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前に、月面探査機について「失敗だ」と評価した。
→ 月面探査機は失敗だ .1: Open ブログ
ここでは、次のように予想した。
「機体がひっくり返っている。そのせいで、太陽光パネルは下向きになってしまった。だから、受光できなくて、発電できない」
その後、事態が判明した。こうだ。
JAXAは22日、分析の結果、電池が太陽光と反対の西を向いていることが分かったと発表した。今後、太陽光が西から当たるようになれば、発電して活動を再開できる可能性があり、準備を進めるという。
( → 日本、5カ国目の月面着陸に成功 実証機「スリム」太陽電池は働かず | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 )
上下が逆転したというよりは、90度ずれている(本来ならば寝ているはずなのが倒立している)ようだ。そのせいで、本来ならば上側に来るはずの側面が、上側でなく西向きになってしまったいる。そのせいで、太陽の位置によっては受光と発電ができない……ということらしい。
では、どうしてこうなったか? その理由は、設計思想にある。同じ記事で、こう記してある。
SLIMは傾斜地でも着陸できるよう、機体を傾けながら後部の脚で接地後、倒れ込むように前部の脚でも接地する2段階着陸を行う。この際、機体が予定外の姿勢となり、太陽電池パネルが太陽へ向かなくなった可能性がある。
( → JAXA探査機着陸成功、日本独自技術の高さ証明…「ピンポイント着陸」成否は1か月後に判明 : 読売新聞 )
スリムは独自の「2段階着陸方式」を採用した。まず1本の「主脚」で月面に接地し、次に残り4本の足も使い、15度の傾斜地に、上り坂に向かって倒れ込んで静止するよう設計したもの。“わざと転倒させる”仕組みだが、この転倒の勢いが想定と異なるなどし、機体の向きが計画を外れたことが考えられる。
スリム計画ではかつて、円筒形の機体側面の全周を太陽電池で覆う形が想定されたが、設計変更により機体の形状が直方体に近くなり、電池はカメの甲羅のように1面だけに貼る形に落ち着いた。國中氏は「円筒形だと一部の電池にしか光が当たらず、効率が悪い。1面だけに貼れば電池をフルに生かせる。今回は2段階着陸との兼ね合いでこれを選択した」と、効率重視の設計思想によるものだと説明した。
最後の説明を読んで、呆れはてた。
もともとは全周上に( 360度で)太陽光パネルが貼られているはずだったのだが、それでは効率が悪いということで、上面だけに太陽光パネルを貼ることにした。それならば無駄がないので利用効率が上がる……という理屈。
頭が悪すぎて、呆れはてるしかない。効率? 何をボケたことを言っているんだ。利用効率じゃなくて、利用可能量を上げることの方が先決だろうに。太陽光パネルなんて、重さもたいしたことはないのだ。今回の太陽光パネルは薄膜型なので、軽量だからだ。
→ シャープの太陽光パネル 小型実証機「スリム」に搭載され月へ - 産経
せっかくの軽量太陽電池が開発されたのだから、全周に貼りつければいいのに、わずかな重量増加を惜しんで、1面だけに太陽光パネルを貼りつけた。そのせいで、太陽が西向きのときだけしか発電できない、という結果になった。
まあ、探査機が 90度ズレてしまった、という計算違いはある。が、だとしても、たとえそうならなくても、1面にしか太陽光パネルがないのであれば、もともと「常に発電できる」ということは不可能だったのだ。「探査機が到着してから数日間だけは発電できるが、数日後に、太陽の位置がずれると、発電できなくなってしまう」という設計だったのだ。
それというのも、わずかばかりの太陽光パネルを惜しんだせいで。
しかも、その理由が「その方が効率が上がるから」というメチャクチャな理由だ。馬鹿丸出しとは、このことだ。
「宝くじが当たるときだけ、宝くじを買えば、効率が最高になります」
というのと同じ理屈だ。
「宝くじがはずれたら」(太陽の位置や探査機の向きがずれたら)
という場合の考慮をまったくしていない。あまりにも楽観的なギャンブラーだ。
しかも、このギャンブルは、こうだ。
「探査機が月面に着陸したあと、探査機が倒れる角度は、ちょうどいい角度になるはずだ」
ここで、探索はサイコロ賭博のように転がる。その転がり型について、「この転がり型になる」と一点集中で賭けている。賭け方がちょっとでもハズレたら、全財産を失う、という極度にギャンブル性の高い賭け方だ。
気違いじみたギャンブルだと言える。フェイルセーフの発想とは逆で、「必ずこの一点が成功する」と信じる「一点買い」だ。気違いじみたギャンブル。
どうしてこれほど馬鹿げたギャンブルをやるのか? 頭がおかしいのではないか?
