2024年03月08日

◆ 武力と平和主義 .6

 (前項 の続き)
 シリーズの最後に、結論ふうに述べよう。

 ── 

 基本方針


 これまでに述べたことをまとめよう。
 戦争を止めるには、どうすればいいか? これがテーマだ。
 まず、平和主義というものがある。「武力を使わないことで戦争を止めよう」という主張だ。
 しかしこの発想は安直すぎる。武力を放棄すれば、単に攻撃を受けて敗北するだけだからだ。
 歴史的には、明治維新のように、血を流さずに外交で戦争を回避したこともある。しかしそれは同じ日本人同士の戦いだったからだ。異民族同士の争いでは、平和主義は敗北と絶滅をもたらすだけだ。(ウクライナ・ガザ・カルタゴのように。)
 平和主義は敗北主義だ、と言える。それは解決策とはならない。
 そこで本サイトで提案するのが、「タカ・ハト・ゲーム」におけるブルジョワ戦略だ。これは、「領域の内部ではタカ、領域の外部ではハト」という戦略だ。これによって、戦争の回避ができる。
 ただし、この戦略はそれだけでは完結しない。この戦略を裏付けるものが必要だ。それは武力だ。
 武力があるからこそ、領域内ではタカになることができる。武力がなければ、タカになることができないので、ハトになるしかない。しかし恒常的にハトであると、外部のタカの餌食となる。武力を持たないでいることが、かえって戦争を引き起こすのだ。皮肉なことに。
 というわけで、ブルジョワ戦略をとりながら、武力を備えることが、戦争を回避するための最善策となる。
 なお、法的な問題もあるが、それは技巧的な法律解釈で、何とか問題を回避することができる。

 ※ 以上が、これまでに述べたことの要約だ。

 方法論の限界


 方法的には、以上の方法で平和は実現する。だから、「どうすれば可能か?」という方法論についてならば、上の説明で回答となる。

 ※ ブルジョワ戦略では、国境線上(境界線上)での小競り合いが起こる可能性もある。たとえば竹島は、日本と韓国の双方が「自国領だ」と主張しているので、「どちらも自国領だと主張することで交戦が起こる」という可能性がある。
 しかし、大丈夫。この場合も、ブルジョワ戦略をとる限りは、交戦は竹島の範囲内に限定される。ごく局限された交戦があるだけだ。日本は韓国本土に行かないし、韓国は日本本土には行かない。(ブルジョワ戦略なので。)
 この場合、メリット(竹島を得るメリット)よりも、デメリット(両国の交戦によるデメリット)の方が、圧倒的に大きい。タカとタカが大いに傷つくことになる。ゆえに、本格的な戦争は起こらないまま、すぐに収束する(または最初から交戦が起こらない)のが普通だ。
 かくて、双方がブルジョワ戦略を取れば、たとえ境界線上で領土紛争があったとしても、大きな問題にはならずに収束する。

 ──

 こうして、方法的には、問題は解決するはずだ、と言っていい。
 とはいえ、方法論ではそうだとしても、現実にはそううまくは行かない。
 なぜか? 正しい方法はわかっていても、正しい方法をとる意思がないからだ。正解はわかっていても、人々はその正解を取ろうとしないからだ。

 人類の本性は?


 ではなぜ、人々は正解を取ろうとしないのか? それは、人間の本性による。
 人間の本性とは何か? 平和を望むことか? 違う。エゴイズムである。つまり、自分の利益を最大化しようとすることである。
 たとえば、タカ・ハト・ゲームもまた、「人はエゴイズムで行動する」ということを念頭に置いた上で、ゲーム理論を構築している。
 そして、人間の本性がエゴイズムであるからには、人々は「世界の平和」よりも、「自分の利益の最大化」を狙うのだ。当然ながら、「世界の平和を突き崩すことで、自分の利益を増やすことができる」と思えば、容易に戦争を始める。

