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朝日新聞の記事にある。
羽田空港では、国交省航空局に所属する管制官が、レーダーなどで滑走路の状況を監視するシステムを使用している。滑走路に機体が進入すると、モニター画面の滑走路が黄色、機体が赤色で表示される仕組み。
国交省航空局によると、事故当時、システムは正常に作動していた。管制官が、画面の色変化に気づかず、海保機が滑走路に進入したことを覚知できなかった可能性があるという。ただ、担当者は「管制官が自分の目で航空機などを見ながら管制をするときの補助的なもので、画面を凝視することを求められるものではない」と話す。
羽田空港では管制官の役割を見直し、6日からシステムを常時監視する人員を配置する。
斉藤鉄夫・国土交通相は5日夕、システムを常時監視するための人員を配置する対応を明らかにした。
( → 管制官、進入表示気づかずか システムは正常 衝突の海保機:朝日新聞 )
「監視システム」という機械制御がなされているはずだったのに、その機械システムに人間が気づかなかったのが問題だ、という認識だ。
そこで、「気づくように人間の配備をすることで、事故の予防ができる」という方針が取られた。
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以上は、もっともらしい対策だが、私としては「不可」と判定する。理由は次の通り。
せっかく機械制御のシステムがあるのに、それを人間が監視するというのでは、結局は「人任せ」であるにすぎない。そんなふうに「人間の量を増やす」というのは、コストがかかる割には効果が低いので、頭の悪い方法だ。
もっと賢明な方法がある。それは「すべてを機械で制御する」という方式だ。私としてはそのような対策をすることを、先に推奨した。「全部、AIでやれ」と。
→ 羽田の事故の原因: Open ブログ
この項目では、「それを将来的に整備するべきだ」という趣旨で述べていた。しかしながら、その後に得た情報によると、このことはすでに大幅に実現しつつあるとわかった。
そのシステムが ADS-B である。
→ 放送型自動従属監視 - Wikipedia
これによって飛行機の位置をほぼリアルタイムで送信することができるので、機械的な管制システムが実現する。
このシステムは、すでに多くの民間機に搭載されている。しかし今回の海保機には搭載されていなかった。
→ JAL機と衝突した海上保安庁機(JA722A)がフライトレーダーに表示されない理由|ryo-a (vitya)
→ How the Japan coast guard plane crash unfolded: A visual explanation
後者の記事から転載・翻訳しよう。
The Coast Guard plane was not equipped with a modern ADS-B transponder, according to Flightradar24, an international flight-tracking service.
国際航空追跡サービスの Flightradar24 によると、海上保安庁の飛行機には最新の ADS-B トランスポンダーが搭載されていなかった。
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ADS-B is an acronym for Automatic Dependent Surveillance-Broadcast, according to the Federal Aviation Administration. It provides a three-dimensional position and identification of aircraft or other vehicles.
米連邦航空局によると、ADS-B はAutomatic Dependent Surveillance-Broadcast の頭字語です。航空機や他の車両の 3 次元位置と識別を提供します。
ADS-B transponders automatically broadcast information about an aircraft, including:
・ Global Positioning System location.
・ Altitude.
・ Ground speed.
ADS-B トランスポンダーは、航空機に関する次のような情報を自動的にブロードキャストします。
・ 全地球測位システムの場所。
・ 高度。
・ 対地速度。
The information is relayed by satellite-linked GPS to air traffic controllers and other aircraft once every second. It's considered more accurate than conventional radar systems.
