2024年01月27日

◆ 自衛隊ヘリ墜落の真相

 沖縄の宮古島沖で、自衛隊のヘリコプターが墜落した事故で、真相が判明したようだ。ひどい操作ミス。

 ──

 自衛隊の内部情報をつかんだようで、公表前に朝日新聞が特ダネ情報を出している。
 2基のエンジンのうち1基にトラブルが起きていたことが防衛省の調査でわかった。安全確保のため異常が生じたエンジンを切ろうとし、誤って正常な方を切ったことを示すデータも残されていた。防衛省は今年度内にも、事故原因などについての報告書を公表する方針。
 事故時の状況を記録したフライトデータレコーダー(FDR)を回収した。
 防衛省がFDRを調べたところ、機体が備える2基のエンジンのうち、1基にトラブルが起きていたことを示すデータが見つかったという。
 事故機のFDRには異常が起きたエンジンの出力が徐々に落ちる一方で、正常な方の出力が突然ゼロになったことを示すデータが残っていた。出力が低下した後、機上の乗員が、切ったのは正常な方だと指摘する趣旨の音声記録も残されていたとみられる。
 一方で、正常なエンジンの出力をゼロにする誤操作をしたことを直接裏付けるデータは残っていなかった。防衛省は操作ミスがあったことの立証は難しいとみており、機体トラブルとともに事故の背景として併記することも検討している。
( → 10人死亡の陸自ヘリ事故、正常なエンジン切って墜落か 防衛省調査:朝日新聞

 エンジントラブルと、操作ミスの、二重のエラーが重なったことで、墜落したようだ。そのうちの一つだけならば墜落しなかっただろうが、双方が重なったことで、墜落した。

 特に重要なのは、操作ミスがあったことだ。これは、次の二点で明らかになる。
  ・ 切ったのは正常な方だと指摘する趣旨の音声記録も残されていたらしい。
  ・ 正常な方の出力が突然ゼロになった


 仮に誤動作でないとしたら、異常な方のエンジンが切られて、その出力がゼロになったはずだ。なのに、そうはならなかったのだから、切るエンジンを間違えた(選択ミスをした)と見なすのが妥当だろう。
 防衛省は、「誤操作をしたことを直接裏付けるデータは残っていなかった」ということで、「操作ミスがあったことの立証は難しい」と判断しているそうだ。だが、その場合には、「意図的にエンジン出力を切った」ということになる。つまり、「意図的に墜落させた」ということになる。
 しかし、それもおかしい。ヘリコプターを意図的に墜落させるというテロ行為をしたいのであれば、片方のエンジンが故障したときでなく、普通に巡航しているときにテロ行為をすればいいだけだ。危機時に限ってテロ行為をするというのは、論理がメタクチャである。(筋が通らない。)
 防衛省は、「操作ミスがあった」ということを、何が何でも認めたくないらしい。そのせいで、上記のように論理破綻の強弁をしている。ひどいものだ。

 ──

 だが、もっとひどいことがある。それは、この事実をずっと隠していたということだ。
 FDR の数値データも、音声の録音も、墜落後のかなり早い時期に判明していた。特に、音声データについては、一部だけは公開されていた。
 関係者によると、フライトレコーダーには、同機のエンジンが異常な音を立て、機体のトラブルを知らせる警報音も鳴る状況が記録されていた。エンジンの出力が下がる中で、操縦席に並んで座る機長と副操縦士が高度を保とうと声を出し合う様子も残されていた。
 エンジンに不具合が起き、操縦席から対応すると伝えられた機内の隊員の1人が「はい」と答えた声も記録されていた。機体はその直後に海面に墜落したとみられ、「あっ」という声を最後に音声は途絶えたという。
( → 陸自ヘリ墜落直前、エンジン出力が急低下…フライトレコーダーに機長ら対応の音声記録 : 読売新聞 2023/05/24

 これまでは、この内容だけを、音声データとして公開していた。しかし実際には、「切ったのは正常な方だと指摘する趣旨の音声記録も残されていた」らしい。その音声記録のデータを、ずっと隠していたようだ。(今なお公開していない。)

