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不正の報道のあとで、ダイハツは早くも生産を続けようとして、アジア各国への輸出を継続しようとしている。
→ トヨタ 前田昌彦アジア本部長、ダイハツ認証不正問題についてお詫び 関係当局と話をすることでアジアでは「全体としては95%が出荷可能な状況」に - Car Watch
一部抜粋しよう。
例えばタイで言えば、全体の生産の中の出荷ベースでいくと97%までは出荷が再開できている状況です」(前田アジア本部長)と語り、タイ当局と協議することで97%の出荷再開になっていると報告した。
続けて「インドネシアは昨日(22日)の朝の時点で93%。実際にはもう、今日は土曜日なので実際の出荷という行為はないのですが。各国の機関の方との協議の結果、ほぼ100%で、生産出荷ベースで戻せる状況に来ております。そのほか、マレーシア、それからベトナムを含めて、全体としては95%が出荷可能な状況となっております。
こんなことを語っているのだから、反省のレベルはあまりにも低いと言わざるを得ない。
そもそも、今回の事件は、「たまたま起こった」「たまたま下っ端がやらかした」というようなものではなく、会社の根源に関わるものだ。会社の体質そのものが問題だとも言える。
そう個人的に感じていたのだが、それを裏付ける専門家の見解が見つかった。重要なので、紹介しよう。(抜粋して転載する。)
第三者委員会が2023年12月20日に公表した調査報告書(報告書)。その中身を自動車業界の人間が読めば、ダイハツ工業の思惑が見えてくる。同社が今、考えているのは不正への反省でも真因(問題を引き起こした本当の原因)の追究でもない。ただ、会社を守ることである。
総論では対策を講じなかった経営幹部の経営責任を指摘しながらも、不正に手を染めた直接の責任については、認証業務を担う従業員に押し付けた格好だ。
だが、この報告書の内容を「自動車メーカーで仕事をしたことがある人間なら誰も信じない」と自動車メーカーで開発設計者(以下、設計者)を経験したコンサルタント(以下、自動車系コンサルタント)は語る。
委員会の貝阿弥誠委員長が自ら、調査には「限界がある」と認めている。そして、ダイハツ工業はそれをよいことに、「本当の事」を言わずに隠蔽を決め込んだ。こうして出来上がったのが、「ダイハツ工業の言い分を表層的になぞっただけの報告書」というのが、クルマづくりの専門家の見立てである。
報告書は最も古いもので1989年に不正行為があったと記述した。実に34年間も不正を継続し、かつ隠蔽し続けてきたということになる。
驚くのは、ありとあらゆる不正行為を同社が行っていた事実だ。……騒音試験から制動装置試験、ヘッドランプ関連の試験、デフロスター関連の試験、速度計試験、そしてエンジン関連の試験まで、ダイハツ工業は幅広い領域で不正を行っていたことが判明したのである。エンジンの排出ガス・燃費試験の不正にまで手を染めていたのだから、日野自動車以上の悪質さだと言わざるを得ない。
最大の問題は、これらの不正の全てを認証業務を担う従業員に押し付けたことである。
この指摘を自動車系コンサルタントは「あり得ない」と一刀両断する。では、本当の責任を負うべきは誰なのか。同コンサルタントと自動車系アナリストの意見は一致する。「不正は設計主導だ」と。
次ページ : うまい具合に不正できるのは「設計者だけ」
( → 「ダイハツ不正は設計が主導」、開発現場の知見が薄い調査報告書の中身 | 日経クロステック(xTECH) )
ここまでひどい状況が発覚したからには、「認証取り消し」を含めて、長期間の生産中止という処分を下すべきだろう。それで自業自得なのだから、それもやむをえまい。
費用はどうするかというと、トヨタが全額を支払えばいい。どうせ労働者に賃金を払わずに貯め込んだ内部留保が数兆円も貯まっているのだから、その内部留保を取り崩せばいい。こういうときのために、内部留保を貯め込んだのだろう。
また、トヨタの株価は、あまり下がっていない。これほどの大事件があったのなら、株価は暴落してもいいはずだが、発覚前の 2800円から1割ぐらいしか下がっていない。4カ月前の 2400円に比べれば、むしろ上がっているぐらいだ。ダイハツの不正の影響はほとんどないと言っていいくらいだ。「へのかっぱ」といった感じだ。
