2024年06月16日

◆ 明治神宮外苑の再開発 .2

 明治神宮外苑の再開発を巡って、ふたたび反対論が湧き起こっている。

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 東京都知事選に立候補を予定する蓮舫議員が、外苑再開発を問題視する旨の発言をした。
 東京都知事選への立候補を表明した蓮舫参院議員=立憲民主党に離党届提出=は14日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見し、明治神宮外苑の再開発について「一度立ち止まるべきだと考えている」と述べ、知事選の争点になるとの考えを示した。
 再開発を巡っては、文化遺産の破壊に当たるとして、事業を認可した都の対応に批判も出ている。今月8日に現地を視察した蓮舫氏は「多くの都民がおかしいという声を上げている。東京で緑を切るような開発が本当に必要なのかを問いたい」と強調した。
( → 蓮舫氏「外苑再開発立ち止まる」 都知事選争点との考え | 共同通信

 これについては賛否両論があった。
  → はてなブックマーク
 ここでは、蓮舫議員に批判的な声の方が強かったようだ

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 一方、本日になって、外苑再開発に「癒着」の問題があるという指摘が出た。共産党のスクープだ。
 神宮外苑再開発(新宿区、港区)などの大型再開発を主導する三井不動産グループ2社に、都局長ら幹部14人が天下りしていたことがわかりました。いずれも小池百合子知事が肝煎りで進める事業です。14人のうち8人が再開発事業を所管する都市整備局の元幹部で、元局長2人が含まれます。癒着の根深さを裏付けています。
( → 都幹部14人 三井不天下り/選手村・外苑…知事肝煎り再開発

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 では、どうしてこういう癒着が起こるのか? 
 そのわけは、外苑再開発という事業そのものが、巨大な利権事業であるからだ。
 そのことは、下記記事からわかる。
 明治神宮外苑の再開発についてNHKが事業計画書を入手したところ、新たに高層ビルを建設することで得られる収益などで3400億円に上る再開発の費用全額を賄う事業スキームの詳細が明らかになりました。
 高層ビル3棟が新たに建設される予定です。
 NHKはなぜ高層ビルが必要なのか調べるため、再開発の事業計画書などを入手しました。
 計画書には再開発にかかる事業費は3490億円余りで、その全額を「保留床処分金」で賄い自己資金は「0」と記載されています。
 具体的には神宮球場やラグビー場上空の容積率を移して高層ビルを建てられるようにして、新たに生み出される「保留床」と呼ばれるフロアを活用して得られる収益などを事業費に充てる計画です。
( → 神宮外苑再開発 高層ビルフロア活用などで全事業費賄う計画 | NHK | 東京都

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 話はここで終わっている。まるで推理小説の冒頭部みたいだ。被害だけがわかっていて、真相や真犯人が判明していない状況だ。

 その後、共産党の記事によって、「癒着」が判明したので、真犯人は東京都の役人だ(たぶんラスボスは小池百合子だ)というところまでは判明したことになる。
 とはいえ、真相の全体は判明していないことになる。真相の解明には、名探偵の登場が待たれる。


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 そこで、名探偵が解き明かそう。こうだ。

 そもそも、どうしてこの際開発の計画が起こったか? 
 神宮球場が老朽化している。そこで、球場の建て替えが必要だ。しかし所有者である明治神宮は、建て替えの資金がない。困った。そこで、資金をまかなうために、土地の一部に高層ビルを建てて、その収益を得て、球場を建て直す。これならば、球場の建て替えもできるし、建て替えの費用もまかなえる。その意味で、公益性がある。だから、東京都が再開発の計画を認めた……というわけだ。
 いかにも筋が通っているように見えるので、たいていの人は、この計画にだまされた。詐欺師の口車に引っかかったわけだ。悪魔的なペテンというのはこういうものだ。たいていの人はだまされる。

 実は、普通の方法なら、こうなる。
 「球場の建て替えには、借金をする。その借金で、球場を建て替えてから、球場の収益で、借金を返済する」
 この方式で、通常はまかなえる。神宮球場はヤクルトのホームタウンだから、収益性の点では問題がない。はるかに条件の悪い横浜球場でさえ、黒字になるのだから、(もともとの土地代のかからない)神宮球場では、この方式で何ら問題なく建て替えができる。
 普通なら、そうする。それで十分に黒字になる。

 しかし、詐欺師は違う。こう考える。
 「十分な黒字だけでは足りない。普通の黒字を上回る、巨額の黒字を得たい。それは、普通の方法では無理だが、公益を盗む形でなら、可能だ」

 公益とは何か? ここが「緑地に指定されている」ということだ。地目が緑地なので、せいぜい球場のようなスポーツ施設しか作れない。
 その地目を変更して、商業地に変更する。すると、あれよあれよという間に、土地の価格が暴騰する。ビルを建てられない緑地が、高層ビルを建てられる宝に転換する。ゴミが宝に転換する。その差益を、懐に入れてしまえばいい。巨額のボロ儲けとなる。

 ただし、「緑地を商業地に転換する」というようなことは、普通は認められない。そこで、人々をだますために、上記のような名分を立てる。「老朽化した球場の建て替えのため」と。
 しかしこれは嘘である。「老朽化した球場の建て替えのため」には、借金で立て直せばいいのであって、地目の転換は必要ないからだ。ところが、この嘘に、たいていの人はだまされる。詐欺師のペテンは成功する。

 このペテンの本質は何か? 次のことだ。
 「地目の転換によって、明治神宮は途轍もない巨額の利益を得る。ただし、その利益は、地目を転換した時点に一挙に得るのではなく、今後の数十年をかけて、球場の利用料を得るという形で得る」

