2024年03月05日

◆ 武力と平和主義 .3

 (前項 の続き)
 平和主義が駄目なら、どうすれば戦争を止めることができるのか?

 ── 

 疑問


 すでに述べたように、平和主義では戦争は解決できない。平和主義はただの敗北主義にすぎないからだ。
 では、平和主義が駄目なら、どうすればいいのか? どうすれば戦争を止めることができるのか?

 武力と歴史


 それについては、先に述べた項目が参考になる。
  → 明治維新と武力 : nando ブログ
 ここでは、こう述べた。
 明治維新を決めたのは何か? 武力だ。武力こそが歴史の本質だ。

 (1)

 薩摩はもともと攘夷(≒ 鎖国)を唱えていたが、薩英戦争(勝敗は未決)を経たあとで、英国と和解して、開国に転じた。
 外国の圧倒的な武力が藩の方針を 180度変更させた。武力こそが圧倒的な影響力を持ったのだ。

 (2)

 幕府が政権を譲ったのは、幕府の自発的な意図によるものではない。武力で討幕軍が圧倒的に有利だったからだ。

 討幕派が攘夷から開国に転じたのも、幕府が政権を譲ったのも、理由はいずれも武力だった。それまでは頑固に自説に固執していたのに、武力で圧倒されると、方針を転換して、膝を屈した。
 歴史を左右したのは、平和主義の言葉や理念ではなく、武力だったのだ。

 自衛と侵略


 とはいえ、武力が決定的だからといって、単に「武力が大事だ」と唱えるだけでは、ただの好戦的な侵略主義と変わりはない。かつての列強の植民地主義と同類だ。その方針が進むと、どうなるか? かつては第二次世界大戦に行き着いた。
 つまり、全員が武力主義を取ると、武力と武力が衝突したあげく、世界大戦となるのだ。それは最悪だ。
 では、どうすればいいのか? 

 この問題については、前に回答した。「タカ・ハト・ゲームで考えればいい」と。
  → https://x.gd/oPckc (サイト内検索)

 ゲーム理論では、対戦する双方が「ハト」を選べば、双方が小さな利益を得て安定する。しかしその状況で、一方が「タカ」を選べば、相手を食い物にできるので、常に一方が「タカ」になる危険がある。こうして一方的な侵略による戦争が起こりがちだ。ここで、食い物にされる側が怒って、「タカ」に転じることがある。すると、双方が「タカ」という攻撃的な方針を取るせいで、双方が傷ついて最悪の結果になる。(世界戦争状態。)
 この問題を解決するにはどうすればいいか? 「ブルジョワ戦略」を取ればいい。
  → https://x.gd/j4LcR (サイト内検索)

 「ブルジョワ戦略」とは、次の二重戦略だ。
  ・ 自分の領域の内部では「タカ」
  ・ 自分の領域の外部では「ハト」

 このような方針を取るのが一般的には最善である。このような方針の下で、生物はたがいに安定的になる。

 ──

 以上は、ゲーム理論から得られる結論だ。これを現実の戦争に当てはめれば、こう言える。
 「国家は、自衛のためには武力を行使するべきだが、侵略のためには武力を行使するべきではない」

 つまり、「自衛のための戦争」だけが許されて、それ以外の戦争(侵略のための戦争)は許されない、ということだ。
 こういう方針を取れば、野放図な軍拡主義は避けられる。もちろん、列強による植民地主義も避けられる。一方で、ウクライナ人やパレスチナ人が、侵略する敵の攻撃から自国領を自衛する権利は認められる。

 パレスチナ


 ちなみに、パレスチナの場合はどうかというと、次の事情にある。

 (i)
 今回の戦争の前の時点で、すでにパレスチナ人は自国領の半分をイスラエルに奪われていた。


gaza-map2.jpg
出典:東京新聞



 (ii)
 今回の戦争のさなかでは、パレスチナ人は北部から南部への移住を強制されて、北部の領土を失った。そのあと、南部に閉じ込められたパレスチナ人は、武力と餓死の双方によって大量虐殺されている。民族抹消の大量虐殺。(カルタゴのように。)

