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私の予想を言えば、「実現しないだろう」となる。
なぜか? 技術的には可能になるとしても、コスパが良くないからだ。なぜコスパが良くないかというと、時間短縮の効果が少ないからだ。
片道3時間もかかるような路線なら、時間が半減することに意義が大いにある。
片道2時間がかかるような路線なら、時間が半減することに意義が十分にある。
片道1時間がかかるような路線なら、時間が半減することに意義はあまりない。
片道 30分間がかかるような路線なら、時間が半減することに意義はほとんどない。
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片道2時間が1時間に短縮されるなら、1時間を得するので、そのために金を払っても惜しくはない。時給 3000円の人なら、3000円を余分に払っても惜しくはない。
一方、片道1時間が 30分に短縮されても、30分間を得するだけだ。これれでは効用が少ない。
さらに、片道 30分が 15分に短縮されても、その効用はもっと少ない。15分間を短縮するために 3000円を払うのは馬鹿げている。(時給 1万2千円でないと、割が合わない。)
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現実には、真空チューブ列車を作るとなると、直線ルートを取るので、巨額の工事費がかかる。すると、料金は 3000円アップぐらいでは済まず、(10倍の)3万円アップぐらいが必要となるだろう。
「その料金でもいい」と思うような人は、(10倍の)時給 12万円ぐらいの人だ。そんな人はほとんどいない。ゆえに、真空チューブ列車の需要はない。
需要がないのだから、建設されることもない、と言える。たとえ技術的には可能だとしても、そんなものを使いたがる人はほとんどいないのだ。
たいていの人が望むのは、時間短縮よりも、料金を下げることだ。だからこそ、コストが安上がりで済む「南回りルート」が有望なのである。これならばコストがずっと低くて済む。
[ 付記1 ]
はるか先になれば、大深度トンネルを掘るコストが安上がりにできて、真空チューブ列車を低コストで実現できるようになるかもしれない。
しかし、そうなるとしたら、100年以上あとのことだ。そんな先のことは、考えても仕方がない。核融合発電や火星移住や月面旅行の実現時期でも考える方がマシだ。
[ 付記2 ]
で、結局、何が言いたいか? 「真空チューブ列車は実現しない」ということか? それもあるが、より大事なのは、こうだ。
「南アルプス貫通の直線ルートなんかをめざすのは、愚の骨頂である。それをめざすのは、核融合発電や火星移住や月面旅行の実現をめざすようなものだ。金ばかり食って、実現しない。最後は実現しないまま、MRJ のように破綻するだけだ」
JR東海は、この「破綻に至る道」を突き進んでいるのだ。レミングのように。

レミングの集団自殺(想像図)
[ 補足 ]
「東京〜大阪 間でなく、北海道や九州に行くなら、長距離の超高速鉄道の需要はあるぞ。もともとかなり長い時間がかかるからだ」
という意見もありそうだ。
だが、それも成立しない。なぜなら、北海道や九州に行くなら、長距離の超高速鉄道よりも、飛行機の方が便利で安上がりだからだ。たとえば、成田と札幌の間は、飛行機で 5000円以下で行ける。(早期予約した場合。)
「成田では遠くて不便だろ」
という声もあるだろう。だが、羽田発でも、8500円ぐらいで行ける。
さらに、横田基地・厚木基地を使えるようになれば、大量に格安で行けるようになる。
その意味でも、一番有効なのは、「横田基地・厚木基地の返還」だろう。これが実現すれば、日本の高速交通は大幅に改善する。バカ高い真空チューブ列車などの出番はない。
※ 「横田基地・厚木基地は、交通アクセスが良くないぞ」という声も上がりそうだ。
だが、鉄道アクセスは悪くとも、自動車では届きやすい。海外旅行ならばタクシーを使えばいいし、国内旅行ならば専用バスを使えばいい。どっちみち、自動車ではかなり短時間で基地に到達できる。Google マップですぐにわかる。