2024年06月18日

◆ 雇用されたきゃ寄付金を出せ

 雇用されたければ寄付金を出せ、という滅茶苦茶な事例がある。(東京女子医大)

 ──

 概要は次の通り。雇用のみならず昇格でも、寄付金を要求していた。
 東京女子医科大学(東京都新宿区)が、同大卒業生を教員として採用したり昇格させたりする際、同窓会組織への寄付を評価材料にしていた。
 同窓会組織の一般社団法人「至誠会」への寄付や同会の研修への参加などを盛り込んでいた。評価はポイント制で、寄付額などによりポイントが加算される仕組みだった。
 至誠会の幹部は取材に「人事にあたり、寄付金の額によってポイントが増えるというような金品が絡む対応は極めて不適切で倫理上も問題があったと考えている」と話した。
( → 採用・昇格に同窓会組織への寄付を考慮 卒業生対象に 東京女子医大:朝日新聞

 こんな馬鹿げたことは、大問題とするべきだが、文科省は見逃す方針だ。
 文科省の担当者は「……現段階では適切か不適切かの判断はできず、大学からの報告を待ちたい」としている。

 その大学自身は、「別に問題ない」と言って、知らぬ顔の半兵衛だ。
 同大は取材に「寄付を強要していたわけではなく、問題があったとは考えていない」としている。
 大学広報は取材に「至誠会は病院や看護学校の運営という公益的事業をしており、寄付は社会貢献とみなした」と説明。「採用、昇格のために寄付を強要したわけではなく、数十の評価項目の一つでしかなかったので問題があったとは全く考えていない」とした。昨年11月にやめた。

 あれこれと問題点だらけなのだが、それを報じるマスコミも問題点を理解していない。
 上の朝日記事は事実をバラバラに報道するだけで、上記のように話を整理していない。何が問題かもわからないような、とっちらかった記事だ。
 読売新聞も報道しているが、やはり問題点を理解できていない。
  → 東京女子医科大の教員、昇格時に同窓会へ入金「職を買った気がした」…理事から「ポイント不足」指摘 : 読売新聞

 そこで、私が問題点を指摘しよう、以下の通りだ。

 ──

 そもそも、職員から金を吸い上げたければ、単に賃下げをすればいい。普通の会社はそうしている。リストラという名目で、解雇や賃下げをしている。そういう形で会社利益を増やしている。その分、労働分配率が下がる。労働者の取り分は減り、会社の取り分は増える。……これが普通だ。
 ではなぜ、今回はそうしなかったのか? 

 それは、東京女子医大という特別な事情による。すでに報道されたように、次の事件があった。
 同大をめぐっては、至誠会の元職員が元事務長と共謀し、勤務実態がないのに約2千万円の給与を受け取った疑いで、警視庁が今年3月、岩本絹子理事長(至誠会元代表理事)の自宅などを家宅捜索している。

 この元職員というのは、理事長の子飼い職員(= 飼い犬)であるから、実質的には金は理事長のポケットに入ったことになる。つまり、金は次のように流れる。

  労働者の寄付金 → 至誠会(同窓会) → 子飼い職員 → 理事長


 つまり、理事長が同窓会長を兼ねて、口座を私物化して、(勤務実態のない架空の)子飼い職員の給料という名義で、不正な金を2千万円も猫ババしたわけだ。
 こうしてこういうことができたかというと、理事長が独裁体質であって、大学内では誰も口出しできないからだ。それをいいことに、金の使途についても、好き勝手な私物化をしたわけだ。かくて、労働者の金をピンハネして、自分のポケットに入れたわけだ。
 これが今回の事件の構図である。

 ──

 ところがマスコミは、それを報道しない。単に「金が同窓会に入った」というふうに記すだけで、「同窓会を経て金が理事長に入った」ということを報道しない。二つの事件を、別個のこととして報道するだけだ。

   労働者 → 同窓会
         同窓会 → 理事長


 というふうに金は流れているのだから、あとは三段論法で、

  労働者 → (同窓会) → 理事長


 というふうに結論できるのに、そういう論理を働かせることができない。かくて理事長による犯罪は見過ごされる。呆れた間抜けぶりだ。

 ──

 さらに言おう。このような問題の本質は、どこにあるか? それは、理事長の独裁化を許すように、法律が改正されたことだ。2003年の小泉純一郎政権の方針で、私学法が改正されて、理事長の権限が大幅に強化された。
 以下は Gemini による。
Q:
 私学の理事長の権限が強化されたのはいつか? 

