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「被災者は県外に移転するといい。特に、温暖な土地に」
という方針は、本サイトでも初期から提言していた。
一方、これと似た意見が、ネットでも話題となった。
米山隆一
政治家の米山隆一が、やや似た趣旨の発言をして、これがネットで大いに話題となった。
非常に言いづらい事ですが、今回の復興では、人口が減り、地震前から維持が困難になっていた集落では、復興ではなく移住を選択する事をきちんと組織的に行うべきだと思います。地震は、今後も起ります。現在の日本の人口動態で、その全てを旧に復する事は出来ません。現実を見据えた対応をと思います。
豪雪の中山間地の(可成り)余裕のあるご家庭では、高齢の老夫婦が家をたたみ、除雪のいらない街場のマンションに引っ越したりしています。人の少ない集落での暮らしは実は高齢者には厳しく、一度街場に住むともう戻れないと言います。そこに暮らす人の事を思えばこそ、移住は選択肢だと思います。
今回の様な大規模災害時の復旧においては強制は必要なく、行政が、住民が安心して街場へ移住出来るきちんとした青写真・補助を提示するだけで、相当程度実現できます。結果、本人達の生活は楽になり、行政コストも減ります。「実は誰にとってもプラスな選択肢」を直視すべき時ではないかと思います。
( → 米山隆一の廃村論「雪下ろしが必要な田舎が危険なら、除雪のいらない都会のマンションに移住を」 - Togetter )
最後に示してあるように、「強制は必要なく」という点が重要だ。
ところが、世の中には文盲の人が多いので、これを読めないまま、「移住を強制するのはけしからん」といきり立つ人もいる。前項で紹介した Togetter の声もそうだ。同様に、下記の記事もそうだ。
→ 限界集落の被災は軽視されてもしかたない、みたいな暴論を見かけるようになったが、それで都市部に移住させてどうするのだろう - 法華狼の日記
米山隆一の主張は「強制ではない」のであって、「移住したい人が移住する」というだけのことなのだから、他人が文句を言う筋合いではないだろう。
特に、私が推奨するように、「愛媛県の温暖な土地で、安い家賃で長年にわたって居住できるようにする」というふうにすれば、まさしく極楽状態だと言える。
ひるがえって、「寒い土地で、寒い仮設住宅に住んで、1年たったら追い出す」というようなシステムを採用して、それに1千万円も投じる……というような無駄遣いをすることに、何の意味があるのか? 単に「莫大な税金を投入して、高齢者を虐待死させる」ということでしかない。それこそ愚の骨頂だろう。
※ なお、米山隆一の主張と同趣旨の主張は、山本一郎も述べた。
→ 能登半島地震であえて問う、20年後に消滅する地域に多額の税金を投入すべきか 人口減少の日本で問われる、何がどこまで公費で救済されるべきかの線引き
移転による極楽と地獄
被災者が被災したあとは、現地にいる方がいいか、脱出した方がいいか? これについては、現況を報じた記事がある。
(1) 避難所は地獄
現地の避難所は、地獄のような状況であるらしい。
食料や飲み水などの支援物資は、自衛隊ヘリなどで届く。だが生活用水は雨水をバケツにためて使う。トイレにたまる汚物を少なくするため、食事を1日2回にした。汚物の回収車が来ないため、校庭の端にはポリ袋にまとめられた汚物が積み重なっていた。
震災直後から医療支援を続ける輪島市の訪問看護師、中村悦子さん(64)は、不衛生な状況が震災関連死を招きかねないと心配する。
断水が続くため、手洗いを遠慮する。トイレには他人の排泄(はいせつ)物が残っていることもある。「汚いから」とトイレに行かず、水分を控えることで全身状態が悪くなる。
奥能登地域は、65歳以上の人の割合が約5割で、全国平均(29.2%)より高齢者が多い。「水不足のために歯磨きや入れ歯の手入れも後回しになり、命に関わる誤嚥(ごえん)性肺炎になる危険性も高まっている」。
( → 「やろうと思ってもできんのや」 感染症広がる避難所、悪化する衛生 [能登半島地震]:朝日新聞 )
避難所という地獄に留まることで、関連死となる人々がどんどん増えるわけだ。
また、次の情報もある。
能登半島地震で、新型コロナウイルスやインフルエンザなどが避難所で広がり、石川県内で少なくとも350人の感染が確認された。
( → 読売新聞 )
まさしく地獄と化しつつある。
※ コロナやインフルエンザの危険については、私は当初から警告していた。
→ 能登半島地震の話題 .1: Open ブログ(1月04日)
私とは違って、政府は 1月13日になっても、ろくに対策しない。
※ このあとでは、雪が降って、状況はさらに悪化する見込みだ。
(2) 旅館は極楽
現地から離れて、二次避難所の旅館に移った被災者は、極楽の状態であるらしい。
石川県加賀市の山代温泉にある旅館「みやびの宿加賀百万石」には、12日時点で約300人が身を寄せる。旅館ならではのもてなしで、緊張から解放された被災者が表情を緩め、元日以来の風呂に「格別」と喜ぶ声も。
( → 加賀の温泉旅館、避難者に安らぎ 風呂「格別」と表情緩め|47NEWS )
未明に大浴場で元日以来の風呂に入ったという輪島市鳳至町の佐渡妙子さん(74)は……「暖かい場所で安全に寝られ、食事も良くて感謝したい」と話した。
( → 〈1.1大震災〉「ほっとした」「安全に寝られ感謝」 被災の62人が山代温泉入り | 北國・富山新聞 )

極楽から地獄へ?
