2024年01月21日

◆ 日の丸IT産業の失敗

 日本政府の主導でできたIT企業(有機ELの JOLED )が経営破綻した。日本の敗北を認めまいとしたことの結果。

 ──

 日本のIT企業は、中国や韓国の企業との競争に負けて、次々と撤退している。ここで、敗北を認めればいいのに、敗北を認めまいとしたのが、日本の経産省だ。
 「試合はまだ終わっていない。圧倒的劣勢でも、9回裏に逆転満塁ホームランを打つことで、勝利できる」
 という妄想をもった。かくて、莫大な税金を投入したが、もともと実力がないので、あっさり敗北した。結果はただの巨額の浪費だけ。
 敗北を認めまいとしたことが、こういう馬鹿げた無駄をもたらした。

 詳細は、下記にある。
  → 「はじめから勝算なかった」国主導企業の破綻 有機ELに見た幻想:朝日新聞

 一部抜粋。
 昨年3月、国主導でつくられた有機ELディスプレーのメーカーが337億円の負債を抱えて経営破綻した。この会社には1390億円の税金がつぎ込まれたが、8年間で一度も黒字を達成できずに終わった。在籍した技術者はこう証言する。「はじめから勝算は全くなかった」。失敗はなぜ起きたのか。会社設立に動いた人々の「幻想」を追った。
 経営破綻したのは「JOLED(ジェイオーレッド)」。パナソニックとソニーの有機ELディスプレー事業を統合する形で、2015年1月に誕生した。
 「世界最高水準の技術を結集し、有機EL分野のリーディングカンパニーを目指す」
 発足当初の資料には、そんな言葉が並ぶ。

 パナソニックから転籍した元技術者の40代男性は、当時をこう振り返った。
 「ビジネスとして勝算がないことは、最初からわかっていました」

 当時を知る複数の関係者によると、JOLEDの設立には、経済産業省と官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)の働きかけがあった。
 機構の元幹部は「九回裏に逆転満塁ホームランを狙った」と表現する。
 日本のディスプレー産業は、まさに「九回裏」まで追い込まれていた。

 「車の中は将来、すべて有機ELになると思うんですよ」
 ソニー元幹部は、うれしそうに話す機構の関係者の姿を思い出す。
 「どうしてそんなに希望を持てるのか、不思議でしたよ」

 機構はJOLEDに8年間で累計1390億円を投融資してきた。原資は税金だ。経営破綻により、全額の回収は難しいという。

 敗北しても、敗北を認められない。「きっと勝利できる」と妄想する。そのせいで、超巨額の金を投入して、あげく、破綻する。……それが、日本政府のやって来たことだ。

 前項でも、「地震では自然への敗北を認めよ」と記した。
 敗北を認めること。それは、現実を認めることであり、現実に立脚して未来を再建することだ。
 一方、敗北を認めないこと。それは、現実のかわりに妄想を信じることであり、過去への懐旧のために自らを滅ぼすことだ。
( → (地震で)敗北を認めよ: Open ブログ

 


 【 関連項目 】

 本件では、「経産省が悪い」という判定を下すことができる。
 その趣旨で、前に別件を論じたことがある。こちらはトヨタという一企業への莫大な補助金。
  → 経産省を解体せよ: Open ブログ

 他に、MRJ や、燃料電池車に補助金を出した、という事例もある。
 次の話もある。
 日本の EV 産業の衰退と、日本のサバ産業の衰退は、どちらも似ている。

 どこが似ているかというと、どちらも政府の駄目政策が原因で、産業全体が衰退していく……という点だ。MRJ は、三菱重工の衰退だけで済んだが、EV とサバは、産業全体が衰退していく。
( → EV とサバの産業衰退: Open ブログ


 《 加筆 》
 前に次の指摘をした。
 要するに、政府の産業政策は失敗ばかりである。政府の産業政策で成功したのは、明治維新のときの富岡製糸場と八幡製鉄所だけだ。この当時は、日本には工業というものが成立していなかった。だから、富岡製糸場と八幡製鉄所は国策として推進されて、見事に成功した。(ライバルがない状態だけら当然だが。)
 一方、現在では、民間に産業が発達している。こういう状況で政府が産業政策を始めても、民間以上に見事にできるはずがないのだ。特に、まともに専門知識のない、文系の事務屋である経産省の役人が、理系の最先端の分野で技術的知識をもっているはずがない。
 それでいて、こういう文系の役人が、勝手に産業政策を決める。だから、燃料電池車という馬鹿げた方針が取られたのだ。

 ──

 ホンダe の失敗を見ると、「ただの一つの失敗例」と見えなくもない。だが、それは氷山の一角にすぎない。その背後には、「経産省の産業政策」という巨大なものがひそんでいるのだ。それが日本の産業全体の方向を誤らせてしまうのである。
 かくて、ホンダもトヨタも、日本政府のせいで道を誤って、とんでもない方向に進んでいった。日本の経産省は、日本の民間会社の進行方向を誤らせて、日本経済を破壊しつつあるのだ。

 もちろん、経産省には、「国を滅ぼそう」という悪意があったわけではない。むしろ「国を繁栄させよう」という善意があった。
 しかしながら、利口の善意は有益だが、阿呆の善意は有害無益である。阿呆が「こちらが正しい方向です」と教えれば教えるほど、それに従った人々は奈落の底に落ちることになる。
( → ホンダの EV 戦略失敗(教訓): Open ブログ

 話はこれだけではないので、もっと読みたければ、上記項目で。





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posted by 管理人 at 23:13 | Comment(1) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 《 加筆 》 の箇所を書き足しました。
 経産省への批判。重要な話。
Posted by 管理人 at 2024年01月22日 10:25
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