A:
私立学校の理事長の権限が強化されたのは、
2004年4月1日に施行された**「私立学校法改正」**によるものです。

この改正により、以下の点が主な変更点として挙げられます。

  • 理事会の権限強化:
    • 理事会が学校法人の最高意思決定機関として明確化されました。
    • 理事長の選任・解任、予算案の議決、人事・組織変更などの権限が理事会に移譲されました。
  • 理事長の代表権強化:
    • 理事長の代表権が明確化され、学校法人を単独で代表することができるようになりました。
    • これまでは、複数の理事が共同で代表権を持つのが一般的でしたが、この改正により、理事長のリーダーシップがより発揮しやすくなりました。
  • 情報公開の充実:
    • 学校法人の経営状況や財務諸表などの情報公開が義務化されました。
    • これにより、学校法人のガバナンスの透明性が向上しました。

これらの改正により、私立学校の経営の効率化や意思決定の迅速化、ガバナンスの強化などが期待されていました。

しかし、理事長の権限強化が必ずしも良い方向に働かないという指摘もあります。例えば、理事長の独裁的な意思決定が進んだり、経営と教育の分離が曖昧になったりするなどの懸念も raisedされています。



 この問題は、すでに以前から何度も指摘されてきた。だから先日、理事長の権限を弱めるように、法律が改正された。
 学校法人のガバナンス(統治)を強化する改正私立学校法が26日、参議院本会議で全会一致で可決され、成立した。理事長への権限集中や、理事長の諮問機関とされている評議員会のチェック機能の形骸化を防ぐ。
 私立大のガバナンスについては、東京医科大などの入試不正問題や、日本大の背任事件などを受け、機能不全が指摘されてきた。
( → 改正私学法が成立 理事長への権限集中を防ぐ 相次いだ不祥事受け:朝日新聞

 なあんだ、国もけっこう頑張っているじゃん……と感心しかけたが、念のために調べ直したところ、全然違うと判明した。これはただの骨抜き法案だった。
  → 私大理事会、権限大幅に残す 改革議論「折衷案」で決着 - 日本経済新聞

 原案は理事会の権限を厳しく制限するものだったが、私学の側(理事長の側)が徹底的に抗戦して、法案を骨抜きにしてしまった。その骨抜き法案が上程されて可決されたわけだ。(詳しくは上記記事。)
 まあ、何も改正しないよりは、いくらかはマシだが、実効性は半分以下だと言える。今回のような理事長の横暴を抑止する効果はあるかというと、ほとんどないと言えるだろう。
 実際、今回の横暴をなした理事長は、相も変わらず理事長の座に居座っている。辞任する意思のかけらも見せない。

 ──

 結論。

 日本の私学は腐っている。独裁者の横暴がまかり通り、独裁者が大学を食い物にする。日大でそれが大問題があったあと、改正の動きを見せたが、結局は大山鳴動ネズミ一匹、ほとんど何も変わらない。法律改正も頓挫した。
 かくて理事長の横暴は放置される。今回も東京女子医大の大問題が発覚したが、理事長は居座るし、マスコミも問題点を指摘しない。(問題に気づかない。三段論法もできない。)
 労働者の金を猫ばばして理事長のポケットに入れる、という詐欺は放置される。何ら処罰もされないし、事実が報道されることもない。「世間をだまして、金をこっそり猫ババする」という、詐欺の構図を指摘するのは、Openブログだけ。


magician.jfif


 正義の味方は Openブログだけ。一方、世間とマスコミは、欺かれるばかり。


( ※ なお、どうしてこういう状況が放置されるかというと、自民党が私学連盟から献金を受けて、買収されているからだ。上記で示した図式における金の一部は、自民党にも流れているわけだ。 同じ穴のムジナ。)


posted by 管理人 at 22:48 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
寄付金の額はは知りませんが東京理科大もそうだったと聞いています。まだ東大が60歳定年だった時に、多くの教員が寄付金を払って移ったようです。
Posted by ひまなので at 2024年06月19日 09:51
 Gemini の引用部分がおかしかったので、差し替えました。
 初回調査時は、2004年と記してあったので、下書きメモではそれを記していたのだが、本項執筆時に再調査したら、2023年と記してあった。それに気づかないまま掲載していた。
 今、改めて読み直したら、2023年という記載に気づいて、改めて Gemini に質問したら、2004年という回答が戻ってきた。その回答に、文中の引用部を差し替えた。(回答文全体を差し替えた。部分でなく。)

 Gemini の回答も、ときどき狂ってしまうようだ。安定しない。

 なお、Perplexity と ChatGPT の回答は、使い物にならなかった。
Posted by 管理人 at 2024年06月19日 10:33
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