旅館に移って、温泉につかって、極楽気分でいられる被災者がいる。これらの被災者に対して、こう提案するといいだろう。
「あなたの地元は、あなたのふるさとです。生まれ育った地元こそ、あなたの生きるべき場所です。こんなところで温泉に入って楽しんでいないで、つらくとも地元に戻りましょう。現地は、今は雪が降っている上に、電気も水もありませんが、そこで体が芯まで冷えた状態で、苦しみながら生きましょう。それで高熱を出して死んでしまっても仕方ない。ふるさとで死ぬなら本望でしょう。さあ、温泉を出て、地元に戻りましょう。苦しみの中で日々を生きることこそ、地元への愛です。地元への愛を失ってはいけません。愛する地元の土地へ、今こそ帰りましょう」
こうして、温かな楽しい風呂から追い立てて、寒い苦しい避難所に追い込むわけだ。すると被災者は憤るだろう。
「避難所に戻れなんて、私たちに死ねということか? 私たちを殺そうとするつもりか?」
と。
それに対して、先の人々は、こう語るのだろう。
「地元に戻れというのは、あなたたちのためを思って言っているんです。どうせ地元愛が最優先なんでしょ? だから、地元に戻れと言っているんです。それをあなたたち自身が望んでいるんですよ」
すると被災者は反発するだろう。
「勝手に決めつけるな! 私たちがどうするかは、私たちの一人一人が自分で決める。あんたが勝手に指図するな!」
「いや。勝手に指図しているんじゃないんです。あなたたちのためを思って、そう言っているんです」
「何 言ってやがる。屁理屈をこねるな。そいつはいったい、どういう魂胆だ? 何が目的なんだ?」
「ええとですね。それは、票です。あなたたちを地元に戻してあげるんだから、あなたたちが地元に戻ったあとは、地元で票を下さい。我が党に票を下さい。そのために、地元で選挙民の登録をしておいてくださいね。とにかく、地元に戻ってから、票を下さい」
これこそ、自民党や立憲民主党が狙っていることだ。だから彼らは、地元民をよその土地に移したがらないのだ。
現金給付せよ
じゃあ、どうしたらいいのか? 地元にすればいいのか、地元以外にすればいいのか? どっちにしたらいいのか? 選び方が難しい。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「どこにするかは、被災者自身に決めてもらえばいい。国や自治体は、そのための金(家賃相当額)だけを出せばいい。つまり、現金給付だ」
たとえば、家賃相当額として、毎月5万円を給付する。現行の「みなし仮設」では、上限額までの家賃を大家に払うことになっているが、その制度をやめる。かわりに、被災者に現金を払って、被災者が自分で大家に家賃を払うことにする。
すると、次の疑問が生じるだろう。
「被災者が金を家賃にしないで、自分の懐に入れてしまったら、どうする? そうなると公金を奪われてしまうぞ」
しかし、それはそれでいいのだ。被災者が金を家賃にしないとしたら、本人はホームレスになって野宿するか、知人や親戚の家に転がり込む(寄宿する)か、そんなところだろう。だが、それはそれでいいのだ。衣食住のうち、住の金を切り詰めて、他の分野に回すとしても、それは本人の勝手だからだ。
だから、現行の「みなし仮設」に相当する額を、現金給付すればいい。それで問題は一切解決する。
そのあと被災者が、地元に住もうが、近隣の都市部に住もうが、温暖な土地の田舎や都市部に住もうが、どうしようと勝手なのだ。そんなことは被災者自身に任せればいい。他人が彼の人生の選択に口出しする必要はないのだ。

- 《 注記 》
ただし、不正をする余地はある。みなし仮設の家賃をもらっておきながら、半壊状態の自宅に住み続けることだ。リスクを負いながら金を得ることになる。
このような不正に対しては、「発覚したら全額の返済を義務づける」という罰則を付けることで、予防できるだろう。
空き家の購入
最もコスパのいい方法がある。それは、田舎の空き家を購入することだ。特に、遠くの僻地の空き家ならば、格安で購入できる。
たとえば、香川県で 500万円以下の中古の一戸建ては、214件もある。
→ https://x.gd/6p88B
他の県にも似た物件は多数ある。全国各地で探せば、いくらでも見つかるだろう。これらの一戸建てを購入すれば、家賃を払い続けることもなく、一生、家賃なしで暮らせる。
一方で、現在の住居に対しては、国から補助金が出る。
・ 全壊の被災者には、100万円
・ 全壊のあとで再建する被災者には、200万円