経営への影響がこれほどにも少ないのであれば、ダイハツにはとても大規模な処分を下すといいだろう。どうせトヨタ本体にはたいして影響しないのだから、厳しい処分を取り放題だ。2年間ぐらいの生産中止を命じてもいい。(トヨタが補填してくれる。顧客の損失も、下請けの損失も。)
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なお、こういう形で、(ダイハツ自体には)大損害が発生すれば、そのことは世間に向けて、大きな教訓をもたらす。こうだ。
「やたらと金を惜しんでケチケチすると、かえって損するものだ」
そういう教訓が得られる。
ダイハツの経営者は、やたらと「コストカット」と唱えて、開発コストを低減しようとした。かくて手抜きの開発を強いた。下記記事のように。
ダイハツ社内に根付いた「過度にタイトで硬直的な開発スケジュール」が原因だった。万一、認証試験に不合格となると、新車の発売が遅れるため、試験の担当者には「認証試験は合格して当たり前」「不合格は許されない」とする強烈なプレッシャーがあったという。
その要因として、第三者委は2011年発売の軽自動車「ミライース」が短期開発で成功を収めたことから、ダイハツ社内で「短期開発重視」の姿勢が強まったと指摘した。
( → ダイハツ不正の引き金「ミライースの成功体験」とは | クルマ最新事情 | 川口雅浩 | 毎日新聞「経済プレミア」 )
短期間の開発で、開発コストを削減することに成功した。
「開発コストをこんなに削減したぞ。コストカット万歳!」
と喜んだ。しかし、開発コストを下げれば、「安かろう悪かろう」となるのは必然だ。品質よりもコストを重視して、手抜きが蔓延することになった。……それがダイハツの体質だ。
昔の日本は「安かろう、悪かろう」と言われたものだ。そうした昔の体質に、逆戻りしてしまったのである。ちょうど、高速道路をろくに走ることもできなかった、初期のクラウンのように。
1956年9月であり、本格的な高速耐久試験を行っていない状態で、クラウンを米国に持ち込むには無理があった。当初から危惧されていたことではあったが、高速道路を走っていると、突然エンジン音が騒々しくなって出力が低下し、米国で販売できる性能ではなかった。
このような性能であったにもかかわらず、米国進出を決断した。
( → トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|第1部 第2章 第9節|第5項 米国トヨタの設立とクラウンの輸出 )
こうしてポンコツ状態のクラウンが輸出された。その評判がどんなものであったかは、言うまでもないだろう。(あまりにもみっともないので、書けない。)
そして、こういうふうに「安かろう、悪かろう」という状態に回帰しようとしたのが、ダイハツだったのだ。
ただし、それがバレると困るので、あちこちでさんざん偽装していたようだ。その偽装(詐欺行為)こそ、問題の本質であるのかもしれない。
なのに、それも反省しないで、さっさとアジアに輸出しようとしているのだから、面の皮の厚さには呆れる。反省というものができない会社であるようだ。
豊田章男は言う。「親会社として全面協力し、立ち直らせる」と。
だが、目的は「立ち直らせること」でも「生産再開」でも「金儲け」でもない。会社の体質を抜本改革することだ。そのためには、「コストカット最優先」という体質を改めて、「品質の向上を最優先」というふうにするべきだ。品質さえ上がれば、コストを下げなくても、十分に利益を上げることができるからだ。
品質を上げて、売値を上げれば、コストを下げなくても、利益を上げることができる。……これこそ、日本企業の進むべき道なのだ。トヨタやダイハツは、そのことを根本的に取り違えている。そこを反省しなくてはならない。
繰り返そう。
「やたらと金を惜しんでケチケチすると、かえって損することがある」
これこそが、今回の件で、教訓とするべきことなのだ。他の企業もこの事例を見て、我が身を振り返るべし。
※ それと対照的な話が、次項にある。大谷翔平は、トヨタやダイハツとは逆に、コストカットの反対のことをやっている。それで大成功している。
→ 大谷がポルシェ贈呈: Open ブログ
【 関連項目 】
先日の記事。(12月21日)
→ ダイハツの不正の根源: Open ブログ

当のダイハツミライースを乗っているので、残念だけど、側面衝突試験で使う車のエアバッグを、タイマーで作動するように改造したり、相当悪質なのでは?
重要なのはタイパやコスパではない!