2024年05月29日

◆ 武力と平和主義 .47

 ( 前項 の続き )
 イスラエルの横暴を止めるために、われわれはどう行動すればいいか?

 ── 

 パレスチナ国家の承認


 前項末では、「国連にパレスチナ国家の加盟」という件で、「米国の拒否権を止める」という案を出した。
 一方、国連への加盟とは別に、各国が個別にパレスチナ国家の承認をする、という手法もある。実際、パレスチナ国家の承認をする、という方針を打ち出した国が出現している。
 《 ノルウェーなど3カ国、パレスチナ国家承認 イスラエルは大使召還 》
 アイルランド、スペイン、ノルウェーは22日、パレスチナを28日付で国家として承認すると発表した。その上で、他の西側諸国による追随を期待するとした。一方、イスラエルは反発し、3カ国の駐在大使に即時帰国を指示した。
 英国、オーストラリア、スロベニア、マルタも地域の恒久的な平和には2国家による解決が不可欠だとして、過去数カ月においてパレスチナ国家を承認する意向を示している。
 一方、ドイツは22日、さらなる対話が必要との見解を示したほか、フランスは条件がまだ満たされていないとした。
 この問題で欧州諸国の立場は分かれており、スウェーデンは10年前に承認したが、フランスは和平に向けて効果的な手段とならない限り承認する計画はないとしている。
( → ロイター

 一方、バイデンは「米国の仲介に従え」という自国中心主義を出しているようだ。
 アメリカのサリバン大統領補佐官は22日の記者会見で、それぞれの国の判断だとしたうえで、「バイデン大統領はこれまで『2国家解決』を支持してきた。そしてこれは一方的な承認ではなく、当事者どうしの直接交渉によってもたらされるべきだと強く主張してきた」と述べ、パレスチナ国家の実現には、イスラエルとパレスチナによる協議が欠かせないと強調しました。
( → アイルランド スペイン ノルウェーの3か国がパレスチナを国家として承認表明 緊張高まる懸念 | NHK | イスラエル・パレスチナ

 イスラエルとパレスチナによる協議というが、要するに「米国主導の協議」ということだから、「米国の仲介に従え」ということだろう。とはいえ、その方針は、イスラエルに蹴られているので、ろくに意味をなさない。
 こういう状況では、各国がバラバラに行動するのもやむを得ない。

 なお、私のお薦めは、前項で示したとおりだ。
 「ラファ攻撃をやめさせる。イスラエルがラファを攻撃するのならば、パレスチナ国家を承認する」
 この方針を、米国が打ち出せばいい。

 以上は、米国に示した方針だが、これを踏襲して、米国以外の各国に、いっせいにこの方針を取ればいい。特に、日本がそうだ。
 「ラファ攻撃をやめさせる。イスラエルがラファを攻撃するのならば、パレスチナ国家を承認する」
 この方針を、日本が打ち出せばいい。
 できれば、日本が主導して、世界中のすべてが同様の方針を打ち出せばいい。

 そして、そうすることを推進するように、人々がいっせいに声を上げればいいのだ。デモや、ネットで。

 ※ イスラエルは「断交する」という対抗措置を取るようだが、これはかえってありがたい。「渡りに船」というものだ。こちらから断交をする手間が省ける。イスラエルが断交しないのなら、日本が「こっちから断交するぞ」と言えばいい。言うだけでなく、実際に断交するといいだろう。世界各国と連帯して、いっしょに断交しよう。あるいは「断交を予定する連帯国」を連名で連ねよう。

 ※ イスラエルと断交すると困るのは、日本では日産自動車ぐらいだろう。Mobileye の自動運転技術を使っているからだ。しかし、この技術はもはや時代遅れだ。単眼カメラ方式は、精度が悪いので、使い物にならない。今ではマルチカメラとステレオカメラを使う時代だ。(もしくは LiDAR だ。)
 

 行動が大事


 前項では、こう述べた。
 「訴えるべき相手は、イスラエルではなく、欧米や日本だ。ここを間違えてはならない」
 そこで、訪米や日本で、政府を動かす必要があるし、(政府の前に)社会を動かす必要もある。では、どうやって? そこで、参考になる話が五つある。


