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いきなり結論を言えば、「復旧はできない」と言えるだろう。それが私の判断だ。道路が寸断しても、すぐに元通りになると思い込んでいる人が多いが、土砂崩れの場合は違う。そう簡単に元通りにはならないのだ。
画像を見ればわかるように、途方もない規模だ。これは「穴があいた」というような規模ではない。穴があいたのなら、穴を埋めればいい。しかし、土砂崩れは違う。土砂崩れが襲ったら、土砂崩れの土砂を撤去すればいい、という具合には行かないのだ。土砂の量があまりにも巨大だからだ。
これはもはや人間の左右できる能力を越えた規模だとも言える。
ここまでかろうじてなしてきたのは、内陸部の「啓開」だった。これは、土砂で埋まった道路のうち、とりあえずは片側車線だけで土砂を撤去して、片側車線だけは通行できるようにする、というものだ。

出典:国土交通省
このような「復旧」は、内陸部では可能だった。土砂崩れの規模も小さかったからだ。そのおかげで、最近では道路交通はかなり通れるようになってきた。(大型車が通れるほどだ。)
#令和6年能登半島地震 道路の緊急復旧の経緯をお知らせします。
— 【公式】国土交通省 北陸地方整備局 (@mlit_hokuriku) January 17, 2024
半島内の主要な幹線道路の約9割で緊急復旧が完了しました。
詳細は国土交通省ホームページをご覧ください??https://t.co/A6kapMkQuk#緊急復旧 #道路啓開 pic.twitter.com/nEM3QihiRp
奥能登2市2町(#輪島市 #珠洲市 #能登町 #穴水町)へのアクセス可能なルートです。#国道470号(#能越道) の一部区間および #のと里山海道 の一部区間が通行可能になります。
— 【公式】国土交通省 北陸地方整備局 (@mlit_hokuriku) January 17, 2024
ただし、一方通行や通行可能車両などに制限がありますので、規制状況や現地の案内誘導をよくご確認ください。 pic.twitter.com/PQ0UrGcCd3
#令和6年能登半島地震 道路の緊急復旧の状況をお知らせします
— 【公式】国土交通省 北陸地方整備局 (@mlit_hokuriku) January 18, 2024
#国土交通省 のホームページで確認いただけます
#道路復旧見える化マップ
https://t.co/HnClhNXA01#道路啓開作業 https://t.co/J0AZFVrFjR pic.twitter.com/llhPHPrwtI
次々と開通は進んでいるが、あくまで片側車線だけであることが多い。また、場所は内陸部だけであることが多い。
一方、海岸線における大規模な崩落箇所は、手つかずのところが多い。手を付けようにも、手の付けようがないところが多い。
内陸部ならば、「道路の一部分が土砂で埋まった」というぐらいのところが多いので、土砂を撤去すれば何とかなることもある。だが、海沿いの土砂崩れでは、ものすごく大量の土砂が道路を埋め尽くしている箇所もある。そこでは土砂を撤去することは困難だ。また、仮に土砂を撤去すれば、撤去したあとの空白地帯に、新たに土砂崩れが襲いかねない。(特に雨が降れば、新たな土砂崩れが起こりかねない。)また、土砂崩れが起こったあとの「法面」(のりめん)が新たに崩壊する危険もある。このような箇所は、容易に復旧しがたい。
さらには、道路の全体が「底抜け」したように崩落してしまった箇所もある。
《 スクショ 》(静止画)

道路の上に土砂がかぶさっただけなら、何とかなることもある。
・ 土砂を撤去する (off)
・ 土砂を残して、トンネルを掘る (through)
・ 土砂の上を乗り越える道を作る (over)
これらの方法で何とかなることもある。
しかし、道路の下側が「底抜けした」という場合は、大変だ。とりあえずは、「底抜けして寸断した部分に、橋を架ける」という方法で、寸断箇所を修復することはできるかもしれない。しかし、その方法だと、橋の前後がいつまた(地盤ごと)崩落するか、わかったものではない。とても危険度が高い。
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現実問題として、これらの巨大な土砂崩れを復旧することは、非常に困難である。100億円ぐらいの金でできるかどうかも不明だ。1000億円ぐらいかかるかもしれない。また、時間も5年以上かかるかもしれない。しかも、それを利用する人は 100人ぐらいしかいない、というようなありさまだ。
→ 被災地を復興するべきか?: Open ブログ
となると、このような海際の土砂崩れは、もはや復旧を諦めた方がいい、と言えるだろう。
国交省は必死に修復を試みているようだが、金を湯水のごとく投入しても、ただの無駄になるのではないか?
