武力は必要だが、それの使い方が重要だ。ハサミや包丁のように。
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結論は?
ここまで、いろいろと述べてきたが、結局、どうすればいいのか?
前項で述べたように、「 PKO軍 を有志連合で形成する」という方法を取ればいいのか? いや、それは実現性が薄い。欧州と日本がそうできればいいのだが、実際は腰砕けだから、米国の意に逆らってまで、米国の拒否権を否定する(要するにイスラエルの意向を否定する)ということはできないだろう。そもそも、欧州と日本は、「自分は悪魔である」と自覚していないのだから、自分の方針を変える気がない。
とすれば、やはり、民衆レベルで「戦争反対・虐殺反対」の声を上げるしかない。実際、米国ではそういう民衆運動がいくらか出てきた。
→ 米大学キャンパスで燃え上がる「ガザ無差別虐殺」糾弾のインパクト
→ https://x.gd/QD77c ( Google 検索)
このようにして、為政者に「おまえは悪魔だ」と自覚させることができるようになれば、状況はいくらか改善していくだろう。
実際、その事例はある。ベトナム戦争だ。このとき、「ソ連の共産化に対抗するための正義の戦争」と言われてきたベトナム戦争が、実はただの 300万人を虐殺する大量虐殺にすぎないことが判明した。かくて、米国政府の嘘が暴露されることで、反戦の気運は高まっていった。そしてついに、ベトナム戦争という大量虐殺は終焉に至った。
→ 「ベトナム戦争 マクナマラの誤謬」 - 映像の世紀バタフライエフェクト - NHK
※ ケネディ大統領はベトナム戦争終結の方針を出したが、その直後に暗殺された。すると、副大統領から上がったジョンソン大統領は、ケネディの方針を大逆転して、ベトナム戦争継続に転じた。それがしばらく続いたが、どうにも敗勢はいかんしがたく、ついには撤退せざるを得なくなった。このとき国内でも反戦運動は大きく燃え上がっていた。
※ ただし、このときは米国自身が参戦していたので、戦死者も多数出ており、厭戦気分が高まっていた。その点は、今回とは違う。
《 参考 》
* イラク戦争では、捏造された根拠(大量兵器があるということ)に基づいて、戦争が起こった。ベトナム戦争では、勘違い(曖昧なノイズを聞いて、敵軍が攻撃してきたらしいと誤認したこと)に基づいて、北爆を起こした。どちらも虚構に基づいて大侵攻が起こった。
* 為政者が和平の方針を決めたあとで、暗殺されるというのは、ラビンとケネディに共通する。戦争の遂行が何よりも必要とされたわけだ。背後には巨大な闇の組織があったと推察される。
武力の制限
前項では、「PKO 軍による平和」という方式を提案したが、その前に、こう述べた。
「馬鹿とハサミは使いよう」と言われる。武力もそうだ。下手をすれば危険な道具となるが、うまく使えば安全を守るための道具となる。使い方しだいなのだ。頭ごなしに「良し悪し」を決めつけるべきではないのだ。
たしかに武力は有効だが、武力というものは、なければ困るが、あればいいというものでもない。あればあったで、ちゃんと使い方をわきまえる必要がある。
特に大切なのは、「ブルジョワ戦略」だ。つまり、「武器は主として、自分の領域内で使う」ということだ。簡単に言えば、「防御のために使う」ということだ。
このような制限を理解するべきだ。
※ 武力を全否定する平和主義を取ると、侵略されて、滅亡するハメになる。その歴史的な危機については、元寇とスペインの例を挙げて、前々項で説明した。
※ ちなみに、ガザが滅亡しかけているのも、武力がないからだ。ウクライナが敗北しかけているのも、武力が足りないからだ。国際社会の支援を頼みにしても、誰もガザやウクライナを助けてはくれないのだ。
※ たとえば日本は、ガザやウクライナのために、武器の一つ(銃弾の一発)も送ってくれない。逆に、イスラエルのためにはせっせと支援しているし、ロシアのためには LNG や石炭を大量に購入して、金を送っている。特に、ロシア産の石炭を大量に購入して金を送っているのは、日本だけだろう。世界で最もロシアを支援している西側国家と言える。(中国とインドの方が上だが、その次あたりが日本だろう。)
核による自滅?