 (1) iPad の CM への抗議

 人々がネットで声を上げても、社会は動かない……と思っている人が多いだろう。最初から諦めているわけだ。
 しかし、人々がネットで声を上げたら、社会は動いた、という例がある。下記の事件だ。
 米アップルは9日、タブレット端末「iPad(アイパッド)プロ」の新型機の動画広告について、不適切だったと謝罪した。巨大なプレス機が楽器やゲーム機、カメラなどを破壊する内容で批判が起きていた。米メディアが報じた。
 広告は新型アイパッドプロの薄さと音楽や映像制作者への有用性のアピールを狙った。しかし米紙ニューヨーク・タイムズは、芸術家や音楽家らが何世紀にもわたり活用してきた「道具をつぶすことで、巨大IT企業がクリエーターの仕事を奪い金を稼いできたことを想起させた」と報道するなど批判が相次いだ。日本でも交流サイト(SNS)で「物を粗末に扱っていて不快」などの指摘が多数出ていた。
 アップルの担当幹部は米広告専門メディアで「的外れなビデオだった。申し訳ない」と述べた。アップルはテレビでこの広告を放送しないことを決めたという。
( → アップルがアイパッド広告で謝罪 巨大プレス機で楽器やゲーム機など破壊で批判相次ぎ - 産経ニュース

 これについては、次の感想があった。
 いつもはあまり英語で書き込まない日本人があちらの掲示板でガシガシ英語で怒りを表明してて外国人も驚いてる。「何が日本人の虎の尾を踏んだのか?」とまあまあな騒ぎになってる。外国人の日本人意見賛同者も多い。
( → はてなブックマーク

 元の社長ツイートは、下記だ。
   → https://x.gd/bi0jK

 この社長ツイートには、あとになって、たくさんの英文リプライも付いたが、当初は日本人が英語で記したリプライがたくさん付いていた。いずれも(英語で)アップルの広告を批判していた。あまりにも日本人のリプライが多いので、欧米人も驚いたようだ。
 ともあれ、日本人が多くの批判を浴びせた。その結果、アップルは方針を改めて、広告を撤回した。
 ここでは、日本人のネットの声が、社会を動かしたことになる。世界的な規模で。

 ガザの住民がどれほど殺害されても騒がない日本人が、器物を破壊されると騒ぎ出す。人が殺されるのには無関心だが、器物を破壊されるのには心の痛みを感じる。すると、その声を聞いたアップルが、方針をひっくり返して、日本人の声を聞いてくれるのだ。
 ネット上の行動が現実を変える一例が、ここにある。


 (2) Google の社員がデモ

 Google の社員が反イスラエルのデモをしたら、会社は社員を解雇した。
  → Googleオフィスに警察、社員50人超を解雇 抗議デモ対応が見せつけた“IT界の巨人”の変貌ぶりとは - ITmedia NEWS
 自由な雰囲気である Google がイスラエル寄りになるなんて……という失望があったようだ。だが、これは市井におけるデモではなく、社内におけるデモだから、違法かもしれない。やりすぎだとも言える。そもそも、Google は創始者二人がユダヤ系なのだから、こんな会社で反イスラエルの運動をするのも、筋がおかしい。

 ただ、それはそれとして、宣伝効果は大きかった。これが大きく報道されたことで、イスラエルの非道ぶりはいっそう大きく宣伝されたことになる。宣伝効果と、社員の損失を比べると、宣伝効果の方が大きいかもね。


 (3) 日本のデモ

 日本ではデモの報道は少ないが、報道はされなくても、デモをする人はいる。







 ただし日本では、反イスラエルのデモは規制されるそうだ。


 なお、日本以外の世界各国では、もちろん多くのデモがなされている。それを日本語で伝えるツイッターもある。
   → https://x.gd/W9aFB

 日本のデモでは、人がパラパラと散在するぐらいだが、外国のデモでは、巨万の群衆が山のように集まっている、とわかる。規模が桁違いだ。


 (4) 都知事選の公約

 都知事選に、蓮舫が立候補するそうだ。選挙がおもしろくなりそうだ。
 さて。ついでに、これとパレスチナ問題を結びつけて考えてみよう。そこで、提案する。
 「都知事選では、候補者はガザ虐殺についても、態度を明かすべきだ」
 私個人の気分としては、こうなる。
 「ガザ虐殺を止めようとする候補者がいるのなら、その候補者を無条件で支持する」
 これは、小池であれ、蓮舫であれ、どっちでもいい。どっちでもいいから、ガザ虐殺を止める方針を示してほしい。そういう方針を示す候補者がいれば、私はその候補者を支持する。
 同様に思う有権者は多いだろう。だから、候補者は、ガザ虐殺について立場を明かすべきだ。

