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記事は下記。
東京都大田区の羽田空港C滑走路で、日本航空(JAL)の516便が着陸しようとした際に発火し、炎上した。 JAL機と海保の航空機が滑走路で接触した。海保機は能登半島地震の救援に向かうところだったという。
海保機も炎上した。男性6人が搭乗しており、このうち5人の死亡が現場で確認された。
516便の乗員は12人、乳児8人含め乗客は367人で、スライダーを使うなどして計379人全員が脱出したという。
( → 羽田空港でJAL機炎上、乗客乗員379人全員が脱出 海保機と接触 [日航機・海保機事故]:朝日新聞 )
海保の方は死者5人。JAL の乗客が無事だったのは不幸中の幸いだったが、下手をすれば死者 400人ぐらいになっていたところだ。
産経はこう報じている。
「あり得ない事故だ」。日航機と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故を受けて、専門家らは一様に衝撃を受けた様子だった。
「滑走路に航空機がいる状況で、別の航空機が進入することはない。地上の指示系統にミスがあった可能性も現時点では排除できないのではないか」と話した。
同じく元日航機長で航空評論家の小林宏之氏も「これほどの火災を伴う事故は、見たことがない。プロのパイロットが管制官の指示を聞き間違えたとは思えない」
一方、海保OBの男性は「パイロット側のミスなのか、管制官側のミスなのか分からないが、通常はあり得ない事故。不思議だ」と首をひねる。
「暗さが影響したのかもしれないが、海保機は夜間のパトロールもするので夜間に飛ぶこと自体は不思議ではない。乗客が無事なのが不幸中の幸いだが…」と、ショックを受けた様子だった。
( → 「ありえない」「不思議だ」専門家らにも衝撃 羽田空港で日航機と海保機衝突 - 産経 )
「ありえない」なんて言っているが、現実には起こったのだから、「ありえない」ことはない。馬鹿丸出しというしかない。
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むしろこれは「起こるべくして起こった」というのが、私の評価だ。専門家とは正反対の評価を下す。理由は、こうだ。
「羽田はただでさえ超過密だ。なのに、イレギュラーな臨時便を突っ込めば、事故の確率が上がるのは自明だ」
このような超過密状態であることは、すでに知られていた。
東京国際空港(羽田)の異常な過密化という問題が起きている。
「羽田空港−東京国際空港では2010年10月21日に4本目の滑走路をオープンさせました。2020年の東京オリンピック開催により、訪日外国人旅行者が増えることを見すえて、さらにもう1本、5本目の滑走路増設を国土交通省が検討しています。しかし、民間機の空路は軍事用に比べると非常に狭い。ただでさえ狭い航空路にさらにつめこもうとするわけですから、軍事用の航空路をかいくぐって民間機が多く飛ぶことになり、当然事故の確率は高くなる。過去にも全日空機が自衛隊の訓練機とぶつかって墜落した事故がありました」
( → 安全を確保できなくなっている【日本の航空事情】 ≪ ハーバー・ビジネス・オンライン )
この過密状態を示した動画もある。
羽田空港の過密ダイヤをタイムラプスで撮影。
— 池田 泰延 (@clockmaker) January 11, 2020
こんなに離着陸が規則正しいとは驚き。
パイロットすごい!
