「北陸応援割」について、他と比較してみる。「火事場泥棒」「GoTo トラベル」「ふるさと納税」などと。
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補助金の利益者
北陸への観光客に補助金を出すとして、その補助金で利益を得るのは、誰か?
「もちろん北陸の観光業界だ」
と政府や石川県は答えるだろう。だが、違う。
観光業界は、仕事を得るだけだ。たとえば、客から2万円を得て、2万円分のサービスを与える。これは普通に「仕事をしている」というだけだ。特に利益を得るわけではない。もらえるのは、仕事だけだ。
一方、観光客は、補助金の分が丸々利益となる。たとえば、通常なら、「2万円を払って、2万円分のサービスを得る」となるはずだが、今回はそのあとで1万円の補助金を給付してもらえるので、「2万円を払って、2万円分のサービスを得て、そのあとで1万円を給付してもらう」というふうになる。差し引きして、1万円の利益を得る。
- ※ GoTo トラベルの場合は、一部が現金でなく、ポイント還元だったが、似たようなものだ。ポイント分は地元の飲食費や土産代に使えば、現金と大差ない。
今回の補助金制度では、「せっかくの金を使って、被災者以外に浪費するなんて、石川県は馬鹿なことをするね」と呆れる人もいるだろう。
だが、この制度は、石川県が浪費するのではない。国が浪費する。また、石川県の観光業界が利益を得るのではない。東京などの都会民(観光客)が利益を得る。
要するに、この「観光補助金」という制度は、北陸を援助するためにあるのではなく、北陸を名分に、都会民が国の金を食い物にしてしまおう、という泥棒制度だ。
名目: 北陸の人々を助ける (北陸応援割)
実質: 都会民が国の金を食いつぶす
つまり、「どさくさにまぎれて、国の金を盗む」ということだ。その意味では、「火事場泥棒」という言葉が最も近い。これが物事の本質だ。
GoTo トラベル
上記および前項に似た話は、GoTo トラベルのときにも記述した。
レバレッジが3倍ぐらいあれば、「客と店がともに利益を得る」(利益を分かちあう)というふうに見なすこともできる。
しかし、GoTo トラベルでは2万円の支出に対して1万円の還元があるので、レバレッジは2倍ぐらいしかない。
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これは何を意味するか? こうだ。
「 GoTo の目的は、店の側に利益を与えることではなく、客の側に利益を与えることだ」
換言すれば、こうだ。
「 GoTo の目的は、経済回復ではなく、国民の票を買収することだ」
つまり、(客となる)国民に金をばらまいて、国民の票を買収しようとしているのである。バラマキ政策であり、買収政策である。
その真の目的は、経済の振興ではなく、自民党の票を増やすことなのだ。
これこそが GoTo の真の目的だ。
( → GoTo のペテン: Open ブログ )
前項でも同趣旨のことを記したが、自民党は災害が起こるたびに、同様のことをする。どさくさまぎれで、国の金を浪費して、票の買収のために使おうとする。
そのあとで、国民は「赤字の負担」という形で、各種の社会保険料を値上げされてしまうのだ。これまでも値上げされてきたし、今後もどんどん値上げされていく。
→ 健康保険料・介護保険料・年金保険料…年々上がっている?今後どうなるのか | 東証マネ部!
政府は「消費税を上げて、社会保障費にあてます」と言ったが、現実には、消費税を上げて、社会保険料を上げる。ダブルパンチだ。
こうやって中低所得者から、多額の金を巻き上げる。それで浮いた金で、「 GoTo トラベル」や「北陸応援割」を設定して、高所得者向けに 20万円やら 40万円やらのプレゼントをするのだ。
※ 北陸の被災者も金を盗まれるし、中低所得者も金を盗まれる。貧しい人ほど、金を盗まれる。そうして国民から広く薄く盗んだ金を、少数の高所得者が湯水のごとく使い果たしてしまう。20万円やら 40万円やらの補助金をもらって。
比喩で言えば、温泉で湯水を浴びかわりに、補助金の金を浴びるわけだ。

※ 要するに、経済振興策であるか、火事場泥棒であるかは、レバレッジの倍率で決まる。倍率が5倍ならば、経済振興策であると言っていいが、倍率が2倍ならば、火事場泥棒がメインであると言っていいだろう。
ふるさと納税
ふるさと納税も同様の発想だ。
「田舎の人々を援助する」
というのが名分だが、現実には、その効果は弱い。
たとえば、1万円のふるさと納税をすると、こうなる。
・ 都会自治体 …… 1万円の丸損
・ 牛農家 …… 3000円分の牛肉を提供する
・ 宅配便 …… 1000円分の運搬をする
・ 納税者 …… 4000円分(運賃込み)の牛肉をもらう
・ サイト …… 2000円のネット手数料を徴収する
・ 田舎自治体 …… 4000円をもらう
結局、都会自治体は1万円を丸損するのだが、そのうち、田舎自治体に渡るのは、4000円だけだ。「都会の金を田舎の自治体に再分配する」というのが、本来の狙いだが、その効果はたったの 40% にすぎない。
では、残りの 60%はどこへ行くか? 他人が食いつぶすのだ。
・ 牛肉をもらう高額納税者が 40% を食いつぶす
・ ふるさと納税を代行するサイトの業者 20% を食いつぶす
これらの連中が 60% を食いつぶすから、田舎自治体に渡る金は、たったの 40% だけとなる。
結局、ふるさと納税というのは、「税金を都会から田舎に再分配すること」を名分として、高額納税者とサイト業者が公的な金を勝手に食いつぶすシステムなのだ。一種の泥棒である。
その意味では、GoTo トラベルや、北陸応援割と、同様である。
違うのは、このシステムが恒常的に続くことだ。GoTo トラベルや、北陸応援割は、災害のときに、どさくさまぎれで金を奪うシステムだ。一方、ふるさと納税は、災害でもない平時に、恒常的に金を盗むシステムだ。
※ なお、「ふるさと納税のおかげで田舎民は得をしている」と思う人もいるだろうが、そんなことは成立しない。得をしているのは、宮崎牛のような特産品がある田舎民だけだ。そんな田舎民は、ごく限られている。たいていの田舎民は、何の特産品もないまま、地元の金を奪われるばかりだ。「自分は田舎に住んでいるから得をしている」と思うのは、ぬか喜びというものだ。ちなみに、地元の特産品でも調べてみるがいい。
【 関連サイト 】
ふるさと納税の数字の典拠。
→ 自治体は外部委託業務の内製化でふるさと納税の 最適化を目指せ | 経営研レポート | NTTデータ経営研究所
ここに、「1万円の寄附に対し自治体の手元に残るのは4000円程度」という記述がある。
他にもいくつか、似たようなデータを記した報道があるが、割愛する。
それもありましたね。定率で、2.1% だから、累進制が働かない。低所得者ほど損をする。
普通に所得税全体をアップした方がまだマシだが、そうしない。ひどいものだ。あくまで金持ち優遇をつらぬく。
私は都民ですが、小池知事の言う「都民ファースト」にも違和感を持っています。これだけ東京都は優遇されていてオリンピックなどで無駄なお金を使っているのに今更ファーストはないでしょう。制度的に優遇されているから「都」なのです。都民自身からそんな声が上がってこないのが残念です。