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日本のIT企業は、中国や韓国の企業との競争に負けて、次々と撤退している。ここで、敗北を認めればいいのに、敗北を認めまいとしたのが、日本の経産省だ。
「試合はまだ終わっていない。圧倒的劣勢でも、9回裏に逆転満塁ホームランを打つことで、勝利できる」
という妄想をもった。かくて、莫大な税金を投入したが、もともと実力がないので、あっさり敗北した。結果はただの巨額の浪費だけ。
敗北を認めまいとしたことが、こういう馬鹿げた無駄をもたらした。
詳細は、下記にある。
→ 「はじめから勝算なかった」国主導企業の破綻 有機ELに見た幻想:朝日新聞
一部抜粋。
昨年3月、国主導でつくられた有機ELディスプレーのメーカーが337億円の負債を抱えて経営破綻した。この会社には1390億円の税金がつぎ込まれたが、8年間で一度も黒字を達成できずに終わった。在籍した技術者はこう証言する。「はじめから勝算は全くなかった」。失敗はなぜ起きたのか。会社設立に動いた人々の「幻想」を追った。
経営破綻したのは「JOLED(ジェイオーレッド)」。パナソニックとソニーの有機ELディスプレー事業を統合する形で、2015年1月に誕生した。
「世界最高水準の技術を結集し、有機EL分野のリーディングカンパニーを目指す」
発足当初の資料には、そんな言葉が並ぶ。
パナソニックから転籍した元技術者の40代男性は、当時をこう振り返った。
「ビジネスとして勝算がないことは、最初からわかっていました」
当時を知る複数の関係者によると、JOLEDの設立には、経済産業省と官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)の働きかけがあった。
機構の元幹部は「九回裏に逆転満塁ホームランを狙った」と表現する。
日本のディスプレー産業は、まさに「九回裏」まで追い込まれていた。
「車の中は将来、すべて有機ELになると思うんですよ」
ソニー元幹部は、うれしそうに話す機構の関係者の姿を思い出す。
「どうしてそんなに希望を持てるのか、不思議でしたよ」
機構はJOLEDに8年間で累計1390億円を投融資してきた。原資は税金だ。経営破綻により、全額の回収は難しいという。
敗北しても、敗北を認められない。「きっと勝利できる」と妄想する。そのせいで、超巨額の金を投入して、あげく、破綻する。……それが、日本政府のやって来たことだ。
前項でも、「地震では自然への敗北を認めよ」と記した。
敗北を認めること。それは、現実を認めることであり、現実に立脚して未来を再建することだ。
一方、敗北を認めないこと。それは、現実のかわりに妄想を信じることであり、過去への懐旧のために自らを滅ぼすことだ。
( → (地震で)敗北を認めよ: Open ブログ )
【 関連項目 】
本件では、「経産省が悪い」という判定を下すことができる。
その趣旨で、前に別件を論じたことがある。こちらはトヨタという一企業への莫大な補助金。
→ 経産省を解体せよ: Open ブログ
他に、MRJ や、燃料電池車に補助金を出した、という事例もある。
次の話もある。
日本の EV 産業の衰退と、日本のサバ産業の衰退は、どちらも似ている。
どこが似ているかというと、どちらも政府の駄目政策が原因で、産業全体が衰退していく……という点だ。MRJ は、三菱重工の衰退だけで済んだが、EV とサバは、産業全体が衰退していく。
( → EV とサバの産業衰退: Open ブログ )
《 加筆 》
前に次の指摘をした。
要するに、政府の産業政策は失敗ばかりである。政府の産業政策で成功したのは、明治維新のときの富岡製糸場と八幡製鉄所だけだ。この当時は、日本には工業というものが成立していなかった。だから、富岡製糸場と八幡製鉄所は国策として推進されて、見事に成功した。(ライバルがない状態だけら当然だが。)
一方、現在では、民間に産業が発達している。こういう状況で政府が産業政策を始めても、民間以上に見事にできるはずがないのだ。特に、まともに専門知識のない、文系の事務屋である経産省の役人が、理系の最先端の分野で技術的知識をもっているはずがない。
それでいて、こういう文系の役人が、勝手に産業政策を決める。だから、燃料電池車という馬鹿げた方針が取られたのだ。
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ホンダe の失敗を見ると、「ただの一つの失敗例」と見えなくもない。だが、それは氷山の一角にすぎない。その背後には、「経産省の産業政策」という巨大なものがひそんでいるのだ。それが日本の産業全体の方向を誤らせてしまうのである。
かくて、ホンダもトヨタも、日本政府のせいで道を誤って、とんでもない方向に進んでいった。日本の経産省は、日本の民間会社の進行方向を誤らせて、日本経済を破壊しつつあるのだ。
もちろん、経産省には、「国を滅ぼそう」という悪意があったわけではない。むしろ「国を繁栄させよう」という善意があった。
しかしながら、利口の善意は有益だが、阿呆の善意は有害無益である。阿呆が「こちらが正しい方向です」と教えれば教えるほど、それに従った人々は奈落の底に落ちることになる。
( → ホンダの EV 戦略失敗(教訓): Open ブログ )
話はこれだけではないので、もっと読みたければ、上記項目で。
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経産省への批判。重要な話。