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なぜ失敗か? 着陸が目的ではなく、探査が目的だからだ。それができなかったのだから、失敗だと言える。
そして、失敗したからには失敗を認めるべきだ。敗北したら、敗北を認めるべきだ。失敗したのに失敗を認めないのであれば、まともに対策もできないだろう。
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私の評価を言おう。今回の探査は失敗だ。そして、そうなった理由は、たまたまアンラッキーだったからではない。根本的な「設計ミス」があったからだ。
今回の失敗は、「太陽光発電ができなかった」ことによる。ではなぜ、できなかったのか? 推定では、こうだ。
太陽電池パネルが貼られた面を背にして着陸する設計だが、何らかの理由で太陽光を受ける姿勢になっていないもようだ。
( → 発電不良、着地姿勢が影響か 月面着陸の探査機「SLIM」 | 共同通信 )
ではなぜ、太陽光を受ける姿勢になっていないのか? 記事では「何らかの理由で」というが、何らかの理由とは何か?
そのことは、探査機の写真を見れば、見当がつく。
太陽光パネルは、機体の上面だけに貼られている。その機能が停止しているのだとしたら、理由はこうだ。
「機体がひっくり返っている。そのせいで、太陽光パネルは下向きになってしまった。だから、受光できなくて、発電できない」
これが最も考えられる理由だ。
ここから、次の結論が得られる。
「この探査機は、ひっくり返ったときの対策ができていない。どうせなら、裏側にも太陽光パネルを貼りつけるというような、まともな対策をしておくべきだった。なのに、その対策ができていなかった」
要するに、「ひっくり返らなければ大丈夫」という安易な発想があるだけで、「ひっくり返ったらどうなるか」という対策ができていなかった。
これを要約すれば、こうなる。
「根源的な設計ミスがあった。フェイルセーフの対処をしていなかった」
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ひるがえって、惑星間の探査機「はやぶさ」の場合は違った。「こんなこともあろうかと」という発想で、フェイルセーフの対処をしていたからだ。
※ それというのも、トンデモ技術者がいて、(上司の許可もなく)勝手に探査機を魔改造していたからだ。この件は、前に紹介したとおり。
→ はやぶさ成功はトンデモのおかげ: Open ブログ
一方、今回の月面探査機は違った。トンデモ技術者がいなかったせいもあって、フェイルセーフの対処をしていなかった。「ひっくり返ったら」という対処をしていなかった。「すべてうまく行ったら」という仮定の上で設計するだけだった。かくて、設計ミスによって、探査は失敗した。……それでいて、失敗を認めないで、「着陸は成功しました。60点です」と大甘に評価する。
呆れた話だ。
[ 付記1 ]
今回の方針では、「すべてがうまく行った場合に、成果を最大限にする」という方針が取られたようだ。
私ならば、「ほとんどがうまく行かなかった場合に、被害を最小限にする」という方針を取っただろう。成果の豊かさを求めず、成果の確実さを求めただろう。(宇宙探査のリスクは非常に大きいからだ。確実さが最優先となる。)
だが、今回の事業では、そういう方針は取られなかった。失敗は最初から予想されていたと言える。
[ 付記2 ]
ただし、この失敗は、根源的には、予算不足に起因するのだろう。
予算の金がないので、機能を削りに削りまくった。一方で、探査の機能は、なるべく多くの機能を搭載した。結果的には、安全性のための予備システムを削除することになった。だから、予定から少しでもズレると、全面的に停止するハメとなる。……それが今回の失敗だ。
[ 付記3 ]
ともあれ、失敗したなら失敗したと認めるべきだ。敗北したなら敗北したと認めるべきだ。認めなければ、失敗と敗北を繰り返す。
過ちて改めず。これを過ちという。
論語の言葉に学ぶこともできていないのが、今の日本人だ。

起き上がりこぼし
でも私はもっと重大な故障ではないかとみています。月表面は光を反射しているので、方角が違っているだけなら少しは発電できるのではないでしょうか。まあいくら間抜け三菱、JAXAでもそれくらいは考えていると思いたいのですが。
例によって情報はBBCの方が詳しいですね。