 また、エンジンに不具合が起こっていたことは公開されていたが、正常な方のエンジンの出力がゼロになったことについてはずっと隠していた。(今なお公開していない。)

 どうも、何から何まで隠し通そう、という意図が働いているようだ。「事故後にすぐに判明したことを、何カ月も公表しないでいた」というのは、あまりにもおかしい。
 そもそも、事故のあとで調査報告は4カ月以内に出すことが、規定で決まっている。
 陸上幕僚長等は、前項の航空事故調査報告書のうち大事故又は中事故に関する航空事故調査報告書については、自己の所見を添えて2通を事故発生後4箇月以内に防衛大臣に提出しなければならない。
( → 航空事故調査及び報告等に関する訓令

 なのに、規定の原則に反して、これまでずっと報告を延期してきた。ここでも、「真実を隠そう」という意図があると、うかがい知れる。

 ──

 防衛省はこれほどにも隠蔽体質だ。これを見て、読者は思うかもしれない。
 「これほどひどい隠蔽体質があるとは、お釈迦様でも気がつくまい。さすがの Openブログも、今回だけは見抜けなかったようだな。名探偵も、まんまと だまされたな。ざまあ ないぜ」

 しかし、さにあらず。どうせこんなことだろう、ということは、ちゃんと見当をつけていた。去年の6月に、こう記していた。
 もう随分、日数がたっているのだが、いまだに解明が進んでいないのだから、自衛隊は何をやっているんだ。フライトレコーダーが機械的に役立たずだったのか? あまりにも呆れた人的状況(後述)なので、恥ずかしくて、口を開けないのか? ……どうも定かでない。ろくに情報を公開しないし、困ったことだ。

 真相はなかなか公開されないかもしれないぞ。防衛省の隠蔽体質。
( → 自衛隊ヘリ墜落の続報: Open ブログ

 このあとで、加筆分を追加している。
 あとでよく考えると、機上の自衛官の対処は、かなりデタラメである。エンジン不調ならば、それ相応のふるまいをするべきなのに、やるべきことをやっていない感じだ。あまりにも対処がひどいので、自衛隊は恥ずかしくなって、事実を打ち明けられないのかもしれない。
 「お前ら、普段から何をやっているんだ!」
 と指弾されたくないせいで。

 ここにはちゃんと記してある。
 「あまりにも呆れた人的状況(後述)なので、恥ずかしくて、口を開けないのか?」
 「あまりにも対処がひどいので、自衛隊は恥ずかしくなって、事実を打ち明けられないのかもしれない」
 「指弾されたくないせいで」
 と。つまり、隠さざるを得ないような、恥ずかしい状況があるから、故意に隠しているわけだ。真実はすでに判明しているが、真実をわざと隠蔽しているわけだ。防衛省の隠蔽体質。
 そのことを、昨年6月16日の時点で、すでに指摘しているわけだ。

     ※ 「人的状況」「対処」とも記している。つまり、人的な対処のミスがまずかった、と。ここでは、人為ミスとしての操作ミスがあったことを、推測しているわけだ。私が想像したとおりだった、ということになるね。

 ──

 さらに指摘しよう。防衛省の情報では、操縦士が誰であったかも公開されていない。操縦士が二名いたということは示されているが、そのおおよその肩書きも示されていない。個人名は別としても、少なくとも肩書きと経験年数ぐらいは記してもよさそうなものだが、その情報がない。
 ここでも情報の隠蔽がある。では、なぜ? 隠したい情報があるからだ、と見なすのが妥当だろう。

 ちなみに、似た事故では、台湾の民間航空機の墜落事故があった。
 台湾のトランスアジア航空機が離陸した直後に台北市内で墜落し、43人が死亡しました。この事故について台湾当局は30日、「右翼のエンジンが故障した後、機長が誤って正常だった左翼のエンジンを停止させてしまったことが墜落の原因」などとする最終の事故報告書を公表しました。回収されたボイスレコーダーには「間違ってエンジンを停止させてしまった」という機長の声が録音されていたということです。
( → 台湾機墜落の原因は…「機長が誤ってエンジン停止」

