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僻地から大都市に移住するとして、そのあと大都市で地震が起こるかもしれない。しかも大都市で地震が起こると、とてつもない大被害が生じる。それはかえってまずい。だから、大都市に移住しないで、僻地に留まっている方がいい……という主張だ。
これは正しいか?
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このことを理解するには、次のように問題を転じるといい。
「ルーレットで金をかけるとして、どういうふうに金をかければいいか? 一つの数字に大金を賭ける方がいいか? 多くの数字に分散して賭ける方がいいか?」
先の発想に従えば、こうなる。
「一つの数字に大金をかけると、ハズレたときに大損をする。大損をする危険度が高い。だから、大損するのを避けるために、多くの数字に分散して賭けた方がいい。その方が安全である」
なるほど、たしかに、分散すれば、大損を避けることができる。しかし、大損を避けることができるかわりに、大当たりもなくなる。
数学的に計算すれば、一つの数字にまとめても、複数に分散しても、当たる確率は同じなので、期待値も同じである。大損を避ける方法があるが、それは同時に大当たりも避けることになるので、損得は生じない。どっちにしても同じことだ。
以上が、ルーレットからわかることだ。
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僻地から大都市へ移住することも同様である。
日本は地震国であり、どこもかも同じぐらい地震の可能性がある。先に述べたとおり。
※ 地震の専門家の説では「活断層のある場所は、地震が起こりやすいので、危険だ」ということになっている。しかし、地震が起こるのは、活断層のある場所だとは限らない。日本中のどこもが、同じぐらい危険度は高いのだ、と思った方がいい。そもそも、地震が起これば、かなり広範囲に被害が及ぶので、活断層だけを避けても意味がないのだ。「特に危険な場所」もないし、「特に安全な場所」もないのだ。……ちなみに、阪神大震災の起こった場所は、そのときまで「地震の起こりにくい安全な場所」だと思われてきた。
( → 能登半島地震の話題 .6: Open ブログ )
どこに住もうと、地震が起こる確率は同じぐらいある。巨大な地球に比べて、日本列島はあまりにもちっぽけなのだ。そのなかでどこを選ぼうと、大差ないのだ。
そして、地震の確率がどこでも同じぐらいであるからには、あとはルーレットの話と同様である。人々が1箇所に密集しようが、人々が分散しようが、被害の確率は同様だ。
なるほど、東京で地震が起これば、被害の額は巨額になる。しかし、東京で地震が起こらなければ、被害を免れる額も巨額になる。どっちみち巨額なのだ。損をする額も、損を免れる額も。……ここでは、「額が巨大になると、不利になる」ということはないのだ。
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物事を理詰めで考えれば、損得についても確率と期待値を計算できる。しかし理詰めで考えることのできない人は、「大都会に移ると危険度が増す」というふうに錯覚してしまうのだ。田舎者には、ありがちだが。
日本人は集まって小さな家に住むのが好きなようです。満州に開拓民が入った時も日本人居住区だけは小さくて密集していました。
中東の地震国には石造りの住居が多くて死亡者が多いのですが、日本は木蜜が多くてやはり多数の犠牲者が出ます。どちらの国々も何度も地震が起こっているのに全く学ぼうとしていません。国土交通省が音頭を取り、地震に強い国にする100年計画を立てるべきと思います。