カメラ: SONY α7RV
レンズ: SIGMA 135mm f1.8 Art#タイムラプス #timelapse pic.twitter.com/ABnTO4zFGH
現実よりも何倍速かで再生している動画だが、過密状態はわかる。
こんな過密状態のところに、イレギュラーな臨時便を突っ込めば、事故の確率が上がるのは自明だろう。
臨時便を飛ばすなら、すいている空港を使うべきだった。自衛隊の空港でも、民間の小さな空港でも、空港はいくらでもある。何も超過密の羽田から飛ばす必要はなかった。海保が羽田を使うのが根本的におかしい、と言えるだろう。
どうせなら、横田基地や厚木基地を返してもらえば、ずっと楽になるのだが。それができないのであれば、まずは、静岡や名古屋や伊丹などの空港を使うべきだった。というか、救援物資を届けるのに、海保機なんかを使うべきではなかった。通常の民間貨物機を使うべきだった。
地震のときの運用方法が根本的に狂っていると言える。
では、いったいどうすればいいのか? 困った。
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そこで困ったときの Openブログ。うまい案を出そう……と言いたいところだが、実はその方法はすでに示してある。こうだ。
「防災庁を設置せよ。そこが防災対策を一元的に管理せよ」
→ https://x.gd/6aUZy (サイト内検索)
災害が起こってから組織を作るのではなく、もともと災害対策の組織を設置しておく。その組織が自動的に活動開始する。海保や自衛隊などがバラバラに勝手に援助物資を出すのではなく、防災庁が一元管理する。当然ながら、海保機が貨物輸送をするというような馬鹿げた運用はしない。(海保機は宅急便じゃないんだから。)
ちなみに、JAL と ANA は臨時便を飛ばした。
→ 小松空港、2日はANA・JAL臨時便 機材大型化も
こういう対処を増やせば、貨物便も飛ばすことができる。海保の出番じゃないのだ。
なのに、海保が勝手にしゃしゃりでて、救援物資なんかを運ぼうとするから、今回のようなとんでもない大事故が起こる。
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ネットで炎上するのならいいが、空港で炎上するのは勘弁してほしいものだ。
本稿のご指摘を受けて取り急ぎ調べたところ、羽田は最近、「深夜・早朝時間帯以外における更なる国際線の増便」などのため、4本ある滑走路の使い方を見直したようですね。
以下のリンクを見ると、見直し(2020年頃まで?)は、南風のときは、B滑走路とD滑走路は到着(着陸)専用、A滑走路とC滑走路は出発(離陸)専用と、使い分けがされていたように見えます。
ところが、見直し後は、(南風のときは)A滑走路とC滑走路については、到着(着陸)と出発(離陸)の両方に使うように(兼用のように)みえます。これで、1時間あたり10回の離着陸が増やせるとのことですが、今回のような事故が起こる確率も上がったのではないでしょうか。。
※ 今回の衝突事故が起きたのはC滑走路です。
https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/archive/international/new.html
※ 羽田空港の増便のために→新しい使われ方(滑走路と飛行経路)のタブ→南風時のタブ
なお、羽田空港は南風と北風がひんぱんに切り替わる気象条件らしく、北風時の運用は別になります。この場合は、見直し前と後とで大きな差はなさそうです。C滑走路とD滑走路から出発(離陸)した後の飛行経路が違うだけのようです。
ただし、問題のC滑走路は、これは見直し前からですが、到着(着陸)と出発(離陸)の両方に使われるようです。
※ 北風時のタブをクリック
なお、本件事故が起こった時間帯に、南風時と北風時のどちらの運用がされていたかについては確かな情報がありませんが、下のリンクのアメダスの風向記録をみると、1月2日の17時は南東の風となっていますので、南風時の使い方をされていたのかもしれません。
https://tenki.jp/amedas/3/16/44166.html
https://note.com/vitya/n/n2712a5f9b0dc
フライト24
直前コメントの、Siruさんのアドバイスにより、報道からの日航機の進入図、およびフライトレコーダー24のデータを確認したところ、JAL516便は南(南東)側からC滑走路に着陸進入していました。よって、当時の運用は、下の図とは異なる「北風時」のようです。
事故からわずか9時間後に投稿した、私のコメントの内容ですが、今日になって『週刊文春』が同様のことを報じています。全文は非公開ですが、いずれにせよ、文春にパクられてしまいましたかね? このブログは注目度が高いですね。油断も隙もない。
(文春記事より)1月2日に羽田空港(東京都大田区)でJAL機と海上保安庁の航空機が衝突した事故を巡り、現役管制官が「週刊文春」の取材に応じ、「事故が起きたC滑走路は“異常”な運用と言える」などと語った。「羽田空港にはA〜Dまで4本の滑走路があります。事故当時は北風が吹いていましたが、この場合、B滑走路は使用せず、A滑走路が着陸、D滑走路が離陸専用となる。ところが、C滑走路は常に『離着陸兼用』の運用なのです」
https://bunshun.jp/articles/-/68251?fbclid=IwAR1YEnX4p_qeInk0-jEwBVBPfGQOaLvpYlcCs7gtyaVoC9cJK17OGccfBO4