 この事故では、機長の操縦技能が低いことが指摘された。
 報告では、機長(41)が、2014年5月に行われたシミュレーター訓練で落第していたことも明らかになった。離陸時にエンジン停止が起きた場合の対処についての知識が不足していたためという。
 同機のボイスレコーダーには、墜落直前に「まずい。間違ったスロットルを引いてしまった」という機長の声が録音されていた。
( → 2月の台湾機墜落は操縦ミスが原因、事故調査委が発表 | ロイター

 この事故は人為ミスで起こったが、そうなるのには理由があった。機長の技量レベルがあまりにも低かったのだ。駄目な機長だから、判断を間違えた。

 とすれば、今回の陸自ヘリ墜落事故でも、切るエンジンを間違えたという初歩的なミスをした操縦士は、同じぐらい間抜けな操縦士だったことになる。
 それは、どんな人物だったのか? その情報を明らかにするべきだが、自衛隊はまったく情報を明らかにしていない。これはひどい。事故原因を解明しようとする気がまったくない、と見なしていいだろう。

 ──

 ここで大胆に推理を働かせると、この操縦士は、幹部であった可能性がある。かなりの上級将校が同乗していたということだから、そのうちの一人が面白半分で操縦していたのかもしれない。
 ひょっとしたら、その上級将校は、最高幹部であったかもしれない。
 坂本師団長は3月30日に着任したばかりだった。師団は全国に九つあり、エリアごとに数千人の隊員をまとめている。
( → 師団長ら10人乗った陸自ヘリ、宮古島沖で不明 海上に機体の一部か:朝日新聞

 陸上自衛隊の「師団長」は、全国に9つある師団のトップで、階級が最も高い「陸将」がつきます。
( → 陸上自衛隊ヘリ事故 搭乗の第8師団長 坂本雄一陸将とは|NHK事件記者取材note

 師団のなかでも一番偉い師団長(陸将)が同乗していた。で、この人が、事故に直接的に関与していた可能性がある。だからこそ、自衛隊は、必死になって情報を隠そうとしているのだろう。……そう理解すれば、自衛隊がこれほどまでに隠蔽していることの理由が納得できる。

 だが、そんなことでいいのか? 

 ──

 今回は、「エンジンの切替ミス」という人為的なミスによって、墜落事故が起こったようだ。なのに、自衛隊はその事実を4月以降、ずっと隠してきた。
 その間、事故の真実が知らされていないことで、他の場面でも事故が起こっていた可能性もある。自衛隊が事実を公表しておけば、「人的ミスを避けよう」という教訓が得られたことで、他の人々も注意できたのに、自衛隊が事実を公表しなかったせいで、「人的ミスを避けよう」という教訓が得られなくて、そのせいで事故が起こった……という可能性もある。

 では、どんな? そこで思い浮かぶのが、オスプレイの墜落事故だ。
 2023年11月29日に、オスプレイが墜落した。その原因は、今もって判明していない。
 事故については、「予備調査の情報では、機材の不具合が事故原因となった可能性があるが、根本的な原因は現時点では不明だ」と述べた。  オスプレイの墜落事故は、11月29日午後に発生。8人が乗った同機は、米軍岩国基地(山口県)から米軍嘉手納基地(沖縄県)に向かう訓練飛行中だった。
 このオスプレイが墜落前に空中で上下逆さまにひっくり返り、炎上していたという目撃情報も出ている。
( → アメリカ、オスプレイ全機を飛行停止 墜落事故は「機材不具合が原因の可能性」と - BBCニュース

 「機材の不具合が事故原因となった可能性がある」というが、操縦ミスなどの人為的ミスも影響していた可能性がある。(陸自の事故では、エンジンと人間の双方に原因があった。)
 陸自の事故原因が公開されていれば、それを教訓として、オスプレイの墜落が避けられていた可能性もある。(少しはあるかもしれない。)
 
