前項に続いて、その補足的な話。
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前項では、「世界が悪に支配されたあとでは、どうすればいいか?」という話をした。そこでは、「一人一人が声を上げて、力を合わせて、世界を動かせ」というふうに推奨したが、これは主たる方法だ。ついでに、副次的な方法として、いくつかの提案を示そう。
日本
日本については、「他国といっしょに行動せよ」と推奨した。「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」という方針だ。
それで、何をするか? 前項では、「ガザ停戦の運動をすればいい」と述べた。一方、それとは別に、次の二点も推奨したい。
・ パレスチナ国家の承認
・ PKO 活動
この二つについては、米国の拒否権というような問題が起こりにくい。
・ 国家の承認は、日本が単独で実施できる。(米国は口出しができない。)
・ PKO 活動の実施は、国連安保理と総会の承認が必要だが、反対は起こりにくい。
なお、現実には「ガザ停戦」についてすら、米国は拒否権を発動している。
→ ガザ即時停戦求める決議案、アメリカの拒否権で否決 国連安保理 - BBCニュース
だから、PKO 活動の実施なんて、もっと無理だ、と思えそうだ。しかし、ここでうまい手がある。「ハマスの攻撃を阻止するため」という名分を取ればいい。これなら、イスラエルも異を唱えにくい。かくて、イスラエルとハマスの双方の攻撃を停止させようとする。
そもそも、米国としては(本音では)、ラファ侵攻による大虐殺を阻止したいので、「ラファに国連 PKO 軍を進駐させる」という案は、「渡りに船」と言えなくもない。
日本がこれを提案すると、米国としてはかえって喜びそうだ。(トランプでなくバイデンならば。)
米国のトランプ
米国のトランプはどうか?
トランプは、1カ月前には、ガザ攻撃に反対した。
→ トランプ氏、イスラエルにガザ戦闘終結訴え「大きな間違い犯した」 - 産経ニュース
しかし1カ月たった現在では、方針を転じて、ガザ攻撃を支持するようになった模様だ。
→ トランプ氏、大学生のガザ攻撃反対は「とてつもないヘイト行為」 | ロイター
これは変節である。ではどうして、変節するようになったのか?
1カ月前に、戦争反対の方針を取ったのは、良心ゆえのことだろう。
しかしその後、方針を転じた。それは、福音派の圧力を受けてのことだろう。たぶんね。そうとしか思えない。(先の方針に反して、自己矛盾になるので、他人の影響を受けたとしか思えない。)
これは、日本と同様だ。良心とエゴイズムとの板挟みになって、迷っているのだろう。
このようなトランプの変節には、どう対処すればいいか? 私の提案は、こうだ。
「非難するよりは、褒めろ。現時点での方針を非難するより、1カ月前の方針を褒めろ。詰るよりは、おだてる方がいい」
豚もおだてりゃ木に登る。トランプのような人間には、真っ向から非難するより、おだてる方がいいのだ。
※ 日本は逆だ。強圧的に押さえつけると、へいこらへいこらと、強者に従う。それが自民党系の首相の傾向だ。典型的なのが、安倍晋三だ。プーチンにおもねっていた。
「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」
( → 安倍元首相のロシア戦略の挫折 :朝日新聞 )
日本の歴代首相で、へいこらへいこら しなかったのは、小泉純一郎ぐらいかな。
米国の福音派
米国では福音派が共和党やトランプに大きな影響力を発揮している。
→ 武力と平和主義 .27: Open ブログ
とすれば、米国をイスラエルから引き剥がすには、福音派をユダヤ教から引き剥がす必要がある。
しかし、それは難しい。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「ユダヤ教とキリスト教の大きな違いである点を浮き上がらせる。それは、博愛の概念だ。ユダヤ教は、選民思想であり、自分たちだけが助かろうとする。キリスト教は、博愛主義であり、他人をも愛そうとする。汝の隣人を愛せよ、と。
汝の隣人を愛せよ。
(新約聖書、マタイ伝、22 )
そこで、この違いを浮き上がらせればいいのだ」
具体的には、こうだ。
「ガザ住民は、汝の隣人である。汝の隣人を愛せよ。汝の隣人と仲良くせよ。隣人と敵対するべからず。隣人を追い立てるべからず」
こう告げることで、ユダヤ人の虐殺について、「それはキリストの教えに反する。イスラエルの方針ははキリスト教に反する」と示せばいいのだ。
米国政府は
さらに、戦争を止めるために、決定的にうまい方法がある。それは、米国政府だけが可能だ。特に、次のことだ。
「イスラエルへの武器援助の法案が成立した。この法案の実施は、無条件では実施せず、ガザ攻撃中止(ラファ攻撃中止を含む)と引き替えに実施する」
