難しいわけではない。
[ 付記 ]
ただし、20年も先の話となると、事情は流動的だ。その間に、何が起こるか、定かでない。たとえば、
・ EV の中古電池が大量に余って、EV 充電そのものが不要になる
・ パワー半導体の技術進歩が急速に進んで、電圧の昇圧も簡単にできるようになる
というような、いろいろな状況が想定される。
「電圧を2倍にするべきだ」という提案は、確定的な提案というよりは、考えられる未来のうちの一つの候補として、きちんと検討する、というふうにしておくべきだろう。
何のために? いざというときのためだ。それは、「そんなこともあろうかと」と思って、あらかじめ対策しておくということだ。そういうことができるか否かで、プロジェクトの全体の成否が決まる。
「そんなこともあろうかと」と思って、あらかじめ対策しておいたから、はやぶさは成功した。はやぶさでなく、日本全体の運命についても、同様のことはできるだろうか?