そう思って、調べたら、まさしくそうだと判明した。今回の月面探査機の計画の責任者は、所長である國中均である。この人は、何か? 先の「はやぶさ」で、勝手に設計変更をしたことで、はやぶさ探査を成功させた張本人(?)である。
→ はやぶさ成功はトンデモのおかげ: Open ブログ
このように「規則を逸脱して計画を成功させた」トンデモ技術者。本来ならば、組織から追放されても仕方ないのだが、どういうわけか、逆に、所長にまで上り詰めてしまった。
そういうトンデモ技術者が所長になったから、とんでもないギャンブルの方針が取られたのだ。
はやぶさを成功させる原因となったトンデモ技術者は、本来ならば降格されるべきなのに、所長に転じたことで、SLIM を失敗させる原因となったのだ。
何という皮肉。失敗は成功のもとかと思ったら、成功は失敗のもとだったのだ。
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ルール破りをして暴走する能力と、組織をミスなくまとめ上げる能力は、まったく別のものなのだ。その違いを理解できなかったところに、JAXA の人事の失敗がある。未熟だね。
【 関連サイト 】
本項では「失敗だ」と評価しているが、JAXA は「成功だ」と自賛している。呆れた話だ。自惚れというか。
> もともとは全周上に( 360度で)太陽光パネルが貼られているはずだったのだが、それでは効率が悪いということで、上面だけに太陽光パネルを貼ることにした。それならば無駄がないので利用効率が上がる……という理屈。
頭が悪すぎて、呆れはてるしかない。
⇒ 今回みたいに倒立する(90度)ずれるようなアクシデントだと、当初の計画どおりに円筒形ボデーの側面全周上にパネルを貼り巡らせても、円筒の底面や上面にも貼っていないかぎり、同じこと(十分な発電量が連続して得られない事態)になる可能性はあります。倒立という言葉どおりに、底面や上面が上を向くような姿勢で安定してしまうと、結局はそうなります。
いっぽうで、そのように(底面や上面にも)貼ってしまうと、例えばメインエンジンノズル、スラスターノズル、通信用アンテナなどを付ける場所がなくなってしまう、なくなるというほどではないにせよ、かなり位置が制約されそうです。
ですから、「太陽光パネルの担当者が、自分の担当部品の発電効率だけのことを考えて、全体設計のことをいっさい考えていないからこうなった」だとか、ましてや、「一点集中で賭けた」だとか、「失敗したとき(ギャンブルに外れたとき)のことを一切考えずに設計がなされた」だとか、「その背景として、はやぶさで一発あてた人が所長になったから、末端にいたるまで大穴狙いの体質が浸透した」などとは、全くいえないでしょう。
もちろん、宇宙開発ですから「ある意味、賭けは賭けだ」としても、もう少しフェールセーフ性を高めることはできたのかもしれません。しかしそれも、たくさんお金をかけて成功確率を例えば8割から9割に高めることはできたのかもしれませんが、筆者の論調のように、「例えば1〜2割の確率を8〜9割に簡単にできたのに、ちょっとのお金をケチってそうせずにいたので案の定失敗した」という、単純な決めつけはあたりません。
全体としての最適設計をやっていたし、トラブルが起こったときにどうなるかというフェールセーフも考慮していたが、その想定が甘かった、不十分だった、というのが妥当でしょう。
(2) 黄色い面はたくさんあるのだから、黄色い面に漏れなく貼ることはできる。
(3) 倒立した場合には自動的に起き上がることのできるような、起き上がりこぼしのデザインにすればよかった。先の項目の最後に描いた図の通り。
特に、倒立することのないように、上面は凸状にしておくべきだった。倒立できるデザインというのは、あまりにも馬鹿げている。デザインミス。設計ミス。
(4) 姿勢が崩れた場合には姿勢を直すことができるように、杖みたいな棒を用意しておくこともできた。(重量は少し増加するが。)
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私のお薦めは(2)と(3)です。ほとんどコストをかけずに、成功確率を大幅に高めることができた。
「(私の推定では)5割ぐらいの成功確率を8〜9割に簡単にできたのに、ちょっとの知恵がなくてそうせずにいたので案の定失敗した」
となりますね。
p.s.
倒れたときに衝撃を吸収しないデザインも駄目です。何らかの棒状のもので地面に刺さるようにしておけば、衝撃が緩和されたので、回転モーメントが弱まり、倒立を避けられたはず。その対策もしないで、故意に横倒しにするという発想が、ゴミ。
自動車業界の技術者にでもチェックしてもらえば良かったのに。日産の技術者なら、指摘してくれたかも。(ダイハツの技術者ならば無理だが。)
制御用の小さな噴射装置が吹き飛んでいたのがひっくり返った原因と書かれています。理由はとにかく完全な着陸でなければ大部分の調査ができなくなる設計には大いに疑問を持ちます。やっぱり間抜け三菱とJAXAです。