法案は成立したが、これは「イスラエルに武器援助できる」というだけであって、実施するかどうかは、大統領に権限がある。そこで、実施に当たって、「攻撃中止」を条件とすればいいのだ。
なお、単に「攻撃中止」を命じると、イスラエルの国民が黙っていないだろう。
「ふざけるな。攻撃を止めるな。パレスチナ人を皆殺しにしろ。1200人を殺された仕返しに、200万人を殺せ!」と大騒ぎするだろう。
そこで、イスラエル国民向けに、こう示す。
「攻撃中止と引き替えに、ハマスは残った人質を解放します。さらには、アイアンドームなどのミサイルも、米国が大量に供与します」
これなら、イスラエル国民も納得するだろう。「朝に四つに、夕方に三つか。それなら文句ない」と。
イラン
イスラエルが上の提案に応じて、ガザ攻撃を中止することは、十分にあり得そうだ。
1カ月前ならば、イスラエルがガザ攻撃を中止することは、まったくありえなかった。しかし今となれば、ガザ攻撃を中止することは、十分にありそうだ。
なぜか? それは、イランが大量のミサイルを発射したからだ。そのせいで、イスラエルは防空ミサイルを大量に発射して、在庫が品薄になってしまった。このあとイランの攻撃を受けたら、ひどい被害を受けかねない。以前とは事情がまったく異なるのだ。
こうなると、今のイスラエルは、イランのミサイル攻撃を受ける前に、何が何でも防空ミサイルを充実させる必要がある。アイアンドームなどで、使ったミサイルの補充をする必要がある。そのためには、何が何でも、アメリカの武器援助を受けるしかない。そのためには、膝を屈しても、ガザ攻撃の中止を受け入れるしかないのだ。
換言すれば、イスラエルの攻撃を止めることができた(できそうである)のは、イランだけなのである。イスラエルは、米国大統領の言い分さえも聞かない唯我独尊のネタニヤフに従っているが、そのネタニヤフも、イランのミサイルを大量に飛ばされたあとでは、肝を冷やすことになったのだ。
中東に正義と平和をもたらすことができるのは、イランだけである……ということなのかもしれない。
これまでは正義を標榜してきた米国や欧州が、今では悪魔と化した一方で、これまでは悪だと非難されてきたイランが、中東に平和をもたらす天使となるらしい。……まったく皮肉なことだが。
石油のユダヤ系資本
上の話に続いて、いくつか補足的なな話を示す。
※ 米国がイランを徹底的に憎んでいることには、理由がある。イランの石油は、もともとユダヤ資本が開発していて、その油田で莫大な富を生み出していたのだ。この油田を接収して国有化したのがイランだ。このせいで、米国の石油会社は巨万の富を得る機会を失った。大損だ。だから、イランをひどく憎んでいる。
※ 米国のユダヤ資本が石油で莫大な利益を得たのには、理由がある。カルテルを結んで、市場価格を不当に釣り上げて、消費者から莫大な富を奪っていたのである。(当時は独禁法もなかった。)
ユダヤ資本は、不当な方法で、世界の人々から莫大な金を奪い取っていた。濡れ手に粟である。ところがその「金のなる木」である油断を、イランは奪い取った。(というか、もともと自分のものだから、返してもらった。)
こうなると、ユダヤ資本は、怒り心頭に発すとなる。これまでは盗み放題だったのに、もはや盗むことができなくなったからだ。
「ひとのものは おれのもの。おれのものも おれのもの。だから世界はおれのもの」
という方針を、取れなくなってしまったのだ。
※ 米国の石油関係のユダヤ系資本とは、イランの石油権益を持っていたブリティッシュ・ペトロリアム(BP)のことだ。これはユダヤ人であるマーカス・サミュエルの系列だ。
→ イギリスのユダヤ人マーカス・サミュエルの成功物語
一方、これと並んで、スタンダードオイル( Esso )やロックフェラーも知られている。こちらもユダヤ系だ。ユダヤ人だけで世界の石油を牛耳っていたわけだ。
→ マンハッタンを歩く: 「石油王」ロックフェラー一族
※ このユダヤ資本に対抗して、イランから独自のルートで石油を仕入れたのが、出光だ。
→ 【海賊と呼ばれた男】出光佐三は何がすごい?石油メジャーに喧嘩を売った男の人生や逸話を解説
世界中の誰もがユダヤ人の石油資本にへいつくばって、ペコペコしていたのに、出光だけは、ユダヤ人に逆らった。そのせいで、ユダヤ人からは、さんざんイヤガラセを受けた。詳しい話は、出光の一代記を読むといい。……ともあれ、出光はこうして、独自の国産石油ルートを開発した。根性があるね。
※ 出光はイヤガラセを受けただけだったが、それだけでは済まないのが、ガザの人々だ。ユダヤ資本から莫大な献金を受けて、共和党や民主党はユダヤ人にぺこぺこと従う。かくて、米国はイスラエルに莫大な武器援助を贈る。その武器で、ガザの人々を虐殺する。
※ あと1〜2回、続く予定です。
報道では停戦が近いような言い方になっていますね。
孔子も孫子も御存じないイスラエルの侵攻については関与しないのが得策かと・・・