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保証期間とは何か? 「製品の質を保証する期間だ」と思っている人が多い。そうではない。「故障した場合の修理費が無料になる期間」のことだ。この期間を過ぎると、修理代が無償から有償になる。それだけの違いだ。
一般に、家電・パソコン・スマホでは、保証期間が1年間であることが多い。ただし別料金を払うと、保証期間が3年や5年に延びる。この場合は、その期間中の修理費が無料になる。(故障が起こらなくなるわけではない。)
耐用期間というものもある。これは「製品をちゃんと使える期間」のことだ。この期間を過ぎたものは、製品の寿命が来たと見なされる。故障しがちになるので、買い換えることが推奨される。逆に言えば、耐用期間に満たないうちは、買い換える必要がない。
自動車だと、耐用年数は特に定められていないようなので、60年以上も前の自動車が使われている途上国もある。キューバが有名だ。
→ キューバは旧車天国って知ってましたか?
→ 旧車天国のキューバにはまだ古いアメ車が走っているのか?
自動車だと、日本の国産車の保証期間は、一般部分が3年で、エンジンなどの基幹部品は5年であることが多い。ここでは、「3年を過ぎたら、修理代が無料である期限が切れます」となる。しかし、「3年を過ぎたら、もう乗れなくなるので、廃車にする必要があります」ということはない。間違えてはならない。
エレベーターの例では、保証期間が 10年間で、耐用期間が 25〜30年、という製品が多い。(後述する。)
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ところが、保証期間を耐用期間のことだと勘違いする人が続出している。
「保証期間とは、製品の質を保証する期間だ」
というふうに勘違いするわけだ。これは、「保証期間」という言葉のせいらしい。
実際には、そうではなくて、
「耐用期間とは、製品の質を保証する期間だ」
であるのだが。
なのに、この両者を混同する。そのあげく、次のように思い込む。
「保証期間を過ぎたら、製品の質が保証されないので、買い換えるべきだ」
いかにも馬鹿げた話だが、こういう勘違いをする人はとても多い。
事例は、次のページに見出される。
→ 元市長がコストカット事例を紹介「治水予算半減」「消防車高すぎ」「部品保証期間が近い設備に予算一切つけず。壊れたら修理すればいい」 - Togetter
→ 同・はてなブックマーク
→ 前明石市長が「壊れてないが保証期間が切れたので交換したい」に対して「止まったら修理すればいい」と返したスタンスは危険に感じる話 - Togetter
→ 同・はてなブックマーク
なお、発端となった元記事はこちら。
→ 10年の保証期間が過ぎたから部品交換したい…「エレベーターの修理」を急ぐ職員に前明石市長が言ったこと いまもエレベーターは問題なく稼働中
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元の記事では、「保証期間が切れたから、機械を買い換えたい(更新したい)」と言った職員に対して、「保証期間が切れたからと言って、機械を買い換えることはしない」と市長が決めた。
これは当たり前のことだろう。家電・パソコン・スマホでだって、保証期間が1年間であることが多いが、保証期間が切れたからといって、すぐに買い換えることはしない。エレベーターも同様だ。「耐用期間は 25年であり、25年たったら買い換えるべし」とメーカーが推奨している。なのに、「保証期間(無償修理期間)が切れたからといって、製品を買い換える」というのは、理屈が通らない。
ところが、上記の記事に寄せられた反論は、多くが市長に反発している。なぜか? 保証期間と耐用期間とを混同しているからだ。
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さらには、誤読の例も多い。「メンテをケチるのは安全性軽視だ」と批判する。
しかし記事には「メンテをやめる」とは書いていない。「保証期間が切れたから、機械を買い換えたい(更新したい)」という方針を否定しただけだ。
一般に、エレベーターのメンテをすることは、法律で義務づけられている。それを勝手にやめることはできない。
ビルなどに設置されているエレベーターですが、安心安全に利用するために、管理者には定期的な点検の義務が課せられています。
具体的には建築基準法第8条で「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定められています。
つまり、点検を怠ってしまうと、法律で罰せられるのです。
近年ではエレベーターに関する事故も増えていますので、管理者は定期的に点検を行う必要があると思われます。