 これに対しては、疑義が出るかもしれない。
 「パレスチナ問題は、外交問題だから、都知事の権限には属さない。そんな公約は無意味だ」
 と。しかし、これは勘違いだ。なぜなら、次の概念があるからだ。
 「都市外交」
 その具体的な見本は下記にある。
  → 国際戦略の推進|東京都政策企画局
 要するに、東京都のレベルでも、日本の首都として、世界に外交方針をアピールできるのだ。もちろん、日本政府の権限については何も言えないが、日本政府とは別の立場から発言することはできる。たとえば、「イスラエルによる大量殺害に反対する」というアピールをすることもできる。
 また、このようなアピールを出すことについて、世界各国の都市と連帯することもできる。
 こういう「都市外交」が可能なのだ。

 さらには、「平和教育」もできる。ガザにおける現実を生徒が理解するように仕向けることができる。教師が頭ごなしに教えるのでなく、生徒が自分の頭で自発的に調べるように仕向けることができる。これは、現実認識や社会学習に相当する。ネット利用の勉強を兼ねることもできる。
 こういう「平和教育」をします、と選挙の公約で訴えるといい。そのことで、「平和のためにみんなで考えよう」という運動を推進することができる。こういう形で平和の気運を盛り上げることができる。

 さらには、東京都独自の権限で、運動を主催したり、デモの会場を提供することもできる。東京都が平和のために尽くすことはできるのだ。
 都知事である女性が先頭に立って、世界の人命救助のために戦うのであれば、その姿を人々は支援するだろう。


jiyuunomegami4.jpg


 (5) 国際司法裁判所

 国際司法裁判所が、ラファ虐殺に関して裁定を下した。
  → 国際司法裁「ラファ軍事侵攻の即時停止」命じる イスラエルは拒絶し空爆続行 - BBCニュース

 国際刑事裁判所も、ネタニヤフ首相の逮捕状を請求した。
  → 国際刑事裁判所、ネタニヤフ首相やハマス幹部ら計5人の逮捕状請求を発表(パレスチナ、米国、イスラエル) | - ジェトロ

 さまざまな国際機関が、イスラエルに向けて圧力を加えている。じわじわと外堀を埋める効果もあるだろう。

 ネタニヤフの譲歩


 以上のように、世界中でイスラエル批判の声が上がっている。
 これらの声を受けて、ネタニヤフもすこそは心の骨が挫けたようだ。これまでは「ガザの 100万人を殺す」「男子を皆殺しにする」「女子供もついでに殺す」という情け容赦ない方針を掲げてきたが、最近になってようやく「皆殺し」の方針を引っ込めたようだ。
 というのは、次の報道が出たからだ。
  → イスラエルのネタニヤフ首相、ラファ攻撃45人死亡「悲劇的な過ち」 | 毎日新聞

 市民に被害が出たことを反省する口ぶりだ。「市民に危害を与えないよう最大限の努力をしたが、悲劇的な過ちが起きた」と。…… あらら。びっくらぽん。
 これまでは、「市民に被害が出るのは当然だ。その責任はすべてハマスにある」と述べて、イスラエルの責任を一切認めなかった。(本サイトのコメント欄でさえ、イスラエルを支持した日本人読者が、「こうなったのはすべてハマスのせいだ」と言っていたほどだ。)
 ところが、上の記事では、ネタニヤフがガザ市民の攻撃について、イスラエルの責任を認めただけでなく、そのことを「過ち」として否定的に論じている。

 これまでならば「女子供を殺したのは素晴らしい戦果だ」と快哉の声を上げていただろう。
 「女子供を殺すことは素晴らしい。パレスチナ人を殺すことは素晴らしい。皆殺しにしてやれ」
 というふうに。そういう悪魔的な方針が、ネタニヤフの方針だった。
 なのに、一転して、上記ではあたかも(悪魔から)人間に戻ったかのような発言をしている。びっくらぽん。

