世界はあえて真実に目をふさぐ。そのあげく……
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狂人と偽装者
イスラエルは暴走するが、世界はそれを止められない。なぜか? 人々の良心が麻痺しているからだ。それでいて、イスラエルに同調すること(虐殺を容認すること)を、良識的だと思い込む。そういう倒錯的な状況にある。まったく狂人的だ。……前項では、そう示した。
では、世界はまさしく狂人となっているのだろうか?
いや、違う。世界は狂人なのではない。なぜか? 狂人は自分のやっていることを、本気で「正しい」と思っている。一方、彼らは自分のやっていることを「正しい」と言い張りながらも、内心では後ろめたさを感じているのだ。つまり、自分が悪をなしていることを、心の奥では理解しているのだ。それでいて、表面的には「自分は正しい」と言い張る。つまり、偽装する。
米国であれ、ドイツであれ、日本であれ、彼らは自分が悪をなしていることをひそかに自覚している。だから、G7 の声明でも、「停戦」を求めながら、イスラエルを名指しで非難することを抑止しようと、必死に表現を曖昧化して、偽装する。
要するに、「王様は裸だ」と言えないのだが、「王様は裸だ」と内心ではとわかっているのだ。そこで、内心を隠して、嘘をつく。嘘をつくために、必死に言葉をていねいにギリギリまで工夫する。……このときまさしく、彼らは自分が嘘つきであることを自覚しているはずなのだ。
「これは虐殺だ」
「虐殺・侵略しているのはイスラエルだ」
「イスラエルは攻撃を止めるべきだ」
そういう真実をわかっている。わかっているのに、そう語ることができない。
「イスラエルの攻撃を自分たちは非難するべきだ」
とも自覚している。なのに、そうできない。「王様は裸だ」と言うことができない。自分が嘘つきだとわかっていながら、あえて嘘をつき続ける。
こういう彼らは、決して狂人であるわけではない。良心を麻痺させているだけだ。それも、意図的に。
各国の方針
彼らは良心を麻痺させる。その結果、あえて目をふさぐ。真実を見ない。見て見ぬフリをする。真実を偽装して、嘘をつく。
それが、欧米や日本のなしてきたことだった。その方針を、以下に列挙しよう。
(1) 米国の虐殺否定
イスラエルがガザで大量の殺害をしているのに、米国高官はその事実を否定した。「虐殺ではない」と。
ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は、ガザ地区での戦闘の犠牲はジェノサイド=大量虐殺ではないとの認識を示しました。
「我々はガザで起きていることがジェノサイド=大量虐殺だとは考えていない。そのような主張を断固として拒否してきた」
( → 米政府高官 ガザ攻撃『ジェノサイドではない』 イスラエルの大規模攻撃には反対姿勢 )
大統領補佐官がそう述べたということは、大統領ないし米国政府がそう述べたというのも同然だ。
しかし、これはひどい。3万人を殺しても、非戦闘員を殺しても、大量虐殺ではないとしたら、いったい何なのか? 論理的には、次のいずれかだ。
・ 武器を持たずに隠れている女子供は、正規の武装戦闘員である。
・ 人を死なせても、人を殺していない。
いずれにせよ、とんだ嘘つきだ。ここまで堂々と嘘をつくには、呆れるしかない。それとも、頭がおかしくなったのか?
