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研修医の誤診で死亡した、という事例があった。
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(名古屋市昭和区、八事日赤)は17日、2023年6月、緊急治療が必要な上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)の男子高校生(当時16)を、軽症の急性胃腸炎と誤診した結果、死亡させる医療過誤があったと発表した。
病院によると、男子高校生は同年5月28日早朝、腹痛や嘔吐(おうと)、下痢などを訴え、救急外来を受診。診察した研修医はCT画像で胃の拡張を認めたが、脱水の進行を示す異常値を認識せず、急性胃腸炎と誤診した。……上級医への相談は院内に規定がなく、していなかった。
翌29日に再び来院し、……同年6月15日未明に死亡した。
佐藤公治院長は……研修医が上級医に相談する規定を策定するなどの再発防止策を示した。
( → 研修医が急性胃腸炎と誤診、16歳の高校生死亡 名古屋の第二日赤:朝日新聞 )
早朝だから、研修医が患者に対応する。そこまではいい。
しかしそのあと、研修医が対応した状況について、上級医がチェックしていない。つまり、誤診の可能性があることを考慮せず、すべて研修医に丸投げしている。
呆れる。通常の会社で、こんなことをするだろうか?
新たな客が来たときに、担当者がいないので、新米のペーペーが対応する。そこまではいい。だが、ペーペーが対応したあとは、ペーペーの対応を聞いて、担当者が正しく引き継ぐのが当然だろう。ペーペーに丸投げするなんて、ありえない。
今回は、そういう「ありえないこと」を、組織的にやらかしている。ペーペーに丸投げして、上級医が何ら関与しないでいるのだ。チェックすらしないで。呆れる。
まあ、それを反省して、今後は上級医のチェックを入れるらしい。そこまではいい。だが、その対処をするのは、この病院だけだ。他の病院はそうしない。つまり、他の病院では今後も、ペーペーに丸投げするというシステムが放置されるらしい。げげげ。医者に殺されるようなものだ。
ちなみに、私が親知らずを処置したときも、正月だということで、抜歯は研修医がやった。その際、処置がちょっとまずかった感じもある。そのせいで後遺症が長く続いた。
研修医というのは、基本的には未熟なものだ。そんな研修医に丸投げするというシステムは、イカレている。
病院のコストダウンが進むと、こういうことになる。貧すれば鈍す。それが日本の医療だ。
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あなたもいつか、その犠牲になるかもしれない。こんなふうに。
「申し訳ありません。症状が悪化したのが、たまたま早朝で、研修医しかいませんでした。そのせいでうまく CT の画像診断ができなくて、小さな異変を見逃してしまいました。上級医に報告するべきでしたが、それを怠りました。それが死亡の理由です」
「何で報告を怠ったんだよ!」
「うちは日赤名古屋第二病院じゃないからです。各病院で、最初の犠牲者が出たあとで、体制が是正されます。あなたが死亡したので、今後は、当院でも体制が是正されます。あなたの犠牲は無駄にしません。ただしあなたは初回なので、犠牲になってください」
「しょうがないな。それじゃおれは死ぬよ。あ、もう死んでいたか」

[ 付記 ]
別途、詳細情報を探ったところ、正式の報告書を見出した。
→ 正式の報告書
医療専門用語がいっぱい出ている。単純な誤診かと思ったが、そうでもないようだ。判断はかなり難しかったようだ。CT を読み取る経験値が高くないと、正確な診断はできないだろう。これを研修医の誤診と見なすのは、ちょっと厳しい。(愚かなので)「間違った」というよりは、(対象が難しいので)「見逃した」というべきだろう。研修医には荷が重すぎる。
研修医を非難することはできない、というのが、私の判定だ。
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ちなみに、手元にあるAI医療診断ソフトに診断させたところ、見事に誤診した。SMA症候群なんていう珍しい病気は、そこらの安いAI医療診断ソフトでは、見逃されてしまうのだ。