 ──

 自らを守る力のない民族は、このように大量虐殺されて滅亡するしかない。ここでは、「世界の人々が守ってくれるだろう」というような甘い期待は成立しない。米国はイスラエルの味方をして、国連の議決に拒否権を出す。ドイツは「ユダヤ人の味方をするのが正義だ」と思い込んでいるので、ユダヤ人の大量虐殺を是認する。欧州はドイツに牛耳られているので、欧州も何もできない。日本は米国に牛耳られているので、日本も反対の声を上げられない。イスラエルにスイカもらって、「日本はイスラエルの味方です」と宣伝されるありさまだ。(たかがスイカで買収される情けない国なんだね。 ??? )
  → 「目を疑う」「恥ずかしくないのか」 イスラエル外相との会談風景にカットスイカ...外務省のX投稿に批判相次ぐ
  → イスラエル、日本外交団に「スライスした西瓜」を出して「パレスチナ人絶滅まで戦いをやめない」とアピール それにまんまと加担したわが外務省


posted by 管理人 at 22:26 | Comment(7) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは難しい問題です。この問題に対する正解がわかれば世界から戦争が消えます。ノーベル賞レベルじゃないです。タカとハトのゲーム理論をここに持ってきたのはすごいアイディアだと思います。学問を人間社会に活かすものすごい知恵です。タカとハトのゲーム理論を日頃研究している進化学者、経済学者などがこういった展開を論じているのを聞いたことがありません。素晴らしいです。
Posted by SM at 2024年03月05日 23:56
「ブルジョワ戦略」が実現できると思えるのは日本が島国だからです。

それでさえ、離島防衛のために空母、揚陸艦、上陸用舟艇、弾道ミサイルなどを持てば、近隣国を攻めることは可能なので、外部に対して「タカ」の姿勢を示すことになります。

ましてや、地続きの国であれば「自衛のため」と称した戦力で簡単に近隣国を攻められるので、際限のない「タカ」と「タカ」による軍拡競争になってしまいます。

地続きの国において、どういう兵器であればブルジョア戦略」を示せますか?自国の国境地帯に地雷をばらまき、有刺鉄線を張り巡らせ、塹壕を掘り、砲台を据え付けて要塞化しますか?
Posted by のび at 2024年03月06日 12:50
 ブルジョワ戦略は、もともと境界で接している場合の方針です。鳥の自己領域。
 鳥は自分の領域に入ってきた、他の領域の鳥を攻撃します。相手が自分の領域の外に逃げていったら、深追いはしません。
 それだけのことだ。鳥の真似をするだけでいい。

> 自国の国境地帯に地雷をばらまき、有刺鉄線を張り巡らせ、塹壕を掘り、砲台を据え付けて要塞化しますか?

 鳥はそんなことはしません。鳥に学びましょう。鳥ぐらいの知能があれば、ブルジョア戦略は実現できます。実際、鳥はそうしているのだから。

 なお、具体的な戦法としては、地雷などの防御的な方針は、あまりお薦めしません。弊害が大きすぎるからだ。
 むしろ戦闘機の配備をお薦めします。戦闘機こそ、タカとなって、自国領を飛び回れる。「自国領内では強力なタカになる」という方針を示せば、他国は侵略をためらうでしょう。

 ちなみに、ウクライナもパレスチナも、自分では戦闘機を配備していないので、一方的に殴られる。逆に、ロシアやイスラエルは、戦闘機を配備しているので、一方的に殴ることができる。
 
> 離島防衛のために空母、揚陸艦、上陸用舟艇、弾道ミサイルなどを持てば、近隣国を攻めることは可能なので、外部に対して「タカ」の姿勢を示すことになります。

 なりません。外国への攻撃能力をもつということと、実際に外国を攻撃することとは、まったく違います。
 武力を所有することと、武力を外国に行使することは、まったく別のことです。そこを混同しているのが、平和主義だ。頭の論理がおかしい。

 その論理的な勘違いを指摘するのが、「ブルジョワ戦略」です。「武力を所有するが、外国には行使しない」と明示する。平和主義の勘違いをくつがえす。
Posted by 管理人 at 2024年03月06日 13:11
> 地続きの国であれば……際限のない「タカ」と「タカ」による軍拡競争になってしまいます。

 仮にそういうことがあったとしても、問題ありません。ブルジョワ戦略のかわりにタカの戦略をとる国があれば、外部に出て、ブルジョワまたはタカの外国と衝突して、結果的に双方が傷つきます。
 そのあと、双方が傷ついて滅びるなら、それでOK。双方が傷ついて滅びたあとで、何もしないで見守っていた第三国が、その空白地帯を奪い取って、ブルジョワになります。
 こうして最終的には、タカの国はすべて滅びて、ブルジョワの国だけが残ります。

 ※ これを研究するのが ESS理論。
   → https://x.gd/PTOqa

 第二次大戦後の安定期には、ブルジョワの国だけという状況が続きました。
 近年は、プーチンのようにタカの戦略をとる国が出てきたので、衝突が起こります。
 ここでウクライナがそれなりにブルジョワ戦略を取れば、ロシアの戦意も萎えるのだが、欧米はウクライナ支援が中途半端なので、ろくに反撃できない。だから戦争は止まらない。
 つまり、武力が足りないと、平和は来ない。平和主義の逆だ。

 戦争を止めるのは、平和主義でなく、ブルジョワ戦略と武力なのだ。
Posted by 管理人 at 2024年03月06日 15:04
>「自国領内では強力なタカになる」という方針を示せば、他国は侵略をためらう

近隣には勝手に地図に点線を引いて好き勝手している国がありますが、あの国にとっては「自国領内で強力なタカになっているだけ」です。
お互いが「自国領内」と思っている場所があると、お互いがブルジョア戦略を取っても戦争になってしまうと思うのですが、どう対応すればいいですか?