(2) 日本と欧州 政府の沈黙
米国のバイデン大統領は、武器供与の中止を公言した。ラファ侵攻の中止を訴えた。
ならば、日本と欧州は、せめて支持声明を出すべきだ。そのことで、イスラエルを非難するべきだ。
ところが現実には、米国を支持することもできない。普段は米国にへいこらするくせに、肝心のときには、米国に同調することもできない。イスラエル支持に凝り固まっている。
なぜか? ここで米国に同調すると、これまでの方針と矛盾することが露呈するからだ。
・ 基本的にはイスラエルを非難しない。
・ イスラエルの攻撃中止については、主語の「イスラエル」という言葉を抜いて表現する。「攻撃が中止されることを期待する」というふうに、無主語で表現する。イスラエルを批判する言葉は決して表現しない。
以上が、これまでの方針だった。なのに、ここでいきなりイスラエル非難をする米国に同調したら、これまでの方針と矛盾してしまう。一挙に方向転換したことに、批判が来る。そこで、批判されないために、米国に同調する言葉を出さないのだ。つまり、ラファ攻撃を放置して、ガザの住民を見殺しにするのだ。
それが、日本と欧州の方針だ。
(3) 野党の沈黙
日本政府と同様のことは、日本の野党にも当てはまる。
比較的マシなのは、立憲民主党だ。だが、この党も、4月09日にいっぺんだけイスラエル批判をしただけだ。それ以外はずっと沈黙している。最近では、イスラエルのラファ侵攻が迫っていて、世界では緊張が大いに高まっているのだが、立憲民主党は、ひたすら黙っているだけだ。
( ※ 議員個人では語る人がチラホラといるのだが、党の公式声明は沈黙だけだ。)
立憲民主党ですらこうなのだから、他の野党は推して知るべし。国民民主党や維新のような右翼体質の政党は、パレスチナ人を支持することなどありえない。逆に、パレスチナ人を非難したことならあるが。
→ 国民民主党 代表定例会見(2023年10月10日)
→ 「ハマス等パレスチナ武装勢力によるイスラエルへの攻撃に対する声明文|維新の会
(4) 朝日新聞の無理解
朝日新聞は、ガザ住民の殺害を止めようとして、イスラエル批判をする。ここまではいい。
ところが、その先が問題だ。日本政府の方針を誤解している。「日本政府もまた、ガザ住民の殺害を止めようとして、イスラエル批判をする」と思い込んでいる。事実認識が、事実とは正反対だ。
この件は、先にも述べた。朝日の社説がそういうふうに誤解している、という指摘。
→ 武力と平和主義 .42: Open ブログ
さらに、もう1件ある。解説記事で、日本政府について、誤解して称賛している。
イスラエルとハマスに人道的休戦を求める23年10月国連総会決議で、日本は棄権した。米国の決議への反対抜きに日本の棄権を理解することはできない。
しかし、日本外交は米国に追随するだけのものではない。24年5月10日、国連総会はパレスチナの国連加盟を支持する決議を採択した。人道的休戦決議では棄権した日本が、今回のパレスチナ加盟支持決議では賛成した。
( → (時事小言)欧米か非欧米か、日本はどちらの一員 区別は、不当な単純化 藤原帰一:朝日新聞 )
23年10月には、米国への配慮で、休戦決議に棄権した。なのに、パレスチナ人の国家を認める決議(国連加入の決議)では、米国への配慮を抜いて、決議に賛成した。これは日本政府もしっかりするようになった。日本もちゃんと判断できるようになった。偉い。……という趣旨だ。
しかし、これは事実を誤認している。日本政府は、独自に方針を変えたわけではない。単に多数に同調しただけだ。
23年10月の休戦決議
→ 賛成 121カ国、棄権 44カ国、反対 14カ国
24年05月の国連加盟決議
→ 賛成 143カ国、棄権 25カ国、反対 9カ国
かなり多くの国が、棄権から賛成に回った。そのうちの一つとして、日本もまた同調しただけだ。「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」というふうに。決して日本が独立的にふるまって、米国に逆らったわけではない。「みんなといっしょ」にしただけだ。
※ ただし、カナダ、ドイツ、イタリアは、棄権のままなので、それらよりはマシだとは言える。これらの国は、どうしようもない、イスラエル支持だね。
というわけで、日本で最もリベラルと見なされそうな朝日新聞でさえ、日本政府を(誤認して)ヨイショするほどにも、見当違いのことを言っている。まともにイスラエル批判や政府批判をするマスコミがないようだ。
( ※ 本サイトは違うが、と言いたいところだが、本サイトはマスコミではない。)
《 加筆 》