 たとえば、高層ビルを建てるときの土地代が 1000億円だとして、その 1000億円の利益を、今現在の時点で一挙に得るのでなく、今後50年間をかけて、「毎年 40億円ぐらい受け取る」というような形でもらう。( 40億円を 50年だと、総額で 2000億円になるが、あとで受け取る繰り延べの利子を考えると、そのくらいになるだろう。)

 ともあれ、「一挙に土地代金を受け取るのでなく、今後の球場利用料として毎年少しずつ受け取る」という形に転換することで、巨額の利益を得るという事実を隠蔽した。
 そのことで、本来は不可能な「緑地を商業地に転換する」ということが認められた。要するに、公益を食い物にして、私物化した。
 明治神宮は、公的なものとして宗教施設として認められているのだが、その運営をしている関係者が、あれこれと利権を食い物にしているわけだ。

 そして、それに奉仕するために、東京都は「緑地を商業地に転換する」という、本来ならば禁じられたことに手を付けた。公的権力を、一部の私人の利益に奉仕するために、行使した。
 そして、その代償として、東京都は多人数を天下りさせる権利を得たのだ。「おまえには巨額の利益を与えるのだから、そのうちの一部をおれたちにも寄越せ」と言って。

 これが、今回の癒着の本質だ。明治神宮と東京都が共謀して、緑地の地目を変更して、巨額の利益を得た。それで損をしたのは、緑地を大幅に失った、東京都民である。
 そして、東京都民が損した分、明治神宮と東京都が得をした。それに関与したのが、三井不動産だ。
 「あなたたち、公益を食い物にして、巨額の利益を得るのですね。でしたら、私も1枚加わらせてくれませんか。悪いようにはしませんぜ。ほれ、この通り」


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「おぬしも悪よのう」
「小池さまほどでは」





 [ 付記1 ]
 「蓮舫が外苑開発を取り上げたから、その尻馬に乗っているね。蓮舫に利用されているだけだろ」
 と思う人もいそうだが、さにあらず。
 そもそも小池都知事は、五輪のときから、電通と癒着して、巨額の利益を電通に与えていた。その大問題があった。みんな、もう忘れてしまったようだが。
 この問題は、本サイトでも扱ったことがある。小池と組織委と電通の癒着という話。
  → 続・五輪開会式の内幕(文春): Open ブログ

 [ 付記2 ]
 実は、今回の再開発の構想(スキーム)の背後には、電通がある。五輪と同じく、電通が背後で暗躍して、外苑再開発の利権を操った。詳細は下記に記してある。
  → 規制ガチガチだった神宮外苑、1人のコンサルが吹聴した「将来像」が「開発利権」に火を付けた:東京新聞
 当初は米田勝安というコンサルが構想を掲げた。それを引き継いで、「巨大な利権があるぞ」と目を付けて、食い物にしようとしたのが、電通だ。そうなるとさっそく、自民や小池が吸い寄せられることとなる。(利権を狙うハイエナのように。)
 利権の背後には電通あり、という感じだ。本サイトでは何度も扱った。
  → サイト内 検索

 [ 付記3 ]
 今回は共産党が癒着を暴露した。
 共産党は国民のために真相を明かすが、そのせいで、利権を食い物にする人たちは困る。何としても共産党を排除したい。……そう思ったので、連合は共産党と立憲がくっつくのを阻止しようとした。
 今の連合トップがいかに利権まみれか、よくわかる。「共産党排除」を言っている時点で、連合は癒着仲間の一部であると判明するね。連合トップは腐っている。(だから、腐敗を排除したがる共産党を、目の敵にする。)

 [ 付記4 ]
 先に述べたように、普通の方法なら、こうなる。
 「球場の建て替えには、借金をする。その借金で、球場を建て替えてから、球場の収益で、借金を返済する」
 ただし、これをやるには、事業計画が必要だ。それは素人には難しいかもしれない。それなら、土地を丸ごとヤクルト球団に貸与すればいいのだ。たとえば、70年契約で、「年間 10億円(物価スライドあり)」というふうに決めればいい。
 その上で、球場建設は、ヤクルト球団が自前でやればいい。球場建設費も、球場からの収入も、すべてヤクルト球団がやるわけだ。
 これで問題は解決する。実際、ファイターズは新球場で、この方式を採用した。
  → https://x.gd/lVnxY




 【 関連項目 】

 外苑再開発については、前にも言及した。
  → 明治神宮外苑の再開発: Open ブログ

 ※ 野球場は現状のように再開発していい。一方、ラグビー場とテニス場は、(利用者が少なくて)無駄なので、この部分は、東京都が買収して、緑地公園にするべきだ……という趣旨。これなら、都民のために役立つ。
 

posted by 管理人 at 22:56 | Comment(2) |  東京五輪・万博 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に  [ 付記1 ]〜[ 付記3 ] を加筆しました。癒着の話。
Posted by 管理人 at 2024年06月17日 07:30
神宮球場は1926年竣工とあります。まあ100年持ったなら建て替えもよいと思います。一般論として日本の公共施設の寿命は短すぎます。もちろん住宅やマンションもです。再開発には必ずしも反対とは言いませんが、あと200年は持つように設計し、そのような材料で作ってほしいです。分解しないで困っているプラスチック材料があるのに、建物の設計寿命を50年とするのはやめてましょう。少子高齢化でGDPが減っていくのはもう避けられません。今は社会のストックを増やして、経済が縮小しても豊かに生きられるように準備するべきだと思います。
Posted by ひまなので at 2024年06月17日 09:56
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