合計して 300万円の補助金が出る。(単身者の場合にはその4分の3となるが。)
現行では、200万円給付は、現地での再建に限られる。だが、他の県での家屋購入も許容することにすれば、購入資金として 300万円が得られる。
さらに、「みなし仮設」の2年間の家賃として、6万円の2年分で 144万円。8万円の2年分で 192万円。後者ならば、300万円と足して、合計 492万円になる。この金で 500万円程度の一戸建てを購入できる。
現実の空き家は、500万円もしない。上のリンク先では、格安物件は 50万円ぽっきりだ。150万円以下という条件でも、かなりの数がある。これらの物件なら、容易に購入できる。(半壊家屋で補助金の少ない人でも大丈夫だろう。)
「そんな僻地に住むのは大変だ」
という声も上がりそうだが、今回の被災者は、もともとひどい僻地に住んでいるのだから、四国の僻地に住むことになったとしても、特に問題はあるまい。
むしろ、「僻地にいる人を都会に移住させるのは残酷だ。非人道的だ」と文句を付ける人が、大喜びになって、泣いて感激するだろう。
「近代的な都会ではなく、昔ながらの寂れた廃村みたいなところに住むのは、素晴らしい。こういうふうに人のほとんどいない僻地こそ、最高に住みやすい場所なんだ。そういう場所を選ぶなんて、何て素晴らしい案なんだ! まるで神か天使のように心優しい案だ!」
と大感激するだろう。
だからこそ、僻地の空き家というのは、すばらしいアイデアなのだ。
- ※ 米山隆一の手法だと、街中の住居を購入する必要があるので、かなりの費用が必要だ。一方、私の方法ならば、僻地の空き家を購入するだけなので、費用は少なくて済む。貧乏人でも大丈夫だ。
個人的には、戦争によるものと、人為的でない災害や過疎によるものは違うのではと感じますが...
https://twitter.com/NaokoScalise/status/1745088830070206550
(以下、抜粋します)
>強制移住学を専門とする者として敢えて首を突っ込みますが、世界には自然災害や公共事業等によりどうしても転居がやむなくなる事態は山ほどあります。その際の指針として「国内強制移動に関する指導原則」が1998年に国連で採択され、日本語訳を2010年に他の研究者と共に策定したのでご参照下さい👇
>cdr.c.u-tokyo.ac.jp/documents/GPID… 過疎化を念頭に置いた指針ではないですが、原則28〜30は参考になるでしょう。要は ・当事者の意思や参画の尊重 ・転居先での公正・平等な福利厚生の保障 ・転居に伴う損害に対する妥当な補償 等が重要と謳われ、生命維持のため真に不可避な移住まで全否定していません(続
>極度の少子高齢化と過疎化という現実を前に、自治体の統廃合はやむを得ないでしょう。それが絶対に嫌なら 1 自ら過疎地に移住し高齢者の面倒を独自で全て見る 2 税金や社会保障費が更に大幅に増額される 3 大量の外国人に頼み込んで移住して頂く の何れかしか思い浮かびませんが、他に妙案ありますか?
なお、私の方針は「強制」ではありません。荒廃したふるさとに、一人で残りたければ、残っても構いません。ただし、復興を望むなら、自分で 100億円を払ってください。1億円をもらって移住するか、100億円を自分で払って復興するか、どちらでも構いません。ご自由にどうぞ。
こういう記事があったのですが、参考までに…
たぶんめちゃ役に立つけど誰も言わない地震の話
https://www.landerblue.co.jp/61567/
1 日本には発見されていない断層が死ぬほどありどこでも地震は起こる
2 地震予知は不可能。地震の周期説は間違いでした
3 熊本も3.11も能登も全く予測されていなかった
4 関東大地震は東京直下ではない
5 どうして地震の前触れみたいなのがあっても警報出さないの?
6 能登の震災の地震波がおかしかった理由
そのサイトのテーマである「地震はどこでも起こる」という話は、本サイトでは下記で扱っています。
http://openblog.seesaa.net/article/502074377.html
地震の頻度については、周期ではなく、べき分布だ、と示したこともあります。
http://openblog.seesaa.net/article/435848543.html
震源が東西に長いことについては、上記のご紹介の記事でわかりました。ありがとうございます。