再生可能エネ発電をなるべく抑制しようという政策を、日本政府は取る。なぜそんな馬鹿なことをする?
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前項では、日本の太陽光発電がなかなか拡大しないことについて説明した。その原因は「農地転用の不許可により、太陽光パネルの設置が禁止されていること」であり、その対策は「農地転用をしないで、太陽光パネルを設置することだ」と述べた。
さて。その後、あらためてAI( Gemini )に質問してみたところ、次の回答を得た。
Q: 農地転用の許可なく太陽光パネルを設置してもいいか?
A: 結論から言うと、農地転用の許可なく農地に太陽光パネルを設置することは違法です。
農地法では、農地を他の目的に転用するには、都道府県知事の許可が必要となります。許可なしに転用した場合、50万円以下の罰金に科せられる可能性があります。
しかし、**「ソーラーシェアリング」**と呼ばれる、農地転用許可を得ずに農地に太陽光パネルを設置する方法があります。ソーラーシェアリングは、農業と太陽光発電を両立させるもので、以下の条件を満たす必要があります。
・ 農地としての利用に支障を及ぼさないこと
・ 都道府県知事等に届出すること
・ 毎年1回、農地で栽培した作物の種類及び数量を報告すること
おおむね、前項で述べたことと同趣旨である。
・ 単に太陽光パネルを設置することは禁止
・ 農地と太陽光発電の併用は OK
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さて。そういうことであれば、問題は次のことに移行する。
「農地と太陽光発電の併用は許されているのに、現実にはそれが進まないのは、どうしてか?」
これについてデータを調べたりした末に、私が出した結論は、こうだ。
「太陽光発電の買い取り価格が安すぎるので、あまり儲からないからだ」
人は利益のために動く動物である。儲かることならばやるが、儲からないことはやらない。それが経済活動の原理だ。
では、太陽発電の場合はどうか? 「わずかに利益は出るが、あまり儲からない」というこが、結論となる。
データで言うと、買い取り価格は、こうだ。(1kWh あたり)
出典:資源エネルギー庁
個人住宅だと、 16円。それ以外は 9.5円〜10円。冬季は 12円に上がることもある。
一方、電力の販売価格は、家庭用で 20円〜30円 ぐらいだ。約2〜3倍の高価格だ。その差額は、電力会社の利益の分もあるが、送電にかかる費用の分もある。ちょっとわかりづらい。
そこで、電力市場の取引価格を見ると、10〜14円ぐらいで取引されているとわかる。
→ スポット市場価格(月平均) - JEPX Information
これが相場だ。となると、この相場よりも、太陽光発電は少し安めであるとわかる。
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一方で、次の話題もある。
太陽光発電の発電コストは、火力発電よりも高い。そこで、太陽光発電のための補助金をまかなうために、電気代に上乗せさせるのが、「再エネ賦課金」だ。
( → 再エネ賦課金の謎: Open ブログ )
これがどのくらいの額かというと、現在はこうだ。
2024年度は2円以上も上がってこの5月からの再エネ賦課金は3.49円/kWhと過去最高額に戻ってしまったのである。
( → 24年5月以降「電気代が跳ね上がる」深刻な理由、裏にある政府の“愚策” 連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」|Seizo Trend )
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以上をまとめて言おう。
電力市場価格の取引価格は、12円前後と見なせる。それに「再エネ賦課金」の 3.49円が加算される。合計で 15.5 円程度が、太陽光発電の購入にふさわしい額だ。
この額は、個人用住宅に払う額である 16円には匹敵するが、それ以外に払う額である 9.5円〜10円に比べると、圧倒的に安い。
つまり、こう結論できる。
「消費者は電気料金と再エネ賦課金で、高額の金を払っている。その高額の金は、太陽光発電のために使われるという名分だが、実際には、太陽光発電のためには使われない。金は太陽光パネルの設置費用には使われない。」
※ 9.5〜10円しか払わないからだ。
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では、その差額の金は、どこへ消えてしまったのか? 次のように推定できる。
・ 個人住宅の場合は、金は屋根の工事代に消えた。
・ 事業者向けの場合は、金は電力会社の懐に入った。
(1) 屋根工事
東京都などは、「個人住宅の屋根に太陽光パネルを設置するべし」という方針で、多額の補助金を出している。数十万円もの補助金だ。で、その補助金は何のために使われるかというと、太陽光パネルのためではなく、太陽光パネルを設置するための屋根工事代に使われる。発電装置そのもののためではなく、高額な屋根工事代のために使われるのだ。
要するに、ただの無駄である。無駄なことをすると、無駄な金が必要だから、税金を多額に投入する、というわけだ。意味のない無駄な事業のために、税金を無駄に浪費しよう、というわけだ。非効率の極み。これがいわゆる「エセ環境主義」だ。(グリーン・ウォッシュともいう。)
※ 屋根でなく地上に太陽光パネルを設置すれば、最低限の工事代だけで済む。屋根を特別に補強するような無駄金は一切不要だ。
(2) 電力会社の懐
事業者向けには 10円ぐらいの金しか払わないのに、家庭や企業に電力を売るときには 20円以上で売る。送電の手数料を差し引いても、6円以上の差益を得る。暴利だ。
では、その巨額の差益は、どこへ行くか? 「電力会社の懐に入る」というのが、私の推測だ。
で、その巨額の金は何に使われるか? 福島原発事故のあとは、配当が禁止されているので、株主の配当にはならない。かわりにどうするかというと、原発事故の補償金に使われるようだ。
つまり、原発事故で巨額の補償金(兆円単位)の支払い義務が生じたので、その巨額の補償金を払うために、太陽光発電の電力買い取り価格を下げているのだろう。
あるいは、「再エネ賦課金」という名目で、勝手に追加料金を徴収しておきながら、それで得た金を、自分のポケットに入れて、太陽光発電の事業者には金を渡さないでいるのだろう。
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ここまで見れば、わかる。
日本の再エネ発電の制度は、再エネ発電を拡大するためにあるのではない。拡大するどころか、むしろ再エネ発電を縮小しようとしている。本来ならば市場価格に相当する 12〜13円(または再エネ賦課金の額を加算した 16円)ぐらいの金を払うべきなのに、あえて 9.5円〜10円という低価格にする。そういうふうに再エネ発電業者を徹底的に抑圧する。つまり、再エネ発電を抑止しようとする。……世界の潮流とは逆の方針を取るわけだ。
では、その目的は何か? なぜそんな馬鹿げたことをするのか?
それは、電力会社に利益を与えるためだ。では、なぜ? 原発の補償金で、多額の費用がかかるからだ。
お支払い総額 約11兆3,315億円
( → 賠償金のお支払い状況|東京電力 )
この巨額の金を、自分では払えないので、他人に転嫁する。本来ならば、需要家である電力消費者に金を負担してもらうべきだが、火力や原子力発電には負担を求めず、太陽光パネルの設置者ばかりに負担を求める。
これはつまり、「太陽光発電の事業者からは金を奪い、火力や原子力発電の事業者には金を与える」という歪んだ料金制度と同じである。
これはつまり、国策として(あるいは電力会社の方針として)「再エネを抑止して、火力や原子力発電を推進する。そのために歪んだ補助金を出す」といのと同様だ。
つまり、日本は狂気の再エネ抑止政策を取っているのだ。そして、その結果は? 「先進国中で最悪の再エネ発電量」である。要するに、日本は国策として、亡国政策を取っていることになる。
※ 前項で述べたとおり。
まったく、狂気の沙汰だね。
原発補償は東電だけの問題のはずですが、ほかの電力会社もサポートしているのでしょうか。