 その意味で、事故の原因を隠蔽しようとする自衛隊の体質は、とうてい許しがたい。彼らは真実を隠蔽することで、事故の予防を邪魔して、将来の事故の再発を招いているのだ。最悪だと言えるだろう。

 ※ 本来ならば、音声録音の生データを全面公開するべきだ。いまだに未公開であるというのは、言語道断だ。

 ※ どうせなら野党が国政調査権で、データの提出を要求するべきだろう。自衛隊は徹底的に抵抗して、「どうしてもデータを出したくない」とねばるだろうから、それが明らかになるだけでも、「真実の隠蔽」があると判明する。

 ※ かくて「真実の隠蔽」こそが、この事件の本質だと判明する。それを教えるのが、名探偵だ。



 【 関連項目 】
 ともあれ、失敗したなら失敗したと認めるべきだ。敗北したなら敗北したと認めるべきだ。認めなければ、失敗と敗北を繰り返す。

 過ちて改めず。これを過ちという。
( → 月面探査機は失敗だ .1: Open ブログ





 【 関連動画 】




posted by 管理人 at 23:30 | Comment(6) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
想定シナリオです。
 副操縦士「左エンジン回転数不足です!」
 師団長「よし! 右エンジンオフ」
 副操縦士「え! 左エンジンが故障です!」
 師団長「バカ!これは師団長命令だ。右エンジンオフ」
 副操縦士「え?? 右エンジンオフ」
 パチン!
 二人「アー!!」
これでは公表できないはずです。
Posted by ひまなので at 2024年01月28日 10:08
元パイロットの上級幹部は操縦士免許を維持するために定期的に移動の時とかに自分で操縦しているとかを以前テレビでやっていたと思います。
今回も着任早々の遊覧飛行だったそうなので、もしかしたらそうだったのでしょうかね。
Posted by 権兵衛 at 2024年01月29日 08:46
ヘリパイロットの氏名は公表されていますよ。
https://www.youtube.com/watch?v=N4XmmWijKOI
陸上自衛隊のホームページでも2023年4〜5月の「
陸上自衛隊所属ヘリコプターの事故について(第○○報)」で公表されています。

Posted by とおりがかり at 2024年01月29日 18:10
> ヘリパイロットの氏名

 情報ありがとうございます。

 だけど知りたいのは、氏名じゃなくて、
  ・ パイロットの経歴、経験年数
  ・ 実際に操縦していたのは誰か
 という二点です。
Posted by 管理人 at 2024年01月29日 18:57
>  ・ パイロットの経歴、経験年数
>  ・ 実際に操縦していたのは誰か

管理人さんお得意の推理をするなら
パイロット1 47歳で三佐
パイロット2 27歳で三尉
2人とも陸曹航空操縦学生出身のパイロットと推定できる。つまり防大や一般大卒の幹部ではない可能性が高い。防大や一般大卒の幹部としては年齢の割に階級が低すぎる。彼らは自ら望んだとしても現場に残してもらえない。(航空自衛隊の戦闘機パイロットにも防大や一般大卒の幹部はいるが、比較的短い期間で転属になりベテランの年齢まで戦闘機乗りではいられず、ベテランになって残るのは航空学生出身のスペシャリストだけなのと同じ)
つまりヘリコプターのスペシャリストの可能性が高い。(技量が高いかはわからない)

師団長自らが操縦していた可能性は低い。
なぜなら師団長は普通科出身でヘリコプター操縦を経験していたとは考えにくい。師団長がプライベートでヘリの操縦免許を取得してならばいざ知らず、本物のヘリコプターは面白半分で操縦できるほど操縦はやさしくないだろう。仮に師団長自らが操縦していたのならばエンジン異常が生じる前からヘリコプターは異常な飛行をしていた可能性が高いが、一般のカメラの動画を見る限り墜落直前まで特異な飛行をしていた形跡はない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E6%9C%AC%E9%9B%84%E4%B8%80
Posted by とおりがかり at 2024年01月29日 23:28
 なるほど。
 27歳 の方が、未熟で、間違えてしまったのかもしれませんね。
Posted by 管理人 at 2024年01月30日 07:39
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