情報は衛星にリンクされた GPS によって航空管制官や他の航空機に 1 秒ごとに中継されます。従来のレーダー システムよりも正確であると考えられています。
ADS-B があれば、事故を予防できる能力は飛躍的に高まった、と推定できる。
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以上のことから、私としては、次のことを提案する。
超過密状態の羽田空港では、ADS-B の使用を半ば義務づける。これを搭載していない飛行機は、羽田空港の利用を半ば禁止する。
具体的には、次のようにする。
(1) 一般の旅客機は、ADS-B の搭載を義務づける。ADS-B を搭載していない古い旅客機は、羽田を利用することを禁止する。(他の空港へ行くべし。成田や関空など。)
(2) プライベートジェットや海保機のような小型機も、なるべく ADS-B を搭載することを要請する。搭載していれば、問題ない。搭載していない場合には、昼間の利用を義務づけて、夜間の利用を禁止する。(夜間は目視が困難で危険度が高まるからだ。)
今回は、JAL も海保機も、ともに相手機を目視できなかった。これは夜間であったからだ。仮に昼間であったなら、双方が相手機に気づいていたはずなので、何らかの回避策を取れた可能性が高い。また、管制官も、何らかの気づきを得た可能性が高い。
「目では見えない」という状況で、機械システムも使えないのでは、ほとんど盲人状態だ。そんな状態で「音声だけに頼る」という方式は、危険度が高すぎる。
それゆえ、「ADS-B を搭載していない場合には、昼間の利用を義務づけて、夜間の利用を禁止する」という方針は、有効な安全策となるのだ。
[ 付記 ]
ただし、将来的には、「海保機はすべて調布飛行場に移転する」という方式の方が好ましい。
このようにすれば、羽田の民間機の発着数を増やすこともできるので、コスパも良くなる。
調布飛行場を整備すれば、プライベートジェット機の受け入れを増やすこともできるので、いろいろとメリットが大きい。
一石三鳥ぐらいの効果がある。
しかも、工事費はたいしてかからないので、コスパがとてもいい。
※ 辺野古の滑走路のように(埋め立て用の)巨額の費用は必要ない。
【 関連情報 】
それとはまったく別の話だが、「飛行機をライトで誘導する」という方式もある。
ここ数日、本サイトのコメント欄で話題になっていた。朝日新聞にも、次の情報がある。
→ 停止線灯は運用休止中 昨春から保守作業 羽田衝突事故:朝日新聞

これはこれで成立するだろうが、私としては特に興味を感じないので、軽く言及しておくだけに留める。
(本文の例)
> 「監視システム」という機械制御がなされているはずだったのに、その機械システムに人間が気づかなかったのが問題だ、という認識だ。
しかしながら、筆者は、一般的な「制御」という概念とは違う意味でその言葉を使用されているように感じられ、私としては違和感があります。
・冒頭の朝日記事にある監視システム:管制官に1回限りで警告するのが主機能のようなので、制御システムとはいいがたい。
・ADS-Bシステム:管制官やパイロットが周辺機の位置情報をより正確にリアルタイムに把握するのが主機能のようなので、これ自体は制御システムではない。ただし、このシステムからの情報をもとに管制官が指示を出すので、その管制官の役割を含めば、その全体は航空管制を行う制御システムといえる。構成の中に人間が入ることから、全体を「機械制御」というのは難しい。
・【関連情報】で軽く紹介されているストップバーシステム:誘導路および滑走路のセンサーからの信号をもとに、自動かつ連続で(入れ替わり立ち替わり来る機の)パイロットに指示を出すので、これがむしろ、機械制御や制御システムに一番近い。
本項だけの一時的な仮の用語であって、その実態は二つのシステムのいずれか一方を示すだけ……とわかるので、ご容赦ください。
永続的に使う言葉ではありません。本項内で、数回使って、使い捨てです。あくまで一時的な仮の用語です。
まあ、目的としては「監視システム」でもいいんだが、本項の趣旨としては、「目的が何か」ではなく、「人でなく機械が担当する」ことが重要なので、「監視システム」でなく「機械制御」にしました。「機械システム」でもいいんだけどね。字数が2字多いのが難だ。
あと、もう一つ。私の方針としては、ただの監視ではなく、AIによる最終的な制御(自動制御)まで念頭に置いています。監視だけでは不足だ。現段階のシステムでは不充分だと言える。
将来的にはAIによる自動制御まで進めるべきだ……という方針(前出項目の方針)に従っています。そこまで言及するべきでしたね。
その意味では、本項は舌足らずでした。タイトルが不正確というより、本文が説明不足(提案不足)でした。
>あと、もう一つ。私の方針としては、ただの監視ではなく、AIによる最終的な制御(自動制御)まで念頭に置いています。監視だけでは不足だ。現段階のシステムでは不充分だと言える。
将来的にはAIによる自動制御まで進めるべきだ……という方針(前出項目の方針)に従っています。そこまで言及するべきでしたね。
⇒ はい。その前稿のご提案を覚えていましたので、実はそのあたりが一番違和感があったのですよね。「AIによる自動制御」というのは、技術的なハードルは高い(車の自動運転よりは簡単そうですが、安全面の要求レベルが高いためにそれを保証するのが難しい)としても、将来的には目指すべき方向だと思います。
しかしながら、本稿では、その提案の正当性をアピールしたいがために、
> この項目(註:「羽田の事故の原因」Openブログ)では、「それを将来的に整備するべきだ」という趣旨で述べていた。しかしながら、その後に得た情報によると、このことはすでに大幅に実現しつつあるとわかった。
として、ADS-B について紙面を大きく割いて解説してしまうと、私が直前コメントで指摘させてもらったように、ADS-B は現状「自動管制(制御)システム」とはいえず「情報共有システム」とでもいうべきものなので、当初のご主張自体は確からしくとも、そのストーリーに違和感が出てしまいます。ADS-B が今後改良・発展しても、筆者が想定されている「AIによる自動制御システム」にはならないのではないか? そういう、私の個人的な感想でした。