2024-05-19 の朝刊では、ようやく日本政府批判の記事が出た。
「法の支配」を説いていた米国だが、イスラエル支持を鮮明にし、停戦を求める国連決議案に拒否権を発動。イスラエルを強くいさめることを避け、日本もそれに引きずられている。
( → (日曜に想う)知の巨人が論じる「戦争」の本質 編集委員・佐藤武嗣:朝日新聞 )
朝日にしては珍しく、パレスチナ問題で日本政府を批判している。
- ※ どうしてなのか、不思議に思って、著者略歴を調べたら、外交と安保の専門家だとわかった。朝日もその分野の専門記者が記事を書くことがあるんだね。珍しい。いつもはガザ問題で、素人が無知なまま事実に反する情報を垂れ流しているのだが。(まあ、デマだらけのネット情報よりはマシだが。)
世界が悪に
各国は良心を麻痺させる。各国は真実を見失う。その結果、どうなったか? 世界全体が悪に染まったのだ。
なるほど、休戦決議には賛成が多数だったし、パレスチナの国連加盟決議にも賛成が多数だった。だが、そのいずれも米国の拒否権で実質的には無効となった。また、イギリスは米国とイスラエルに同調しているし、カナダ、ドイツ、イタリアは棄権票を投じるぐらいだ。かくて、イスラエルをまともに批判している先進国はほとんどない。(せいぜいマクロンのフランスぐらいか。)
こうして、米国も欧州も日本も、先進諸国はことごとく悪に染まった。世界は悪に支配された。
そのことは、前にも述べたとおりだ。再掲しよう。
この世界は歴史上初めて、悪が支配する世界となったのである。その悪の親玉が、イスラエルと米国とドイツとイギリスだ。この4国が結託したとき、世界は悪の支配する世界と化したのだ。(この世界は、いわばヒトラーに支配されたように、悪に支配されてしまったのだ。)
( → 武力と平和主義 .31: Open ブログ )
ネタニヤフの復讐
こういうふうに世界が悪に染まったあとでは、イスラエルは残虐さのやり放題を表明した。「両腕を切り落とす」という方針を示したのだ。
→ ネタニヤフ首相「最後の一人まで復讐」:朝日新聞
引用しよう。
「攻撃を行った者に対し、最後の一人まで復讐(ふくしゅう)を果たす」
「我々はハマスのテロ体制を崩壊させるまで止まらない。彼らの両腕を切り落とし、二度とイスラエルに刃向かえないようにする」
要するに、「百倍返しだ!」という方針を取るわけだ。イスラムのコーランでは、「目には目を、歯には歯を」という1倍返しの方針が示されているが、残虐なネタニヤフは百倍返しにしないと収まらない。かくて「彼らの両腕を切り落とし、二度とイスラエルに刃向かえないようにする」という復讐の方針を示した。
なお、これは口先だけの話ではない。過去には次の報道もある。(拷問・画像あり)
→ 殴打に電気ショックイスラエル軍拷問の実態、ガザ市民が証言 | 47NEWS
→ イスラエルがガザ市民を拷問か 鉄棒で殴打 市民ら証言 | 毎日新聞
→ 「バナナ」に「カエル」 イスラエル諜報機関による苛烈な拷問 | 毎日新聞
→ ガザ南部の病院敷地から283人の遺体 ハマス“一部には拷問された痕”と主張|FNN
※ 長くなったので、中断します。
ではどうしたらいいのか……という話は、次項で。
(1)ガザの150万人を難民として欧米に移動させるようにエジプトに働きかける。
(2)イスラエルの無茶がネオナチ運動を活性化させるように陰で支援する。ただしこれはきわめて危険です。
(3)中国がイランをはじめとする中東諸国を最大限支援するように陰で働きかける。
残念ながら日本で出番はなさそうです。
それがイヤだから、欧米はイスラエルの 150万人虐殺を支持しているんじゃないの? どんどん虐殺を推進しそうな方策。
日本の場合、なぜ右翼体質の政党や言論人にイスラエル支持が多いんでしょうか?
国民民主党の場合、イスラエルに留学経験のある幹事長の影響もありそうですが。
右翼は「国家のために国民が尽くす」
パレスチナは日本にとって金儲けのタネにならない。
イスラエルは日本にとって金儲けのタネになる。
自分の金儲けのためには、どんな悪でもやる。大量殺害者を支持するぐらいは、どうってことはない。自分の金儲けこそ、すべてに優先する。トランプ支持者や自民支持者は、みんなそうでしょ。
リベラルの行動基準は、善か悪か。
右翼の行動基準は、自分が儲かるか否か。法を犯さなければ、何だってやる。法を犯すことだって、しばしばある。(トランプも、自民の政治家も。)
もっとも、自民党が国益を考えた外交をしていると言い切れるか微妙ですが。
「あなたの望みを何でも かなえてあげるとしたら、何を望む? お金?」
と問われた子供の答え。
「世界平和」
子供にも劣るのが、自民党の政治家。