2024年02月15日

◆ 能登の水道復旧の困難さ .1

 能登の水道の復旧には何年も要する。「一日も早く復旧を」と関係者は言うが、それが実現するのは何年も先のことだ。

 ──

 県や政府は2〜3カ月で復旧ができるようなことを言っているが、現実には復旧には何年も要する。「一日も早く復旧を」と関係者は言うが、日単位ではなく年単位の時間がかかる。そのことを理解するべきだ。
 自分の能力も弁えないまま、とうてい実現不可能なことを望めば、無道な努力をして、破綻するだけだ。ちょうど、MRJ をめざして破綻した事例のように。
 できることとできないことをきちんと見分けることが必要だ。(ここ数日、同じテーマで語っているが。)
 

 県の見通し


 県の見通しはきわめて楽観的だ。
 石川県は21日、能登半島地震で被害が大きかった6市町の水道復旧時期の見通しを公表した。輪島市と穴水町、能登町は2月末〜3月末に仮復旧する見込み。珠洲市の一部地域は2月末以降としている。浄水施設や水道管の修繕を急ぐが、天候などの影響で遅れる可能性があるという。
 志賀町は大半が2月末までに仮復旧、一部地域で3月末になる。七尾市は市街地などで4月以降となる見込み。
( → 水道復旧見通し公表 輪島・能登など2月末〜3月末 - 日本経済新聞

 これを受けて、被害のひどい土地でも、「2月末〜3月末には復旧するのだから、それまで我慢すればいい。あと少しの辛坊だ」と思って、現地に留まる被災者が多いようだ。特に、自宅の被害が少ない家ではそうであるようだ。

 仮復旧


 ここで、仮復旧というのは、かなり小規模な復旧である。
 県によると、給水経路を一時的に変えたり、地上に新たな水道管を仮置きしたりしての「仮復旧」で断水が解消するのは、輪島市や穴水町、能登町、志賀町は3月末までかかる見込み。さらに珠洲市や七尾市は4月以降になる見込みという。
 水道管が地中に埋まった状態に戻す「本復旧」については、「液状化した地域では、まちづくりから取り組む必要がある」(森田典子・生活環境部長)と、はっきりとした見通しは示せていない。
( → 続く断水、一家の一日 タンク抱えて井戸水「腰痛い」 能登半島地震:朝日新聞

 被害の少ない七尾市でさえ4月以降になる。なのに、被害がひどい輪島市や珠洲市で3月末までに復旧するはずがないだろう。県はひどく甘い見通し(虚構・嘘)を語って、被災者を現地に縛り付けている、とも言える。
 詐欺師が口車によってだます虐待だ、とも言えそうだ。

 テレビの報道


 県の嘘にだまされないためには、現実を知ればいい。現実はどうか?
 NHK の報道がある。
  → 復旧見通し立たない地域も 石川 3万戸断水続く それぞれの事情 | NHK | 令和6年能登半島地震
 これによれば、復旧の速度は遅々としている、とわかる。
 「市内の水道の心臓部分が地震ですべて壊れている。水を通さないと被害の状況も分からないところがあり、復旧の見通しを軽々しく言えない状況だ」


 日本テレビは、さらに詳しい報道を動画で示している。
  → 今も輪島市ほぼ全域で断水 東京都水道局の職員たちが現地入り “手探り”復旧工事の現場は|日テレNEWS NNN

 破壊の程度がひどくて、漏水箇所が多すぎる。修復しても、修復しても、新たな漏水箇所が次々と出てくる。一日に補修できる量はあまりにも少ない。全体が完了するのは遠い先になる、とわかる。

 過疎地の状況


 NHK の報道では、繩又町の状況も記している。10世帯のうち、9世帯が避難して、残るのは1世帯。それが使う水道が 10km の水道管を持つが、地震で崩壊した。何とかしてほしい、という話。
 僻地のたった一人の生活を救うために、10km の水道管を復旧する。何ともまあ、莫大な無駄事業である。こんなことをやっていたら、キリがない、感じだ。
 輪島市の市街地は別として、人口 10人以下の山間僻地の復旧に手間をかけていたら、10年以上もかかるかもしれない。




 市街地の状況


 浄水場のすぐ近くの住民に限っては、すでに水道が復旧した地域もあるそうだ。住民が大喜びしている。





 視聴者も感動しているようだ。
おばぁちゃん見てて自分も泣けてくる。
おばぁちゃんに幸あれ!

