2024年02月14日

◆ 能登の復興方針のミス

 能登の震災地では、復興の方針が根本的に間違っている。そのせいで非効率な状態がまかり通って、とんでもない惨状にある。

 ──

 NHK スペシャル で、能登の復興の現状がまとめて放送されたが、これを見ると、現状はひどい惨状であるとわかる。ひどい惨状のまま、なすすべもなく、多勢に無勢のような抵抗を続けているだけだ。
 このような問題を一挙に解決することは、実は容易である。なのに、その容易な方法を取らないで、地獄のような状況を続けている。

 具体的には、次の通り。
 

 避難所


 (輪島市や珠洲市では)避難所に、大量の避難者が残っている。そのせいで、これらの避難者の世話をするためのサポート人員が必要となるが、そのサポート人員が疲労困憊しているそうだ。(地元の)自治体職員、病院職員、介護職員など。
 次の記事もある。
  → 奥能登地域 看護師約70人が退職決断 体調崩す医療従事者も…被災地の医療に危機

 結果的に、崩壊状態にある。サポート人員にとっては、地獄の状態とも言える。

 ※ これらの避難者が、さっさと2次避難所に移れば、この問題は一挙に解消する。なのに、そうしないから、大問題が発生するわけだ。愚の骨頂とも言える。
  → 二次避難所に来ない: Open ブログ

 道路・水道


 (輪島市や珠洲市では)道路の破壊状態もひどいし、水道の破壊状態もひどい。そのなかで仮設住宅の建設も進んでいるが、作業が難航しているそうだ。建設工事をする人の住居もないので、金沢から片道4時間もかけて、住居建設現場まで向かう。無駄の極みと言えるだろう。

 そもそも、道路の復旧がなかなか進まない。この状況では、道路の復旧を最優先するべきであり、道路の復旧が済むまでは、水道の復旧は諦める(後回しにする)べきだ。また、水道の復旧が済むまでは、仮設住宅の建設は諦めるべきだ。
 物事には、こういう「優先順序」というものがある。それを考慮しないから、全体の復旧が大幅に遅れてしまう。愚の骨頂だ。

 ──

 また、地域についても、順序を考えるべきだ。七尾市ならば、被害のレベルが比較的少ないので、早期の復旧も不可能ではない。ならば、復旧の技術者を七尾市に集中するべきだ。そうすれば、七尾市の人々はそこで住めるようになる。
 一方、輪島市や珠洲市では、そうは行かない。部分的に復旧しても、「ごく狭い領域で復旧した」というだけだ。道路は寸断されているし、道路を歩いた先では水が出ない。輪島市や珠洲市では、道路も水道も、まともに復旧されるのは数年後だ。
 ならば、輪島市や珠洲市はあとまわしにして、まずは(復旧の)戦力を七尾市に集中するべきだろう。「選択と集中」だ。
 こうして南側から少しずつ、「復旧完了」の領域を北側に広げて行くべきだ。

 現状では、北と南を同時進行で復旧している。そのせいで、まともな道路も通れないまま、すごく非効率な作業をしている。結果的に、復旧完了の時期はすごく遅くなってしまう。

 順序の計画ができないから、手順前後という非効率が生じて、復旧はかえって遅れてしまうのだ。

 ※ 愚かな司令部による作戦ミスのせいで、部隊が全滅する……というのに似ている。

 早期復興の困難さ


 輪島市や珠洲市で破壊の程度がひどい。水道がまともに復旧するのは、数年後になりそうだという。
 石川県は「仮復旧」という方針を示しているが、これは地上に細いパイプを通すだけであるようだ。それで少しは水が通るようになるのだろうが、大量の水を通すことはできまい。(道路を横断する水道管を地上に置くと、道路通行ができなくなるからだ。)

 仮復旧だと、飲み水ぐらいは得られるかもしれないが、洗濯やトイレや風呂にまで大量の水を使うことはできまい。生活をするには不適であり、観光業を営むにも不適だ。(飲食店も開けない。)

 輪島市や珠洲市では破壊の程度がひどいので、これらの地域がまともに復旧されるのは、数年後のことになるだろう。ざっと見て、3〜5年か。その間の数年ぐらいは避難しているべきだろう。
 なのに、人々は現在地に残ろうとする。これは、あまりにも無謀だ。(ろくにトイレにも行けずに病気になる高齢者も出ている。)

 輪島市や珠洲市では、早期復興は不可能だ。そのことをしっかりと理解した上で、「数年間の避難生活」という基本方針を立てるべきだろう。
 もちろん、被災者はそれを嫌がるだろう。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、そうするしかないのだ。さもなくば、命に関わるからだ。特に、高齢者にとっては。

 現状の方針が取られた場合、今後は高齢者の死者が多数出る。「日本のガザ」とでもいうありさまだ。
 それを避けるためには、「二次避難所」と「みなし仮設」を最大限に利用するべきだ。これが正解だ。
 取るべき正解はわかっている。なのに、被災者はそこに向かおうとしない。被災者はあえて死に至る道を選ぼうとする。レミングの群れのように。
 

lemming.jpg
レミングの集団自殺(想像図)


 それを正すのが、政治の役割なのだ。



 [ 付記 ]
 以上のことから、現状の復興方針が根本的に間違っているとわかる。基本方針が根本的に間違っているのだが、それでもあえて到達不可能な目標に到達しようとする。そのせいで、結果的に、全滅のような憂き目に遭う。

 比喩的に言えば、こうだ。
 「川を渡ろうとして、橋を架けようとするが、橋を架けられない。そのまま、未完成状態の(中途半端な)橋を渡ろうとして、全員が川に流されて死んでしまう」
 このとき、別案が提示されていた。
 「ボートに分乗して、対岸に渡れば、全員が無事に助かりますよ」
 と。しかし住民はそろって拒否した。
 「ボートなんかイヤだ。どうしても橋がほしいんだ。橋がふるさとだから、橋を失うことはできないんだ」
 こうして橋にこだわったせいで、全員が死んでしまった。
 そして、その方針を支持して、橋を作るために超巨額の費用を支出したのは、日本政府だった。日本政府は莫大な金を出して、住民をみんな死なせてしまった。
 「これは住民が望んだことなのだから、仕方ない。彼らも死んで本望だろう」
 と日本政府は自己正当化した。そのあとで、国民に訴えた。
 「住民を死なせる橋を建設するために、超巨額の費用がかかりました。その分、増税します」
 
 かくて日本国民は、住民を溺死させた費用をまかなうために、大幅増税を負担して多額を払うことになった。
 そのすべては、日本政府の立てた「救済計画」「救済方針」のためだったのである。

 以上が、現在の能登復興でなされていることだ。(たとえ話。)


posted by 管理人 at 23:36 | Comment(2) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
地獄からあえて逃れようとしない人たちが少なからずいるようです。

(NHKニュースより)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240214/k10014357721000.html
Posted by 反財務省 at 2024年02月15日 07:40
日本では地震火山風水害が毎年必ず起こっているのですから、管理人様が以前からご提案のように専門部署の「防災庁」が必要ですよね。状況のトリアージ、いろいろなパターンに応じた復旧復興計画、国・県・市町村を統合的に巻き込む仕組みづくり。広報、啓蒙、義援金、ボランティアの一元管理。警察、消防、自衛隊、自治体、民間がバラバラに頑張っている現状は改善されて然るべきだと思います。
Posted by けろ at 2024年02月17日 12:20
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