武器がなければ、絶滅する。
一方で、武器があっても、絶滅の危険がある。それは「自滅」という形の危険だ。人類が悪魔と化せば、自分で自分の武器を制御できないまま、自分で自分を滅ぼすことになるだろう。
なぜなら、その手段を、人類はすでに手に入れたからだ。それが「核兵器」だ。
この件は、最近の話題作である映画「オッペンハイマー」でも取り上げられている。
このオッペンハイマーについては、NHK の番組でも特集されたことがある。
「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」
— 映像の世紀バタフライエフェクト (@nhk_butterfly) February 18, 2024
明日夜10時から NHK総合
第二次世界大戦中に原爆開発を率いた天才科学者、ロバート・ #オッペンハイマー 。
その栄光と罪の物語。
明日放送です。#映像の世紀#バタフライエフェクト
▼放送・配信予定は番組HPhttps://t.co/1th0H1Zyuf pic.twitter.com/EbruUmth71
あらすじは下記。
→ NHK「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」(2024)
※ これはとても良い番組だ。原爆を開発したオッペンハイマーについて、開発の栄光と、事後の罪悪感とを、ともにきちんと描写している。まるで一編の映画みたいにドラマチックな話となっている。話題の映画を見なくても、この NHK の番組を見るだけで済みそうだ。
(話題の映画と違って、原爆の被爆者の映像も収録されている。最後には超残酷な画像もある。)
ともあれ、人類は核兵器を開発したことで、自らを滅ぼす手段を手に入れたのだ。
原爆使用の正当化
核兵器を手にしても、それを実際に使用することはないか? 実は、それについて悩んだのが、オッペンハイマーだ。彼は当初、ただの開発だけであって、実際に人殺しのために使われるとまでは考えていなかった。まして、ユダヤ人の彼が本来の目的としていたナチスドイツの打倒は、すでに達成されており、原爆の使用の意義はなくなっていた。日本についても、日本の敗北は決定的であり、原爆の使用の意義はなくなっていた。なのに、その後、「実際に原爆を使う」という方針が取られた。あげく、1945年8月になって、現実に、数十万人の一般市民が虐殺された。
オッペンハイマーは自分の力が大量虐殺に利用されたことに悩んだ。だが、アメリカの軍人や国民は違った。
「原爆のおかげで勝利した」
「原爆のおかげで悪を打破した」
「原爆のおかげで勝利が早まった」
と大喜びした。ちょうど、ガザ虐殺で大量の市民が死ぬのを見て、大喜びするように。
現在でも、ロスアラモスの跡地では、次の事情にある。
ロスアラモス。第2次世界大戦中、ここは原爆を開発するマンハッタン計画を担う科学者らが集められた「秘密都市」だった。
現在も米エネルギー省の研究所があり、核兵器関連やバイオテクノロジーなどの研究をしている。
年に2回、小規模なツアーがある。
原爆は「恐ろしい兵器」と表現されたものの、「戦争を早く終わらせるために開発された」という位置づけで、投下後の被害への言及はなかった。
( → 変遷する米 原爆被害、開発の地でも説明を 中井大助:朝日新聞 )
原爆の使用はいまだに正当化されている。広島や長崎の大量が草津も正当化されている。「原爆は戦争終結を早めるため」という名目で、大量虐殺は正当化されるのだ。
ならば、ガザで 150万人を虐殺するのも正当化されそうだ。「イスラエル主導による平和を実現するため」「すべては平和のため」という名目で、大量虐殺が正当化される。
同様に、将来的には、核兵器の使用が正当化されるだろう。
かくて人類は、核による絶滅に向かって突き進む。「他人を絶滅させようとすれば、やがては人類全体の絶滅につながる」と気づかないまま。つまり、「人類はすでに人類全体を滅ぼす力を手に入れたのだ」と気づかないまま。
「馬鹿とハサミは使いよう」と思っていたら、いつのまにか「気違いに刃物」となっているかもしれないのだ。……これは比喩ではない。今のガザにおけるふるまいを見ると、人類はすでに正気を失っているありさまだ。
ロスアラモス

※ 話がどんどん長くなったので、さらに続きます。あと1〜2回。