 ──

おばあちゃんの涙に貰い泣きした。早く元の生活に戻れますように。

 だが、説明を読めばわかるように、これで水が通ったのは3軒だけだ。1万軒ぐらいの輪島市の中で、たったの3軒だけが復旧しても、ほとんど意味はない。
 上記コメントには、こうもある。
未だに水が出ない地域にいます。
毎日毎日重いポリタンクを運んでたら両肩が痛みしんどいです…。

 県の口車による甘い予想を信じて、「もうすぐ復旧する」と思い込んでいるから、地獄のような状況にあえて留まるわけだ。
 現実を知らないと、県にだまされたまま、となる。可哀想に。

 復旧の人数


 崩壊箇所は全域的に圧倒的に多い。一方、不急のための人員はあまりにも少ない。
<凡例>
被災地→応援地方支部名:
    水道事業体作業者人数
   /工事業者作業者人数

珠洲市・七尾市→中部:80/106
珠洲市→東北:6/なし
七尾市→北海道:11/23
輪島市・志賀町→関東:83/115、中国四国:22/33
能登町・穴水町→関西:44/76

( →  Twitter :日本水道協会

 珠洲市と七尾市で、総計 200人余り。
 輪島市と志賀町で、総計 200人余り。
 能登町・穴水町、総計 100人余り。

 全部合わせて、600人ぐらいか。1箇所を6人ぐらいのチームで作業しているから、100チームぐらいある。それで1日に 10〜20メートルぐらいで補修が進捗する。
 破壊の程度が低い七尾市でさえ、復旧はずっと先になりそうだ。まして、輪島市や珠洲市では、見通しさえ立たないというところだろう。

 ※ なのに、県はすごく楽観的な見通しを立てる。頭がイカレているとしか思えないね。

 Twitter による報告


 テレビ報道のほか、 Twitter による報告も得られる。

 現状では、水道管がどうのこうのという以前に、道路が滅茶苦茶に破壊されている箇所が多い。動画でもわかるが、 Twitter でも報告されている。








 最後の青い管は、仮設の水道管だ。こういうのを「仮復旧」と呼ぶのだろう。
 しかしこの程度の水道管では、水量も十分とは言えまい。また、道路交通も制限されてしまう。「あちらが立てば、こちらが立たず」だ。地域全域で従来通りの生活が復旧するには、程遠い。

 それでもまあ、市街地については、まだ何とかなりそうだ。一方、山間僻地については、このような仮設の水道管を(長距離で)設置することも困難だろう。

 ──

 道路も水道も、復旧の進み具合は、あまりにも遅々としている。一方、その間も、人の寿命は削られている。下手をすると、復旧までに 10年がかかって、10年たったときには、高齢の被災者は寿命を迎えることになった……となりかねない。
 「復旧が完了しました! 過疎地のこの村も、道路と水道が復旧しました!」
 と報告したときには、高齢の村人がみんな死んでいた、というふうになりかねない。誰もいない過疎地の村を復旧したことになる。死者の遺骨のために。 

 そんな馬鹿げたことをするくらいなら、さっさと県外の温暖な地域に避難していれば、ずっと長生きできただろうに。
  


 【 関連項目 】

 じゃあ、どうすればいいのか……という話は、前項で示したとおり。
  → 能登の復興方針のミス: Open ブログ

 つまり、能登や珠洲市は、道路の復旧を最優先にして、水道の復旧は後回しにするべきだ。
 水道の復旧は、七尾市を優先して、七尾市で復旧を完了させるべきだ。以後、穴水など、南から徐々に復旧させる。北端の輪島市まで到達するのは、かなり先になる。
 それまでは、被災者は二次避難所や、みなし仮設で、長期間にわたって生活すればいい。復帰までは3〜5年ぐらいかかることもある。それまでは別の土地で暮らしてもらうしかない。そうすることだけが、人間らしい生活を守るための、唯一の方法だ。現地に留まって地獄の生活を続けるのは、最悪だ。

 ※ なお、そういうふうに被災者が県外で暮らすと、政府の負担額は格安で済むようになる。国民の負担額も大幅に減る。逆に、現地で仮設住宅を建設すると、2年間で 2000万円の負担となる。被災者1家庭あたり毎月 80万円もの費用がかかることになる。(その分、大幅増税が必要となる。)



 [ 付記 ]
 私の推奨は、みなし仮設に移る人のために、500万円を払うことだ。被災者はその 500万円で、四国あたりの僻地の空き家を、格安で買える。
   → 僻地からの移転(被災者): Open ブログ

 実は、さらに名案がある。その 500万円で、四国あたりの僻地の空き家を、格安で買って、3年間だけを過ごす。3年たったら、その家を 450万円で売って、能登に戻る。……この場合、3年間で 50万円の家賃を払っただけで済む。差額の 450万円は、手元に残る。
 そこで、その 450万円で、能登に新築住宅を建てればいい。(足りない分は自己資金を追加する。) あるいは、金が足りないなら、倒壊しなかった中古住宅を買えばいい。中古品ならば、安く買える。

 まるで手品のように金を使い回すことで、一定の金をあれこれと使い回すことができる。かくて、幸福になれる。…… 困ったときの Openブログ。うまい案を出した。
 
posted by 管理人 at 23:36 | Comment(1) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この仮復旧の管は普通に良い材料ですし、太さもそれなりにあるのでかなり有効だと思います。
この材料や電力ケーブルが能登に集中供給されるため、全国の他地域では供給不足になりつつあります。
Posted by けろ at 2024年02月17日 12:21
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