2024年01月04日

◆ 羽田の事故の原因

 羽田の事故について、直接的な原因が判明した。管制塔と機長の録音が再現されたことからわかった。

 ──

 事故の直接的な原因は「人為ミス」であっただろう……と前々項の前半で記しているが、そのことが裏付けられた。
 記事によると、管制塔とのやりとりの録音が示されている。(図あり)
 そこから、こう評価される。
 「公表された交信記録を見る限り、管制による海保機への指示は適切で、海保機も正確に復唱している。海保機側に何らかの思い込みがあった可能性が高まった」とみる。
( → 【羽田空港事故】「誘導路に」復唱の海保機、滑走路進入 経緯調査へ - 日本経済新聞

 ではなぜ、勘違いがあったか?

 別記事によると、機長はこう解釈した。
 海保機の機長は事故後、「許可を得た上で滑走路に進入した」と搬送先の病院で報告したといい、交信記録と食い違いが生じている。
( → 海保機、滑走路進入許可なし=日航機には着陸許可―羽田事故で交信記録公表・国交省 | 時事通信ニュース

 記録と証言が食い違う。これをどう解釈するか? 


tantei_small.gif


 名探偵の解釈は、こうだ。
 「誘導路の停止位置まで地上走行してください」
 というのが、管制塔の指示だった。この指示は、二義的に解釈された。

 管制塔「停止位置まで地上走行したら、そこで停止するべきだ」
 機長 「停止位置まで地上走行したら、そのまま滑走路に入るべきだ」

 現実には、どう語られたか? 「停止位置まで地上走行」とだけ語られた。その後にどうするかは、何も語られなかった。

 管制塔「何も言わなければ、そこで停止するに決まっているだろ」
 機長 「何も言わなければ、そのまま滑走路に入るに決まっているだろ」

 という思い込みのズレがあった。

 ──

 たぶん、いつもとは違うことをやっている(イレギュラーなことをやっている)せいで、機長は不慣れさゆえによる勘違いが起こったのだろう。

 基本的には、「イレギュラーな臨時便を飛ばしたこと」ということが根本原因であったようだ。先に述べたとおり。
  → 羽田で航空機炎上: Open ブログ
  → 災害時は救援物資を止めよ: Open ブログ


 「人為的なミスが原因だったと判明した」ということで、政府は「人為的なミスをなくすべきだ」という結論を出しそうだが、「人為的なミスをなくすこと」など、できるはずがない。人間はどこかでミスは犯すものだ。
 とすれば、根本対策は二通りしかない。
  ・ 人間に任せずに、すべてを機械化する。
  ・ 人為ミスが起こりにくくなるように、制度を改める。


 この二つのうちの後者を、私は推奨した。その具体策が、次の二点だ。
  ・ 災害時は救援物資を止めよ: Open ブログ (前々項)
  ・ 海保を調布飛行場へ: Open ブログ (前項)

 ──

 なお、「すべてを機械化する」というのも一案だ。(前者の案。)
 これはどうかというと、これはこれとして、別に進めればいいだろう。AIによる管制塔機能の代替というのは、長期的には進めていくべきだ。
 ただ、こうなると、管制塔の管制官も、飛行機上の機長も、どっちも失業しかねないが。

 《 参考 》

 別途、「通路上にゲート(柵)を設けて、物理的に飛行機の動きを阻止する」という案もコメント欄に寄せられた。(前項)
 これは、力ずくで動きを止めるという荒っぽい方針。人を羽交い締めにするような。そこまでやらなくてもよさそうな気はするが。(飛行機を通信で電子制御するだけでいい。ゲートを電子制御するよりは、飛行機を電子制御する方が簡単だ。)




 余談だが、(沖縄の)自衛隊ヘリの墜落の事故報告は、まだ出ていない。フライトレコーダーも回収されているのに、内容を公表しない。ふざけた話だ。
 たぶん、公開したがらない理由があるんだろう。搭乗していたお偉いさんが、ヤバい命令を出していたせいで、ヘリが墜落した(またはメーデーを出せなかった)のだ……と推定できる。隠蔽工作があった、という意味。

 
posted by 管理人 at 09:46 | Comment(8) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 すみません、くだんの停止位置というのは、誘導路(正確には、滑走路と平行に走っている「直線誘導路」と滑走路とをつなぐ、カーブした「取付誘導路」)の途中、つまり滑走路に入る手前にあるように思ってました。
 それが正しいなら、誘導路には入っていいはずなので、

> 機長 「停止位置まで地上走行したら、そのまま誘導路に入るべきだ」
> 機長 「何も言わなければ、そのまま誘導路に入るに決まっているだろ」

 はそれぞれ、

  機長 「停止位置まで地上走行したら、そのまま滑走路に入るべきだ」
  機長 「何も言わなければ、そのまま滑走路に入るに決まっているだろ」

 になりますか?
Posted by かわっこだっこ at 2024年01月04日 11:36
> になりますか?