また、エレベーターの耐用年数は25〜30年(税法上の耐用年数は17年)となっていますので、長く使用する設備としては定期的なメンテナンスは欠かせません。
( → エレベーター点検に課せられている義務と周期 - 生和コーポレーション )
「メンテ代を節約するために、メンテをやめよう」と思っても、そんなことはできないのだ。なのに、そこを勝手に勘違いする人が多すぎる。読解力がないのだろうが。
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ともあれ、次の二つは別のことだと理解しよう。
・ 保証期間 …… 修理代が無償である期間
・ 耐用期間 …… 買い換えなくてもいい期間
前者は、修理代の有無の話だ。
後者は、使用期限が切れるかどうかの話だ。
ところが、「保証期間」の「保証」という言葉のせいで、「保証期間が切れたら、買い換える必要がある」と勘違いする人が多い。
言葉の意味をきちんと理解しよう。
【 追記 】
「エレベーターの保証期間は、実際には 10年ではなく、5年だ」
という指摘がコメント欄に来た。
なるほど。実際にはそうであるようだ。私も調べてみたが、5年または1年の社が多い。
とはいえ、その場合には、本項の話が否定されるのではなく、本項の話がもっと極端になる。「 10年で買い換えよ」という話が、「1年または5年で買い換えよ」という話になるからだ。市長を批判している人たちは、ますます自滅になるね。
※ なお、「耐用年数が 25年ぐらい」という数値は、何ら変更がない。つまり、本項の話の基幹部分は、何ら影響を受けない。
※ 市長は数字を間違えたので、聞き違えでもあったのかもしれない。しかし、尻馬に乗って市長の方針を批判した人たちは、聞き違えをしたわけではない。自分たちの認識が根本的に狂っているのだ。「保証期間と耐用期間を取り違える」という、根本的な認識ミスがある。
※ 保証期間は1年または5年、と述べたが、これは現在の制度だ。昔は 10年であったこともあるようだ。( → https://x.gd/xSvvH )
ネットで調べると
「正常な使用状況で故障した場合、保証期間内であれば無償修理を行っています。
通常のエレベーターメーカーであれば製品保証は1年間が一般的ですが、当社製品の場合はメンテナンス契約との併用で、乗用であれば5年または使用回数200,000回、人荷用、荷物用であれば3年という長期にわたって手厚い保証をお約束。」
https://www.nichiun.co.jp/maintenance
というのはありますが、それでも乗用エレベータの保証期間は5年です。それも「メンテナンス契約との併用で」と書かれています。
法定点検は年1回ですが、実際には1か月に1回程度はエレベータやエスカレータは点検(メンテナンス)があります。ご自分の身の回りのエレベータやエスカレータを思い浮かべてもらえば年1回の点検しかしていない、などというものはないはずです。この法定点検以外の点検間隔をのばしたり点検項目を減らすことでメンテナンスコストをケチることは可能です。最近増えている点検専業業者がやっていることですね。
ご指摘ありがとうございました。
これを受けて、最後に 【 追記 】 を加筆しました。
> 元の記事では、「保証期間が切れたから、機械を買い換えたい(更新したい)」と言った職員に対して、「保証期間が切れたからと言って、機械を買い換えることはしない」と市長が決めた。
>(中略)「保証期間(無償修理期間)が切れたからといって、製品を買い換える」というのは、理屈が通らない。
→ どういうことかというと、そもそも担当職員は、「エレベーター全体を10年経ったから買い換えてほしい」と言ったとは思えません(常識的に)。どう考えても、「エレベーターの保守上、10年くらいで寿命を迎える部品を、予防整備として交換してほしい」といったのではないでしょうか。
例えば、下のリンク先の内容によると、受電盤・制御盤・かご上運転装置などは、定期交換部品として10年での交換が推奨されています。なお、このサイトはホームエレベーターのものですが、これらの部品の故障は、主に電気基盤上の電解コンデンサーなどの劣化によって起こるのですから、事業用エレベーターでも同じことです。
https://www.mh-he.co.jp/support/cycle.html
ですから、職員がこのような趣旨で言ってきたのであれば、その言い分は正当です。エレベーターの故障は、単に使用できないという事態だけではなく、閉じ込めなどの事故にもつながりますからなおさらでしょう。
