2024年01月04日

◆ 能登半島地震の話題 .1

 今回の地震についての話題をいくつか。(避難所や仮設住宅)

 ── 

 能登半島地震と命名


 「能登地震」かと思ったら、「能登半島地震」と名付けられた。名付け親は気象庁。

 倒壊多数


 倒壊した家屋数がとても多いのが、この地震の特徴だ。珠洲市すずしでは、避難所に来た人の数は 7000人で、これは人口の半分に当たる。つまり、家屋の半分は居住できなくなったわけだ。


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出典:朝日新聞 2024-01-04 朝刊



 これほどにも家屋の倒壊数が多い地震は珍しい。阪神大震災や、熊本地震では、倒壊しなかった家屋の割合がかなり多かった。それに比べると、今回の家屋の倒壊数が非常に多い。
 では、どうしてか? その理由は明らかだろう。古い木造家屋が多かったからだ。築 50年以上の家屋も多かったようだ。これらの家屋を改築するというプランもあっただろうが、居住している人も 70歳以上の高齢者が多いので、仮に新築しても、自分の寿命の来る方がずっと早い。新築するくらいなら、賃貸に移転する方がマシだ。しかし、古くても自宅を使えばタダなんだから、賃貸に移転するのも馬鹿らしい。……というわけで、新築も移転もしないで、古い家に居続けた人が多いわけだ。
 それでも、今回は死なずに済んだ人が多い(珠洲市だけで 7000人もいる)のだから、新築しなかったのが正解だったかもしれない。(生き残った場合には。生存バイアスだが。)

 自宅再建の補助金


 自宅再建の補助金はどれだけか? 
 熊本地震の例だと、複数家族で 300万円、単身家族で 225万円の補助金をもらえる。
 しかしこの金で自宅を再建しても、高齢者が家屋を使うのは、あと 10〜20年ぐらいでしかない。寿命よりもずっと長持ちする家を新築するのはナンセンスだ。
 とすれば、自宅再建の有無にかかわらず、同額の金を渡して、賃貸生活に移る方がマシだろう。

 仮設住宅


 仮設住宅の場合は、建設費が 300万円で、付帯工事費や補修費が 300万円で、解体費が 300万円で、合計で 1000万円近くがかかってしまう。
  → 仮設住宅の建設費用
 それでいて、断熱設備がないから、冬は猛烈に寒くて、夏は猛烈に暑い。安普請のぼろ屋を高額で建設して、数年後には解体してゴミにして廃棄する。……無駄の極みと言える。(途中では寒さによる死者も多数出る。)
 最悪の愚策と言えるのが仮設住宅だが、政府や自治体は毎度毎度、仮設住宅を作ろうとする。今回もその方針だ。
 というか、能登半島の地震は、今年の春から何度も続いていて、そのたびに仮設住宅を提供し続けてきた。馬鹿丸出しと言える。
  → https://x.gd/jb2aG
  → 能登地震 珠洲市に被災者生活再建支援法を適用 仮設住宅も建設へ:朝日新聞

 見なし仮設


 熊本地震の場合には、当初は仮設住宅を作ろうとしていたが、大量の仮設住宅を作るのは無理だと判明したので、途中から「見なし仮設」に転換した。
 これは、熊本市内に限らず、近隣の自治体に転居して、既存の賃貸住宅を「仮設住宅」のかわりに使うものだ。
 この場合には、何も問題はない。
  ・ 品質は十分だ。(低品質ではない。)
  ・ 費用は普通。(既存の相場だ。)
  ・ すぐに入居できる。

 特別に優れているというわけではないが、普通の水準を保てる。あらゆる点で問題だらけの仮設住宅に比べれば、月とスッポンぐらいの差で、圧倒的に優れている。

 富山市と金沢市


 珠洲市と輪島市では多大な倒壊家屋が出た。とはいえ、これらの地域では、人口は多くない。
 一方、すぐそばには、富山市と金沢市がある。ここには多大な住戸がある。こっちに住む方が簡単だ。( 疎開 である。)





 ネットで賃貸情報を探ると、富山市には空き部屋が 2.2万、金沢には空き部屋が 2.0万もある、とわかる。珠洲市の避難者数が 7000人、輪島市の避難者数が 10000人だから、これらの避難者をすべて収容することも可能だ、とわかる。
 さらに言えば、こんな寒い北陸の地を離れて、温暖な四国あたりに移住することもできるので、いくらでも移転は可能だとわかる。
 日本には空き部屋がありあまっているのだ。現地で再建する必要はないのだ。

 公共事業


 見なし仮設は優れている。だから、この方式を取ればいいのだが、毎度毎度、国と自治体は最悪の道を選ぶものだ。仮設住宅など。
 仮設住宅であれ、区画整理であれ、震災のあとでは国は莫大な公共事業をしたがるものだ。
 東日本大震災のあと、陸前高田では、1戸あたり 4000万円もの巨額の金をかけて、高台を造成した。しかも、その高台が空地だらけになっているので、実際に使われるのはほとんどない。単に巨額の金を浪費しただけだ。
 ただし、こういう公共事業をすることで、自民党には多額の「袖の下」が入る。それが本来の目的だ。
 その一方で、被災者のためには、ろくに金を払わない。今回もそうなるだろう。

 避難所とコロナ、インフルエンザ


 「移転しないでいつまでも避難所にいればいいさ」
 と思う人もいるだろうが、それはまずい。避難所では、コロナやインフルエンザの感染が起こりがちだからだ。今はまだ大量感染は起こっていないとしても、今後は起こりかねない。大量感染が起こる前に、さっさと分散させるべきだろう。



 【 関連動画 】





 ──

 地震の揺れの大きさを示す動画ツイート。(建物を倒壊させる威力を示す。)


posted by 管理人 at 23:01 | Comment(3) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
道路が使えないならヘリコプターで運べばいいと思うがねぜやらないのか不思議です。
Posted by 清島修二 at 2024年01月05日 14:28
 ヘリの輸送量は限定的だからです。珠洲市の避難者 7000人。輪島の避難者 1万人。ヘリの救援物資は1台 30人分程度。焼け石に水です。大量に投入すると、ヘリの事故も起こりかねない。ヤブヘビ。

 現状では4トントラックが主流。これ1台でヘリ 10機分ぐらいを輸送できるだろうから、これがベターだろう。

 私の推奨は、帰りの空荷トラックに、人を乗せて、疎開させること。トラックの荷台に人を乗せることを、臨時で許可するべき。

 ※ なお、ヘリコプターの話題は、本項ではなく前項です。項目違い。
Posted by 管理人 at 2024年01月05日 14:54
数年前、新潟県中越地震で被害に遭った山古志村に行きました。再建された新しめの住宅が、おそらく住人だった高齢者の死去または転出に伴い空き家になっているものを結構見かけました。
過疎地における「再建」は、結果として無駄遣いだったんじゃないかと思いました。自分の資力で再建できる人以外は、都市部への住み替えを考えたほうがいいのではないでしょうか。震災が無くても、過疎と高齢化で集落の存続が難しくなっていったんじゃないかと思います。
Posted by けろ at 2024年01月05日 18:33
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