 あ、そうですね。急いで書いたので、ミスってしまいました。

(誤)誘導路
(正)滑走路

 ですね。本文を訂正しました。

 ご指摘ありがとうございました。
Posted by 管理人 at 2024年01月04日 11:47
 本稿で述べられている「人為ミス」(ヒューマンエラー)について、今朝のテレ朝『モーニングショー』に出てきた日航の元機長は、もう少し突っ込んで疑念を漏らしてましたね。
 
 その人いわく、
@ 海保機は、管制とのやり取りを、(民間旅客機のように)機長と副操縦士の2人が聞いて確認しあっていたのだろうか。
A 海保機は誘導路から左折で滑走路に出ていくかたちだが、その時に右席に座っているはずの副操縦士は、右方向から来るかもしれない着陸機に対して、目視で注意を払っていたのだろうか(この人によると、夜間でも6〜7キロまでは見えるらしく、今回も見る気でいたら、タイミング的には着陸進行中のの日航機が見えたはずだとのこと)。

 だそうですが、もし万が一にも本件事故の時に、海保機の副操縦士が機内で別の仕事をしていたという事実があったのだとしたら、筆者のいわれる自衛隊ヘリ事故のそれのように、表には出てこないでしょうね。
Posted by かわっこだっこ at 2024年01月04日 15:21
「物理的に侵入させない」というのは力ずくという意味ではなく、機長が気づく程度の衝撃を与えると言う意味です。それこそ駅のゲート程度で十分です。未確認情報では滑走路への侵入許可を知らせる光学的な装置があったのですが故障していたとのことです。故障していたC5を使用させた空港と、それを海保機に説明しなかった管制官にも大きな責任があるでしょう。
 お説の飛行機側を制御するのは良くありません。今回のように機長が思い込んでいる場合は強制解除される可能性があります。機長の判断とは独立に外部から阻止するのが安全の基本です。
Posted by ひまなので at 2024年01月04日 19:00
滑走路侵入口表示装置が故障だった件ですが、BBCやCNNにも書かれています。だから間違いないとは言えませんが。書いていないのは日本の大手メディアだけのようです。
Posted by ひまなので at 2024年01月05日 10:30
 ↑ひまなのでさん、有益な情報ありがとうございます!
Posted by かわっこだっこ at 2024年01月05日 16:51
 各社がようやく、「誤進入警告装置」について言及。ただし、いま取りざたされているパイロットに対する警告灯ではなく、管制官に対する警告装置ということで報じています。どうも、情報が整理されていない気がします。マスコミは仕事をしてほしいです。

 読売記事:着陸機の接近する滑走路に別の航空機が進入する事態が起きた場合、管制塔のモニター画面で滑走路を黄色く点滅させる支援システムが、同空港にあることがわかった。4滑走路すべてに導入され、事故当日も作動していたという。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/d3d16b8bf690299ffddea5d2d195436dcca0cfe6

 ロイター記事:国交省幹部は5日、羽田空港で2日に起きた事故について、滑走路への誤進入を防ぐ装置が故障していたという情報はなく、通常通り機能していたと認識していることを明らかにした。記者団に語った。

 https://jp.reuters.com/world/japan/VG5RZJHIKZPWRODTOXIOR3PCLI-2024-01-05/
Posted by かわっこだっこ at 2024年01月05日 20:45
いまごろ(1月6日9時)になって朝日に侵入表示装置が故障していたと国交省が発表したと書いています。また管制官の見ている画面には機体が滑走路に侵入したことを表示す機能があり、正常に動作していたと認めています。
 いったいどうしてこんな重要な情報を何日も経ってから出してくるのでしょうか。もっと大事な情報も隠しているのではないかと疑ってしまいます。また外国メディアが先に報じると言うのはなぜでしょうか。80年前に大本営発表を疑っていた私の叔父が自作の短波ラジオでこっそり聞いていたという話を思い出します。
Posted by ひまなので at 2024年01月06日 21:24
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