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五輪の談合で有罪判決が出た。これを朝日新聞の社説が論評している。
公正で透明性の高い運営を掲げたはずの東京五輪・パラリンピックで、談合行為が断罪された。
大会運営の受注会社決定をめぐり、組織委の大会運営局元次長、森泰夫被告が、東京地裁から独占禁止法違反(不当な取引制限)で懲役2年執行猶予4年の判決を受けた。
判決は、元次長が広告最大手「電通」など7社側と共謀して、組織委が競技会場ごとに発注したテスト大会と本大会の運営業務の受注予定者を決め、競争をゆがめたと認定した。 「合計で437億円に及ぶ大規模な談合事案だ」と断じた。
政府や東京都から幹部が派遣された組織委を舞台に巨大な談合が行われていた。元次長一人に責任を負わせれば済む話ではないだろう。
組織委の責任は重大だ。当時の会長、事務総長だった森喜朗氏や武藤敏郎氏は、組織委がすでに解散したとはいえ、改めて説明を尽くさなければならない。
判決は、元次長と電通幹部の関係について、両者が結託して他の業者と面談して受注を調整していたことや、元次長が他社の入札資料を電通側に提供していたことをあげ、その一体ぶりにも言及した。
( → (社説)五輪談合有罪 組織委の責任を問う:朝日新聞 )
組織委と電通の責任を指摘して、そこに切り込むべきだ、と批判している。その主張は、おおむね首肯できる。特に悪くはない。(物足りないだけだ。)
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この問題については、本サイトでも何度か言及した。主要な項目は、下記だ。
→ 五輪組織委の汚職:その本質: Open ブログ
ここでは、問題の本質を指摘している。「組織委は安くすることを目的として、電通は高くすることを目的とする。その両者を同一人物(電通)が兼ねれば、利益相反になる」と。
つまり、「利益相反」が本質だ。この本質がある限り、「あちらが立てばこちらが立たず」となるので、問題の解決はできない。電通に任せれば、電通の好き勝手にされるので、組織委の利益はないがしろにされる。そういう構造がある。この構造を無視する限りは、解決などはできない。「誰かを批判すればいい」という問題ではないのだ。
→ 談合事件と組織委・電通: Open ブログ
ここでも、ほぼ同趣旨のことを述べている。「利益相反」があった、と。
ただし、利益相反があるとしても、それでも電通に任せざるを得ない、という事情もある。なぜなら、組織委は無能だからだ。
そもそも組織委とは何か? 基本的には、無能な役人の集団である。
トップは武藤敏郎で、財務省随一の切れ者という触れ込みだったが、実態はただの神輿みたいなものだ。既存の組織があるときに、その組織の長として采配を振るうだけだ。もともと組織ができていないときに自ら組織を構築するという創業者の能力(イーロン・マスクみたいな能力)は持ち合わせていない。
となると、自分では何も構築できないので、単に「電通に丸投げ」ということになる。これが現実だった。
では、かわりにどうするべきだったか?
主催者は IOC で、委託されたのが JOC だが、JOC は巨大イベントの実務能力はない。
そこで、(国や東京都の)役人が実務を担当するべきだが、役人は巨大イベントを催行する経験も実務能力もない。未経験の素人ばかりだ。とても無理だ。
結局、公的組織は、誰も能力がない。かといって、民間業者に任せると、食い物にされる。あっちもこっちもだめだ。困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
・ 実務を担当するのは、電通などの民間会社の社員とする。
・ 電通などの社員は下層の実務担当者だけとする。(特に若手)
・ 部長以上の上層部は、電通以外から少数を招く。(1社1名)
・ 最上層部は、商社などの退職者を招く。
・ 公認会計士や経理担当者による、チェック組織を設置する。
・ チェック機能に大きな権限を与えて、独断専行を阻止する。
・ 談合ふう不正発覚時には巨額賠償金を払う契約書を書かせる。
(今回のような不正があれば、電通が千億円の賠償金を払う)
以上のようなまったく新しい組織を構築すれば、組織的な不正は防げる。
逆に言えば、そういう組織がなかったこと(利益相反する組織だったこと)が、談合事件が起こったことの原因だ。談合事件が起こったのは、起こるべくした起こったのだ。そういう構造的不正があったことが原因だ、と気づくことが大切だ。
「構造的不正」……これが物事の本質だ。