なお、この「部品交換」は、筆者が示されている建築基準法第8条で義務つけられているメンテ≠ニは違うはずです。なぜなら上のサイトにも、「交換が推奨」と書かれているにとどまり、「交換が義務」とは書かれていないからです。逆にいうと、このような推測が真実であるなら、職員は市長に対して、「一部の部品については、交換は推奨ではありますが、なかば義務みたいなものですよ」と話して説得すればよかったのかもしれません。
さらに言うと、上の推測が当たっていなくて、泉 前市長は職員の話を誤解していなかった(エレベーターを代替えするのではなく、一部の部品を交換することを求められたときちんと理解していた)としても、このエレベーターが(製品として)いつ頃リリースされて、いつ頃(市の)建物に据え付けられたか、によって話が違ってきます。
何が違うかというと、確かに、エレベーターの装置としての耐用年数は25年くらいと見込めるのかもしれません。しかし、エレベーターも工業製品ですから、保守に必要な交換部品がいつまで手に入るのかということも考えておかなければなりません。ちなみに、国産の家電では、生産終了からだいたい7年で部品が出にくくなります。クルマでは(確か法律上のしばりがあり)、生産中止から10年間は補給する義務がメーカーに課せられています。
エレベーターの場合、そのへんの事情がどうなっているかハッキリわかりませんが、耐用年数が25年というのが確かなら、それより何年も短いということはないでしょう。しかし、仮にこのエレベーターが数十年前のもので、メーカーから「今後数年以内に部品が入手できなくなりますよ」と言われていたという可能性はありそうです。
このようなケースでは、もともと定期交換が必要な重要部品については、前回交換してからすでに数年〜10年近く使っているのであれば、まとめてイロイロ交換しておくことは極めて合理的です。もちろん、確率的には、それぞれの部品が1年くらいで故障することもありえます。しかし、期待できる部品の耐用年数は10年なのですから、うまくいけば(それぞれの部品が故障しなければ)エレベーターの寿命も10年以上延びることになります。逆にそこで、わずかな交換のお金をケチると、何かひとつでも故障した際にエレベーター全体を代替えすることになりかねません。
前市長は「結局そのエレベーターは、今も問題もなく稼働しています。」と書いていますが、それは結果として運が良かっただけなのかもしれません。
これは部品の「耐用期間」のことですね。耐用期間が切れたら、交換するのが当然です。それが(広義の)メンテの一種。
※ 保証期間が切れる話とは別。
→ そもそも、本稿を読むと、泉さんが「エレベーターの保証期間が過ぎたからエレベーター自体を交換してほしいと職員から言われた」と思っているようにしか取れないのですが、泉さんの書いた文章(一次資料)をしっかり読むと、(当然ながら)泉さんはそう思っていないですね。
> ある日、市の公共施設の担当職員から、
> 「エレベーターの修理に予算を割いてほしい」と相談がありました。
> 「壊れてるんか?」と聞くと、
>「壊れてはいないが、部品の保証期間が10年だから、そろそろ機械を交換したい」
> と言います。
> 「止まったら修理すればいいから、今はそのままで」と返すと、
> 「止まってからでは市民が怒ります」と言う。
つまり、泉さんは、「エレベーターではなく部品の交換を求められた」ということ自体は正しく理解しているようです。そのいっぽうで、「部品の保証期間≠ェ10年だから〜」と職員から言われたと書いています。しかしこれは、実際は「部品の耐用期間≠ェ10年だから〜」と言われたのではないでしょうか(職員の説明がわかりにくかった可能性はありますが)。ということは、そこを誤解してしまった、あるいは保証期間≠ニ耐用期間≠混同した(言葉を正確に使い分けなかった)のは「泉さん自身」ということになりそうですが、本稿ではそのようには話が進んでいません。あくまで、
・職員が両者を混同していたので、市長に間違った進言をした。
・市長の指示・決定に反発する(記事の)読者も、両者を混同している。
ということが前提となって論評がされています。
そうではなくて、職員はおそらく、「耐用期間が迫っている、あるいは期間が過ぎている部品を交換したい」と進言したのですから、ぞの前提を正しく理解した上で、それに対して泉さんが、「部品の耐用期間が過ぎても、その部品が故障するまでは交換しないでいい」と指示したことについて、その是非(泉さんの指示は適当だったか否か)を論評すべきだったと考えます。
(以下、蛇足)
私の考えは、交換を求められた部品が何かによりますが、「故障してから修理すればいい」が全てに通るのでしたら、最近問題となったデンソー製の燃料ポンプの不具合についても、「高速道路でもトンネル内でも、故障してクルマが止まってからレッカーして修理すれば何も問題ない」という理屈も正しいことになってしまいます。市の施設であって、個人の家のホームエレベーターではないのですから、泉さんの指示・決定は、やはり適当ではなかったでしょう。