さらに、前の項では

=======以下前の項より=======
NATO側は、侵略は断固として認めないという決意とともに、ロシアを攻撃する意図がないことをプーチン氏に理解させる必要がある。
( → (社説)NATO拡大 ロシアと意思疎通図れ:朝日新聞 )

 こういうふうに言葉で語ればロシアは攻撃をやめるだろう、と主張している。
 しかし、これはとんでもない勘違いだ。
=======以上前の項より=======

とありますが、これは朝日新聞がNATOに対して『自分たちはブルジョア戦略だ』と宣言することを勧めているように見えるのですが、
それは勘違いなのですか?

ウクライナは
・NATOにとっては「正式には自分たちの仲間ではないが、仲間になろうとしている国」
・ロシアにとっては「かつては同じソ連邦と言う国だった、自国の一部と言っても過言ではない国」
であり、両者にとって「自国領内」ではありませんが「自分の縄張り」だと思っています。

結局、お互いが「自分の縄張り」と思っている範囲が重なってしまう以上、「お互いがブルジョア戦略なら争いは起こらない」とは言えないのでは?
Posted by のび at 2024年03月07日 21:30
> お互いが「自国領内」と思っている場所があると、お互いがブルジョア戦略を取っても戦争になってしまうと思うのですが、どう対応すればいいですか?

 境界線上の問題ですね。たしかにその問題は残ります。
 ブルジョワ戦略は、基本的な一般原則であって、万能の完全解決策ではありません。基本が適用できない例外もあります。それが、境界線上の問題。
 例外については、別途、例外について専用の考察をする必要があるでしょう。ただしそれは話の範囲外。ここでは論じない。

 ──

> 朝日新聞がNATOに対して『自分たちはブルジョア戦略だ』と宣言することを勧めている

 そうですね。しかし、今さらそんな宣言をしても意味がない、というのが、私の主張です。そんな宣言をしてもしなくても、プーチンはすでに知っている。知っていることをいちいち教えてあげる必要はない。また、教えたからといって、それで平和になるわけでもない。

 戦争が始まる前にブルジョワ戦略を宣言することは有効だろうが、戦争が始まったあとで宣言しても何の意味もない。宣言して平和になるわけでもない。

 では、何が平和をもたらすか? その答えは、次項の冒頭に書いてある。そこを読めばわかる。

 ──

 最後の件は、「それで起こる戦争は、紛争領域だけに限られる」となります。たとえば、クリミア。それについては、そちらの話の通り。これは、先に述べた例外の話。

 一方、ウクライナ侵攻は、紛争領域だけの話ではなく、ウクライナ全域(キエフを含む)の話だ。これは例外の問題ではない。

 なお、プーチンがウクライナに侵攻したのは、「ウクライナはハトだ(非力だ)」と思ったからだ。
 「48時間でキエフが陥落する」という軍部の方針を聞いて、そのつもりで侵攻した。
  → http://openblog.seesaa.net/article/486045737.html

 この甘い誤認が戦争をもたらした。

 ──

 のび さんの質問への回答は、おおむね次項の冒頭で説明され尽くしている。ちゃんと次項を読みましょう。そこに回答はすでに示されている。

 ※ ググレカスに似ている。答えはすでに書かれている。自分が読んでいないだけだ。
Posted by 管理人 at 2024年03月07日 22:50
 係争領域における交戦は、交戦が領域内に限られ、領域の外に出ないので、大きな問題にはなりません。

 たとえば、竹島では、交戦が起こったとしても、交戦は竹島の内部に限られます。日本が韓国本土に出向くことはないし、韓国が日本本土に出向くこともない。ブルジョワ戦略を取る限りは、そうなります。

 交戦の領域がきわめて小さいので、問題は大きくなりません。というより、最初から交戦をしないのが普通です。放置しても、たいしたことはないので。
 たとえば、日本は竹島を占領されても、特に交戦はしません。それによる利益よりも不利益の方が圧倒的に大きいからです。かわりに外交による交渉で長期的に解決しようとします。これが賢明でしょう。

 ブルジョワ戦略を取る限りは、問題は局限されることになります。それでOK。
Posted by 管理人 at 2024年03月08日 10:22
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