 その例が、ロシアだ。彼らは「48時間でキエフを陥落させることができる」と信じた。だからこそ、戦争を始めた。
 別の例が、イスラエルだ。彼らは「自分たちは武力的に優位なので、パレスチナ人を追放して、パレスチナの全領域を奪うことができる」と信じた。だから、パレスチナとの共存を拒否して、共存を徹底的に妨害して、平和を破壊することを目的とした。

 イスラエルの件は、私の勝手な説ではない。次の資料で裏付けられる。
 (1) イスラエルはパレスチナとの共存を否定している。下記記事を参照。
  → ガザ停戦でアラブ諸国が新構想=イスラエルは「2国家共存」否定 | 時事通信

 (2) 過去においては、1993年のオスロ合意で、イスラエルとパレスチナの共存を合意して、パレスチナ人の自治を認め、入植地から撤退することにした。これがそのまま実現してれば、平和は実現しているはずだった。
 しかしイスラエルは合意を裏切った。この合意のあとで、2005年になって、イスラエルは入植地から撤退した。しかし同時に、新たに別の方針を実施した。それはパレスチナを崩壊させるという方針だ。「たしかに入植地からは撤退するよ。しかし、そのかわり、おまえたちはみんな死ね」という方針だ。
 2005年までは、イスラエルの入植地があり、イスラエル軍が常駐していました。 同年、ガザ内部から入植者と軍が撤退しましたが、ガザは周囲からイスラエル軍に包囲され、 人や物の出入りが極端に制限されています。 その結果、燃料や食料、日用品、医療品などが慢性的に欠乏し、 経済や生産活動が停滞して、 人々は国連や支援団体からの援助物資で命をつないでいます。
( → ガザ地区を知ろう|パレスチナ子どものキャンペーン

 (3) その後も、イスラエルのパレスチナ管理は進んで、自治政府はイスラエルと癒着した。
 パレスチナ自治政府の権力は制約されている。パレスチナ人民からはイスラエルと結託した腐敗組織とみなされており、支持されていない
( → パレスチナ自治政府 - Wikipedia

 そもそも、イスラエルはパレスチナ政府の成立を拒否している。世界広しといえども、隣国の政府の成立を否定しているのは、イスラエルぐらいだろう。
 この状況下では、政府をつくることはできないので、やむなく自治組織ができるしかない。それが初期の PLO や,現在のハマスだ。
 イスラエルは「ハマスは武装組織だから交渉相手にはならない」と主張するが、パレスチナ人の民主主義政府が成立するのを拒否しているのは、ほかならぬイスラエル政府なのだ。(呆れた詭弁である。)

 ともあれ、以上の資料によって明かされたとおりで、先の結論は成立する。再掲すると、こうだ。
 (イスラエルは) パレスチナとの共存を拒否して、共存を徹底的に妨害して、平和を破壊することを目的とした。

 ロシアであれ、イスラエルであれ、世界平和よりは自分の利益を優先する。あくまでエゴイズムに徹する。奪えるものがあれば、奪い取る。
 それが人間の本性なのだ。




 ※ 長くなったので、中断します。次項に続きます。

posted by 管理人 at 23:17 | Comment(2) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>ロシアであれ、イスラエルであれ、世界平和よりは自分の利益を優先する。あくまでエゴイズムに徹する。奪えるものがあれば、奪い取る。
 それが人間の本性なのだ。

本性ではあるが、それだけではない。
まず理性がある。つまり世界が平和でなければ結局は自分の利益も得られない(世界核戦争になれば自分の利益も得られない)。つまり理性に基づく功利主義だ。グリーンの『モラル トライブズ』がまさにそれを指している。
もう一つは、エゴイズムつまり利己性は人間を含むあらゆる生物の第一原理だが、真の利他性つまり第二原理もある。これが合わさったものが人間であろう。
Posted by SM at 2024年03月09日 18:11
> それだけではない。

 続きの話は、次々々項で述べます。
Posted by 管理人 at 2024年03月09日 19:16
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