それと、私の直前コメントの後半に書いたとおり、故障でいざ修理したいときに部品が入手できず、それこそ機械(全体)の更新(買い換え)となる場合もありますから、耐用期限が過ぎた部品はなるべく交換していくという考えはそれなりに合理的です。泉さんの「今でも結果的に故障していないのだから交換しないほうがよかったのだ」という感想は、少々短絡的でしょう。
一方、本項は泉さん方針についてどう評価しているかというと、実は、何も評価していません。話の対象外です。
これについてじっくり考えると、どうなるか? かわっこだっこ さんの話の通りでいいでしょう。私としては特に言うことはありません。
ともあれ、本項のテーマは、「この件で騒いでいる人たちの認識の仕方は、基本概念がおかしいよ」ということです。「該当のエレベーターをどうすればよかったか」ということではありません。それは論評外。
書かれているとおり、保証期間≠ニ耐用期間≠混同するのはダメですが、その混同を原因として妙な騒ぎが起こっているようにはみえません。
というのも、前のコメントのとおり、私は、泉さんが耐用期間≠保証期間≠ニ書き間違えたのではないかと疑っているわけですから、世間の人がこの泉さん発言の保証期間≠耐用期間≠ニ読み違えてもらったほうが、一回まわって元に戻るので、むしろ確からしい意見になると思ってしまいます。ですから、それを加味して本稿で示された togetter や はてなブックマーク の内容を再読するとそんなに見当外れにはみえないのです、と最後に申し上げておきます。
「保証期間が切れたから更新する」という発想がおかしいのだ、というのが本項のテーマであり、現実にどう処理するべきだったかはテーマではありません。
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現実にどうするべきだったかについていうと、部品の定期更新期間が切れたなら、更新した方がいいが、更新しなくても、特に問題はないでしょう。きちんとメンテしていれば、故障したあとで交換しても足りる。
リンクページで見ても、故障するのは電気基板などぐらいだから、故障しても、止まるだけであって、人命に影響が出るわけではない。
なのに SNS では「故障したら人命に影響が出るから更新するべきだ」という論調が大多数だ。
ちなみに、自動車でバッテリーが切れると、エンジンがかからなくなり、動かなくなる。だが素人は「バッテリーが切れると、自動車が暴走して、ハンドル操作が効かなくなり、大事故を起こす」と心配する。
この手の妄想で、泉市長が SNS で大々的に批判されている。だから、そういうネット上の妄想を批判しているんです。批判の対象は、人々の妄想です。
修理をどうするべきだったか、というのは、特に話題にしていませんが、私の結論を言えば、「更新した方がいいが、本質的にはどっちでもいい」となります。
エレベーター部品の定期更新をしていないビルなんて、いくらでもあります。
※ 耐用期間が 25年で、定期更新が 10年だと、2回更新するので、もったいない。12.5年で更新なら、1回更新するだけで済む。そう思う人は多そうだ。
コメントで例を出されてるデンソーのポンプとか、リコールになっているのは壊れるかも、ではなく既に壊れてる、壊れるのが確定してる例なので不適切かと。
とすれば、そのくらいの額を節約したからといって、さも大金を節約したように吹聴することの方が問題だ、となる。
たとえば、10万円を節約できたが、エレベーターが故障リスクをかかえた。故障リスクは、
損害額 × 確率 = 2000万円 × 1% = 20万円
こうであるとしたら、結局、節約になっていない。ちっとも自慢になっていない。むしろ、節約額よりも損失リスクの方が高まっているので、かえって損をしている。愚行だ。
批判するなら、この点でしょう。
※ 私は? 市長を批判するかどうかは、もともとテーマにはなっていないので、割愛。
> 批判するなら、この点でしょう。
→ 市長指示・決定への批判は、本稿および管理人さんコメントの本旨ではない≠ニいうご主張は重々わかった上で、いちおう申し上げておくと、私も管理人さんと同じことをいっています。
Posted by かわっこだっこ at 2024年02月18日 23:26
>(以下、蛇足)
> 私の考えは、〜(後略)
ついでに、関連の、2つ上のかかしさんのコメントに対しても補足させてください。
Posted by かかし at 2024年02月19日 10:52
> コメントで例を出されてるデンソーのポンプとか、リコールになっているのは壊れるかも、ではなく既に壊れてる、壊れるのが確定してる例なので不適切かと。