「8年かけてやっと開通しました。しかし残る村人はもういません」
というふうになりかねない。陸前高田の空地区画の造成のように。
陸前高田では、5000億円以上の金を投入して、人のいないゴーストタウンを造成した。それと同様の無駄を、ふたたび能登でやるつもりなのだろうか? それが善行だと信じながら?
しかるに、5000億円もの金を投入するくらいなら、4万人弱の被災者に1人 1000万円ずつ配る方がマシなのである。4人家族なら、4000万円になる。その金をもらって、どこかで新生活を始める方が、よほどマシだろう。……誰も通らない無人道路を作るよりは。
- ※ 計算を間違えました。被災者数は、能登半島全体の4万人ではなく、僻地の 1000人ぐらいです。これに 5000億円を分配すると、1人5億円です。一家4人なら、一家 20億円をもらえます。
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まあ、それでも、地盤が固まるのを見計らって、5年ぐらい先には、道路を開通させることはできるかもしれない。
しかし、能登半島の全体にわたって、あちこちの土砂崩れをすべて復旧させるというのは、1年ぐらいではとうてい無理だろう。
今やるべきことは、内陸部の道路をなるべく早く復旧することだ。それは可能だし、重要度も高い。
一方、海際の大規模な土砂崩れについては、優先度を引き下げて、じっくり調査してから、長期的な計画を練る方がいい。その上で、復旧を放棄する(または超長期にする)選択も考慮するべきだ。
大事なのは、「計画性」や「工程表」なのである。やみくもに工事を進めればいいというものではないのだ。(今のままでは無理な工事のために莫大な金を浪費しかねない。)
※ 工程表の必要性については、前項の最後を参照。
→ 復興には都市計画を: Open ブログ
[ 付記 ]
話の前提として、「地震の再発はあり得る」ということに留意しよう。
「今回の地震はこれで打ち止めだ」と思っている人が多いようだが、それは正しくない。
そもそも、この地域では1〜2年前から震度5〜6クラスの地震が頻発しており、今回の地震は「シリーズのうちの一つ」であるにすぎない。シリーズがこれで終わった保証はないのだ。
さらには、地殻構造の調べから、今回の地震では歪みが解消しきっていない、と判明している。中央部および西側の歪みは開放されたが、東側の歪みはまだ残っている。とすれば、珠洲市の東方で、再度の大地震が起こる可能性はある。( → 出典記事 )
そして、そうなったら、(地盤がもろい場所では)修復中の道路が崩壊する危険もある。修復しないで放置すれば、被害はゼロなのだが、修復して道路を使用すれば、次の地震で大惨事が起こる危険もある。工事をしたせいで、かえって被害が増えてしまうわけだ。被害を増やすために工事をするようなものだ。
人殺しを目的とする工事。そのために数千億円を投入する。……狂気の沙汰だ。
しかしまあ、阿呆というものは、そういうものだ。自分が何をしているかもわからないまま、馬鹿のひとつ覚えを実行する。
「フッキュー、フッキュー」と言いながら、不急の仕事をやるのだ。どうせなら、「フキュー、フキュー」と言えばいいものを。
食料、飲料水やトイレなどその場対策ばかりに気が向いていて、地震に強い国づくりは会議だけで前進していません。せいぜい町内に防火水槽を設置する程度です。南海トラフ地震は40年以内に90%と言われているのに。特定の地域ずつ重点的に実行することが大事です。広く浅くはだめです。でもこれが衆愚民主主義国ではむずかしいですね。