 ネタニヤフもようやく、心の骨が挫けたのかもしれない。とすれば、それは、世界の人々が大きな声を上げたことの成果なのかもしれない。その成果が、部分的であれ、ようやくいくらかは効果が出てきたのかもしれない。
 とすれば、100万人虐殺を阻止して、5万人虐殺ぐらいで止められる可能性も出てきた。……もちろん、それだけでも大変な数ではあるが。




 ※ 次項に続きます。
 
posted by 管理人 at 23:00 | Comment(5) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お元気で復活されておめでとうございます。
 パレスチナ国家承認は可能性がある対抗手段ですね。でも何らかの動機づけが必要でしょう。
 この前国連でフランス、韓国とともに日本もそのような動きに賛成票を投じていましたね。あれは何だったのでしょうか。BBCでは報道されていたのですが、日本ではあまり報道されていなかったように思います。
 個人でできることは限られています。イスラエルからの輸入品なんてないので、せめてユダヤ資本のハンバーガーショップに行かないとかでしょうか。
Posted by ひまなので at 2024年05月30日 17:18
やはり管理人さんの洞察力とロジックには脱帽です。
こちらは単なるインスピレーション、しかも管理人さんの考えを見た後の思い付きに過ぎないので、日本政府はOpenブログを見習って、特に自民党は政策に取り入れるようにもっていきたい!

オレ自身の思想がリベラルだということが解って満足してる
Posted by hidari_uma at 2024年06月01日 13:50
トランプ、プーチン、習近平には肩入れしてるので、一概にリベラルとも言えないのかな?
Posted by hidari_uma at 2024年06月01日 14:00
>(4) 都知事選の公約
>都知事選に、蓮舫が立候補するそうだ。選挙がおもしろくなりそうだ。
>さて。ついでに、これとパレスチナ問題を結びつけて考えてみよう。そこで、提案する。
>「都知事選では、候補者はガザ虐殺についても、態度を明かすべきだ」

これには「田母神俊雄を落選させること」が最重要ではないでしょうか。
田母神はイスラエル訪問経験があるのみならず、過去のTwitter X を見る限り、明確なイスラエルシンパです。

https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2014/08/post-670_1.php

https://x.com/toshio_tamogami/status/512724443789942784

https://x.com/toshio_tamogami/status/510614544826109952?lang=ar-x-fm

https://x.com/toshio_tamogami/status/1717279144189542607

小池百合子は、イスラエルと対峙するエジプトのカイロ大学に(卒業したかはともかく)留学経験があります。
蓮舫の所属する立憲民主党からは、イスラエルによる国際法違反の可能性を指摘する国会質疑をしたり、反イスラエルデモに参加者したりする国会議員が複数います。
そのため、小池・蓮舫の両氏がイスラエルシンパである可能性は低いように思います。
Posted by アイス at 2024年06月03日 00:38
>(3) 日本のデモ
>日本ではデモの報道は少ないが、報道はされなくても、デモをする人はいる。

ところで、日本においてイスラエルへの抗議活動を快く思わない人は「中国」「台湾」「北朝鮮」を引き合いに出す傾向があるように思います。

例えば以下の区議会議員によるツイート

https://x.com/lingualandjp/status/1787662042243178593

この他にも(反イスラエルデモの参加者に対して)「中国が台湾侵攻したら台湾が悪いと言うんだろ」「なぜウイグルを弾圧する中国には声を挙げないんだ」「北朝鮮の拉致問題には冷たいくせに」みたいな意見をTwitter X などで見ます。
一方、欧州、特にドイツでは、イスラエルへの抗議デモの参加者に「反ユダヤ主義」というレッテルが張られることが日常茶飯事です。

ホロコーストとガザ侵攻の狭間で
https://d4p.world/25715/

なぜ、日本とドイツでは、イスラエルに抗議の声を挙げる国民・市民に対する(イスラエル擁護者?による)レッテル貼りの言説が異なるのでしょうか?

Posted by アイス at 2024年06月03日 01:57
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