→ ここで少し勘違いがあるのは、私が(以下、蛇足)で多少の類似性を指摘したのは、「故障のしやすさ」ではありません。「故障したときの損失の大きさ」のほうです。直前の管理人さんのコメント中にもあるように、これら両者の掛け算が重要で、いわゆる「費用対効果」の概念のもととなっているものです。
かかしさんの書かれたように、ちょっと部品交換をさぼったエレベーターよりも、リコールになった燃料ポンプのほうが、「故障のしやすさ」についてはずっと上です。この故障のしやすさをコントロールするのが「信頼性設計」です。
いっぽうで、「故障したときの損失の大きさ」については、エレベーターも故障したらそれなりにヤバいという考え方は別におかしくはなく、世間の一部の人もそれで騒いでいるようです(管理人さんに言わせると、それは妄想≠セそうですが……)。この故障したときの損失(人的損失を防止できるか? 物的損失にとどまるとしても製品の全損は防げるか?)も考えるのが「安全性設計」です。
「フェールセーフ」という言葉も、いまはヒューマンエラーにからんで使われることが多いですが、もともとは、この安全性設計の用語です。
先ほどの燃料ポンプで説明すると、壊れたからといって燃料が漏れて吹き出す(火災になる)ような壊れ方(故障モード)は論外ですが、以前は、いきなりエンジンへの燃料供給がストップするような故障モードでも許容されていたのかもしれません。エンジンがふけなくなったら、減速したまま路肩に寄せて止まれば、乗員の命が失われるようなことはないだろう、という考え方も一部にありました。しかし今は、クルマ自体が止まってしまうような「路上故障」全般については、例えば後ろから大型車に追突されるような危険性があるので、どこの自動車メーカーでもNGとしています。
では、どういう故障モードがいいかというと、例えば、いきなりポンプが動作しなくなるのではなく異音(燃料ポンプだと高周波音が多い)が出るようなかたちです。そこで問題に気がついて修理に持ち込めば、路上でクルマが止まってしまうような危険な「故障モード」には進展しないだろうという考え方です。
この「致命的な故障(フェイタルな故障ともいいます)」には至らせないという安全設計は、別にクルマ部品(またはクルマという製品)だけではなく、エレベーターでも行われています。
ですから、本稿で取り扱われた問題(泉さんの発言が炎上?した問題)の本質(本当の原因)は、筆者(管理人さん)が本稿で述べたような「世間の一部の人が保証期間≠ニ耐用期間≠混同した」ということではなく、「世間一般には、エレベータの故障について、どこまで許容できるかの個人差が大きい(温度差がある)」ということです。
Posted by 管理人 at 2024年02月19日 10:09
> リンクページで見ても、故障するのは電気基板などぐらいだから、故障しても、止まるだけであって、人命に影響が出るわけではない。
なのに SNS では「故障したら人命に影響が出るから更新するべきだ」という論調が大多数だ。
上の管理人さんのコメントにあるように、エレベーターの電気系統が故障しても、せいぜい一時的にカゴが止まるだけで、暴走や落下はありえません(シンドラー製で起こったような事故は例外で、一般に「致命的な故障」は起こりえない)。その止まることについても、きちんと「安全性設計」ができている製品であれば、階の途中で停止するのではなく、最寄り階で停止するような気の利いた「故障モード」になっているのかもしれません。
しかしながら、万が一にも階の途中で停止したら、「夏場だったら熱中症になる人が出て、病院に搬送するような事態になるかもしれない。これは「致命的」だ!」と考える人も、中にはいるのかもしれません。つまり、原発事故でも何に対してもそうですが、「どこまでが許容(我慢)できて、どこからが問題だ(致命的だ)」と考えるのか、その基準(線引き)に個人差があるということが、この問題の本質です。
前項で管理人さんが示されたように、論理的に定量的に、20万円と10万円という数字を比較して損得を評価できる(そういう習慣のある)人ばかりではない、というところが最大のポイントです。
泉さんを含めて、保証期間≠ニ耐用期間≠正確に使い分けなかったという側面もあることはありますが、それは「混乱に拍車をかけた」だけであって、もともとの原因ではありません。そもそも、当の泉さんもそうですが、本件について、保証期間≠本来の「壊れたらメーカーが無料で治してくれる期間」の意味で使っている(使った)人は非常に少ないと思います。「メーカーの推奨どおりに正しく使っていれば、致命的なことは起こらないとメーカーが保証≠オている期間。逆に、それで何か起こればPL法にもとづいて賠償を求めることができる(期間)」のような、ごくごく漠然とした意味合いで使っている人が多いのではないでしょうか(泉さんは違うと思いますが)。まあ、それもアタマが痛い話ではありますが。